2004年7月28日

グリーン化するベネズエラ

権威主義とされるチャベス、チャベスへの反対ストライキ、デモンストレーション、そして、リコール国民投票といった大騒ぎから、ベネズエラでは建設的なことが何らなされておらず、政治的な中傷から国力は完全に吸収されてしまっていると思うだろう。まさに、企業メディアも、そう思わせようとさせている。

 だが、ZnetのようなオルターナティブのHPに行って欲しい。Venezuelanalysis.comや Rebelioでは、識字力向上キャンペーン、キューバ人医師による貧しい地区でのヘルス・クリニック、コミュニティに根ざした住宅プログラム、そして、農地改革についてのリポートを読むことができるだろう。いま、ベネズエラでは、ニカラグアのサンディニスタ(Sandinista)革命の初期に見られた時以来、ラテンアメリカではかって目にされていないような社会変革が進んでいるのだ。

■農業協同組合

 この15カ月、政府は、貧しい小作農たちや土地なし労働者たちに、不耕作の私有地や公有地を再分配しはじめている。いくつかのラテンアメリカの国で、何十年も以前に実施された農業改革プログラムが再び繰り返され、既に約220万ヘクタールが協同組合に組織化された11万6000世帯に分配されているのだ。今日のグローバル化された世界では、協同組合や集合農業の考え方は、時代遅れで非効率であるとして打ち捨てられている。

 メキシコのような国では、自由市場化や民間アグリビジネスによって、長く時を経て築かれた農村協同組合が解体され、束縛を受けない農業セクターの道が開かれている。だが、ベネズエラだけが際立っている。その農業改革は、ただ、農民たちの土地所有熱を満たし、貧困を減らすことをはるかに超えている。改革は、可能な限り有機農業に基づく自給自足、持続可能性や内発的発展に向けたまったく新たな社会経済モデルのマイル・ストーンとして意図されているのだ。

■官僚制度との戦い

 チャグアラマル(Chaguaramal)は、熱帯林に囲まれ中に新たに耕作された土地で、カリブ海から数キロ内陸部に入ったとても貧しい孤立集落である。ここで、144家族が、今、SARAO(自己組織化農村協会)を創設することで恩恵を受けている。まず、計画開発省は、土地、資金、設備を提供し、協同組合をベースに近郊村からの人民たちを新たなコミュニティに組織化し始めた。だが、当初は、プロジェクトの実施を省が官僚的公社、CORPOCENTROにゆだねており、公社は住民たちに相談することもなく、技術的な決定を下していた。

 元々意図されたコミュニティの自己組織化の特性をチャグアラマルが呈しはじめたのは、INTI(国家土地局= National Land Institute)が、プロジェクトへの責任を引き継いだ2003年8月だった。

 「我々はコミュニティに耳を傾け、彼らにドアを開きました。彼ら自身のプロジェクトと夢を暮らしに持ち込めるようにです」

 現在、SARAOSを担当するINTIの職員、シルビア・ビダル(Silvia Vidal)さんは言う。新たな居住地 (asentamiento)は、資材と技術支援だけが州により供給され、居住者自身によって建てられた魅力的な家からなり、注意深く耕作された菜園、学校、ヘルス・センターと保育センターからなる。

 様々な作物が家畜や魚と同じく生産されており、私たちは美味しい魚のバーベキューをご馳走になった。そして、コミュニティがどのように自分たちの堆肥を準備し、廃棄物のほとんどをすでにリサイクルしているのかを目にした。

「私はSARAOのメンバーで2002年4月15日に参加しました。私の仕事はミミズ堆肥づくりです。それが、有機肥料を与えてくれます。ですから化学肥料は使いません。最初はCORPOCENTROのもと、彼らは男性に対してだけ注意を払い、私たち女性は家にいて家事をするだけでした。ですが、INTIがやってくると物事は変わりました。マチスモ(男らしさの誇示)は、まだありますが、私たちは徐々にそれを取り除いています。このミミズ堆肥プロジェクトは、女性たちだけによって運営されています。今では、男性が家事の手伝いをし、私たちはそれにも責任があるのです…」

 ゲリプサ・ロハス(Gelipsa Rojas)さんはそう語る。

 チャグアラマルは、ミランダ(Miranda)州にあり、知事がどう猛にチャベスやその革命に反対しているため、新たな居住地で達成されたものごとのすべては、州政府による系統的な妨害にもかかわらず、行われた。ブエノス・アイレスと呼ばれる地区内の小村は、最初はプロジェクトに参加していなかった。「人々のためには何もしない。キューバの奴隷制度の原理で運営されている」と口にし、協同組合へ転換する人々に対し、反対する野党勢力だった。だが、いまでは、ブエノス・アイレスからの数家族がSARAOに組み入れられ、誰もが利益を見ている。

■内陸部の開発

 沿岸の山から何百キロも離れ、llanos大草原の内陸部の蒸し暑い熱帯平野で、私たちは、人々や資源を沿岸部の都市から遠くに動かすことを目指したチャベス政権の目的を反映する主要な開発計画を訪ねた。

 エゼキエル・サモラ(Ezequiel Zamora)農工業砂糖コンプレックス(CAAEZ)は、ラテンアメリカのコラボレーションへの願望を反映し、キューバの技術者とブラジルの設備で、現在建設中されている最先端の精糖工場の周囲に集中している。コンプレックスとそれと関連した農業協同組合は、砂糖だけではなく、自給自足を促進するため、米、キャッサバ、その他の作物も生産することだろう。ベネズエラには、豊かな農地があるにもかかわらず、慢性的に石油に依存し、食料の70%を輸入している。

 1975年頃には、この地域は砂糖生産には理想的なところとされた。ここでのサトウキビの収量は、キューバやブラジルのものよりも何倍も高く、第一級の潅漑システムが構築されたのだ。だが、その後、前政権の不正のため、打ち捨てられていた。

 1990年代に、コスタ・リカの投資者が、地元農民と協力しサトウキビを生産し、かつ、製糖工場を建造を進める融資を行なうことを申し出る。だが、結果として、プロジェクトは放棄され、資金を奪い、農民たちは傾斜地の中に取り残された。

 「私は、サトウキビを蒔き、最初の収穫を9年待った人々のうちの一人だ。そして、その紳士のためにサトウキビを収穫できなかった」

 関連する協同組合の一人のメンバー、フランシスコ(Francisco)は、この逃避資本の事例を糾弾する。

 だが、現在、CAAEZプロジェクトはよく進行している。1万5000人の労働者を雇う大事業で、農村地帯と同様にサトウキビ精糖業や他の工場からなる。ここでは、有機農業も支持されている。サトウキビのバガスが堆肥にされ、混合農業協同組合に供給されるだろう。

 識字力向上プログラム、ロビンソン・ミッション(Robinson Mission)やキューバ人の医師による診療所を備えた地区ミッション(Into the Neighbourhoods)と新たな社会的プログラムのすべては、ここでも実施されている。

■カラカスのグリーン化

 だが、ベネズエラのグリーン化は、農村に限定されているわけではない。カラカスの中心部、まさにヒルトン・ホテル真後ろで、遊休地がオルガノポニコに転換され、都市市場向けにレタス、トマト、と印象的な様々な作物品種を有機農業で集約栽培している。近隣の貧民街の失業者たちはここで仕事を与えられ、農業専門家として訓練されている。

 こうした都市農業は、ベネズエラ各地の都市で芽生え、自給自足の目的に向け貢献している。プロジェクトが始まったとき、「ここで食料を生産するのはとても無理だし、できたとしても経済的ではない」と反対派は嘲った。だが、今では、需要がとても高く、簡単に買えないので、手に入らないときには、裕福な近隣の人々も農産物を買っている。

■新たな社会経済モデル

 農業改革、協同組合型企業、有機農法、地元資源の活用。これらは、いずれもベネズエラのまったく新たな社会経済モデルの特徴である。このモデルは、ほとんど翻訳できない言葉だが、ブエルバン・カラス・ミッション(Vuelvan Caras?Mission)と呼ばれるプログラムにまとめあげられ、そこでは、農業、産業、商業協同組合が雇用創出を行い、トレーニングを生み出すよう、石油からの収益で得られた基金と技術支援の形で、政府からの援助を提供しているその他の他のプログラムやミッションをコーディネートしようとしている。それは、人民参加のもとで、ボトムアップからの地方のイニシアチブ、自給自足、持続性、そして、内発的発展を奨励している。女性、黒人、先住民たちがリードする役割も明らかに推進されている。このニューモデルは、発展するまでには年数がかかるだろうが、それは、既に進行中であり、大きな情熱を持って推進されている。いくつかの主要産業の可能な国有化を除くことはないが、グローバル化している資本主義と伝統的な国家社会主義の両方に挑戦する方向を指し示している。それがまた、アメリカのためのボリバリアン・オルターナティブ(スペインの頭文字でALBA)への基礎でもある。ベネズエラは、米国が後援する米州自由貿易地域構想ALCAへの進歩的なオルターナティブとして、アメリカ大陸にそれを提案している。これが、米国政府がチャベスを嫌う理由だ。チャベスの革命的な修辞学ではなく、民主主義への脅威になるからでもなく、ベネズエラの過程が、半球のために米国プランへの本当の代替手段を提供しているからなのだ。

デヴィッド・レイビー(David Raby)氏は、リバプール大学ラテンアメリカの研究所の研究員である。

(ベネズエラ分析のHPの記事)
  David Raby,The Greening of Venezuela,2004.