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エコ素材、災害、連帯



2008年11月29日 オーストラリア


 サンタ・クララ大学の構造資材調査開発センターのフェルナンド・マルティレナ博士は、最近、オーストラリアのグリーン・開発フォーラムが組織した多くのミーティングで講演するためオーストラリアを訪れた。

 2007年に、マルティレナ博士のチームは住宅での持続可能な開発と革新を促進する独立した研究組織、「建築・社会的住居財団」から「世界住宅賞」を受賞した。

 グリーン・レフト・ウィークリーは、持続可能な建築資材を用いることで、構造資材調査開発センターが、キューバの住宅建築でどのような支援をしているのかを目にするため、博士を追ってみた。

 博士はキューバに対する米国の経済封鎖によって、貿易上ではほぼ完全にソ連に依存することを強いられていたと説明する。だが、ソ連崩壊でキューバは、その輸入石油の半分と多くの輸入農産物を失う。

 キューバの原材料の86%と機械の80%はソ連から来ていたため、経済危機は住宅や工事にも大きく影響した。その建築は、遠距離輸送されるプレハブ建築資材の機械化された大規模生産に基づいていた。

 マルティレナ博士は、ソ連が崩壊以前には、エネルギーもかけられアクセスもできたと語る。

「いまやエネルギーがなく、資金も使い果たしたため、私たちは解決策を模索しなければならなかったのです。私たちの解決策は、外からの資源に依存せずに、地元の環境でローカルな開発をすることでした」と博士は説明する。

 博士の研究所は以前は人工衛星の科学技術等に重点を置いていたのだが、ソ連崩壊に引き続く「特別な期間」でもたらされた緊急課題の解決に向けて方向転換する。

 構造資材調査開発センターの仕事を通じ、小規模で地元での住宅生産で用いるための多くの「エコマテリアル」を開発できるだろう。

 開発されたエコマテリアルには、「リメ・ボザラーナ・セメント」と称されるサトウキビの茎の焼却灰から作られた接合剤(binder)を用いるセメントがある。それは、ふつうのセメントを生産するより二酸化炭素の排出量が半分ほとだ。

 軽量だが、頑丈なマイクロ・コンクリートの屋根瓦も開発されている。低エネルギーの粘土レンガはその燃料にバイオ廃棄物を使用し、層状に張り合わせた(laminated)竹を裏に張る。

 マルティレナ博士は「とりわけ、キューバでは輸送が大きな役割を果たす」と指摘する。サンチアゴ・デ・クーバで生産したタイルを道路で1000kmも遠方に輸送するかもしれない。

「ですから、私たちがやっていることはまず第一に分散型のやり方でローカルに働くことで輸送を最小限度にとどめることなのです。様々なやり方で廃棄物のリサイクルを奨励していますから、私たちは、pozzalineとソーダを用いることで廃棄物をリサイクルし、環境を保全しようとしています。基本的に、私たちのアプローチはボトムアップです」と博士は説明する。

「私たちは15年前にコミュニティに入りましたが、そこでは建築資材を必要としていて、それ以外には選択肢がまったくありませんでした。私たちは技術の実験場で遊びためにコミュニティを使いました。ですが、同時に私たちは家を建て、コミュニティのために貢献していたのです。私たちは人々をトレーニングし、彼らは生産を組織化しました。それはローカル政府とのパートナーシップです。というのも、彼らには私たちに支払うための資金はありませんが、資源にはアクセスできたからです。お金がありませんが、リソースに近づく手段を持っているので、私たちはその地区でワークショップを立ち上げ、ローカル政府が私たちが生産するのに必要なすべての資材を供給しました。それは極めて分散化されたやり方で、すべてが組織されています。各家庭はムニシピオと契約します。彼らは資金がないので、ローンを得なければなりません。そこで、私たちは銀行に働きかけ、ローンを申請するやり方を教えます。ですが、ローンの利率は年に2~3%ととても低く、私たちは彼らに材料を提供し、彼らはローンを借りて、クレジットを得て、それで家を建てられるのです。

 私たちは4つのムニシピオから始め、今では26のムニシピオでやっていますが、ハリケーンの直後にはそれが40ムニシピオまで飛躍しました。今では、さらにまた20のムニシピオからのオーダーがあります。キューバには168のムニシピオがありますから、今、私たちのアプローチを半分のムニシピオで使うように目指しています」

 マルティレナ博士は、キューバにおける有機都市農業の拡大がどれほど重要な役割を果たしたかについても説明した。

「ムニシピオのレベルでは、住宅よりもむしろ、私は開発について話したいと思います。開発はすべてを統合します。誰かに家を提供すれば、彼らに仕事も提供しなければなりません。さもなければ、彼らは移動してしまうでしょう。また、彼らのための食料も確保しなければなりません。オルターナティブについて考えなければなりませんから、有機農法は重要です。健康のため、教育のため、食料のため。すべては同じで、すべてが結びついています。ですから、キューバでは、本当にローカルな開発戦略と住宅とを切り離しません。私たちはホーリスティックなアプローチをとっています。これがムニシピオが私たちのアプローチのコアである理由なのです」

 最近、マルティレナ博士の研究チームは、今年キューバに襲来した三度のハリケーン、グスタフ、イケ、パロマで引き起こされた危機に対応を迫られている。キューバは世界的に知られるハリケーン対応システムのおかげで、7人しか命を落とさなかった。だが、100億米ドルの被害を受け、50万戸以上が完全か部分的に破壊されている状態だ。

 政府がいかに危機に対応したかを問いかけると、マルティレナ博士は、彼らはなすことができるベストを尽くして支援したが、再建に必要な資材が不足していたと述べる。

「一方で、迅速な成果をもたらす決定をしなければなりませんから、それは本当に複雑です。とはいえ、早急な問題への対応は必ずしもベストではありません。彼らが現在したことは200万立方のcorrigated屋根を分配することです。ハリケーンで吹き飛ばされた同じタイプの屋根です。彼らは再びそれらを人民に提供していますが、それは、現在の問題は解決していても、次のハリケーンがある1年後には同じことが起きることを意味します。ですから、キューバではハリケーンに安全な家を建てなければなりませんが、これはとても複雑です。ハリケーンに吹き飛ばされないためにはとても重い屋根が必要なのです。重い屋根を持つ唯一の方法は、フラット・スラブ(flat slab)を持つことで、完全なスラブにはポートランド・セメント、鉄鋼が必要で、いずれもとても高額です。こうした住宅を建てるには、キューバの生産能力の3倍が必要で、この経費を得る方策は皆無です。
 災害の余波では、緊急活動も必要です。多くが混沌としていて、人々は何をしたらよいかがわかりません。人々は恐れています。家が倒壊し、全システムが崩壊し、何も機能せず、電気も電話も何もないのです。そこで、最も被災した8のムニシピオで、私たちは協同組合にワークショップを立ち上げました。私たちの歴史で、3週間未満で完全稼働する8つものワークショップを持ったのは新記録です」

 マルティレナ博士は、1959年の革命がいかに協力へ道を切り開いたのか、そして、連帯感がキューバの持続可能なコミュニティ指向のアプローチを可能にしたかを説明する。

「キューバ革命の目標と夢は‘新しい人間'を創造することでした。これはチェ・ゲバラが論じたことです。そして、私たちはこの新しき人間を創造することに失敗しましたが、高いレベルの連帯感を持つ人々を生み出すことはできました。これはリアルな達成です。私はこうした災害激甚地を移動していますが、すべてを失った人々が他のものを助けているのを目にできます。これは、他のものを敵とはみなさず、友人とみなす状況の結果です。それはとても美しいものなのです」


 Trent Hawkins, Cuba: Eco-materials, hurricanes and solidarity, Green Left Weekly, 29 November 2008.