2001年5月15日

キューバの博物学と環境問題

 2000年5月、デニソン(Denison)大学とキャピタル(Capital)大学の15人の学生と3人の教授が、初めてキューバを旅した。グループは、森林生態系や地形をガイドされるハイキングから、農業協同組合の農民や都市菜園者たちとの議論、近所の子どもたちとのホイッフルボール・ゲーム、音楽の夕べやハバナとサンチァゴ・デ・クーバでのダンスまで、実に幅広い活動に従事した。

 地元のガイドは、親しみ深くとても詳しかった。このツアーは科学技術環境省が主催したことから、専門家と出会い、一般観光客には開放されていない場所を旅する機会も得られた。ツアーはとても好評だったが、今年5月のツアーがさらに良くなるよう、学生たちの反応に基づき、少しは変更する予定だ。2000年のツアー参加した現在のダニソンの学生たちは、以下の通りである。

rent Anderson、Emilie Cooper、Adam Daigneault.Sara Damrow、rena Draksic、伊藤ゆりか、 Belinda Mills、 Ilana Schonfeld-Hicks、Emily Townsend、Mike Traven。 彼らがツアーから得た見識を知るには、彼らと自由に連絡をとられることがよいだろう。1999年6月と2000年5月のキューバ・ツアーの写真や報告は以下のとおりである。

■旅行の概要

 現在の経済的な困難に直面する中、キューバは数多くの環境上の課題や問題に対処するべく、驚くべきほど積極的なアプローチをしている。キューバでの重要な環境問題や社会経済問題を調べる上で、このツアーは、キューバの過去と現在の経済社会状況の概要をもたらすことになる。鍵となる話題や場所は、以下のとおりである。

  • 水質汚染、ハバナとその周辺での有機都市菜園の開発
  • 最近の環境計画、政策、規制の発展
  • エネルギー・化学製品集約農業から有機肥料を利用した低エネルギー・労働集約的な農業への転換
  • ピナル・デル・リオ州のビニャーレス渓谷のmogotesの景観博物学とシエラ・デル・ロサリオでの持続可能なコミュニティ開発
  • マタンサス州南部のサパタ湿地の生態系と絶滅危惧種、そして、マタンサス州北部のバラデロ半島の海岸乾燥林とそれへの観光業の影響
  • サンティアゴ・デ・クーバ州のシエラ・マエストラでの博物学、森林再生、地域エネルギープロジェクト
  • どこにでもあるキューバ文化の豊かさ

■予備作業

 ツアーに先立ち、学生たちは、キューバの自然地理学、熱帯生態学、歴史、経済学、政治研究を含めて、様々な書物を選んで読むことになる。全学生にとっての一般書は、以下のとおりである。

  • Christopher P. Baker(1997)、キューバ・ハンドブック(キューバの物理環境、歴史と現況の最新概要)
  • Joy Gordon(1997)、キューバの企業的な社会主義(キューバの変遷する経済とヨーロッパとの関係についての議論)
  • Alfonso Silva Lee(1996)、ナチュラル・キューバ(キューバの固有動物集種に焦点を置いた在来種の紹介のそのリスクの博物学
  • Peter Rosset and Medea Benjamin (1994)、 The Greening of Cuba(スペシャル・ピリオドでの、有機農業を基礎としたより持続可能な農業への転換を分析)

 ツアーに先立ち、キューバの自然地理学、農業、環境法、その他のテーマについて文献を読むことで、学生たちは背景にある情報を求めることができるだろう。学生たちにキューバの現状を知らせ、こうした読書内容を議論するため、ツアーの事前には、いくつかの会合ももたれるだろう。それに加え、2000年5月のツアーで学生や教授用に準備された野外見学用のガイドが、立ち寄ったり特別な場所のバックグラウンド情報として使われることになる。

 学生たちには、キューバ滞在中に詳細な日記をつけ、立ち止まった場所や会議でノートを取る責任がある。学生たちは、とくに興味をもった事項や旅の経験について小論を書くことになるだろう。教授と学生はキューバでも一緒である。キューバのツアー・ガイドがグループに付添い、ハバナやその他の州で様々な環境活動家や専門家と出会うことになるだろう。デニソン大学とキャピタル大学からの学生を含め、学生の最小数は12名である。


ピナル・デル・リオ州の石灰岩が発達した衝撃的なmogot市(タワーカルスト)の景観。ここはキューバのタバコ生産の第一の地域で、右中にある小屋で乾燥させる 中部ピナル・デル・リオ州のビニャーレス(Vinales)渓谷でのタバコ生産についてグループやタバコ農家と議論するロベルト・ノボ(Roberto Novo)ピナル・デル・リオ大学の地形学教授(左)。ロベルト教授は地域にあるmogotes地形のハイキングを案内してくれたが、ビニャーレスに設立された国立公園の指導者だ
ピナル・デル・リオ州のビニャーレス気候近郊のアントニオ・カサロ(Antonio Casaro)タバコ協同組合長からタバコ農業の優れた点を学ぶBelinda Mills嬢 ピナル・デル・リオ州の シエラ・デル・ロサリオ(Sierra del Rosario)を背景に、牛が働く水田と稲の田植え。燃料不足で、キューバ農業の多くはトラクターから牛に転換。環境に良い結果をもたらしている
ラス・テラサス(Las Terrazas)の眺めとシエラ・デル・ロサリオの最高峰エル・サロン(El Salon)575m ラス・テラサスのエコロジー研究センターの生態学者、フィデル氏が、ラス・テラサスの森林のハイキングを案内。ここはピナル・デル・リオ州の最東部にある25,000 haのシエラ・デル・ロサリオ・バイオスフィアー・リザーブ

ピナル・デル・リオ州のシエラ・デル・ロサリオの国連のバイオスフィアー・リザーブ。ラス・テラサスの有機菜園と再植林プロジェクト

シエラ・デル・ロサリオのコーヒープランテーションの前で。ジャーナリストで旅行を企画したKaren Waldさんとラス・テラサス・エコロジー研究センターのマリツァ・ガルシア(Maritza Garcia)所長(中央左下)とともに

スペシャル・ピリオドで1050ha、250名の組合員からなるニセト・ペレス(Niceto Perez)農業協同組合(CPA)のトラクターはガソリンとスぺアー部品の不足で55台から32台へと減った。南ハバナ州のこの地域は地形が平坦で土壌が豊かで、ハバナに近いこともあいまって、このCPAが穀物、果物、野菜と幅広く効率的な生産を行う助けとなった

CPAニセト・ペレス農業協同組合の研究室では、農業用に4種類の菌類やバクテリアのバイオ農薬を生産している。こうした活動が、キューバの化学農薬需要を減らしている

ハバナ西部のミラマル(Miramar)のオルガ・ガルシア(Olga Garcia)氏の個人都市菜園。被いが強い日差しを減らしている。この菜園は1985年に設立され、主に地域住民に高品質の有機農産物を提供している。有機都市菜園は、個人と協同組合の双方があるが、現在、ハバナの野菜や果物の約30%を生産しており、同じくキューバ各地の町や都市でも無視できない量を生産している ハバナの有機菜園。スペシャル・ピリオドの間に、都市住民に新鮮な野菜を提供し、菜園者に収入を与えるため、新たに創設された農業省の都市農業局が設立した多くの都市菜園の一つ
サパタ湿地(Cienega Zapata)国立公園博物館にて生態学者レオン・フィリペ(Leon Filipe)氏と爬虫類学者トビィ・ラモス(Toby Ramos)氏。渡り鳥や帰化植物の生態学について議論をし、フィリペ氏は海岸の植物群落の見学を案内してくれた ラモス氏は、キューバワニの繁殖計画を示した。マタンサス州南部のサパタ湿地(カリブ海最大湿地)のワニ増殖研究ステーションでのキューバワニ(Crocodylus rhombifer)。黄黒が特徴的なこのワニは、ワニの中でも最も種と数が少ない
マタンサス州南部のピッグス湾(Bahia de Cochinos)西部にあるプラヤ・ヒロン(Playa Giron)近隣のカレタ・ブエナ(Caleta Buena)でのシュノーケリング

バラデロ(Varadero)・ビーチの日没。ビーチの宿からの眺めは素晴らしい。宿舎は、社会福祉・教育センター(CESERSE)の一部として教会から寄付されたもの。私たちが滞在したことは、子どもや老人にビーチでの休暇を提供するプロジェクトの支援となった

キューバ南東部グランマ州のカンペチュエラ(Campechuela)の閑散とした通り。スペシャル・ピリオドの間、深刻な燃料不足で馬車や自転車が、重要な交通手段となった サンティアゴ・デ・クーバの革命広場にそびえるアントニオ・マセオ(Antonio Maceo)の銅像。1800年代半ばから後半と長きにわたってスペインに抵抗したキューバの英雄である
スペシャル・ピリオドの間、近代的な医薬品製造が不足し、キューバの医学会は、ハーブ療法の研究や利用を広めた。サンティアゴ・デ・クーバ州のChiviricoの診療所で、ハーブ療法の専門家エディリーナ(Edilina)さんが、Ilana Schonfeld-Hicks、Irena Draksic、David Pettersson、 Pam Strunkとオルターナティブ薬品の利用について議論 バコナオ(Baconao)国立公園の最高峰、グラン・ピエドラ(Gran Piedra)1214m頂上の観望デッキにて。私たちのガイド鳥類学者フレディ・ロドリゲス(Freddy Rodriquez)氏と生物学者ルス・マルガリータ(Luz Margarita)さん。シエラ・マエストラは、キューバの3170の地域固有植物種のうち約1960種の原産地である

サンティアゴ・デ・クーバ州の海岸に沿ったサボテンと乾木林。背景に見えるのはシエラ・マエストラの南斜面

インドからの少し不似合いのソーラー・パネル。サンティアゴ・デ・クーバ州のシエラ・マエストラの農村住宅に電気を供給している
オールドハバナのパセオ・デ・マルティ(Paseo de Marti)にある改築中の建物 ハバナのパセオ・デ・マルティ通りの風景。タクシーとして使われている50年代のオールドカーやトレーラーを転換したラクダバス。革命に続いて適切な住宅を提供するため、アパートに転換された下町の建物


(キャピタル大学生物学部Tod Frolking教授のHPの記事)
  Tod Frolking and Alan Stam ,Natural History and Environmental Issues of Cuba,2001.

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