禁断の島、キューバへの自転車旅行の初日、僕らは凄まじい雷雨で目を覚ました。水が激しく流れ出て、耳をつんざくような爆発とオレンジ光の明るい閃光で突然、目が覚めたのだ。僕は、一瞬、パニックに陥った。だが、通りの向こうの送電線がちょうど破裂したことがわかってホッとした。
その翌日、僕らは出発した。自転車と荷物をもった25人のカナダ人、米国人、キューバ人のサイクリストで、トラックの荷台はいっぱいだ。新鮮なグレープフルーツを満載した同じようなトラックが、僕らを通りすぎ、天国からの甘露のように、おいしい果物が落ちてきたとき、太陽は僕らを乾かした。
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| Tooker Gomberg氏 |
キューバはパラダイスでないけれど、訪れるに値する魅力的な場所だし、暮らす上でもまともな場所のように思える。最高賃金が月あたり20ドル未満なら、暮らしは困難だろう。だが、その一方で、家賃は収入の10%以下に固定されているし、結局は、その支払いで自分の家を持つことができるのだ。
僕らは、ハバナから西へ、トラックで数時間の距離にあるピナル・デル・リオ州のソロア中を自転車で走った。そうでなければ平らなはずの風景から、何百メートルもまっすぐに突き出た石灰岩の山。僕らは奇妙な『mogotes』に魅惑された。僕らは、世界で最高の葉巻タバコやサトウキビの産地、深い緑の陰に覆われた田園地方を一週間、自転車でまわることに費やした。
農家や都会の人たちが、僕らと同じで自転車に乗っているのを目にすることはうれしかった。自転車はあらゆる場所にあり、キューバ文化の一部になっているのだ。そのほとんどは重い一段速の中国製の自転車なのだが、教師はそれに乗って学校へに、農民は畑に、医師は病院に、そして、子どもたちは車が走らない田舎道を二人乗りしているのだ。卵、ココナッツ、ピザとヤギ肉の配給は、みんな二輪車でなされているのだ。
「自転車に乗った大人を見るにつけ、私は人類の将来に決して絶望しない」
H.G.ウェルズはそう語ったけれども、ペダルを踏むキューバのすべての人たちは、人間性の将来の見通しについて本当に熱心だったものだ。
僕らのグループは、観光客としてはキューバにやって来なかった。僕は「キューバとふれあう」と命名されたこの旅を計画するのを手伝い、全員が壊れたトイレやときたま電気が不足するというちょっとした困難をわかちあった。けれども、ほてった汗まみれの体を冷やす、素晴らしい滝や山岳の河川も楽しんだのだ。
僕らは野外のテントやシンプルなコンクリート製のキャビンで眠ったので、旅行宿泊の設備は控え目だった。僕らは、テレビとネオンサインの広告から解放された。たまに建物に描かれたスローガンを胸に、コマーシャルや広告板のない場所を想像して欲しい。
「社会主義かさもなければ死か」
それは好まれるフレーズのようだった。僕らは、基本となる食べ物、米と豆をたくさん食べた。一ペニーでオレンジを買い、もてなしに5セントのアイスクリームを食べた。キューバの人たちは、ふつう僕らが食べるのと同じようには食べていない。けれども、1959年の革命は、実質的に飢餓と貧困を一掃したのだ。
山道はいくつか穴があいていたし、その日は少しの衝突したり、転落したりしたけれど、山道は全体的に好かった。カナダ人の患者がチップを渡すと言ってゆずらなかったけれど、小さな田舎町の病院のキューバの医師は、腕が良く、無料で、切られた足を縫い合わせたのだった。キューバの人たちは、世界でも最高水準のヘルス・ケアシステムを誇りにしている。実際、キューバの住民あたり医師の割合は、世界で最も高いのだ。
僕らと一緒にペダルを踏む8人のキューバ人たちは活発で、毎晩の議論の間、自由について話した。僕らは、法律に大切にされている同等性や、革命がどのようにして女性たちを助けたかについて学んだ。無料のデイケアとヘルスケアがあり、妊娠中絶も安全だし、職場は平等で、教育も大学まで無料なのだ。
ソ連の崩壊後、そのほとんどがソ連から来ていた石油が突然に止まってしまった後、100万台以上の自転車が1991年のギャップをどう埋め合わしたのかについても初めて学んだ。旅行に参加した太陽エネルギーの技術者たちは、キューバが再生可能エネルギーやソーラー・エネルギー開発を重視することで、石油世代を跳び越えるために、どのように働いていたかについて説明した。
長い間、キューバは誤解されてきた。コロンブスは1492年にキューバに上陸したとき、「これまで目にした最も美しい場所だ」と記述したが、コロンブスは中国に到着したと思っていた。今も、1100万人の人々が住むこの小さい島について別の誤解がある。
産業を国営化し、裕福な地主から資産を奪うことによって、その北の隣人を苛立たせ、米国は、キューバにその社会主義の実験をあきらめさせようと試みてきた。だが、積極的で、柔軟性のあるキューバ人たちは、彼ら自身の特別な道を旅し続けている。キューバは、米国にとって脅威なのだろうか?。彼らが気品と革新とで並外れ、多くの緊急でタイムリーな社会問題について言及することができる限りにおいてそうだろう。彼らは、個人的な欲望のかわりに、共有善の恩恵の利益を強調している。人道的な社会進化が続く限り、そこには多くの道がある。キューバ人の勇気があれば、そして運があれば、彼らの実験は、きっと成功することだろう。
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