『氷室先生っ!』


         はぁぁ…。

         最近、俺は変だ。

         気がつけば、私の受け持つクラスの生徒のことだけを考えている。

         そう、……ただの女子高生をだ。

         しっかりしろ、零一。

         何をそんなに悩む必要がある。

         私は単なる一教師で、彼女は一生徒だ。


         そのほかに何の支障があると言うのだ?


         何故、を一日何十回も見なければ気が済まない?

         何故、彼女の声を聞いた日は、今日も元気だなって思う自分がいる?


         何故、あの少女が笑うとほっと安心してしまうんだ?


         『ヒムロッチ、一緒に帰りませんか?』


         
明日、校内がざわつく季節がやってくる。

         バレンタインデーは女子生徒だけではなく、もらう側の男子生徒もいつも以上に

         落ち着きがなくな
るから、はばたき学園の職員たちはその指導で頭を悩ませている。

         こうして文にして自分の気持ちの整理をしている俺もその一人だ。

         しかし、今の私にそんな単純作業ができるだろうか。

         一年前の明日をこの頃思い出す。

         あの時も確かに大きな包みを私に差し出した。

         だが、受け取らなかった。

         私は教師だから。

         彼女は生徒だから。

         だが、この言葉で片付けて良いものだろうかと考え始めている。

         俺は一体どうしたって言うんだ。


         『
零一さん…』


         CANTALOUP」の帰り、が初めて私の名を呼んだ。

         普通ならば、教師を名前で呼ぶなど言語道断なのだが、私はそれに温かさを覚え

         てしまった。

         店主益田義人は俺の小学時代からの親友だ。

         だが、あいつは天真爛漫さがズバ抜けた性格な故に、「教師と生徒の禁断の愛…

         いいねぇ。

         俺も
教師になれば良かったなぁ」などとふざけたことを言う。

         そんなことをするために私は教職を選んだわけではない。

         しかし、現状は義人に言われるがままの俺だ。

         もうすぐ夜が明ける。

         そろそろ俺も私に戻らねばならない。

         結局、彼女のことを考えて一睡もできなかった。

         ……すべて君のせいだぞ。

         私がこんなにも温かい気持ちになるのも自然と笑みがこぼれてしまうのもが私に

         与えてくれた感情。

         この私が抱いている君への感情をどう表せばいいのか迷っている。

         だが、結局はどう考えようとも体が勝手にを求めてしまうのだろうな。

         だから、今日、私は君からの気持ちを受け取ってしまう。

         なぁ、

         君のチョコレートは、誰にも渡しはしない。









         
♯後書き♯

         
今作はバレンタイン企画でお届けしました。

         
今回は「ときめきメモリアルGirl's Side」氷室先生を作業したわけなの

         ですが、皆様はどう思われた
のでしょうか。

         
今作は場面設定からもお分かりになられるかと思いますが、バレンタインの前夜

         にヒロインからの
チョコを受け取るべきかと悩む話なのでそう言ったタイトルにし

         ました。

         
ご覧になられる方々に甘いバレンタインの夢が届けられましたら、とても嬉しく

         思います。

         それでは失礼しました。