2007年 本文へジャンプ


キューバのエコ素材



 このプロジェクトは、革新的で環境面で持続可能な一連の建築素材を開発・移転している。小規模なワークショップで、地元で製造でき、農村と都市の両域にも適する。エコマテリアルの使用を通じ、新たな雇用機会も創出され、ビジャ・クララ州では約2,300戸、全国では5,000戸以上の住宅が、建築・改築されている。

目標と目的


 このプロジェクトの主要目的は、ムニシピオの規模で、環境的にも経済的にも持続可能な建築素材を地場生産・流通するため、革新的で移転可能なシステムを開発・普及することにある。住宅の修理が必要な家庭、とりわけ、災害の傾向がある領域の家族へのアクセスを容易にすることにある。

プロジェクトについて


プロジェクトの状況
 キューバの住宅供給システムは、1959~1988年までは建設省によって運営されるオートメーション化された工場での大規模・中央集権的な製造に依存していた。プレハブ住宅用の資材が製造され、道路や鉄道網を通して工場から遠方へも供給されてきたが、このシステムはエネルギー集約的なもので、旧ソ連からの廉価な石油供給に基づいていた。

 だが、ソ連と東欧社会主義の崩壊が、このシステムに劇的な影響を及ぼす。エネルギーは不足し、道路は維持不足で劣化し、トラック部隊も老朽化し、スペアの供給は滞っていく。これが建築素材産業に大きく影響し、建築素材の安定供給、とりわけ、遠隔地への供給は維持できなくなった。

 建築素材の不足は、新たな住宅建設の落ち込みや維持不足による既存の住宅の急速な劣化につながる。人々は改築したり、修理・維持する術がなかった。

 この新たな状況が、長距離輸送に基づく中央集中化された生産から、省エネで、輸送コストを減らす資材の現地生産への抜本的なシフトを促す。

14年間以上に及ぶ構造資材調査開発センターの仕事は、草の根レベルで、このチェンジを支える技術を開発し、実施するものなのである。

鍵となる特色

 プロジェクトはエコマテリアルのローカルな製造システムの開発にかかわるが、エコマテリアルの建築素材は省エネで、しばしばリサイクル廃棄物から作られている。これらは、マイクロコンクリートの屋根タイル(MCR)、ライム・ポゾラン・セメント(CP-40)、部分的にポルトランドセメントをCP-40で置き替えた空洞コンクリート・ブロック、バイオ廃棄物を燃料源とする省エネの焼却クレイ・レンガ、そして、建設での竹の使用からなる。

 構造資材調査開発センターが開発した技術は、農村や郊外のいずれの地域にも適し、小規模生産に向け、新たな雇用機会の創出を通じて地域経済を刺激することに重点を置くことと連動している。プロジェクトの主な成果は以下のとおりである。

  • 技術開発と革新的な輸送のプロセスが、ムニシピオ・レベル段階での建築素材製造のための一連の適正技術をもたらした。機械やノウハウは、キューバや他のラテンアメリカ諸国由来のものであることから、全プロセスは南からの南への努力として構成されている。人材育成や販売に向けたサービスを含め、エコマテリアルのワークショップが実施されている。

  • ムニシピオ・レベルでの建築素材生産に向けた大がかりな分散型のプログラムは、持続可能なやり方で手頃でアクセスしやすい建築素材を供給することに貢献している。とりわけ、ハリケーンが深刻な被害をもたらし、迅速な災害対応が必要とされている場合にはそうである。

  • 住宅改善のための新たな分散型マネジメント・モデルの創造やそのさらなる改良で、都市再開発問題を解決するためのキャパシティが増え、独立して行動をする新たな機会を地元当局は得ている。このモデルには、資金に限りのある世帯も住宅改築用の融資が得られるマイクロ・クレジット・システムが取り入れられている。


 現在、キューバ全域では19のエコマテリアル・ワークショップが動いており、ラテンアメリカ(ニカラグア、ホンジュラス、パナマ、グアテマラ、コロンビア、エクアドル)、アフリカ(ナミビア、ナイジェリア、モザンビーク)を含め全世界に、さらに別の15が動いている。

費用調達
 プロジェクト資金は創造的なやり方から構成され、外貨の38万7000米ドルは、欧州委員会、GTZ、スイス開発協力庁や民間財団を含め、多岐にわたる。こうした基金は、特定の建築素材、機械、ローカル搬送用の燃料等、外貨で購入しなければならない物品の経費をまかなうのに用いられている。ローカル政府は、こうした資金を現地の通貨にマッチさせ、ワークショップでの原材料の購買、インフラへの投資や賃金支払いに使われた。ビジャ・クララ州政府が提供した総資金は、200万キューバペソ(9万米ドル)と評価されている。南から南への技術移転の資金は、構造資材調査開発センターとエコ・スル・ネットワークにより実施されたワークショップを通じ、EU、キューバ政府、ドイツのNGO「Werkhof Verein」から提供されている。

インパクト

  • 居住者は、ムニシピオで生産された手頃な建築素材で、自分たちの家を改修する機会を多く持てている。

  • プロジェクトは住宅の改善に貢献し、とりわけ、ビジャ・クララ州の被災傾向がある地区では2,300世帯以上がその住宅を改築でき、その生活の質をかなり改善できた。

  • エコマテリアルは、国内外で認め評価され、地場生産物の新たな市場がキューバや他国でも誕生している。

  • 構造資材調査開発センターの科学・技術の専門知識は、地元の知恵に反映され、大学カリキュラムを含め、あらゆる教育レベルで組み込まれている。


その革新的な面


  • エコマテリアル製造のための一連の健全な適正技術の開発は、連続して統合されたイノベーションのプロセスによって支えられ、基礎研究と応用研究、機械開発、製造、販売、ポストセールスサービスを結び付けている。

  • エコマテリアルを製造するワークショップでの使用が成功し、分散型のやり方で建築素材が大規模に生産された事実は、新たなアプローチやエコマテリアルの現地生産によって外貨のコストを削減する代替手段があることを示した。

  • 住宅改善のための分散型マネジメント・モデルは、その実施で大成功をおさめ、コミュニティから幅広く受け入れられた。アプローチが適用されたムニシピオは開発のためのその地元戦略にそれを組み入れている。

  • キューバはこの過程で「技術輸出業者」となり、エコマテリアルの製造のための様々な技術で、主にラテンアメリカの国々から毎月約50件の問い合せを受けている。

環境的な持続性


  • 極めて少ないエネルギー投入量により資材が生産され、最小の輸送経費でコミュニティで直接売られている。

  • プロジェクトに導入された主要資材のひとつ、オルターナティブ・バインダーCP-40はポルトランドセメントよりエネルギーの必要量が少なく、CO2やSO2の放出量も少ない。

  • ほとんどの中米諸国ではポルトランドセメントを製造するのに5~7MJ/kgのエネルギーをかけている、石灰岩を原料とするエネルギーは2.8MJ/kgの範囲とされ、この半分以下でかなりの省エネとなっている。

  • 資材が地元生産されていることから、遠距離からの製品輸送と関連した輸送コストのほとんどが省け、結果として、エネルギーや燃料の節約に貢献している。

  • 建築素材の製造上の省エネ。技術が労働集約的で、エネルギー使用を最適化するよう機械がデザインされていることから、エコマテリアルは工業的な原料よりも必要とされるエネルギーが少ない。

  • 代替燃料を使用した粘土レンガの省エネ生産は二酸化炭素の発生量が少ない。建築素材製造に、サトウキビのわらの灰などの潜在的に有害な廃棄物資材のリサイクルは、環境を保護して、農工業プロセスをより持続可能にする実行可能な代案を提示している。

資金面での持続性


  • 機関とプロジェクト基金は様々なドナーから2012年までは確保されている。プロジェクトは、中央政府から全面的に支援され、たとえ2012年までにキューバの政治事情が変化したとしても、建設資材の現場生産に対する国の補助金が減ることはありえそうもない。

  • 構造資材調査開発センターによって開発されたローカル生産システムは、自分で維持するようデザインされており、これまでに確立されたワークショップは財政的な持続性を示した。

  • 現在、19の新たな建築素材のワークショップがキューバでは商業活動中で、合計では約200もの新たな雇用が直接創出され、石工や大工といった多くの間接的な仕事も生み出され、ローカルな建設市場を後押している。

  • プロジェクトの主要目的のひとつは、建築材料を地元住民により手頃でアクセスしやすくすることにある。

  • クレジットへのアクセスと資材の現地生産との組み合わせで、住宅改新や建設が実施できている。さもなければ、それは、資金や建築材料へのアクセス不足で妨げられたであろう。

社会的な持続性


 居住者たちは、家を建てるか、修理するか、刷新するために、自分たちで正式な相互扶助ブリガデスを結成している。このプロセスは、社会的なネットワークを強化し、地区住民間の協力の革新的なやり方をもたらし、インフォーマルな部門でさらに雇用機会を創出する一助となった。その結果、小規模なコミュニティは自分たちで地元で入手できる建築素材を作り出し、それらをローカルな市場に供給する手段を得た。実施時期の初期には、構造資材調査開発センターは新たなワークショップを定期的に訪ね、トレーニングや支援を提供し、生産が既存の品質規格を満たすことを担保し、1年後には、地元のパートナーが必要なスキルを取得し、ワークショップが自立できるようになったため、その訪問回数は定期的なものではなくなった。ハリケーンや洪水で家が破損した世帯は、特別に優先されている。その家族は、自分たちの家を修理する国の援助を待つよりも、クレジットと資材にアクセスすることで、すばやく対応できる。

 システムで導入されているやり方は、社会的な格差を減らすことを目的としている。クレジットの限度額(credit line)は、さもなければ、建築素材を購入する術が全ない非常に低所得の世帯を特に支援している。プロジェクトの受益者の30%以上はシングルマザーである。

 住宅建設やその修復用のローカルで分散型のモデルが創造されており、ローカル政府は、財源面で貢献し、全過程を管理はするが、ムニシピオでの最悪のケースを最優先させている。開発されたシステムは、自助努力の補助を通じ、家の所有者の直接参加に基づく。それは、キューバの既存のモデルよりも効率的であると判明した。

障壁


  • キューバの現在の予算制度により、外貨の資金は政府の優先度に応じて国がアクセスできるだけで、それが、ムニシピオ・レベルでのエコマテリアルの製造機械の獲得の限界となっている。外貨建てで必要な基金を提供する国際的な寄付者の貢献を通じて克服

  • 自分の住宅の改築を望む多くの低所得世帯は、必要な資材の前払い金を持っていない。全国住宅庁が提供する資金はこうしたケースを考慮していない。人民節約銀行との直接交渉を通じた克服。銀行は、住宅改築に関与する低所得世帯向けに、特別な信用限度額を発行した。

  • 生産者たちは、新技術や資材、とりわけポゾラニック・セメントには慣れ親しんでいない。過去にも同様の技術経験は、その貧しい品質管理で失敗し、製品は信用を失い、それが不十分なパフォーマンスと関連していた。コミュニティ内でのトレーニングと支援作業を通じた克服

  • キューバ高等教育省のガチガチの制度が運営上や構造的な規制を課している。日常作業での多くの創造性を通じた克服


学ばれた教訓


  • 建築素材の地場生産のための、しっかりして効率的なインフラは、外部資源からの独立を可能とする。

  • ローカル政府は新たに創設された製造設備の財政的で社会的な存続に寄付する方策を求めなければならない。そして、国民も持続可能な住宅改善プログラムに活発に参加しなければならない。

  • 構造資材調査開発センターによって開発・実行された技術は、経済的にもエコ的にも適切であると判明した。資材の高基準と同じく、現地生産で達成された膨大な輸送削減から、それらは建築素材の小規模生産にとって望ましい選択である。

  • 主体が多様なだけに、コーディネートが実現に決定的で、幅広く認められることにつながり、プロジェクトを全国レベルに拡大した。プロジェクトが目標とするグループに直接メリットのある融資計画を通した財源確保のためには、計画と実現段階に銀行を含めることが特に重要だった。

持続性


 SDCとNGO ソフォニアス・グループによって開発された計画、実施、モニタリング、評価システム(PIME)が、モニター用ツールとして使われ、中間的評価は、各ワークショップが実施されているムニシピオでの地元のパートナーによってなされ、フェーズIを終えた後の最終評価に続いた。

 このアプローチはそれ以外のムニシピオや隣接州でも実施され成功をおさめている。第二段階のプロジェクト用の資金は確保されており、それは今後5年間の技術のさらなる拡大・普及、とりわけ、天災で被災する地区でのものにかかわっている。

 このシステムは州のローカル政府内で評判を得ており、ローカル政府は、アプローチのローカルな移転で重要な役割を果たしている。様々なレベルでの様々な政府機関は、それ自身の資金でイニシアチブを模写することに関心を示した。

 UNDP、CIDA、SDC他の国際援助機関と同様にサンクティ・スピリトゥス、サンチアゴ・デ・クーバ、ピナル・デル・リオ、ハバナのローカル政府は、それ以外のムニシピオにも経験を模写するための手を打っている。

 ハリケーン・ミシェルで引き起こされた問題への対応手段として、2002年に国家住宅庁はマタンサス州での運営するようエコマテリアルのネットワークを立ち上げた。60万ブロック以上が4つのワークショップで製造された。住宅庁は、国内の他の地区でもさらにアプローチを広めるため構造資材調査開発センターと力を合わせている。

 プロジェクトは現在、5州の19のムニシピオで活動しており、次の5年で数千戸が地元生産されたエコマテリアルを用いることで、建築・修復されると期待されている。

 EcoSurのネットワークを通して、このアプローチは他国にも普及・移転している。エコマテリアル・ワークショップは、ニカラグアとホンジュラスで運営されている。メキシコのモレリア州の知事は2005年に州で15のワークショップをたちあげるよう要請した。現在、ワークショップはさらに、エクアドル、グアテマラ、コロンビア、ナイジェリア、モザンビーク、メキシコでも運営中である。



 Ecomaterials in Social Housing Projects Winner 2007, BSHF.