
キューバはカリブ海に位置し、北海岸は、北領域への熱帯のハリケーンの通り道で、系統的に見舞われる。こうしたハリケーンは海岸近くで暮らす住民、とりわけ、中央部と西部地域に位置する州に深刻なダメージをもたらす。ビジャ・クララ州のサンタ・クララ市の北部ではいくつかの都市は、蓄積された損害が住民の住宅事情にかなり影響している。最も傷つきやすい地区のひとつにムニシピオ、サグア・ラ・グランデがある。
1997年以来、ラテンアメリカのネットワーク、ECOSURの一部としての構造資材調査センターは、ハリケーン「リリー」(1996年)や「ホルヘ」(1998年)等の襲来で住宅他の建物が被った損害を緩和するため、プロジェクトに取り組んでいる。ECOSURネットワークの法定所有者、グルポ・ソフォニアスを通して、様々なヨーロッパの財団が、こうしたプロジェクトに資金提供している。
住宅を改良する手段として、改革を宣言するうえでは多くの要素が寄与した。
a)利用可能な予算が極めて限られ、かつ、潜在的な受益者数が極めて多かった
b)都市やその隣接地区では、新たな住宅建設に水をさす深刻な土地の束縛があった
c)改革の仕事は、自分で家を建てるという戦略には理想的で、このプロジェクトの他の主な目的だった
d)キューバの人口は概して安定しているが、高齢化により将来的には減少傾向にある。このため、改革の優先度は高いものの、住宅の新需要はおそらく減少するであろう
e)エコロジーの条件からすれば、改築は新設するよりもずっと負荷が小さく、エネルギー消費といった要素も最小限まで削減できる
1996年にハリケーン「リリー」が通過したサグア・ラ・グランデ市は、深刻な被害を受け、2259戸が屋根を失い、753戸が完全に倒壊した。災害の一部は緊急対応によって復旧されたものの、1999年時点でも99戸は完全につぶれ、137戸は部分的に倒壊し、597戸は屋根が大きく破損していた。ハリケーンにより、このムニシピオが抱える潜在的な問題が明らかとなった。既存住宅の多くは適切に改新されておらず、現状も非常に不十分で、結果として、ハリケーンや洪水等の天災にかなり傷つきやすいものだったのである。また、この数年の深刻な経済危機から、改築活動は大幅に削減され、現状を変えることはできなかった。
国際機関には、現状に対応する資金提供をしたものもあった。いくつかの組織は相乗的なアプローチで集まり、それぞれに明確な目標があった。
構造資材調査センターは、近年開発したいくつかの技術の普及拡大を希望していた。その技術とは、極めて小規模なスケールでエコマテリアル(経済的、エコ的な建築素材)を製造するという発想である。
ローカル政府や全国住宅庁は、このプロジェクトが、進行中のプログラムを損なうことなく、市予算への外部からの資金で、コミュニティの問題のいくつかを解決する機会につながると認め、このプログラムに共同融資するため、かなりの資金を提供した。
職人、石工と様々な手仕事労働者を集めた地元組織、地元産業企業(LIE)が、建築材料の製造に乗り出す挑戦を引き受けたが、それは以前にはなかったアプローチだった。
地元産業企業が参入したことは、ムニシピオ段階で、建築資材の調達に必要な複雑な官僚的な手続きを一新する空気を吹き込んだ。
ビジャ・クララ州の北部において、建築資材製造に適正技術を用い、国民参加と並んで、都市介入のための集中戦略をもって、持続可能なやり方で住宅条件を改良する方法を模索・実験する。プロジェクトは、明確で非常に野心満々の目標を設定した。その戦略の背骨は以下の通りである。
1.エコマテリアル製造用に分散型のやり方でしっかりしたインフラをその地区に立ち上げる。
2.ワークショップは、地元産業企業を通じて、地方の市場状況に対応できる柔軟性がある地元の企業により運用する。
3. 様々なシナリオを定義し、プロジェクトの都市介入のための明確な方針と戦略を確立する。プロジェクトは、必要なアクションや利用可能な資源の規模に応じて動くべきである。
外部資源に依存せず、建築資材を地元製造することを目的に、エコマテリアル・ワークショップのネットワークは組織化された。こうしたワークショップのほとんどは、地元産業企業を通じてフレキシブルで効率的なやり方で運営された。生産された主な素材は以下の通りである。
- キューバのブランドTEVI2を用いたマイクロ・コンクリート・屋根タイル(MCR)
- 構造資材調査センターで開発された技術、Lime Pozzolana Binder CP-40
- CP-40による高ポルトランド・セメントを交換する空洞コンクリートブロック
1997年には第1回ワークショップがサグア市周囲で開催されたが、このプロセスは早くも始まった。その目的は、他の人々にCP-40の技術特性をデモンストレーションするため、最先端のワークショップを立ち上げることだった。このワークショップにはスペインの海外協力機関が資金供給した。さらに、そこではそれ以外の2つのワークショップも「ハリケーン・リリー」として知られる第二段階のプロジェクトの一部として設定された。このプロジェクトの目的は、このハリケーンによりこの地域が受けた被害を緩和することだった。ヨーロッパの財団の中にはNGO「グルポ・ソフォニアス」により、国を通じた資金を提供した機関もあった。
最初のワークショップはサグア市の地元産業企業内で設けられたが、もう一方は、サグア市の東60kmのムニシピオ、コラリジョで設けられた。だが、これは運営上の課題から2年後には再移動しなければならなかった。この後者のワークショップは、石灰を製造するために人気のない施設で、レメ・ディオス市の近くで運営するよう設定された。
生石灰を作る釜の状態は改良され、燃料としての薪を使う石灰も初めて作り出された。それまでは、原油燃料で製造されてきたのである。
プロジェクトの結果、地元での素材生産の大きなインフラが創設された。年間に400トン以上のCP-40、1万6000m2のMCRの屋根、4万8000m2の壁を製造するポテンシャルがあるのだ。このインフラは、地元の貢献や3年で10万ドルに及ぶ海外からの資金援助で構築された。
都市の介入戦略も、プロジェクトのまた別の興味深い結果であった。それは中央集権的なコントロールと外部資源への依存に基づく、住宅のポピュラーな改新のための既存システムから、よりフレキシブルなムニシピオのシステムへのシフトからなっていた。そこで介入の中心となるのは受益者である。というのも、その人自身が自分で自分の問題を解決するようエンパワーされているからだ。
建築素材を地元製造することで、ローカル・レベルで手頃な材料が手に入るようになった。新たな主体、地元産業企業は、政府の補助金で国家レベルで経営される主に大企業の安定した生産者と競争し始める。地元で生産することで輸送と資源が得られるという有利な条件で、地元産業企業は挑戦することとなったのだ。
プロジェクトは、地区で運営されている国の銀行のひとつと良い協働関係を確立し、被災した人々にとって益ある住宅ローンも確立された。これによって、住宅の改築に必要な建築材料の購入代金を前払いする能力が得られた。自分で工事するという地区レベルでなされる改革のタスクでも同じことが適用された。
都市介入戦略で定義された優先度に応じて資源は分配され、プロジェクトでは350以上の世帯が恩恵を受けた。自分たちの家を改築する機会を持て、うち、約80人は抵当ローンを申し込んだのだ。さらに、プロジェクトを実施した結果、40以上の新たな雇用も創出された。
1.持続可能で一般的な改革プログラムには、建築資材製造のためのしっかりとした効率的なインフラが必要である。それは、外部資源から自立することがいくらか可能となる。
2. 建築資材の製造は、フレキシブルなインフラや低い固定費から地元企業で実施されなければならない。
3.融資計画により、社会の貧しい階層も資源にアクセスできる。
4. 資源利用の優先度を確立するため、集中した都市介入に先立ち、明確な戦略が工夫されなければならない。
5.エコマテリアルは、伝統的な建築素材に実現可能なオルターナティブを示す。
6.プロジェクト資源の適切なマネジメントにより、社会のより貧しい階層にもプロジェクトの成果を広げられる。この経験は、それ以外の地区、他国であっても簡単に模写でき、望ましい状態をもたらす。
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