1996年 ローマ

Fidel Castro

 二〇年以内に、八億もの飢える人々を四億人にするだと。いったい、どんな化粧飾り対策を講じるつもりなのか。もし、謙遜のためだとしたら、この目標値は、まことに恥ずべきことだ。貧しき人々につきまとう飢餓は、富の不平等な分配とこの世界の不公正な結果である。金持ちは飢餓を知らない。世界でかくも多数の人民を殺しているのは、資本主義、新自由主義、野蛮な市場原理、外国からの負債、未発展、そして不平等な貿易である。
 毎日三五,〇〇〇人が餓死するとしたら、その半分は子どもたちなのだ。なぜゆえに、先進国では、オリーブの木立が引き抜かれ、動物の群れを犠牲にし、土地を生産できないようにするために大金が支払われるのであろうか。
 何百、何千もの人々が死ぬ事故や自然・社会災害が生じれば、世界は論理的に動く。しかるに、なぜ、私どもの目前で日々起こっている、この大量虐殺に対しては、同じやり方で動かないのであろうか。一〇〇万人もの人民が毎月飢餓で死ぬことを防ぐため、私どもは、いったい何を行おうというのか。二〇年先にも四億もの人々が栄養失調状態に置かれていることは、少なくともうち一億人が餓死することを意味する。なぜ、私どもは、毎年、七〇〇〇億ドルもの軍事費に投資しているのだろうか。飢餓、土の疲弊、砂漠化、毎年の数百万ヘクタールもの森林破壊、地球温暖化、ハリケーンを増やし水不足や過剰な降雨を引き起こす温室効果、オゾン層破壊、食料生産や地球人民の暮らしに影響するその他の自然現象と闘うために、これらの資金の一部ですら投資しないのであろうか。
 水は汚染され、大気は毒され、自然は破壊されている。それは、投資の不足のみならず、教育と技術不足、人口増加の加速化のためである。環境が劣化しているがゆえに、未来は、日々、ますます危険にさらされている。
 冷戦が終了しているのに、なぜ私どもは、ますます精巧化する武器を生産しているのであろうか。これらの軍隊は、世界を支配する以外に何のためにあるのであろうか。低開発諸国に武器を売る猛烈な競争がなぜあるのであろうか。飢餓こそが、私どもが抹殺しなければならないものではなかろうか。
 偽善と嘘ではなく、真実を支配させよう。この世界から、ヘゲモニーと尊大さとエゴイズムを終えさせなければならないという現実に気づこう。日々、餓死する人々のために今日鳴るベルは、明日はすべての人間のために鳴ることであろう。