キューバは、クリストファー・コロンブスが1492年10月27日に初めて訪れ、最初の村は1512年に作られている。そして、ハバナの聖クリストファー村は、1519年11月16日に設立されている。
■都市の特性
■地理と気候
ハバナ市の広さは720.84平方キロで、キューバ全域の0.67%に相当する。熱帯気候に特徴づけられ、年間の中間気温は25°C、湿度は79%と湿潤で、年間の平均降水量は1400mmである。
■政治と行政部局
キューバは、政治上14州と中央政府が直接統治する特別区に管理上区分されている。この区分で169の市町村(ムニシピオ)とコミュニティ・レベルの政府組織である人民委員会が1498ある。ハバナ市は14州のひとつをなし、キューバの首都である。都市は15地区に区分されているが、いずれも都市とみなされている。すなわち、Plaza
de Ia Revolución、Centro Habana、Habana Vieja、 Regla、Habana del Este、Guanabacoa、San
Miguel del Padrón、Diez de Octubre、Cerro、Marianao、 La Lisa、Boyeros、Arroyo
Naranjo、Cotorroである。そして、104の人民委員会がある。
■人口
首都の人口は、2,192,321人で、全国の20%、都市人口の27%に相当する。人口の48%は男性、52%は女性で、核家族は622,035世帯であり、その多くは2~3人家族である。また、経済活動を行う年齢層は1,499,547人となっている。ハバナの人口密度は、平方キロあたり3,014人で、最も人口が多いのは、市人口の11%を占めるディエス・デ・オクトウゥブレ、9%を占めるアラヨ・ナランホ、そして、8.5%を占めるプラサ・デ・ラ・レボルシオンである。人口密度が最も高いのは、セントロ・アバナの45,093
人/ Km²、アバナ・ビエハ21,774 人/ Km²、ディエス・デ・オクトウゥブレ19,480 人/ Km²となっている。
ハバナは、国の社会・経済的中心で、以下の統計からも社会主義体制でハバナが恩恵を受けていることがわかるだろう。市には14,007人の医師がおり、うち6,160人は1,565人の住民ごとにいるファミリー・ドクターである。例えば、894人の住民ごとにgastrologistがいる。さらに、6~14歳の96.5%は教育を受け、首都の住宅の80%はその住民が所有している。
■経済部門
首都は全国工業生産の34%を産み出している。主要産業と社会活動は、鋼業、技術産業、食品産業、軽工業、製薬業、発電、飲料、タバコ、観光業、教育、建設、ヘルスと研究となっている。商業生産は1998年に1.5%増え、商業生産と関連した生産性は、1997年よりも2.5%以上増加した。同様に、小規模な商業活動も同期間にその生産力を2.7%増加させた。
■都市農業
□都市農業の出現
キューバの都市農業のルーツは、サンタクララ・デ・アシス(Santa Clara de Asis)修道院と教会が最初に村に構築された1638年までさかのぼることができる。そこには、果樹園や野菜生産用地が設けられていた。
革命政権が初めて制定した法律は、各市民に、教育、健康、スポーツ、文化、住宅の権利、そして、人民の土地耕作権を与えるものだった。しかし、1990年初頭の東欧諸国における共産主義体制の崩壊で、キューバは市場を奪われる。こうした諸国との経済的な結びつきが深かっただけに、キューバ経済は大きく修正されることとなる。事実、キューバの貿易の80%は旧共産主義諸国とのものだった。1993~94年に計画されていた農業のための資材供給は67%も減少し、家畜飼料、化学資材、ガソリン、部品不足により、農業機械、輸送、潅漑システムが麻痺し、家禽類生産、養豚、米生産の開発計画を調節すること強いられることになった。
キューバは、農業科学技術の開発に多くの資源や人間をわりあててきた。キューバには33の農業研究センターがあり、その19が直接農業省の管理下におかれ、うち11はハバナにあり、農業科学の発展や導入支援の組織をなしている。
それまでの市場供給が突然喪失し、米国が経済封鎖を強化したことから、キューバは食料問題に直面し、その結果、政府は従来とは異なる食料供給プログラムを開発することを求められることになる。都市化されていたハバナも、この模索から免れることはなかった。そして、この十年、ハバナは生鮮野菜や果物需要の一部を生産するために大変な努力に取り組み始めた。それらはごく最近までは、そのほとんどが他州から供給されていたものだったのである。この目的のため、農業プログラムが策定され、ありとあらゆる利用可能なスペースに園芸生産を導入することを目指した。現在では、市の面積は72084
Km²だが、うち29938 Km²と41%を農業が占め、これは、キューバの全農地の0.4%に相当するものとなっている。
ハバナ農業省は、農業に適した13のムニシピオに「都市農場」を組織した。こうした農場は、耕作者グループの必要を供給するタスクに携わり、それは、CCS(クレジット・サービス協働組合)、UBPC(基礎生産単位協働組合)、AG(市民農園グループ)、OG(オルガノポニコグループ)、IOMG(集約果樹経営グループ)、そして、CSU(国営協働組合供給ユニット)である。これらのグループは、一作物や動物に特化したものから、家畜と野菜生産を複合させたものまで、生産者には範囲がわかれる。
□都市農業の概念
「都市農業とは、永続的で長期にわたる収穫を担保するため作物と家畜の多様性を最適化する目標のもとに、利用可能な全エリアの最大のポテンシャル、人間の努力、人間と作物と家畜の統合的なシステム、そして、利用可能な都市のすべてのインフラを利用することにより、都市の境界内で集約的な農法の適用を通じて食料生産をするものである」
特性:都市農業は、参加型で一般に実施されており、見出される状況下ではきわめて多様である。都市農業は低投入型の栽培を含み、農薬の使用を認めていない。水使用でもきわめて効率的で、地力、作物と家畜管理の維持と環境保護に大きな注意を払っている。都市農業は、年間を通じての様々な作物や家畜生産を進める集約的な高投入型のシステムで、その開発は、科学的な調査と共に、日々、問題解決策を模索する彼や彼女の実践や生産者の新たなアイデアや知識の能力に依存している。
■組織の分類
□市民農園耕作グループ
市民農園の耕作者が管理するコミュニティ菜園(Community orchard)は、ハバナの都市農業で最も一般的に見られる形式であり、そうした果樹園や小規模菜園は20,000以上あり、現在ではハバナの景観の一部となっている。運動に携わった多くの人々は、規定の労働時間外の時間を使い、生産できる近くの空き地を開発し始めた。耕作地は小規模でパティオを含み、平均の広さは1200m²である。この運動により、都市農業が食料供給の代替源になりうることがわかり始めたため、市政府は、地元住民が家族の自給用に農産物を生産したり、地域コミュニティ内で販売できる機会を得られるよう生産地を利用できる組織づくりを整えた。
こうした土地は、そのほとんどが、住宅やその他の建築あるいは、一時的な廃棄物処理場として予定されていたものである。今は、こうした土地の価値は、食料生産に与えられており、こうしたエリアは、その固有の理由や美しい緑のコミュニティ・スペースとしての価値を持つことから地元住民からも尊重、保護されている。
1994年に、コミュニティ・イニシアチブへの勢いを強化し与える意図で、ハバナの都市農業州グループを組織するための決定が、農業省と州政府によってなされる。コミュニティ果樹園は孤立して機能していたが、このイニシアチブで、それらは組織された耕作者グループを形成した。そして、今、17,900人のメンバーを備えたそうした908のグループがある。これが、その農業を改善するトレーニングを受けられることを可能にした。トレーニングは、持続可能な低投入型農業の原則に基づいており、それが稀少資源を使用し、効率的にすることを可能にした。現在、こうしたコミュニティ果樹園は24,387haあり、24,984トンを生産している。市の農業は、コミュニティ委員会のレベルで運営される68人の農業普及員がおり、生産工程の全段階で助言をしている。
□基礎的生産ユニット協同組合(UBPC)
UBPCは都市全域に存在するが、利用できる土地やその他の資源に応じて5~10人のメンバーから構成されている。グループは、一般的な農業生産者、サトウキビ生産者と牧場生産者を対象とした法第142号(1993)により保護されており、その生産物を販売し、生産をいっそう奨励するため得た収益を再投資する機会を与えられている。市は最終的には300のUBPCを結成する予定であり、現在、148が結成済みで、16が結成中である。
□オルガノポニコ・グループ(OG)と集約果樹園管理グループ(IOMG)
オルガノポニコ・グループは都市や都市郊外の全域で見出される。その生産方法は、オルガノポニコが位置するゾーンで、土の質が良くないという事実だけが異なり、果樹園のものに似ている。生産で適用された技術パッケージは、多収穫品種の使用、適切な時期の播種、輪作と間作、潅漑、統合害虫管理の適用を含んでいる。
この生産方式は、現在は洗練されており、現在、そうした活発なユニットが773あり、386haを占め、1998年末には14kg/rnをもたらした。この生産方式はUBPCに取り入れられているだけでなく、農場、ワークセンター、教育機関や一般のカンペシーノの農場を含め、他のグループでも取り入られている。
ハバナにある20のオルガノポニコのグループは、首都野菜公社を結成するため集まり、それらは潅漑された19haを耕作し、高収量を得ている。このグループは、人民に食料を供給する目的の一貫として完全に政府によって融資されている。企業の主製品は、レタス、ハツカダイコン、キュウリ、トマト、ホウレンソウ、セルリーと調味料で、さらに、個々のオルガノポニコのグループは、そのマージンで薬用植物を栽培している。夏の気候が生産条件に良くないため、野菜は冬の数か月に特徴的に生産されている。そこで、都市農業は年に二つの時期に分割されている。春期(4~9月)と寒期
(10~5月)である。都市農業を通じた野菜生産の集約化で、以前はそうではなかったが、野菜が年間を通じてのハバナ市場で手に入ることになった。オルガノポニコ・グループは、販売から利益の50%を受け取るので、それらは高い収量を維持するために高度に活気づけられている。事実こうしたグループは、一般住民が容易にアクセスできる場所で見いだせ、それらはそれら自身を商用センターに転換し、5050haを持つ46のクレジット・サービス協同組合(CSC)の大多数の3313人の耕作者との契約を結んだ。
□国営協働組合供給ユニット農場(CSU)
これらの農場からの生産は、労働センターのカフェテリア用に予定されたものだが、その余剰農産物は労働者の世帯用にそれらの労働者に販売されている。キューバでは、労働者センターのほとんどがカフェテリアがあり、そこでは低料金で食事がその労働者に提供されている。316農場、40,126haを占め、そこで野菜、穀物、果物といった様々な作物を栽培しているが、肉、魚、卵、ミルクも生産している。現在、これらの農場は利益をあげるようUBPCに転換されている。そして、その諸経費は国家予算からは来ていない。
□様々な生産企業
さらに都市化が進んだゾーンやそのゾーンの周囲にある農業で、それらはムニシピオの農場と13~20haがある390の他の農場へ組織化されている。こうした農場は、様々な小規模な農場の結合によって形成されている。各農場は銀行システムによりその資金運用を管理し、前契約で、その労働者でその利益を配分し、リーズナブルな価格で企業にその生産物を販売している。この中には総計56haに及ぶ74のハイドロポニコ・ユニットも含まれている。生産企業は、柑橘類を含め、果物、コーヒーと野菜生産にそのほとんどの土地を割当てている。その基本的な目的は、高まる観光業に供給する生鮮農産物の生産量を都市内やその周辺地域で高めることにある。
□牧場協会(RA)
牧場協会は、国内の牛牧場をすべて含み、41,384頭がおり、うち38,480が雌牛である。雌牛のうち、16,619は私的に所有され、12,468は国に属する。さらに、2,904頭の馬がいる。
牧場協会は、16のUBPC、5農場、68の牧場と30のミニ牧場、53の開発ユニットと3475人の牛の所有者から構成されている。1996年に、それらは、6,757,875リットルの牛乳を生産していたが、1998年には、それらは8,969,765リットルを生産した。しかし、このセクターは、飼料の集中の利用が制限されていることに強く影響されている。
■国内で確立された全生産形式のためのベース
□農業ショップ・コンサルタント・システム
ハバナには都市農業を技術的・現実的に実施可能とする目的で23の農業ショップ・コンサルティング・システムがある。大半のコンサルティング・ショップは市街地内にあり、生産者に基礎資材を提供することをタスクとしている。供給資材には、種子、バイオ肥料、バイオ殺虫剤、土壌改良剤がある。そして、技術コンサルタント業は、コミュニティ委員会に基づき、農業の経験を積んだ資格を持つ篤農家やその他の者が訪問することで、現場でなされている。
□バタリー卵生産
バタリー農場(ニワトリなどを多段式のケージで飼育)によって採卵する技術は、都市農業を開発する中で、導入され、少しずつ、生産者にとってのメリットを実証しつつある。現在、年間80万個の採卵力を備えたバタリー農場が5つあり、さらに5農場が計画されている。この新技術はドイツのアグロ・アクション(Agro-Action)からの支援とコラボレーションによって都市へ導入されたものである。
□家畜衛生保健所
都市農業が開発される以前はハバナにはただひとつの保健所があるだけだったが、現在は9あり、各コミュニティ委員会には獣医サービスが備えられている。
□バイオ害虫コントロール・センター
全生産者にサービスを提供する11のバイオ害虫コントロール・センターがある。センターは、バイオ殺虫剤を生産し、農業ショップ・コンサルタントのネットワークを通じて、供給する責務を負っている。こうした製品は都市農業の開発の基本とみなされている。ハバナでは、都市内での化学製品の適用を禁じる規則があり、植物防疫サービスが検査システムを運営しており、規則違反に対しては罰金を科することができる。この管理システムと共に、キューバの経済状態があいまって、バイオ捕食動物の導入や利用を加速化することにつながったのである。
■都市農業と環境
ハバナは、世界の他の大都会のような深刻な環境問題には直面していないが、排水の放水、騒音公害、廃棄物投機や森林破壊といった環境ダメージや大気の変化をもたらしている。都市の住宅地域からは日々1万4000トンの固形廃棄物が発生している。しかし、都市農業は、コンポストや腐植として、こうした資材の再生に貢献できている。市政府は堆肥生産による有機資材の再生センターを創設し、さらに3つの地方センターや人民委員会、個人生産者のネットワークがあり、それらも25以上のそうした運営を行っている。
■私の緑プログラム
この40年というもの、都会化や開発で2.3%まで減少した森林被覆率を復元する目的で、様々な再植林プログラムが始まっている。市と中央政府は、過去40年間にわたり、様々なプログラムの伐採時の影響を適切に評価し、都市農業プログラムの観点から再植林を再評価する仕事を負ってきた。結果として、現れたのが「私の緑プログラム」である。プログラムにより、現状を定量的に把握する研究が着手され、再植林の必要性と新領域での植林の見込みや以前に植林された地域での修復について説明・詳述している。「新たな植林地」のアセスメントでは、家庭の庭、パティオ、学校、ワーク・センター、軍用地、公園と海岸線も含まれている。このイニシアチブの結果、現在、市には1836万9600本の木を植える義務を持つ5,120緑化プログラムを開始しており、うち242万5600本は果樹である。
プログラムでは、植林可能な空間を残さないという根本原則を実施することで、市の森林破壊という静かな災害を逆転する単純明快な目的がある。プログラムは、コミュニティ・レベルで実施され、子ども、若者、女性、労働者、インテリ、職人や軍人も参加している。「私の緑プログラム」は首都の都市農業プログラムの最も重要な部分であり、次世代がこの先見性のある取り組みを感謝するであろうことは広く受入れられている。
■作物病理
都市では、都市農業が発展するうえで必要な資源利用に限りがある。このため、持続可能な有機農業を達成するには、IPM等の効率的な病害虫管理が使えるよう、作物健康プログラムが必要である。また、小規模で集約的に管理された土地使用という都市農業の基本特性により、病害虫管理では、物理的、機械的、有機的、生物的、化学的、農的と様々な手法が互いを補うように適用されている。例えば、土壌中の線虫やその他の病害虫のコントロールでは、日光照射が適用され、機械的な管理には、草取りや幼虫収集を含む手作業での取り除き活動も含まれる。有機的な管理は、例えば、殺虫の特性を持つ植物、タバコとニームの使用である。生物的管理は、都市農業プログラム内で運営されている。天敵(捕食性昆虫)、菌類、細菌の使用にかかわり、こうした有機体の繁殖と栽培が行われている。こうした手段を発展させ、その有効性を確かめるため、植物防疫体制が、農業ショップ・コンサルタントと連携した普及員の援助によりムニシピオ・レベルに導入されている。
■食料確保、栄養と健康での都市農業の役割
キューバ全域で食料を保証し、かつ、基本的な食料価格を廉価に維持することが革命政権の基本的な目的であった。食料は、米、穀類、砂糖、塩、卵、肉、その他を含んでおり、子ども、高齢者、妊娠中の女性への食料供給や特別食の必要性がある人々を政府は保護してきた。
キューバの気候では、冬期が農業生産では中心となるが、通年の野菜提供が都市農業の目的のひとつとなっている。このことに関し、都市農業プログラムは、多様な作物、豊富な季節での食品保存や全国民の健康な食習慣を重視する戦略を生産者が組み入れるための農業の文化を創設するべく取り組んでいる。
□都市農業と家族経済
国家経済や社会主義圏市場の消滅によって雇用が減少し、否定的な影響を受けた家族もあった。だが、ハバナ市内の都市農業の発展によって、新たな雇用の可能性が生まれている。ハバナでは、これまで、2万6426人の労働者が都市農業と結びついており、年間で、都市の新たな仕事の6~7%を産み出している。国家経済問題で影響を受けた家族の中には、必要な雇用だけではなく、自分たちの生活水準を改善できる収入源も見出しているものもいる。事実、都市農業に携わる家族の多くの所得は、全国平均よりも高い。そのうえ、各世帯が直接自給する場合は、家計に貯蓄が産み出される。都市生産者は、主な市場価格よりも平均20%安く、その生産物を販売していることも言及しておく価値がある。そのことが、ハバナの各世帯に良質な食料を手に入れやすくし、あわせて自由市場の価格を下げるために寄与しているのである。
■都市農業でのジェンダーの役割
ハバナ市民の女性の割合は52.5%で、女性の平均寿命は男性よりも4年長く、77歳である。女性は民間部門の46%、技術者の66.8%、教育者の81%、医療関係者の79%、管理労働者の89%、市のムニシピオ議員の40%、州議員の30%を占め、国会議員の23%も女性である。女性が都市農業で果たしている役割は重要で、農業のかなりの部分を担っている。ハバナの都市農業プログラムには女性も位置づけられており、その意志決定で重要な位置を占め、農業技術者や管理者の53%も女性である。
表1--技術者・管理職の割合
職業 |
全労働者数 |
女性 |
割合 |
ハバナ市の都市農業の代表 |
30 |
14 |
46 |
植物防疫 |
21 |
14 |
66 |
家畜保健衛生 |
250 |
126 |
50 |
私の緑のプログラム |
24 |
13 |
54 |
普及員 |
68 |
45 |
66 |
農業ショップ・コンサルタント |
62 |
32 |
51 |
専門教育に携わる専門家 |
29 |
15 |
51 |
表2--生産活動への女性の貢献
職業 |
全労働者数 |
女性 |
割合 |
小規模農家 |
3568 |
576 |
16 |
都市菜園公社 |
455 |
86 |
18 |
食用穀物公社 |
2083 |
455 |
21 |
バクラナオ家畜公社 |
1936 |
386 |
19 |
■都市農業政策
キューバでの都市農業の開発、とりわけ首都での開発は、様々な政府段階で実施される多くの決定や対策の支援を受けている。それが都市農業の主目的の達成に向け、生産的な地域を一歩一歩つなぎあわせ、大規模生産者を含めることを可能としてきた。このすべてが都市開発における重要な構成要素となった。例えば、都市農業ユニットを位置づける前に、都市内でのその影響が研究される。いくつかのユニット(オルガノポニコ)は、メインストリートや隣接ビルに対し、その存在が、場違いな外観を与えず、都会環境に美的効果を与えるよう、環境と合致した建設プロジェクトの下で組織化されている。
キューバでは都市農業生産ユニットを組織化する場合は、必ず対応する政府レベル(人民委員会、ムニシピオ、州)の承認を必要としている。そして、その組織が私的所有している土地である場合は建設、技術管理、生産物のマーケティングの観点から、対応する現行規制に従わなければならない。
また、一般的なルールとして、全都市農業生産ユニットは、ユニット自体で農産物を市場に出荷し、過剰生産がある場合は、地区配送や他の販売スタンドで売られるようすべての市場機構が提供される。
都市農業ユニットの概念は、全都市の都市開発での地区住民にも衛生面と食の面で重要な要素になった。作物作付けと家畜飼育の双方は、健康へのリスクや環境ダメージを避けるよう都会環境と完全に調和した技術で実施されている。同時に、人間の健康や環境に悪影響がない農業生産活動を開発するための必要条件を作り出す行動も取られている。その一例は養豚である。厳格な衛生管理と獣医のコントロールがされ、立地箇所は都市周辺となっている。
■コラボレーション・プロジェクト
キューバの都市農業におけるコラボレーションの最初のステージは、NGOとともに1991年にスターとした。そして、生産者の教育とトレーニング面に関連する4プロジェクトが実施されたが、推進するためのツールのための資金援助は乏しかった。第二ステージは1994年から1996年までで、協会、代表団、市、財政機関との交流が高まった。そして、以降3年が第三ステージとなり、都市農業におけるこの一般的な開発プログラムが固められたのである。ハバナでの経験は他州にも広まり、現在、17の食用作物、果物の確立と再植林生産プログラムが進行中である。このコラボレーションは統合されており、プロジェクト銀行が、この目的のためトレーニングを提供を準備した。有機農法とアグロエコロジーの原則に基づく都市農業のハバナ・プログラムは大きな成果をもたらした。その必要性や可能性に応じて各ムニシピオがそれ自身のプロジェクトを実施するという事実は、大きな業績である。
表3 都市農業プロジェクトの概要
|
プロジェクト数 |
予算額(千米ドル) |
終了したプロジェクト |
37 |
670.5 |
進行中のプロジェクト |
13 |
921.1 |
財政支援を待つプロジェクト |
18 |
3,026.8 |
■都市農業発展の阻害と推進要因
作物の近くに消費者があれば、現実的に輸送は減り、また、都市地域では容易に労働力を確保できる。そうした要素が最も都市農業の発展を推進した。同じく、適切な都市地域と農業生産の条件があることが開発の重要な要素である。ハバナで都市農業の発展が可能となったファクターのうち、強調すべきもう一つの点は、ハバナ市民が土地を開拓するうえで必要な社会的、物理的なツールを政府が提供したことである。こうしたツールは様々である。希望すれば、家族からも形成できるUBPCの設立、自宅に隣接した遊休地へのアクセス、そして、農場の結成。政府により提供されたツールに共通する要素は、生産者の利益と増産を結び付けようとしていることである。
都市農業の開発は、優先し克服することが必要な多くの限定因子に直面している。集約栽培や高収量を達成するには、有機資材の供給が重要である。このために有機資材の貯蔵、加工、商業化の仕事に従事する供給センターとマイクロセンターのネットワークが政府の資金援助で設立され、投入が不可欠な全都市農業地区に供給している。相当数の生産ユニットは、堆肥やミミズ堆肥の技術を通じて、かなり効率よく作物残差の処理やリサイクルを達成している。この実践により、より耕畜連携が図られるようになった。
また、農地やユニットは人口密度が高い都市内に位置しているため、毒物を施用することはできない。毒物は環境を劣化させるのみならず、農産物それ自体に残留し、直接的、間接的に人の口に毒を入れることになる。この理由から、可能な限り統合病害虫管理を開発することが求められ、バイオ農薬の安定供給やそれを使うためのトレーニングが必要とされたのである。また、年間を通じ、多品目の作物を混作することが必要なことから、相当数の栽培品種を管理する必要もでてくる。その多くは地場産のものである。
■簡単な生産プログラムの説明
キューバで運営されている都市農業は、「地区のための地区による生産」を宣言している。ハーブやスパイスといった薬用植物(MP)は、従来は乾燥処理した形で他州から首都に輸入されていたが、需要を満たすため、都市農業の発展形態の一部として、人々は国営農場、オルガノポニコ、集約果樹園やコミュニティ果樹園で薬用植物を播種しはじめた。現在、ハバナでは、貯蔵薬用植物の商品化や福祉センター構築がなされている。上述した各グループは、乾燥処理施設を持ち、自分たちの製品を一般に販売できている。人々や製薬業の需要に応じ、現在、都市内では30以上の薬草種が生産されている。薬用植物については、専門的な試験がされ、現在、カプセル、錠剤、パウダー、クリームの形でハーブ薬品が入手できている。
大都市が抱える問題のひとつに森林破壊があるが、ハバナもその例外ではない。このため、ハバナでは樹木を保全・維持し、新たな森を創設するプログラムが動いている。「私の緑プログラム」と呼ばれるものがそれで、パティオ、菜園、公園、学校、ワーク・センター、大通り、高速道路、農村地域で見出される樹木は、囲まれた森林地、集団樹木と孤立した樹木に分類された。プログラムでは、いま86の育苗所と92のマイクロ育苗所がある。このプログラムと一致し、コーヒー、花、観葉植物、米をその他を含む他の植物/製品プライオリティも開発されている。
都市農業は、野菜生産プログラムを食肉生産に向けたプログラムで補完しようとしている。ハバナでは、700のウサギ飼育場が設立されており、うち3500羽はメスである。
700ユニットのうち、301はウサギ飼育公社と連携している。家禽類の飼育も一般的で、都市農業プログラムを通じ17万羽が直接人々の手にわたっている。地元住民に影響があったり、水道水を汚染する地域では豚生産を行わない規制があり、養豚は都市郊外で行われている。報告によれば、豚は6万3000頭おり、うち68%は個人所有のものである。養豚農家もウサギの生産者と同じく、公社とパートナーシップを組んでいる。都市農業では、羊、ヤギ、その他の食肉生産も推進しているが、こうした種のミルク生産も同じく重要視されている。こうした家畜のミルクは医療用の薬膳食でも頻繁に使用されている。地域内の生産を維持するため、生産者は畜産クリニックやコミュニティ委員会の提供するサービスを利用でき、こうした団体が、産業の健全な発展を保護し、人の健康や環境に悪影響を及ぼさないことを担保している。
農地やユニットへの給水はかなり配慮すべき都市農業の基本であり、水は都市の大部分で不足する資源であり、多くの場合、都市農業は水需要で一般住民と競合する。この問題を解決するため、水使用量を最小限にし、土壌水分を保つ農法が確立された。さらに、雨水や地上水を最大限に使用する新たな方法も研究されている。これは主にマイクロダム建設の形をとり、結果として、アクア・カルチャーの成長をさせることになった。
都市農業全般的に、それにかかわる生産者の多くに準備不足やトレーニング不足がみられた。この問題を克服するため、大がかりな徹底的なトレーニング・プログラムが都市の各地区に設置されている。このトレーニングは、生産者の畑でわれ、直面している問題に直接その場で対処することを目的としている。トレーニング・プログラムは、政府職員、農業専門家、研究者の参加を含め、広範な教育手法や技術が取り入れられている。
都市農業では地方と全国メディア(新聞、ラジオ、テレビ)がかなりかかわっている。彼らが実施した仕事は、先駆的な生産者の仕事から、社会一般での彼らの活動まで、事例を引きながら、関連したテーマでの都市農業の報告に基づいている。
■ハバナの都市農業発展の見通し
ハバナの都市農業の発展には限界がない。新たな技術と概念を急速に自分のものにする能力を持った十分に教育を受けた国民の間で、組織化された社会の中で、生産者に効率的に使える必要な資源を提供する、この形式の農業には十分な可能性がある。今日、取り組まれている農業は、経済的にも効率的であり、輸送は最小限のものとなり、農薬使用も国内で廉価に生産されるバイオ製品に取り替えられている。都市農業は、自ら資金もまかなっており、どんな負担も国にかけない。そのうえ、給料も普通よりも高い。生産者、消費者ともに今日の農業の利点がわかっているのも当然のことである。都市は最大の消費者で、消費する産物をなにひとつ生産していなかったが、都市農業を通じて国内でも野菜の最大の生産者へと転換しているが。とはいえ、それはまだわずか数年間だけのことである。これは、都市農業の可能性がまだ始まったばかりであることを示しているといえるだろう。
1998年まで、マリオ・ゴンサレス・ノボ(Mario Gonzalez Novo)氏は、ハバナ農務省の都市農業局長であった。以降、氏は農業省、アグロフォレストリー局で働いている。
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