2008年8月27日 本文へジャンプ

防災力の補完リポート


背景


 2003年、オクスファム・アメリカから支援を受けたチームは、キューバのハリケーンへの準備や復旧制度についての研究を行った。人々にインタビューを行い、ボトムからトップまで統合された準備、警告、対応、復旧のシステムについて議論した。そこで、わかったことは、国家警報システムに対して市民の信頼感が高く、普遍的な識字力や高水準の教育によって年に一回ハリケーンのリスクに対応するために人々を動員することが容易となっていることだった。また、分散化していると同時に、統合もなされているシステムが効果的で、過去20年間にわたり、ハリケーンでごくわずかの死者しか出ていない成功の鍵のひとつは、コミュニティであることも見出せた。

フォローアップ


 当初の研究から5年たち、アップデートがなされた。このコアは、複合災害のリスクアセスメントで働く地質学者、エンリケ・カステラノス博士からのメールだ。博士は、事務経験のあるキューバ人で、オランダのITCから学位を得ており、キューバの市民防衛制度にも非常に詳しい。もう一つは、キューバのハリケーンについての二次文献で、その中には、キューバでフィールド・インタビューを行ったものもあり、オクスファム・アメリカチームが当初見出したことを再確認している。

持続性


キューバはマルチなハザードの市民防衛システムを長期にわたり連続して発展させてきている。これは冷戦時に自衛システムとして始まった。そして、今も人々は、そのことを意識し、そのツールや成功を誇りにしている(ピッグス湾侵入での防衛等)。また、1963年に1,750人が人命を落としたハリケーン・フロラ以降、市民防衛システムは、自然災害を含むように拡充された。

 2003年にトンプソンや彼女のチームが記述・評価したシステムは、いまも機能しており、市民防衛全国庁が2006年と2007年にハンドブックやガイドラインを公表したことで、さらに補強されている。2008年8月後半に熱帯防風雨フェイが襲来した折も、警告、避難、避難所システムは効果的に機能している。嵐は2008年8月18日に島を通り抜けたが、死者はゼロで、負傷者も少なかった。

実施されたアクション


 ハリケーンに備える例年の全国演習は、最近では、2008年5月23日に実施されている。過去5年でキューバの最高指導力は大きく変わり、経済でも自由化が進んでいるが、各町の委員会は、いまだにハリケーンの防災システムの重要な部分となっている。そして、例年の運動は、ハリケーンと関連する演習を超え、複数の危険を含むように徐々に拡充されつつある。

 2005年から全国の各コミュニティではリスク・アセスメントが実施され始めている。これは、2004年の自然災害での大きな経済的損失が内部的に批判的に評価され、それに引き続き、ラウル・カストロが要請したものである。この要請は「省令1」と称され、一般市民の参加によるコミュニティ・レベルでのリスクアセスメントについて、84ページのマニュアルの説明も付記されている。新たに三つの組織も創設され、国家市民防衛には、現在、リスク・アセスメントのための新部局が設けられている。あらゆるレベルで、ローカル政府に附置された「リスク・マネジメントセンター」がある(1全国、14州、169ムニシピオ。しかし、ムニシピオ・レベルでは進行中)。科学技術環境省は、リスク・アセスメントをサポート調整するため、「複合危険リスク・アセスメント」の全国グループを創設した。

 全国レベルでは、国家市民防衛システムは、分析・強化された。このシステムの下には詳細なリスク・アセスメントのプロセスがある。それは住宅地域だけに適用されるだけではなく、すべてのインフラ投資プロジェクトでも実施以前に計画の一部とされている。最近、リスク・アセスメントシステムでなされた開発は、ローカル・レベルでのハリケーンと関連したハザード・アセスメントである。専門家が作成した浸水モデルに基づく地図と地元の洪水マップを合致させたガイドラインが提供されている。あらゆる地元の市民防衛チームは、以前の洪水に基づく洪水マップを持っている。


福祉とセキュリティ結果


 数年にわたり続けられてきたケーススタディで、ハリケーンでのキューバの死者数が少ないことが報告されている。国際災害データベース(EM-DAT)によれば、2000~2008年におけるカリブ海領域でのハリケーンと関連した死者数の計は3,300人だったが、キューバは33人だったとしている。

 複合ハザード・リスクアセスメントに加え、キューバの市民防衛システムは、2008年からは、さらに全国的な災害データベースを作り始めた。その設計段階は2008年10月に終わり、それ以降は、系統的にデータ収集を始めている。これは各州全体がアクセス可能なオンラインの情報源となるであろう。

キューバと他カリブ海諸国のハリケーンでの死者(2005-2008)

 

キューバ

それ以外のカリブ海諸国

2005

20

1083

2006

0

54

2007

1

277

2008

5

NA


 効果的な人命安全対策の傾向は2008年も続き、同年8月の熱帯暴風雨フェイでは、ハイチで数十人、ドミニカ共和国で4人が命を落としたが、キューバでは誰ひとりとして死んでいない。

方法とアプローチはモデルとなるのか


 この問いかけには、二つの部分がある。第一に、オクスファム・アメリカのチームが行った方法は、シンプルだし反復が可能だ。事実、2004年のカリブ海のハリケーン・シーズンに四つの島での警告のパフォーマンスを数多くのチームが調査したが、を行ったが、キューバの市民防衛システムのヒエラルキーを同様のやり方で構造化している。

 第二は、キューバのヒエラルキー的で、科学ベースで、参加型のシステムがはたしてモデルとなるかという疑問である。このことは、権力的な国家システムでのみ可能となると主張する人もいる(7)。歴史的な視点からすれば、米国からの侵攻の脅威を認識した50年以上にも及ぶ強力な防衛の文化なくしては、このシステムが生き残って繁栄することはなく、それ以外のもっと平和な歴史状況の別の国では、こうしたシステムは根づきそうにないとも主張できる。

 にもかかわらず、ソ連との特別な関係やコメコン経済圏が終焉して以来、キューバは20年も経済的なストレスにさらされている。そして、数年前からは政治改革や経済自由化の時期に入っているのだが、市民防衛システムはいまだに強健に見える。このため、参加型の活動研究の民主的な中央集権主義モデルは、それ以外の場所でも実施可能であろう。すなわち、強力な国家、統合され、かつ、分散化されたリスクガバナンスの責任を負えるシステムは、リスクについての地元住民との対話やリスク対応を行える。その前提となる条件とは、市民と国家との相互の信頼関係、適度なレベルの市民の識字力と数量的思考力と、科学的認識、強力な公共医療とコミュニケーションシステムにあるように思える。そのことによって、避難のために¥セクターが市民と結んだ協定が不測の事態にもなされるようにである。

学ばれた教訓と疑問


 効果的な早期警戒のための普遍的なレシピはない。しかし、キューバのアプローチの本質的な要素のいくつかは、それと関連するだけでなく、モデルとすることが可能でもある。

  • 優れたハリケーン警報と予測情報の創設とアクセス
  • 全国からローカル・レベルまでのガバナンス体制と市民保護。それは、一貫性を持ち、よく連携され、先を見越し、対応性があり、透明性もある。
  • 普遍的な教育へのアクセスと識字能力に基づく、リスクへの認識、防災訓練と準備
  • 警報システムとメディアとの密接な統合
  • 強力な地区組織と若者、女性、専門的組織の参加
  • 公共交通、避難所、緊急用の食料への投資

 Community Risk Assessment And Action Planning Project, Compendium of Case Studies – Update, Weathering the Storm: Lessons in Risk Reduction from Cuba,27Aug,2008.