2001年

花開く、ハバナの有機農場

■軍事力の非日常的な適用

 有機野菜協同組合が、かつては牛の放牧にも適さなかった乾いた石まじりの土地で緑を育てている。荒れ果てた土地柄にもかかわらず、堆肥化した有機物で肥沃な土壌が高くしたベットで作られている。60mの地下から水を汲み上げ、レタスが多いが、ケール、タマネギ、様々なハーブもある。暑さはとても激しいが、点滴潅漑が作物を冷やし、健康を保っている。香りのあるハーブと防虫用の樹木が、天然の殺虫剤を提供している。苗床は、長時間屈む労働で、手によって細心に耕され、雑草は一つも見られない。

 環境や健康への関心、そして、90年代初期の経済危機が、有機農業の動機づけとなっている。人工の化学肥料や殺虫剤は、いまでは手がでないほど高価だ。

 有機野菜農場は、軍によって始められている。軍は深刻な予算削減に直面し、経済的な経営をはじめたのだ。この農場は、国からの機材や資材のローンを受け、自主的な協同組合として設立された。生産への出費と基本賃金を支払った残りの純益の半分は借金の返済に、 残りの半分は組合員の間で分配されている。

 この協同組合農場は、あるベテランの退役軍人が始めた。彼は仲間を募集したが、多くが退役軍人だった。いま、18人の労働者がおり、うち2人は女性だ。農業協同組合は、不定期だが全員が参加する会議により民主的に統治され、組合長は、リコールをされることもあるが、選挙で選ばれ、8年間で再選される。

 農業技術や機械、資材の専門家もいる。組合長や技術者は、組合員と一緒に働くが、計画づくりにもっと時間を費やす。組合長は仲間同士の助けあいに貢献しない労働者を解雇する権限を持っているが、そんなことがされることはまずない。多くの者は、この協同組合農場で働くことを望んでおり、インセンティブもあるし、各自が自分の立場を保ちつつ、責任分担を果たしている。

 組合員たちが受け取るベースの賃金は少ない。専門家と組合長は20%ほど多くの給料を受け取る。利益はほぼ均等に分配されるが、専門家は5%、組合長は8%多い。ごくわずかの賃金格差は、専門的な仕事へのうわ増し時間とその専門性によって、正当化されている。革新的な労働者は、レストランを家族で訪れたり、ビーチでバケーションをしたり、他の価値あるレクリエーションによって報われる。

 仕事はとてもハードだし、収入はまことに慎ましいものだが、高いモラルがある。いつの日にか、労働者たちは、TVや自転車といった快適な物品を手に入れられることだろう。

■有機農業協同組合の成長

 買い手は、公共機関と個人の両方があるが、収穫された新鮮な生産物を買うために、協同組合に毎日やってくる。協同組合のトラックは少ししかないが、食料を近隣の市場へと運んでいる。過剰生産も浪費もなく、収穫全部のバイヤーが一貫して見つかる。この農場は、有機野菜協同組合協会のメンバーで、そこが情報のわかちあいと支援を行っているのだ。

 労働者に質の良い食べ物を提供するべく、自分の有機菜園を持っている工場もある。そして、ハバナ市政府の中央組織が、情報、トレーニングや技術を提供し、協同組合のリーダーたちはよくトレーニングに参加している。

 協同組合の成功や、それに対する消費者や行政の支援で、組合のメンバーたちは、規模拡大の可能性を求めている。農業協同組合が、生産されていない土地を使えるので、土地の入手は障害とはならない。

 さらなる資金が必要だが、それも手に入るし、利益から返済できる。ひとつの障害は、有機肥料に使うための家畜きゅう肥の利用が限られていることだ。食料を市場へと運ぶ交通手段が乏しいことも、もう一つの深刻な限界となっている。

 この協同組合が規模拡大するよりも、たぶん、新たな小規模な有機農場が成長することだろう。だが、そうであるにせよ、今日キューバでは、協同組合、有機野菜農業がトレンドになっているのだ。

(Grassroots Economic Organizingというニューズレターからの記事)
 Bill Caspary, Organic Vegetable Farms Bloom in Havana
,2001.

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