
利益のあがるビジネスを創出することは別としても、SALAグループは、すべてのオーストラリア人が、より環境面で責任を果たせる住宅を建設し、より持続可能な暮らしを送ることを奨励することを目指している。
この目標を達成するには、ある国で時間を過ごすことが必要だとのアイデアがサンディと私の心に浮かんだのは2006年中頃だった。そこは、SALA.にとって、ほんとうに聖杯である持続可能なライフスタイルの達成に最も近い国なのだ。12月、サンディと私と子どもたちは、持続性にアプローチするコミュニティが何なのかを自分の目で確かめるべく、キューバを旅した。
革命以来、米国がキューバへの経済封鎖を行ったため、国は以前の貿易相手国からの製品輸入で苦境に陥った。そこで、彼らは、技術と資金援助、資材供給でソ連に大きく依存するようになったのだが、不幸なことに、このソ連の崩壊で、キューバの供給チェーンは断ち切られてしまう。彼らは、他の国々から切り離されていることがわかった。これが、キューバ人たちが「スペシャル・ピリオド」と呼ぶ時期だ。
スペシャル・ピリオドの間にキューバ人たちは自分自身で食料を自給自足するようになり、別の交通手段を開発し、地元で製造される素材を用いる住宅モデルも開発しており、世界のほとんどが匹敵しえないコミュニティの感覚も作り出している。
今、OECDによれば、キューバは世界で先進国の生活水準がある唯一の国だ。そして、環境的なフットプリントもある。もし、全世界により採用されるなら、私たちはちょうど一個の地球の資源で暮らしを維持できるだろう。だが、もし、全世界がオーストラリア人のように暮らすなら、その暮らしを維持するには3.5個の地球が必要となるのだ。
政治家、産業界のリーダー、そして世界中のコミュニティは、ピーク・オイルの現象を受け入れ、計画を立て始めている。私たちは、廉価な石油や石油製品の供給なしで、キューバ人たちがいかに暮らしたのかを特に目にしたかった。
スペシャル・ピリオドの間には、肥料や殺虫剤の供給がほとんど途絶え、自分たちを養うため、キューバ人たちは、化学合成農薬や化学肥料を用いずに食料を生産する方法を見出す必要があった。興味深いことに、彼らは国に食料を供給する有機果樹や野菜を生産する方法を開発するため、オーストラリアのパーマカルチャーの専門家に頼ったのだ。オーストラリア保全財団の支援で、オーストラリア人たちは、いまキューバの食料ニーズのほとんどを提供する農業者たちの分散化し、個人的に運営されているネットワークを創設するのを助けた。その全体としてのエコロジカル・フットプリントの規模を大きく減らし、すべてのキューバ人たちはいま有機的な青果物を食べている。。
1988年以前は、キューバの住宅はプレハブを中心に生産されてきた。これは、ソ連からの指導で建設省により自動化された過程だった。ソ連崩壊とスペシャル・ピリオドでの石油不足の結果、長距離輸送された中央集中化されたプレハブ住宅の生産はもはや実行可能でないことを意味した。
私たちは、キューバで住宅問題の解決策を見出すことにかかわった人を探しはじめ、調査したところ、サンタ・クララ大学の構造資材調査開発センターのホセ・フェルナンド・マルティレナ・エルナンデス教授にゆきついた。
1980年代後半、エルナンデス教授は、住宅セクターの輸送への依存を減らす必要性を認め、地元の労働力や資材を用い、コスト効率が良く、長持ちし、地元コミュニティでて建てられるシステムや製品の開発をはじめた。
教授の研究は、彼をイタリアへと導く。その地で教授が注目したのはローマ時代の建物だった。そのいくつかは数千年を経ていたが、今日用いられているのとは異なる種類のコンクリートで作られており、それらはいまだに立っていたのだ。
いま、全世界で用いられている通常のポルトランド・セメントは、まさにそうではなく、とりわけ、厳しい環境下ではローマの建物のように長持ちもしない。
ローマのセメント生産方法に立ち、構造資材調査開発センターのエルナンデス教授やそのチームは、コンクリート製の建物を生産するのに用いるCP-40と称されるセメントを開発した。
センターによれば、CP-40は、従来のポルトランド・セメントよりもずっと長持ちし、ポルトランド・セメント製品の半分しか二酸化炭素も放出せず、半分のエネルギーででき、コスト効率もよい。
以前のニュースレターから、SALAは環境への影響が甚大であることから、セメントを使うことに反対してきた。そこで、この領域での教授の仕事は、私たちに本物の目を開かせた。SALAはこの技術やその可能性を評価することに多くの時を費やすだろう。
20世紀の前半に、米国は農業のための巨大な植生をキューバから剥ぎ取ってしまった。エルナンデス教授によれば、このインパクトが以前に多雨雨林であった国、主にグアンタナモ近郊の東部地域が砂漠に変貌した。植生の破壊は、降雨パターンに影響し、深刻な土壌浸食を引き起こし、この土地のほとんどを役に立たなくした。
スイスの開発協力の資金援助で、構造資材調査開発センターのチームは、竹を用いた森林再生プログラムを実施している。竹は、キューバの熱帯気候の下で急速に生い茂り、非常に頑丈だが、ローカルな建築資材産業を創設するのに用いられている。
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| 竹の加工工場 |
地元工場は、ローカルな住宅を建築するため、層状構造の角材、パネル、床張り材を生産している。きわめてシンプルな機械、毒性のない接着剤と病害虫処理を用い、ローカルなコミュニティは、いま非常にコスト効率がよいやり方で、梁や内装材を生産できているのだ。
費用対効果の優れたエコ的な建築素材を生産すること同じく、センターのチームが過去15~20年かけて開発してきたシステムは、必要とされる雇用やそれが運営されるコミュニティに社会的な相互作用を生み出すという付加価値も生んでいる。2007年に国連の世界ハビタットデー賞を受賞したエルナンデス教授の社会的な住宅の局面での仕事はそれだった。
SALAグループは、オーストラリア全域の僻地のコミュニティに、このタイプの複製の可能性が多くあると見ている。そこでは、大量生産、プレハブ建築が現場の状況には値段が高すぎ、不適当であることが判明しているからだ。
世界の様々な地域から役立つアイデアや技術の細流からSALAの住宅モデルの一部は発展してきている。だが、キューバで時を過ごすと、この細流は情報の洪水へと変わった。将来、SALAの住宅が、このキューバの訪問に大いに影響されることに疑問の余地はない。
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