2004年11月 本文へジャンプ


キューバの農業改革



 2004年10月25日、キューバは、それまで用いていた米ドルを通貨として認めることを止めると発表した。これは、スイス最大の銀行の1億ドルに対する罰金を含め、キューバと外国銀行との関係を断ち切る米国の取組みに応じた動きである。だが、キューバにこうした経済防衛策を講じる能力があるのも、社会主義圏が崩壊した当初に比べ、強化され続けている革命の反映といえる。

「スペシャル・ピリオド」が始まると、キューバは突然、かつ、壊滅的に輸入の85パーセントを失い、ドル合法化、外国人投資家との合弁事業、外為獲得源として観光への転換、中小企業の広範な認可と大きな後退を強いられた。

 これは、深刻な経済恐慌への対応策を論じるため、全国的に組織された何十万もの会合で、明らかに「後退」と特徴づけられたものだが、キューバは革命の初期以来、空前規模で資本主義の浸透を認めることとなった。そして、予想されるように、このことは不正の増加や格差の広がり、観光業での一定の売春等、資本主義につきまとう弊害をもたらしたのだ。

思想の戦い


 キューバ経済が最悪のスペシャル・ピリオドから回復し始めたとき、キューバではキューバの少年、エリアン・ゴンサレスの米国の誘拐に反対する大衆運動がわきおこった。この戦いの勢いをもって、キューバは資本主義イデオロギーの浸透を押し戻すべく「思想の戦い」を始めたのだ。最近ワシントンで開かれたNNOC会議の出席者によると、キューバの厚生大臣であり、かつ、キューバ革命史上の重要人物であるホセ・ラモン・バラゲルが「思想の戦いやその付随プログラムが現在ではキューバの暮らしを席巻している」と説明したという。革命の初期以来、ある意味では見られなかったほどキューバは変貌を遂げているというのだ。キューバは金銭面では貧しいが、世界で最も人的資本が豊かな国である。一人当たりでは最大の教師や医師がおり、一人当たりで最も多くの書籍が出版され、世界一少人数の教室がある。


差別撤廃の措置


 キューバは、思想の戦いに勝利するため、平等を守るために戦い、全員の可能性を最大限に引き出すため、その人的資本を配備した。現在、教師、ソーシャルワーカー、スポーツ、芸術インストラクター校の拡大を含め、国内では167の新プログラムが進行中だ。同じく、学校にもいかず、働こうともしない若者たちに給料を支払いながら学校、とりわけ、ソーシャルワーク養成校に戻し、若年たちが社会に居場所を見出せ、卒業後には以前にいたのと同じ場所に戻り、人々とともに働けるようセンサス調査を実施した。同時に、センサスは学校で疎外を覚えたり、家庭生活で困難を感じているかどうかに関係なく、特別な課題に直面する学生たちを特定した。そして、この情報は、子どもたちが問題を克服し、再出発できるよう教師、両親、地区のクラブ、地方の青年共産党同盟、その他のコミュニティ機関に還元された。

 最大でも20人学級という戦いは勝利をおさめ、それを15人学級にする戦いが始まっている。同じく全教室にビデオを全校にコンピュータを導入する戦いも始まっている。

障壁を取り除く


 だが、キューバの教育はその量だけでなく、品質にも根本的に変わっている。教育を授業科目やクラス、学年で分割してきた組織的な壁を打ち壊すことに力が入れられているのだ。これには、学校にいる人とそうではない人との間の分け隔てをなくすことも含まれる。その見解は、国内の全員が授業を受けるか、あるいはそれ以外の方法でつねに学ぶべきだ、ということだ。

 これを達成する運動には、有名なオープン放送大学を含めた教育番組の拡大、日々のラウンド・テーブル(Mesa Redondo)での政治議論、世界の重要な古典25箱を全家庭に配布することも含まれる。

 同じく、学校そのもの内部でも、旧態依然の教育体制を排除する抜本的な再編成作業が進行中だ。いまの意識を払拭し、教育過程を統合化するため、例えば、教師が一科目だけを教えるため、別々の科目を学ぶには1日に8回もクラスが変わっていた普通の中等校のやり方を終わらせようというのだ。その代わりに、キューバでは生徒はクラスも教師も変わらずに、協力的なチームで全科目を教えられる教師を養成する新たな教師の大学が用いられている。今では教師は学生たちと一緒に進学するため、年によって教育が分割されることはない。

主な事実


 こうした大改革やそれを実施するために、今、キューバの暮らしでは必要な資源の基本的な再配分が進められている。これは、明らかにカストロが第一に懸念している課題でもある。過去数年のフィデルの主要演説の約半分が教育と関係しているという事実もそれを反映している。

 同時に、キューバ人、とりわけ、若者たちは提供された新たな機会をつかみ、それを手にし、自身自身のものにしている。何万人もの若者たちが、スポーツ、芸術の新教師、ソーシャルワークとして自分たちの人生を変え、何十万人もの新入生たちが、彼らに対して開かれた新しい未来を手にし、新たな才能を学び、異なった人間となっている。

 クラスの生徒数を半分にし、教師数を倍増し、芸術やスポーツ・インストラクター数を倍増し、ソーシャルワーカー数を3倍とし、特別な配慮を必要とする学生や若者向けの前向きの行動を取るという政府主導のキャンペーン。米国の教師、父兄や学生たちは、それが何であるかをただ想像し始めているだけだ。

 そして、キューバは、既に世界の最も高い識字率や最も低い乳児死亡率という成果に基づき、自己犠牲的な広範囲の優れた国際主義意識とともに、これを行っている。こうした成果が、キューバ革命を以前よりも明らかに強くしている。これをベースに、経済的にキューバを絞め殺そうという米国による最近の厳しいやり方に対抗するため、ドルが第二通貨として国内で機能していたというリスクを劇的に下げつつも、一貫して動くことができるのだ。

                (米国のNational Network on Cubaからの記事)

Steve Eckardt, Revolution in Education:Dollars vs. 'Battle of Ideas', 31 0ctober 2004.