2009年1月2日 本文へジャンプ


キューバの住宅問題



 マリア・ジュリアさん(仮名)は、やけっぱちになっている。彼女は夫の祖父母が所有するハバナのアパートで暮らしている。この7年、彼女と夫は、2人の子どもと寝室を共にしているのだが、夫との関係が、この長い暮らしのプレッシャーにもたないのではないかと恐れている。

キューバの住宅ストックは、不十分で修理も不十分だ
 家族のためにハバナに別のアパートを確保し、その関係を救うにはただひとつのチャンスしかないと言う。それは、ドラスチックなものだ。

「唯一の選択肢は夫と離婚して、アパートの法的な所有権を持つ男性と結婚することです。私は彼につくすつもりです。そして、2年後に彼は私への財産に署名するでしょう。そうしたら、離婚して、再び夫と結婚するのです」

 この複雑な取引には1万ドル(6,800ポンド)がかかるだろう。だが、それがキューバでの運命だし、最低の率なのだ。米国の姉妹が資金を送ってくれ、彼女は現金でハバナのどこかに隠している。

 アパートを買おうとするマリア・ジュリアさんの計画は違法だ。それが、私たちが彼女の本名を明かせない理由だ。キューバでは、土地や家屋を売る権利を持つのは国だけで、個人的な購買者や不動産屋は、もし捕まれば国にその家屋すべてを押収されてしまうだろう。

交換店

 2008年に3度のハリケーンが広範囲に及ぶ破壊をもたらす以前から、既に50万戸以上の家屋が不足していた。全体的にいって、住宅ストックは荒廃している。キューバ経済は不安定で、政府はその一部が米国の経済封鎖の影響のためだと言うのだが、新たな建築プログラムが需要を満たせないことを意味する。だから、闇市場がはびこる。

「それは、最も大きい。そう、本当にキューバで最大のものです」

パセオ・デル・プラドで交換物件を探す

 キューバ経済研究センターのエコノミスト、ホアン・トリアナ氏は言う。氏は、現金支払での闇市場に価値があるとは憶測したくはないのだが、彼も困っている。

「誰もが途方に暮れています。エコノミストである私にとっても、それは苛立たしい。もし、家屋を購入したければ、闇市場を使わなければならないのです」

 キューバ人は資産を売り買いすることはできないが、交換することは許可されている。土曜日の朝には交換物件を見つけようと何百人もの人々が中央ハバナのパセオ・デル・プラドに集まる。

 公式には、金銭のやりとりはない。だが、実際には、大きな資産と小さな資産を交換するには数1,000ドルが支払われることを意味する。

 だが、マリア・ジュリアさんには、交換する資産がない。彼女が暮らすアパートの法的所有権を持っているのは、夫の両親だ。だから、事情を変えるために彼女が目にできる唯一の方法は偽装結婚しかないのだ。
マリア・ジュリアさんは、新しい家を見つけるため「corredor」として知られる違法な仲買人を使った。彼女は働いているので忙しく、自分でやる時間が全くない。もし、取引が終われば、彼女は彼に500ドルを支払うことだろう。

資産のチェーン

 取引は時間がかかることだろう。というのも、彼女がハバナで雇った男性も自分の新しい家を確保中だからだ。

「彼には、サンチアゴ・デ・クーバにガールフレンドがいます。彼らは買いたい物件をサンティアゴのどこかで探しています」

 そして、彼のガールフレンドも、その資産を得るために80代の高齢の男性と結婚しなければならないだろう。

「彼らは私が与えるつもりのお金を老人にも支払わなければならないでしょう。それは本当に長いチェーンです」

 キューバは革命50周年を迎えた。フィデル・カストロ政権の初期時代の最も一般的な運動のひとつは住宅改革だった。多くの住宅所有権がもたらされ、家賃には上限がかされた。複数の財産所有が禁止され、キューバ人は、いまだに彼らが暮らす街での一軒家と農村での別の一軒しか法的に所有できない。だが、性急な政策から50年。楽観から始まったものの、いま住宅問題はキューバ人たちがあげる苦情リストのトップのひとつだ。

 住宅庁のホアン・マルコス・メンデス次官は、大きな難題があることを否定しない。だが、彼は、住宅の民営化には答えがないと主張する。

「住宅は社会的資産です。そこから利益をあげることが、人々にとって正しいことだとは思いません。もちろん、いまだに私どもがこうした規制を持つ理由を理解していない人もいます。そして、彼らは違法行為に手をつけようとします。米国の経済封鎖には深刻な影響があります。ですが、私どもの建築プログラムを続けることが唯一可能な状況改善策です。キューバには問題があるかもしれませんが、私どもは人々を橋の下では眠らせません」

 これは本当だ。とはいえ、住宅不足の影響は多くの人々の家庭生活を歪めている。いま、マリア・ジュリアさんは、彼女が始めた取引が彼女の夫との関係をさらに気難しくするのではと心配している。

「アイデアとして偽装結婚をしなければならない事実を認めるとしても、実際にそれをするかは全く別のものです。私や子どもたちのための住宅問題が解決されるとしても、夫との関係が続かないのではないかと心配なんです」


 Linda Pressly, Cuba's black market housing boom, BBC Radio, 2 January 2009.