私を見ないで

      「あっ!」

      季節は秋を既に通り越した11月も中旬に突入していたある日。

      立海大付属中学校はもうすぐ期末試験一週間前に入る。

      文武両道をモットーにしているこの学校では、多くの名のある人物を派遣している

      ので有名だった。

      中でも男子テニス部は優秀で、部員になった以上努力は惜しまないことを心掛けて

      日々練習三昧である。

      その戦場と化した中に紅一点のマネージャーがいる。

      今年の新入生である彼女は天性の運動オンチで、半年経った今日までの体育の

      成績は絶望的だった。

      それでも単純に走ることが出来るのが、唯一の救いである。

      その分を補うかのように、頭脳はずば抜けており、部内では可愛がられる存在だった。

      だが、長くて広い廊下の先にいる人物を見つけては、そそくさと、自分の教室へと

      逃げ帰るこの行動を一ヶ月以上続けていた。

      強く閉じた瞼に、先程目にした長身の少年が浮かび、何かに耐えるように唇を噛む。

      走る足も次第に速くなり、彼女のクラスである一年三組の教室を猛スピードで

      通り過ぎた。

      いや、正確に言えば、通り過ぎようとしていた。

      「何、やってんのよ。あんたのクラスはここでしょうが」

      「っ!?」

      いきなり背後から襟首を掴まれたは瞳を大きく見開き、後ろの人物の方へと

      振り返る。

      そこにはクラスメートで親友の李紅茜が呆れた顔をしていた。

      長身である彼女は女子テニス部に所属し、しかも、一年にしてエースの座に

      位置していた。

      運動オンチな少女とは対照的な存在である。


      「放してよ、李紅さん!」

      「そうは行かないわよ。大体、教師受けの良いがいないと心配するでしょうが」

      「そんなことないよ。先生はみんなに対して優しいよっ!」

      「そうかね。私からして見れば、あんたをひいきしているようにしか

       みえないんだけどね」

      上手く丸め込まれてしまった彼女は、茜に背中を押されて自分の席へ着いた。

      間もなく人の良さそうな年配の男性教師が入ってきて、HRを始める。

      脳裏にはやはり、先程の少年が映り、何度も頭を振った。

      (忘れなきゃ……副部長のことは忘れなくちゃ…)

      しかし、何度やってみても今まで垣間見た彼が浮かんできて逆効果になる。

      『、今までの記録を見せてくれるか?』

      『うむ、日々精進しているようだな』

      『大丈夫か!?』

      『あぁ......、ありがとう』

      『...』


      (真田副部長…)


      自然に目の端に涙が浮かんで必死に堪えた。

      「…!」

      「はいっ!!」

      いきなり自分の名を呼ばれて驚いた彼女は席を立つ。

      その瞬間に教室中は静まり返り、同じように立ち尽くしている教師と目が合った。

      「どっ…どうした、?さっきから呼んでいたんだぞ」

      「すっすみません!そのぉ…昨夜、よく寝て無くて…それで」

      「あぁ、そうか。それなら、以後注意してくれれば良い。では、席に着きなさい」

      「はい。すみませんでした」

      そう言って座るとクラス中から内緒話をするような声が耳を掠める。


      「どうせ、遅くまで勉強してたんじゃない?優等生様だから」

      「言えてる。あたしたちのような一般庶民とは違うのよね?」

      「その割には、運動はまるっきり駄目だからこの分野は頂きだよなぁ」

      その言葉が終わると、くすくす笑う声が聞こえた。

      彼女は顔を曇らせながらあぁなんだ、と心の中で呟く。

      この状況はここ最近からを攻め続けていた。

      その理由は…


      「せんせー!私のことは心配してくれないんですか?こんなに先生に

       恋焦がれているのに」

      そんな間の抜けた声の方に急いで振り返れば、わざとらしく花柄のハンカチで

      顔を覆う茜の姿があった。

      その声は一瞬、教室を黙らせるのに充分な威力である。

      その言葉を向けられた担任は口を開けたまま頬を赤らめている少女を凝視していた。

      「ぷっ!」

      誰かがシャンパンの蓋を放ったように吹き出すと、つられた様に教室中が笑い出す。

      彼女も何も可笑しくないのに口元を押さえて必死に堪えた。

      すると、その渦を作った本人と不意に目が合う。

      彼女は満面の笑みを浮かべ、これが自分のためだったことを知ると胸が篤くなった。

      (ありがとう…、李紅さん)

      良い友達がいた、と思わず再確認をしてしまう。

      HRが終わると、交代するように教室に入ってきた国語教師が入ってきた。

      日直が号令をかけ、着席すると早速、黒板に何かを書き出す。

      ノートに遅いながらシャーペンで書き止める。


      「はい。じゃあ、。これを答えてみて」

      「はい」

      立ち上がり、教師の求めた答えを口にすると満足そうな顔をしてを少し

      褒めてから解放した。

      「みんなもを見習って予習するように」

      その声が業務に戻ると、また聞きたくないものが耳を掠める。


      「予習ってしている量が半端じゃないのよ」

      「人間離れしてるしぃ」

      くすくす笑う声にの意識は一端途切れた。

 

 

      この悪夢が始まったのは、一学期の中間試験の結果からである。

      他人よりおっとりした性格の彼女がクラス一番、成績が良かった。

      当時は、まわりから感嘆とひやかしの声が取り巻いたのを今も覚えている。

      期末も頑張れ、と応援していた友達も結果後、がらりと態度を変え出した。

      他人より物覚えが悪いは予習と復習をしっかりやっている。

      だから、事前に軽く復習をやってしまえば、当たり前に点数は取れてしまうのが

      真相だった。

      それをクラスメートたちがでたらめに校内に噂をばらまき、天才少女だのと

      担ぎまわしている。

      噂ばかりが一人歩きをして、と言う少女を誰も見ようとはしない。

      もちろん、それは彼女が所属する男子テニス部にも言えることだった。

      彼らは鼻からこの少女を天才扱いなどしなかった。

      普通の“小さな可愛い女の子”としか見ていなかった。

      しかし、彼女のマネージャーの仕事ぶりとそれに噂が加わり、必要以上に

      接近してくる日々が始まった。

      ただ、はこの仕事に就いたからにはそれなりの責任感を持たねばと日々、

      テニス雑誌を読みふけったりしただけだ。

       っ!」

      「えっ!?」

      再び、彼女の意識が現実に戻ったのは、教室が賑わった頃だった。

      先程まで教壇に立っていたはずの国語教師は消え、代わりに悪戯好きな少年達が

      赤や黄色などの色鮮やかなチョークで何やら落書きをしている。

      目の前にはこの半年、唯一変わらない友人である李紅が呆れ顔で立ち尽くしていた。

      「あんたさぁ、あんな嫌がらせになんか負けちゃ駄目だって、いつも言ってる

       でしょうが。そんなんだから、あいつら付け上がるんだよ、まったく」

      そう言うと彼女の狭いおでこにデコピンをする。

      「いたっ!だ、だって」

      「だってじゃない!!まったく、のそう言う所、直した方がいいよ。でも、

       そこが可愛いんだけどね」

      茜は何を思ったのか、急に自分より小さい少女の体を抱きしめた。

      異なったシャンプーの香りが鼻を掠める。

      胸も幼いに比べ、彼女は実に女らしくて少々哀しくなった。

      「りっ!李紅さんっ!やめてよぉ。恥ずかしいから」

      「どうしてぇ?こんなに可愛いのにぃ〜」

      そう言うと、頬に手を当て可愛らしく笑ってみせた。

      それに対して彼女は愛想笑いを返すしかなかった。

      「それにしても相変わらず、冷たい人よね」

      「えっ?誰が」

      いきなり話題を変えられ、瞬きを繰り返す。

      「真田先輩。だって、がこんなに…」

      「きゃ〜〜!その続きは言わないで!!」

      急いで茜の口を塞ごうとするがその行為は空振りに終わり、再び抱き寄せられた。

      「何よ。本当のことじゃない」

      彼女の耳に唇を寄せるところを他人に見られたらまた、話題を提供してしまうだろう。

      暴れて抗議をしてみるが、鍛えが違う彼女はびくともしなかった。

      「だって、こんなこと話したのは李紅さんだけだし」

      「はぁ?!あんな人のどこが良いのよ」

      「あんな人って言わないでよ。それは、テニスに関して妥協しない人だけど、

       本当は凄く優しい人だよ」

      「で、いつ、コクるの?」

      「うっ」

      セルフツッコミに体を強張らせるのが茜にも伝わったらしく、顔中にしわを寄せた。

      「何、もしかして考えてないとか?」

      「そ…それは…」

      「どうなのよ」

      「...まだ......勇気が...」

      「ンなもん、『当たって砕けろ』よ」

      「....」

      そんな身もふたも無いことを、とどこからか聞こえてきそうなことを平気で言った。

      再び始業のチャイムが鳴り出し、それは水掛け論で幕を閉じた。

 

 

      彼、真田弦一郎は彼女が所属する男子テニス部の副部長を務めている。

      毎週、天気に左右されず厳しい練習を行っていた。

      「ヒュー♪今年入ったマネージャーって可愛いじゃん」

      「えっ!?あの...」

      入部当初、まわりの部員たちはに夢中だったにも関わらず、彼だけは無表情だった。

      詰め寄る少年達に顔を赤くして部室の壁に背も垂れる。

      「そこで、何をしている。さっさと練習に戻れっ!」

      その声がすると、彼らはバタバタとテニスコートの方に駆け戻っていった。

      それに対して、自分はどうすれば良いのかと慌てている時、目の前に真田が立ちは

      だかり、唇の端を少し緩めてこう言った。

      「男子テニス部に良く来たな。俺は、副部長の真田弦一郎、三年だ。この部の

       マネージャーは、生半可な気持ちでは務まらない。厳しいが、それでも良いのなら

       俺は歓迎する」

      「はいっ!宜しくお願いします」

      それが初めての出会いだった。

      この人にもっと笑って欲しい。


      そう思った頃にはすべてのテニス用具や試合のルールや各々の部員のデータを

      調べ上げていた。

      気がつけば彼をいつも追いかけていた。

      しかし、そんな彼女の想いはある日、無残に散ることになる。

      いつものように、真田の姿を見つけて助走を付け出した頃だった。

      彼が女子生徒と楽しそうに話している姿を目撃してしまったのだ。

      それを見た瞬間、の中で何かが音を立てて壊れていくのが解った。

      (あぁ、......彼女...いたんだ)


      それは彼に対しての気持ちだろうか。

      それとも少女の記憶だろうか。

      忘れようとしても忘れられない恋。

      一度想い込んでしまった少年は、そう簡単に今まで位置していた場所から

      どいてくれようとしない。

      いっそのこと、嫌われてしまえば、簡単に済んだかもしれなかった。

      だが、そんなことができるわけない。

      それほどまで真田弦一郎という人間を選んでしまったのだから。

      だから、せめて今は顔を合わせるわけにはいかない。

      もし、見せてしまえば、きっと泣いてしまう。

      もし、合ってしまえば、きっと嫉妬してしまう。

      醜い自分だとは思われたくなかった。

      せめて、彼の中では良いマネージャーのままでいたい。

       、入ってもいいか?」

      放課後、日も既に落ち、空には月が無かった。

      それはまるで、今の自分みたいだな、と人事のように思っていた。

      部員たちが着替え終わった後、ようやくマネージャーが入ることが許される。

      制服の袖に通した頃、部室のドアが何者かによって叩かれた。

      その独特の叩き方と低い声に耳を疑ったが、鼓動が妙に高鳴った。

      「あっ、ちょ…ちょっと、待って下さい!部室を閉めますので!!」

      「わかった」


      急いで荷物をまとめ上げ、最後に部室の電気を消した。

      胸の鼓動を抑えながらドアをゆっくり開ける。

      外のひんやりとした空気が温まった室内に入り込む。

      でも、そんなことよりの心を捉えた者が、目の前にいた。

      「真田・・・副部長・・」

      久しぶりに会ったように心が大きく揺れていたが、そんなことは許される行為では

      ないと自らの気持ちを凍らせる。

      「どうしたんですか?こんな時間まで残っているなんて…」

      出来る限りの平静を保ってみても、どこかやり過ごせない自分がいた。

      「いや、こんな時間におまえ一人を帰すのは物騒だからな。それより話があって

       待っていた。帰りながらで良いか?」

      一度、瞳に捉えたら逃がさない鋭い瞳が口調とは違って、有無を選択する

      ことを許さない。

      それに押されたわけではないが、静かにYESと答えた。

      月のない夜はこんなにも静かなものなのか、かすかに聞こえるのは何処かの民家か

      ら聞こえてくる子どもの無邪気な笑い声だ。

      楽しそうなそれは二人の間では空振りに終わり、沈黙の渦の中に消え失せた。

      大きなスポーツバックを担ぐ長身の彼とは釣り合わない小柄な少女は指定鞄を

      手にしながら俯いている。

      「
最近、なぜ俺を避けている?」

      そう涙が重たくなった頃、いきなり沈黙を破ったのは真田の方だった。

      耳を疑ったが、立ち止まって彼を見上げれば、真田もまた同じように

      見ている。

      押さえていたはずの鼓動が再び高鳴り出し、体中に響き渡った。

      「えっ!」

      他にも色々と思い浮かぶ言葉があったのに、口にしたのはそんなどうでもいい

      一言だった。

      荷物を肩に担いだまま額に手を当て、ため息を吐く。

      「俺が気がつくと、いつもは背を向けて走っていた。それは俺から逃げるため

       だったんだろ?」

      確信しているとでも言いたそうな顔で強く唇を噛む彼女を見た。

      そんな瞳で見られたくなくて、さらに、顔を俯かせる。

      「最近のお前はいつもそうやって、俺に見られないようにとそう下ばかりを

       見ている。そんなに俺が嫌いか?」

      ここで頷けばどんなに楽になれるだろうか。

      いっそ、ここで失えば、永久に出会うことはないだろう。

      だが、それさえもできなかった。

      彼を見ずに、頭だけを力の限り左右に振る。

      小さな肩が小刻みに震えていた。


      「きらってなんか......いません」

      頭上でまたため息を吐くのが聞こえた。

      「他人と話しをする時ぐらい、瞳を合わせろっ!?」

      すると、彼の大きな掌が彼女の顎をしっかりと掴んで持ち上げる。

      それと同時に瞳を大きく見開く顔を見ることになるとは、は思っても

      見なかった。

      今まで真田がこんな表情をするなんて想像もしたことがない。

      まだ、まともに機能する頭で考えてみれば、自分の瞳からは頬を伝う

      涙が流れていた。

      ついに我慢していたものが我慢できなくなったんだ、と沈む心の中で呟く。

      「見ないでっ......下さい」

      ようやくそんな言葉を口にすることが出来たが、彼は放そうとはしなかった。

      むしろ、力強く抱きしめられた。

       涙も驚いた所為で止まってしまった。

      鼻を掠めるのは汗と真田独自の体臭。

      いきなりのことで、唯一正常だった思考回路もショートしてしまった。

      「何故、泣くんだ?俺が何かしたのか?気に触ることがあったのなら謝る。

       だから、そう泣くな」

      そう言うと、長身の体を折り曲げて少女を抱きしめる腕に力を込める。

      「真田…副部長?」

      顔が見えない。

      こんなに身長が小さいことが嫌だった。

      せめて、今だけ5cm大きかったら、何かが変わっていただろうか。

      それだけで何故だか、不安に刈られる。

      こんなに体を密着させてしまえば、彼女の鼓動など当に伝わってしまっただろう。

      それを思うと、瞳を強く閉じ、体をよじって抗議をした。

      だが、茜よりも鍛え方が違う、ましてや異性である彼から逃げることなど

      無駄な足掻きだった。

      「放して下さい!彼女さんに言いつけますよ!!」

      そう叫んだとたん、彼の体が固まった。

      それを機に、腕の中から脱出して少年から二、三歩離れた場所まで逃げる。

      「真田副部長には彼女さんがいるんでしょう?なら、私とこんなことをすると、

       悪いですよ」

      もし、これが、同情でやったことならそれは大きなお世話というものである。

      そんなものは欲しくない。

      自分が欲しているものは、どんなものより尊いものだから。

      「もし、また、こんなことをするのでしたら、私は退部させてもらいます。

       それが真田副部長の彼女さんのためですから…」

      「ちょっと、待て。先程から聞いていれば、彼女とは誰のことを言っているんだ?」

      「嫌ですね。私、見ちゃったんですよ。最近、良く一緒にいる女性ですよ、

       同じ立海大の」

      一瞬、彼が何のことか解らないといった顔をしたのが、気に掛かった。

      真田は腕を組みながら何かを考えるような素振りをすると、急に思い当たる節

      でもあったのか、あぁ、と言う。

      「それは、大きな誤解だ。俺にはそう言う存在はいない」

      そう言って、腰に当てた手で再び、を抱きしめる。

      「俺が好きなのはだ」

      独り言のように囁いた彼の言葉が信じられなかった。

      体中に熱が走る前に真田を凝視する。

      その顔は最初に出会ったあの頃のように唇の端を緩めていた。

      不器用なそれでいて、精一杯の笑顔。

      それがこの半年で習得した真田弦一郎と言う人間だった。

      「だ、だって、あの人は?」

      「あれは、俺の幼馴染でお前のことを調べてもらったんだ」

      「私の…こと?」

      「あぁ、最初に出会った頃より元気がなくなった理由が知りたくて新聞部の

       アイツを使ったというわけだ。それより何故、言わなかったんだ?

       悲しんでいると俺はいつもの調子の半分も出せない」

      一瞬、突っ込んでもいいと言うなら、間違いなくウソだというだろう。

      最近、催された部内の紅白戦では、見事な成績を収めた。


      「恥かしかったんです。そもそも、部内でそんなことを相談するのなんて

       不謹慎ですし」

      「なら、俺と二人きりなら問題はないだろう」

      「えっ!?」

      いきなりの大胆発言に忘れていた言葉を思い出し、体中を火照らせる。

      彼は今までなかった優しい顔をしてこちらを見ていた。

      「お前の......の気持ちを聞かせてくれるか?」

      「私も......好き......ですっ」

      途切れ途切れに言った割には、はっきりした口調で、真田の瞳をじっと見つめた。

      その瞳が、何だかこのまま吸い込むのではないかと瞼を閉じた。

      もし、そうなったとしても私はこの人の体で生き続けよう、とおかしなことを

      平気で考える。

      その内に、真田の唇と重なり、体中に電撃が走った。

      この震えがどちらかのものかわからないまま、時は流れる。

      静まり返っているはずの草むらからは虫達の鳴き声が増してきた。

      月がないと思った夜空には、満月が煌々と照っていた。

      その明かりでうっすらと見える二人は、互いの体を密着して唇を求めた。

      もう、迷わない。

      そんな言葉がの気持ちを強くした。


      「真田副部長…」

      唇を離されると瞳を遠慮がちに開く。

      彼の少女を捕らえた目には、甘いものが漂っていた。

      そこにはやはり、優しく笑う真田がいる。

       凍てついた夜も深まる中、二人だけがいつまでも抱き合っていた。

 

 

 


      ―――・・・終わり・・・―――

 

 

 


      #後書き#

      十一月なって初めてテニプリを扱ったと思ったら無駄に長くなってしまいました。

      しかも、終盤に近づくたび、裏に行きたいとまたもやキャラの一人歩きしています。

      この作品は、某サイト様でお話ししたのがきっかけでここ最近、少しずつ作業

      を進めていたのですが、三連休をこれ幸いに昨夜はちょっくら徹夜しました。(照)

      それではご感想、又は気軽な書き込みを宜しくお願いします。