2004年3月1日


ハバナのミラマル地区にある受賞したオルガノポニコ。菜園は地区や二ブロック離れた学校に、コリアンダー、レタス、薬草とパクチョイを提供している
同菜園のオルガノポニコ
ハバナ郊外のベジタリアン用レストランEl Bambに属する菜園
オールド・ハバナ(Habana Vieja)の建物は、崩壊と修復との間にある

 ハバナの市街地の建物の老朽化には著しいものがある。だが、だからといって、瓦礫の山がちらかっていたり、雑草生い茂る荒地を目にすることはめったにない。そうではなく、こうした放棄地は人々から切望される価値を持っている。空き地は、バットを運ぶ野球少年たちだけでなく、農園を耕す市民たちとがともに求めている。だが、たいがい菜園者の方に軍配があがる。キューバ政府が、食料生産を行えるよう人民に空き地を再分配する政策を取っているためだ。結果として、老朽化した建築物が崩れる一方で、都市菜園や農場が誕生しているため、今、ハバナは、通常ではない崩壊と成長の並列を誇っているのだ。

 過去40年にわたり、カストロ政権は、都市建築物が老朽化することを放置してきた。だが、そのことが、ここ十年間、遊休地が都市農地に転換する資源となったのだ。

 2002年にはキューバ人たちは、35,000ヘクタールの都市内農地で340万トンもの食料を生産した。ハバナでは、生鮮農産物の90パーセントは地元の都市農場や菜園からもたらされている。

 この都市農業運動は、1990年から94年にかけ生じた経済危機、スペシャル・ピリオドの中から生まれた。旧ソ連がキューバへの食料援助を停止したため、キューバは深刻な食料不足に陥ったのだ。それ以外の選択肢がないなか、都市住民たちは、未利用地を活用して食料を自ら生産し始めた。

 この都市農業の波は、ハバナ全域のみならず、キューバのそれ以外の都市にも広がっている。その結果、生産は高まり、新鮮で栄養価のある食料を手に入れられる機会が増えたのだ。

 都市農場や菜園には様々なタイプがある。ひとつは、オルガノポニコや集約野菜菜園である。そこでは、野菜や薬草は、コンテナ内で栽培されている。一方、もっと狭い土地で栽培される、パティオや人民菜園もある。それは、家族やグループが管理している。そして、三番目に、工場やオフィス内に設けられた都市菜園、職場菜園がある。これらは、施設内の食堂用の食料を生産しているものだ。そして、ハバナの住民たちが実践している四番目のタイプとして、栽培用にメッシュ・テントを利用して日陰を作り、苗や野菜を栽培している農場もある。最後に、公共や民間の郊外農場がある。それらは食料を生産するだけでなく、都市周囲の空間を満たす目的を果たし、その結果として、土地は不法なゴミ捨て場にはならないのだ。

 地理的、経済的、そして政治的な理由のため、ほとんどのキューバの農家は有機農法で生産を行っている。経済封鎖によって、世界の他の場所では使える殺虫剤や除草剤が輸入できないため、生産は、革新的な統合病害虫防除技術と自然なバイオ農薬でなされるように転換したのだ。都市農場は、人口密度が高いコミュニティに隣接しているから、農薬を使うと健康上も問題がある。だから、こうした解決策は環境上でも意味がある。

 だが、このキューバの野心的な都市農業プログラムの恩恵を受けているのは、生産労働者たちだけではない。地区の食料供給を安定させるとの方針から、老人ホーム、学校、病院の食堂へも農産物は寄付されている。これらの菜園は、包括的に農村と郊外の農場と結び付けられ、キューバ人たちが享受する食料を確保するうえで重大な役割を果たしている。

 都市菜園は、景観への供え物として、衰退する都市に食料と喜びがある視覚的なコントラストをもたらしている。パティオの上の高床であったり、バナナ枝に隠されたりして、多くの肥沃な土地は壁の背後にある。だが、それは、建物の正面が崩れていても、キューバには数多くの成長があるという指標なのである。

(米国のメトロポリス・マガジン3月号からの記事)
  Eliza Barclay, Gardens Renew Cuba's Urban Core,2004.

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