2008年6月17日 本文へジャンプ

憂えよりも備えを

キューバは、なぜハリケーン予想を今後は出さないのか

 

ハバナ、6月17日 「今後のハリケーン・シーズンでは、総合的な予報を公表しない」。

 そう、キューバは決定した。というのも、ほとんど人民の暮らしにはさして違いがなく、誤った懸念を産み出すきらいがあるからだ。こと、ハリケーンについては、キューバでも第一級の専門家とされる、ホセ・ルビエラ氏は、そう語る。

 ルビエラ氏は、気象研究所の予報センターの所長なのだが、もちろん、予報には科学的な根拠があって、研究者にとっては、重要な情報源であることは認める。だが、研究所はこれまでは、カリブ海やメキシコ湾を含め、大西洋の気象状況についてずっと長期予報を発表してきたのだが、それをやめたのだ。シーズン中には平均10回の熱帯暴風雨があって、うち、6回は、ハリケーンの強さにまで達し、ひとつは最大級のカテゴリ5のハリケーンとなる。

「私どもは、ハリケーン・シーズンに、公的予報を出さないと決めたわけではないのです。そうではなく、秘密の遵守、あるいは、それに似た形にしようというわけです。ですが、その決定は人民益にとってベストなためなんです」とルビエラ所長は言う。

 所長の見解では、ハリケーンが、いつ、そして、どこに上陸するかがわかるまでは、どれほど多くあるかを予想しても意味がないのだ。

「不必要にビクビクするよりも、人民は常時備え、系統的な準備をされているべきなのです」

 所長は、30年間以上もキューバやカリブ海地域の熱帯暴風雨を追ってきた。そして、一般的に言って、人民は予報の正確な意味を適切に理解していない、と語る。

「それどころか、しばしば警戒心を高めてしまい、シーズンが終わって、結局ハリケーンの影響が地域になければ、ミスリードされたという感覚を持つわけです」

 ハリケーンの予報情報の有用性は、現在とりわけ、米国では物議をかもしだしている。南東部のフロリダ州のあるホテル経営者が、2008年にコロラド州立大学の大気学の研究者、ウィリアム・グレイ教授の予報に対して訴訟を起こしたのだ。

 グレイ教授とその同僚フィリップ・クロッツバッハは、2007年の8月3日に大西洋の気象予報を3番目にアップデートし、15回のハリケーンを予測した。そして、うち、7回は熱帯暴風雨で、4回は適度なハリケーン(サフィア・シンプソン・スケールでカテゴリ1か2)、そして、4回は大型ハリケーン(カテゴリ3、4または5)としたのだ。
プレスはこの予報を広く流し、多くの人々がフロリダ旅行を止める選択をしたのだが、結局、フロリダは、昨年にはぜんぜんハリケーンに見舞われなかったのだ。

 観光業は大きな損害を被ったのだが、ルビエラ所長は、それが、ホテル経営者が立腹しているわけだと語る。

「ですから、あらかじめ推測することは賢明ではないのです。ですが、もし、襲来するかもしれない熱帯サイクロンが近郊にあれば、詳細な予報がされるべきです。それに対して我が身をかばうために、人民は情報に精通した状態になっていなければなりません。ですが、あくまでも、センセーショナルな感情なしでです」

 ルビエラ所長によれば、キューバはその防災の取り組みから、全大西洋地域において、熱帯サイクロン当たりの死者が最も下位の国なのだ。その記録は先進国に匹敵するか、むしろ良い。

「それが導入された統合警備体制のおかげです」

 1995年~2006年にかけての11年は、記録上でも大西洋のハリケーンが最も活発な時期だった。キューバは熱帯暴風雨に3回、ハリケーンに8回見舞われ、うち、4回はきわめて大型だった。

「ですが、その全期間を通じて、ハリケーンで命を落としたのは34人だけで、年平均3人にすぎないのです」

 これは、浸水や住宅崩壊等のリスクに弱いゾーンの居住者が、あらかじめいつも安全な場所に避難するからだ。革命国軍省下には、人民保護に携わる「市民防衛」という組織があり、領域で熱帯低気圧が察知されれば、省は防衛システムを動かす。

 気象研究所の予報センターは、領域内のどんなクラスやカテゴリーの熱帯暴風雨についても警告も発し、サイクロンが国に近づくのにつれ、報告の頻度をあげる。また、短中期で潜在的に危険な兆候があれば、ルビエラ所長率いる予報センターは、早期警戒を発し、当局は、十分な時間をかけて、そのリスクを減らす警戒の決断を下せる。

「ハリケーンの経路や将来の強度を追跡・予測することは、とても複雑で困難なタスクです」

 そう、ルビエラ所長は語る。作業は速やかになされねばならないし、人民や経済に直接影響する決定責任も重い。
2007年には、領域はカテゴリ5のハリケーンが2回あったことを含め、6度のハリケーンに見舞われた。

 ハリケーン・ディーンはメキシコのユカタン半島に上陸し、フェリックスは、ニカラグア北東を連打し、莫大な経済的損失を引き起こし、100人以上の死者や何百人もの行方不明者を残した。それ以外のノエルとオルガも大変な豪雨をもたらした。

 気象研究所のリポートによれば、2007年のハリケーンと熱帯暴風雨は、とりわけ、カリブ海諸国で、深刻な物的損害や370人の死者を出した。研究所は科学技術環境省の機関だ。

 キューバは熱帯暴風雨の段階でノエルの影響を受け、東部では激しい豪雨が続き、1人が命を落とし、莫大な物質損害をもたらした。ディーンは、カリブ海上を進んで、南部の低平地沿岸で浸水を起こした。風速が時速118キロ以上に達した状態が続くと、熱帯暴風雨はハリケーンとなるのだ。1959年の革命以来、キューバに襲来した最悪のハリケーンは1963年10月のフロラで、その時には1,200人が死んでいる。


 Patricia Grogg, Cuba:Don’t Worry, Be Ready - for Hurricanes, Inter Press Service, Jun 17, 2008.