2009年1月 本文へジャンプ

キューバのエネルギー革命


再生可能エネルギー


 1989年以前は、キューバは、有利な条件で砂糖をソ連産の石油と貿易していた。だが、1989年からソ連崩壊が始まると、公開市場で石油を買うことを強いられる。ロシアからの輸入は50%下がり、石油消費量は1989年の日量22万5000バレルから1992年の18万バレルまで20%も低下した。交通も発電も交通も大打撃を受けた。米国は、経済封鎖をさらに強化し経済危機をさらに悪化させる。

ピナル・デル・リオ州の看板「エネルギー革命:もっと節約すれば、もっと持てる」


 20年間もの間、キューバは、その燃料不足に対応するため再生可能エネルギーと省エネ戦略を開発してきた。省エネについて市民教育をするのは、より持続可能なエネルギー未来に向けたキューバのプログラムのひとつだ。エネルギーのアドボケーターたちは、行動の変化には社会全体での新しい価値観の導入が必要であることをすばやく学び、エネルギー教育が省エネで最も費用対効果に優れた方法であることを決定した。

 全国紙グランマは、2006年にエネルギー問題を解決するのが「エネルギー生産と輸送での炭素放出を減らすほど簡単ではない。現在の事情は生産者と消費者の文化的な枠組みとエネルギー意識の促進の変化を求めている」と報告した。

 エネルギーに関して1150万の人口に教育するのは、無理難題だ。新たなエネルギー文化を創設することと、持続可能な開発を達成することにキューバのエネルギー教育プログラムは重点がおかれている。

シエンフエゴスのサン・ナルシソ(San Narciso)のソーラーで電化された学校は、全コミュニティのための教育を受ける機会となっている。

 エネルギー文化は、全市民が責任をもって彼らの日常活動でエネルギー消費に責任を持つことを意味する。それは、彼らが、エネルギー資源の発電、トランスミッションと消費には経済コストと環境影響の両方があるのを理解していることを意味する。私たちは、環境影響に応じて、代替エネルギー源を評価して、どれほど効率的にエネルギーを使用するか、そして、どれほど少ししか環境に影響を与えないかで製品を選ぶことを学ばなければならない。

 2006年に、国は、エネルギー問題に対応するため、より抜本的なステップを取った。国会は、エネルギー革命の年と宣言、国は、分配された発電システムに向けてシフトし、非効率な照明を段階的に廃止し、新たな経済的、そして、社会的な手段を設けた。経済面では、住宅の電気使用量が1カ月あたり100キロワット時以上を消費する人の電気料金があがった。

 新しい社会的な手段は、幼児期から始め、すべてのキューバの社会でエネルギー意識を形成することを純粋に教育的に目的としている。そして、子どもを教育すれば間接的にそれ以外の家族、そして、コミュニティ全体に影響を及ぼせることもわかった。

若者たちの教育


 エネルギー教育はキューバでは新しい話題ではない。1970年代に、小中学校の子どもたちは、地区の「クリックパトロール」で組織化され、各家庭が未使用の電源を切るように頼みに戸別に訪ねていた。

ハバナのエネルギーの授業での再生可能エネルギーを適用した図を示す男子生徒


 1984年、第一回全国エネルギーフォーラムの閉会式で、フィデル・カストロはこう主張してみせた。

「我が、全人民、全労働者、若者、学生、そして、幼児たちさえもが、エネルギーとその未来を自覚し、自らに問いかけなければならない。いかにして、我々が、将来、電力、蒸気、そして、交通を生み出すのかを。我が国家の子どもたちは、さらに他の誰よりも、この問いかけを自らにせねばならない」

 現在、学校でエネルギー教育を促進する責任を担う政府機関は、キューバ省エネプログラムと並行して、1997年に創設された教育省の省エネプログラムである。

 エネルギーのテーマは、学校でも普及している。ほとんどすべての授業がエネルギー問題を扱う。例えば、地理の授業では生徒たちは様々な再生可能エネルギー源を調べ、将来それをどう適用するかを説明する。生物の授業では、発電の環境への影響を学ぶ。社会科では、発電にあたり、どのような再生可能エネルギー源を使っているのかを新聞や雑誌で調べる。

 PAEMEではクラブ活動を通じてエネルギーや環境意識も誘起している。そのひとつ全国の何千人もの小学校の生徒、若者、教師や家族を動員する国家運動、PAEME フェスティバルでは、各教室の子どもたちが、エネルギーをテーマとした歌、詩や演劇を創ることを奨励している。最もエネルギー効率が良いプロジェクトをした子どもたちは、ムニシピオ・レベルのフェスティバルに進み、優秀なものは、州、そして、全国レベルへと進んでいく。

フェスティバルの参加数(論文、図面、歌等)

州段階

全国段階

2005

953

395

2006

1,010

419

2007

1,725

432

3,688

1,246


 キューバ電気組合のエネルギー合理的活用局も、教育省(MINED)と連携して、年に一回、省エネ・フェスティバルを開催している。イベントでは、ハバナや郊外の子どもたちが、エネルギーをテーマとした詩、ダンス、音楽と劇を作る。

省エネ・フェスティバルの参加者数

活動

参加者

紹介された仕事

2005

5

520

323

2006

6

715

401

2007

6

742

433

17

1,977

1,157


高等教育でのエネルギー教育


 大学では省エネの修士課程があり、ハバナ大学の物質化学研究所は、太陽発電技術のコースを設け、それ以外の大学でもエネルギー問題のコースを大学院生に提供している。

 エネルギー教育は教育大のカリキュラムにも入っている。

 

エネルギー教育は教育大のカリキュラムの一部である

2003年に創設された情報マネジメントとエネルギー開発センター、CUBAENERGIAは、全人のための大学プログラム(Universidad Para Todos)の一部として、全国テレビでエネルギー教育のコースを放映している。「エネルギーの意識に向けて」と題されたコースには全国に配布される定期刊行物もある。さらに、エネルギー消費が多い労働者や組織の管理職のために、省エネのトレーニング活動も開発されている。

 再生可能エネルギーと環境意識を促進する組織、CUBASOLARも、その第一目的を教育においている。CUBASOLARは、いくつかの州の高等教育機関でエネルギー教育プロジェクトを立ち上げることを支援した。例えば、グランマ州のソーラー研究センター、ハバナのVolodia 教育センターのソーラー研究所、CUBAENERGIAの実験センター、そして、キューバの送電線と結ばれた最初の太陽光発電システムは、ピナル・デル・リオ州の博物館にある。

マス・メディアを通じたエネルギー教育


 マス・メディアもエネルギー教育では重要な役割を果たしている。出版物、ラジオ、デジタル、テレビとエネルギー問題で大衆を教育するタスクを引き受けている。そのプログラムは、省エネ、家電製品の利用と手入れ、安全対策、再生可能エネルギー源、バイオ燃料、気候変動に重点を置き、テレビの討論番組もエネルギー問題に時をさく。印刷されたタブロイド判は教師、専門家と大衆に分配されている。

 キューバ人たちは、もちろん野球に情熱的だ。野球放送のイニングでは、ファンは、家庭のピークの重要での電気の効率的な使用についてのメッセージを聞く。というのも、家庭が国の電気需要の約45%を占めているからだ。彼らは、国の放送局Radio Rebeldeで、人気スポーツ・ショーDeportivamenteで同じメッセージを聞く。さらに、毎週、観客の反応がある形式での5分の週刊エネルギープログラムが全国テレビである。消費者たちは、エネルギー施設で開催される連続講義に出席するよう誘われる。

マスメディアを通じたコミュニケーション記事と放送


 

新聞

ラジオ

テレビ

2006

610

5,515

685

2007

629

5,919

1,670

2008*不完全

173

1,952

690


 2007年、ハバナの週刊誌、Tribuna de La Habanaは、裏ページで「Offensive不快なエネルギー」を連載し始めた。それは、潜在的に改善できる部分を強調して、各職場でのエネルギー監査について報告している。
キューバでは商品は広告されない。だが、国道や高速道に沿って、省エネを促進する掲示板がある。そして、2006年以来、各地区は600もの「エネルギー討論」を行っている。

エネルギープロジェクトでのソーシャル・ワーカーの働き


 ソーシャル・ワーカー・プログラム(Programa de Trabajadores Sociales)は、2000年に設立されたが、その若いスタッフは高齢者のケア、労働、教育、文化、スポーツ、エネルギ分野で働いている。彼らの学校教育にはエネルギーと持続可能な開発のコースが含まれ、その一グループは、新たな太陽熱温水プログラムの実施を支援するよう訓練されている。また、国際的な奉仕活動に携わる別のグループは、1ダースものラテンアメリカで、約1億の白熱電球を蛍光灯に変えた。

学校はさまざまな再生可能エネルギーデモンストレーションの発表の場となっている。生徒たちは、年に一度のPAEMEフェスティバルで芸術、音楽、詩を作ることを奨励されている。


炭素の削減


 気候変動国際パネル(International Panel on Climate Change)にキューバが提出した最新リポートによれば、2005年から2007年にかけ、2002年の二酸化炭素総排出量の18%にあたる約500万トンの二酸化炭素が削減されたと評価されている。

エネルギー革命(2005-2007)で削減された二酸化炭素排出量

燃料源

節約(原油量換算)

二酸化炭素(トン)

原油

961,419

3,749,534.1

天然ガス

124,183

335,294.1

ケロジェン

28, 076

899,443.2

 

4,984,271.4


 気候変動に立ち向かうには、世界的なエネルギー革命が必要だ。そして、これが起きるには意識での革命が必要だ。貧しいエネルギー習慣を変えることはたやすいことではなく、時間、知性、教育、願望、努力、そして、資源を要する。発電の分散、効率性、教育、エネルギー連帯とゆるやかな国のソーラー化といった概念を適用してキューバは新たなエネルギーのパラダイムに向け、それ自身の路を取っている。

 複雑なエネルギー環境のグローバルな状況に立ち向かうのに必要とされる回答は、一握りの専門家の取り組みでは集結できない。キューバは、エネルギー問題への全人民への教育を通じてのみ、私たちのエネルギー使用で本当の変化が期待出来、気候変動の問題に真剣に対応できることを示している。

 Mario Alberto Arrastía Avila, Teaching Cuba’s Energy Revolution, Solar Today, January/February 2009.