キューバのリスク削減の経験を他国が真似したり、適合させることは可能だろうか。中米のネオリベラル・モデルは、キューバの社会主義とは対照的に、そのリスク削減からなんらの教訓をすら抜き出せないほど現実が違ってしまっているのだろうか。キューバのリスク削減(第三章で概説)を強化している要素に戻れば、中米には、災害緩和や備えのためのしっかりとした国家構造が欠けていることが主な不都合点であることは明らか。人命救助の優先やリスク削減のための良きガバナンスの要において、キューバと中米のいくつかの政府との政治意思やコミットメントには、大きなコントラストがある。
とはいえ、政治上のコミットメントが国家レベルで明白でないとしても、地方レベルには存在していることもある。そして、ネオリベラル改革が進める地方分権化のモデルは、中米で一般的だし、傷つきやすいコミュニティのリスクを減らすコミットメントをムニシピオや州レベルで築き上げる機会にもなっている。
キューバから教訓を抜き出して、ローカル政府やコミュニティ組織レベルにおいて、それをそれ以外の国に適合させることは、リスクを抱えた国民の脆弱性を減らし、多くの人命を救済するための具体策を確立する試みとなるであろう。だが、以下では、適合できる要素を推定するよりも、リスク削減のために、キューバの経験のうち、いかなる要素が中米の現実に適合させられるかをよく考えてみたい。
1998年に中米を襲来したハリケーン・ミッチでは、何千人もが命を落としたが、それは、人命を保護すべき中央政府側が大変な失敗を犯したという厳しい教訓だ。サービスの公平性、国家の政治的な意思、あるいはリスク削減のためのしっかりとした国家構造を欠いている国々でキューバ・モデルを使えるように、中米での経験を探検してみなければなるまい。
国際赤十字連盟やアジア災害削減センター等の国際組織や地域組織は、コミュニティに基づく災害管理をリスク削減の重要な戦略として支援・支持してきた。中米のNGOの中にはすでに防災にあたってこのアプローチを用いているものもある。そして、キューバは国家規模において、いかにコミュニティに基づく災害管理を行うことができるかの包括的な事例となっている。
中米の市民社会の主体は、ハリケーンだけでなく、それ以外の気象に関連したハザードでの災害準備にもそれが関連するならば、キューバ・モデルを理解しようと関心を示していた。本節では、中米におけるリスク削減を概説はしないが、上述した状況をもとに、キューバの経験がどうすれば、一番よくあてはめられるかについてのまず基本を求めてみよう。
中米とキューバとのまず一番の大きな違いは、キューバにはリスク削減、とりわけ、災害緩和のための堅固な国家構造があるということだ。中米にはそれがない。リスク削減に向けた国家レベルでの政治的なコミットメントが欠けているのも大問題だ。それがないということは、リスクを削減する政治にもつながってしまう。というのも、それと競合する利益が資源配分への障害となるからだ。そして、草の根レベルで系統的に既存資源をつなげていく過程もない(Trujillo
2000, 55)( 21)。
天災予防調整センターによってなされた研究によれば、中米諸国には、防災やそれに対応するための枠組みがそもそもない。規則を制定するための法律もごくわずかしかなければ、配置計画も乏しく、コスタリカを除けば、たいがい現行法が一貫して実施されている例すら乏しい。
中米諸国の多くには、有事委員会や国家民間防衛構造があるとはいえ、こうした組織間連携や国家レベルと草の根レベルでの連携を欠いている。また、軍と民間防衛がつながることが、国民が政府を信用しないことにもつながる。
たいがい、全国緊急プランは包括的ではない。まともな国家緊急プランがあるのはコスタリカとエル・サルバドルだけだが、それすら周知されていない。緊急対応の法的義務を確立しているのは、グアテマラとコスタリカだけだが、それも知らない国民が計画に従わないからといって罰することは難しい。
国家レベルでは、中米とメキシコの気象や地震情報はキューバと同レベルだが、気象学を技術的に扱う人的資源の点では違いがあり、傷つきやすい国民に向けて、一貫して情報を用いるために、国家の緊急構造や政治的意思にそれをつなげることがわかっている(22)。
中米には、災害とリスク削減の研究や調査を行う素晴らしい組織がある。その多くは民間だ。その努力のおかげで、その地域のリスクを削減するための、情報や提言は豊かだ。そして、中米とメキシコでは、天災情報のほとんどは、会議、セミナー、ワークショップ、ウェブサイト、そして、文書を通して利用できる(Trujillo
2000, 64)。
情報は包括的だし、そのいくつかは、草の根レベルでも使えるようになっている。だが、問題なのは、様々なNGOや全国赤十字社の約束にもかかわらず、こうした情報を危険にさらされている人々に伝える系統的な手段がないことなのだ。とりわけ、ハリケーン・ミッチでは、中米の地元のNGOや国際NGO、組合、農民グループやコミュニティグループといった会員や選挙に基づく組織は、リスク削減を改善するため、中央政府に対して、プレッシャーをかけるというアドボカシーで大きな経験をした。彼らは、災害復旧の資金配分をどう決めるかの構造にアクセスするうえで一番成功した。中米においては、一般住民のリスク削減を改善するため、国家レベルでのアドボカシーの作業は欠くことができないツールであり続けている。
目にみえる国の資源が不足しているにもかかわらず、キューバの体験のレンズを通してみれば、リスク削減と関連した資源が中米にあることは明らかだ。こうした資源は、ひとたび特定されれば、脆弱性を減らすために効果的に使い、開発することができる。問題は、一番効率的なやり方で、どのようにそれらを編成し、実際に活用されるよう担保するかだ。スムーズにマシン全体を走らす、既存のソーシャル・キャピタルをベースに、それを高め、リスク削減の取り組みにアプローチしていくことが欠かせない。前述したように、分権型の政治モデルは、ローカル政府に見合ったリスク削減の業務を構築する余地を可能とするし、全国政府よりも住民により責任が持てるようにローカル政府の関心を高めることもできる。以下に掲げた中米にある既存の社会的資産は、リスク削減でローカル政府とのコラボレーションの基礎をなす。
- 草の根で何十年間もの経験や関係を持ったダイナミックなNGO (23)。リスク削減で働くグループとNGOが行う開発関連の仕事とは重なっていないが、NGOの中には、地元開発をリスク削減と関連づけようと挑戦しているものもある。
- コミュニティの組織化と動員の豊かな経験のある重要な草の根のコミュニティ・グループと組織代表
- ローカル・レベルでのリスク削減プロジェクトにおける実践経験。2002年では、ごく最近に終わったか継続中のリスク削減プロジェクトが、中米のローカル・レベルには130 もあった(Lavell
2002, 8)。
- ローカル、国家、あるいは、国際的であれ、開発で働く機関と組織をコーディネートし、交流するためのネットワークと構造。同じく、それについてのかなりの経験
コミュニティ・レベルでの組織化を考えれば、リスク削減でそれ以外の資産を最大限に活用するために、ソーシャル・キャピタルを用いているキューバの経験は、中米では、コミュニティ・レベルにおいて、とりわけ、適切なものだ。連帯、参加、コミュニティの組織化、懸念事項を巡る団結の概念や参加は、様々なやり方で、コミュニティ・レベルでのNGOセクターの開発の仕事でごく身近に使われている。
キューバでは、リスクを削減するため、ローカル政府に依拠しているが、これには災害緩和の戦略としてリアルなメリットがある。政治体制の違いを加味すれば、中米における削減において、ローカル政府の役割を強化することには潜在的に前向きのインパクトがある。国家領域では、あまりに欠けている政治的な意思も、ローカルなレベルではよく存在していることがある。そして、ローカル政府を防災と対応の主体として推進することは、ローカル政府を国民により責任があるようにする地方分権化の哲学を背景に構築されよう。トレーニングと外部からの専門的技術知識に、ローカル政府の構造を組み合わせれば、災害の仕事や意志決定、優先づけ、相互セクターの調整という構造が作れる。そして、アカウンタビリティのメカニズムを含め、住民とそのローカル政府との透明性がどれだけあるかが、災害緩和、備え、そして対応へのローカル政府の権限と意志決定力を広めるための豊かなベースとなる。住民とローカル政府との間に信頼関係があれば、ローカルでの災害のための備えや対応手段で人々の協力を確実にするためにソーシャル・キャピタルは構築できるし、されるべきなのだ。
キューバ人の防災モデルの中に、中米のローカル政府のレベルに適合・活用できる要素がないかどうかを調べてみると、地元の指導力への信頼、コミュニティの動員、計画での人民参加、ライフライン構造のコミュニティによる実施、そして、ソーシャル・キャピタルの活用の絶え間ない重視といったことが見えてくる(24)。地元レベルでの備えと対応で仕事を統合することが、リスク削減でムニシピオや州をベースとした仕事を構築することを可能とするであろう。
コミュニティ参加を動員するというキューバの参加方法は、ローカル・レベルにおいては、中米でも既に一般的だ。人々を訓練し、実用的な学習手段を作り出し、信頼感やコミュニティのコミットメントを作り出すために協働する3つのメカニズムは、次のとおりだ。
- コミュニティでのリスク・マップづくり
- 地元での緊急プランづくり
- コミュニティやムニシピオ段階でのシミュレーション演習
コミュニティ・レベルでこうした実践に取り組むことが、ローカル政府のリスク削減力を強化し、ひいては、国家構造にまでもっていく第一歩かもしれない。
リスク・マップづくりは、より多くの感度ある人々に対応するキューバの実践的なアプローチだ。この写真の女性のような近所代表が、それ以外のコミュニティ住民の脆弱性を評価する際に極めて重要な役割を演じている。
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| リスク・マップづくりは、より多くの感度ある人々に対応するキューバの実践的なアプローチだ。この写真の女性のような近所代表が、それ以外のコミュニティ住民の脆弱性を評価する際に極めて重要な役割を演じている |
コミュニティ・レベルでシミュレーション演習を行うと、コミュニティから大きな反応や議論、モチベーションを引き出せる。課題やそれへの対応策を論じ合うことは、コミュニティの意識やコンセンサスを築きあげる素晴らしい方法だ。実際に避難対策を予行演習してみることは、その重要さを人々に教え、災害時に行動するための動機を行うまた別の効果的な方法かもしれない。「ポストミッチ・ニカラグアの災害予防と緩和」という記事で、ロチャとクリストポリスは、コミュニティ・レベルで、こうした取り組みの推進に成功したニカラグアのNGOの事例を引用している。いくつかのコミュニティで緊急時の委員会を訓練し、その後、ハリケーン・ミッチが襲来したときに人々を避難させるうえで、非常に効果的であることが判明したのだ。
当局と市民社会との信頼の構築:ハリケーン・ミシェルへの2つの異なる対応
ハリケーン・ミシェルは2001年11月に熱帯低気圧としてホンジュラスに襲来し、12人が命を落とし、11万5000人が強制退去を強いられた(4,000人だけが避難)。ホンジュラスの5つの部(departments=州と同等)では、洪水で非常時宣言がなされ、カルロス・フローレス大統領は被災した北部領域をヘリコプターで巡回した。同大統領は援助資金を国際社会に求めたが、被災した州の人々は、政府が約束したハリケーン・ミッチの支援策をまだ待っているのだ、と語る。
ハリケーン・ミシェルがキューバに襲来したときには、それはカテゴリー4のハリケーンとなっていた。70万人以上のキューバ人が避難したが、死んだのは5人だけで、そのほとんどは建物の倒壊によるものだった。
カストロは、嵐の犠牲者を直ちに訪ね、最も被災が大きかった3州、マタンサス、シエンフエゴス、ビジャ・クララの各州の損害額を算定した。カストロは、バラデロに避難していた旅行者ともあい、翌日にはシエンフエゴスにいた旅行者とも会った。カストロは、キューバ人のための国庫補助による支援を約束し、キューバはハリケーンを乗り切れる、とテレビで全国民に向けて演説した。
「我々は非常によく用意ができている。規律もあり、非常に組織化されている。我々にとって、勝利とは最小の死亡を持つことを意味する」(SCFC 2002)
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コミュニティでのリスク・マップづくり
中米でコミュニティでのリスク・マップを効果的に用いるには2つの課題がある。既存情報を共有するためにメカニズムを見つけだすこと。そして、欠かせないものとして住民参加を構築することだ。
情報共有:中米のNGO、ローカル政府、そして、コミュニティ組織に対して、コミュニティ・レベルでの脆弱な要素について、豊かな情報を何年もの提供してきた経験からわかることは、この極めて重要な情報が、様々な人たちによって保持され、分けられていることだ。キューバでは違う。市民防衛体制は、州、ムニシピオ、コミュニティ・レベルからなり、主体の多くは、医師、コミュニティ・リーダー、市長、住宅検査官、協働組合代表であって、すべてが有事の際には、市民防衛としてニ重の役割を引き受ける。これは、コミュニティの情報が分けられるよりも共有活用されることを意味する。
参加の構築:避難か基本的なライフライン構造のために、簡単なリスク・マップを用いて、コミュニティ住民を訓練することは、現場参加を促進するうえで、非常に効果的な方法かもしれない。実施する中での学習は、リスク削減の教訓を補強する。地元住民の中にある知識のストックを刺激し、コミュニティ内にすでにある富を発展させるから、リスク削減のためのソーシャル・キャピタルを築きあげられる。その手にしている技術レベルや知識で、リスクマップづくりの業務を主体にわりふれば、訓練にさほど投資しなくても、コミュニティ参加がやれるようになる。コミュニティのメンバーやリーダーは、安全か危険か、簡単に家を分類できるし、それ以外の住宅や避難所に傷つきやすい人々を割り振る基礎として、その情報を使うこともできる。
キューバでは、キューバ女性連盟が、女性、とりわけ、傷つきやすい女性たちのニーズを特定して、対応する責任を負っている。だが、中米においては、これに対応する組織的なメカニズムがシステム内に組み込まれていないから、声を反映させるには、コミュニティのリスクマップづくりに女性たちをかかわらせることが重要だ。
地元での緊急プランづくり
現在のところ中米における全国緊急プランは、地元が使うためのツールとなっていない。だが、キューバの経験は、コミュニティ・レベルの情報を用いて、ムニシピオ・レベルまでゼロから築きあげるための可能性がある。中米の多くのコミュニティには、コミュニティ計画づくりの豊かな経験がある。緊急対策プランのために、コミュニティのリスク・マップづくりの専門知識を伸ばすため、キューバのこの経験は使える。ローカル政府を通じて組織化されるのであれ、NGOやそれ以外の主体のコーディネートで組織化されるのであれ、災害の専門家は、結果として住民学習をリードし、地元の知識を豊かにできる。プランは、家畜の救済から、コミュニケーション・システムのライフライン構造に焦点をあわせることまで、様々な複雑なレベルとなろう。また、開発事業からもわかるように、計画づくりに携わることは、人々の実施上の協力やコミットメントを大きく強める。リスク削減に向けた人々のコミットメントを得るうえで、最も効果的な手段が、人命が尊重されるときに可能なことがわかるのも重要だ。コミュニティの計画づくりは、防災と対応のための既存の資源をカタログ化する一助となり、非常時にその管理について議論するのにも役に立つツールだ。
シミュレーション演習
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| 学校の子どもたちは、ハリケーン・シーズンの前に例年の二日間の演習に参加する |
避難対策を予行演習してみることも、その重要さを人々に教え、災害時の行動を動機づけるための別の潜在的に効果的な方法だ。キューバではこのイベントは国家レベルのものだが、コミュニティやムニシピオ段階でも全国で実施され、地元レベルに適合させられるよう豊かな経験が得られている。シミュレーション演習は、人々が避難を遵守するkとおや、教材としての使用方法を明らかに補強し、与えられた状況下で、リスク削減と関連する現実のコミュニティやムニシピオの理解も深める。
シミュレーション演習を経験すると、リスク削減に向けた現実的な目標という重要な情報をローカル政府は得られるし、優先すべき事項がより明確となり、リソースを最適化するやり方も、ずっと明らかになる。適切なシミュレーション演習を一貫して実践することは、防災で協働するために国民と政府との間にソーシャル・キャピタルを築きあげられるのだ。
災害の中を生きてきた歴史的な記憶は、良くも悪くも、遥か彼方にある中央政府よりも、被災者の心の中にずっと残っていく。だから、コミュニティやローカル・レベル段階で、リスクのマップづくりや計画づくり、シミュレーション演習に取り組めば、こうした思い出を巡る議論が盛んになる。問題やいかにそれに対応するかについて語り合うことは、認識、コンセンサス、そして、モチベーションを築きあげる素晴らしい方法なのだ(25)。
リソース
キューバでは、その社会の経済モデルから、防災や対応用の資源が最適化されている。国内資源の大半を政府が所有しており、緊急時に市民防衛にゆだねている。だが、これまでの中米における地方分権化は、ムニシピオの事務所に多くの新たな資源をもたらしてはおらず、それは長期目的のままにとどまっている。
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| キューバのラジオは国民に情報を知らせる役立つツールだ |
ここで、キューバと関連する教訓は、ソーシャル・キャピタル、若しくは、資源のわかちあいを促進する「油」が、たとえ、資源が乏しい環境下においてさえ、高レベルのコンプライアンスを生み出せるということだ。
ソーシャル・キャピタルは三つの軸にかかわる。①人命救助の大切さへの人々の理解、②寄付する資源が公益をもたらすとの信頼感、そして、③コラボの経験を通じて確立された協力関係だ。
もし、ローカル政府が、その信頼感を使うための関係性を築きあげられれば、NGOとコミュニティに根ざしたグループ、機関でコラボがなされ、コミュニティは、非常時のコミュニティ・サービスにこうした団体の資源をどう調整するかを、グループ、団体、ビジネスを基礎に交渉できる。
例えば、交渉には、避難用の輸送、避難所用の建物、避難所の食料用の基金、コミュニケーションのためのコミュニティ・ラジオ局、その他の潜在的に必要性な数々のリストからなるであろう。政治的な意思さえあれば、ローカル政府は、緊急時に資源に乏しい貧しいコミュニティを支援するため、ラテンアメリカで赤十字社により創設された「パンアメリカン災害対応ユニット」等、コミュニティ外部の団体が作成した可能性のことも研究できる(26)。
コミュニケーション
全国政府にコミュニケーション戦略で働く気がないときに、可能なハザードについての情報をリスクのある人々に入手できるようにするため、ローカル政府は、自分たちでそれを発展させると決めるかもしれない。もし、ローカル政府が、信頼できる情報にアクセスする手段を持ち、その点で働き、人々に情報を周知する気があれば、簡単な三つの教訓がキューバから得られる。①情報をパッケージにすること。②簡単にアクセスできる媒体を使うこと。そして、③手元のコミュニケーション・リソースのうえにそれを構築することだ。
多くの中米の諸国には、防災用に既存のコミュニティや農村ラジオを用いる豊かな潜在力がある。災害準備に向けた良い仕事は、明らかにそれ自体を重ね合わせ、補強する。リスクのマップづくり、緊急対策の立案、そして、教育において住民と協働することは、非常時の報告を聞いたときの行動でもをずっと遵守するようになるであろう。
エル・サルバドルのサン・ビセンテで働くコミュニティ組織
ハリケーン・ミッチによって中米で9,000人以上の死者が出たのは、中央政府が防災と災害への対応で大きなミスを犯したためだ。開発や災害関係者の間では、この見解は広くコンセンサスが得られている(27)。危険にさらされたコミュニティが、住民努力で人命を救った場合に、将来の災害対応のためにコミュニティの資源を構築する以上の希望が生まれる。
その最も顕著な一例はエル・サルバドルのものだ。ハリケーン・ミッチの降雨で水位が上昇したとき、政府はダムが持ちこたえないことを懸念していた。彼らはレンパ地域の一連のダムを開け、何十ものコミュニティを水に浸した。
人々を避難させることからすらほど遠く、政府は、ダムを開けたことを国民に知らせすらしなかった。だが、コミュニティ住民は、家で水位が上昇しているのを目にしたとき、何が起きたのかを学んだのだ。ウスルタンとサン・ビセンテのコミュニティ・グループは、いずれも川岸にあるのだが、社会的組織の歴史があった。彼らは、キューバ・モデルで見出されたのと同じ原則の多くを用いることで、もともとあった社会的一体性のうえにその資源を調整して、構築した。避難、避難所、医療やセキュリティのための委員会を結成し、家畜と一緒に傷つきやすい人々を高台に避難させ、家に残った人々の安全確認のために自分たちのボートで河川をパトロールした。こうしたコミュニティではただの一人も命を落とさなかったが、それ以外村では多くの人が死んだのだ(Delaney
2004)。サン・ビセンテやウスルタンでは何が機能したのだろうか。そして、なぜ機能しえたのだろうか。
- 住民には、この状況に対応できる組織の歴史経験があった
- 協力関係が既にあった
- イニシアチブがすでにあり、リーダーシップの能力を開発させていた
- 人々は自分たちが見知った信頼できるリーダーに導かれた
- 手にしている資源を集団的に用い、その有効性を最大にした
- 既存のソーシャル・キャピタル、信頼、連帯感、組織、協力を彼ら自分たち自身の脆弱性を減らすために引き出せた(28)。
この、エル・サルバドルのコミュニティに基づく災害管理の事例は、我々がこのリポートで「リスク削減のための機械油」(ソーシャル・キャピタル)と称する、キューバにおいてリスクを削減させているのと同じ性質の仕事を、中米のコミュニティも自分たちでリスク削減に用いていることが明らかだ。この経験をさらに領域に広げる可能性はある。この可能性を用いるために、持続可能な開発と災害の業務にかかわる主体は、より密接に協力して、お互いにリスク削減を補強することになる共通の仕事を特定すべきだ。
ライフライン構造におけるコミュニティ動員
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| キューバは国民の全部門がかかわる包括的な災害緩和モデルを重視している。最も僻地の農村集落の住民さえ、災害マネジメントの取り組みではとても重要な主体だ |
リポートで言及したように、避難は人命を救う。だが、中米のいかなる政府によっても大規模な避難演習は実践されていない。例えば、ニカラグアでは、ブルーフィールズ周辺の住民は、1996年のハリケーン・セサルでは避難しなかったし、1998年のハリケーン・ミッチでも避難する政策が欠落していたことから、何千人もの死者を生んでしまった(Trujillo
2000, 63)
だが、前節のエル・サルバドルの事例は、たとえ、外部からの支援がなくても、コミュニティがいかにうまく自分たちが手にしているライフライン構造を活用できるかを示している。そして、避難は、モチベーション、知識、そして、兵站の組み合わせることで、成功している。
まず最優先されなければならないのは、人命救助にとって避難が大切なことを人々に教え、信頼のおける情報を提供することだ。準備活動に国民が参加し、ローカル政府と人々との間にソーシャル・キャピタルを築き上げ、開発の仕事で関係性を構築することは、非常時に避難するための人々のモチベーションを高めることに向けた累積する仕事だ。同じく、うまく演習がなされれば、同じ活動は避難や避難所の兵站を組織化する基礎にもなる
(29)。
キューバでは、大規模な避難のほとんどは地元のリーダーによってなされており、協同組合の代表が、組合員の家族の避難を指示している。キューバの避難所の制度では、使える安全な家や地元の建物を最大限に使う。レンパでも避難や避難所を組織化したのはコミュニティのリーダーだった。持続可能な開発仕事の一部として地元のリーダー・シップ構造を強化することは、それらがまた、防災における資源となりうることも意味している。
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