米国でのキューバ防災力学習会議
地球上でも最も強力にエネルギーが集中しているのは、ハリケーンだ。たった一つのハリケーンが放出するパワーだけで、米国全体が半年で使う電力よりも大きいことがある。最も激しいハリケーンの多くは大西洋上で発達する。そこで、米国の大西洋やガルフ湾にそった沿岸水域やバリアー島はカタストロフィーに傷つけられやすい。そして、気候変動による海水面温度の上昇のためであろうか、驚くほど、ハリケーンの発生件数は増えている。
米国は予測の技術やその性能では優れている。とはいえ、コミュニティがハリケーンに備えて、その余波に対応するうえでは深刻な欠損がある。一方、キューバは、頻繁に襲来を受ける経路に横たわっているのだが、こうした地域で印象的な専門技術を発展させている。諸国が見習う事例として、国連開発計画(UNDP)や赤十字は、繰り返しそのことを指摘している。
米国ではハリケーン・カトリーナだけで1,500人が命を落としている。だが、この10年間に16回もの大型ハリケーンが襲来したキューバでは、わずか30人しか死んでいないのだ。米国がキューバの制度から多くを学べることは明らかなのだが、ハリケーンの予測の領域を除き、両国間のコーディネートは大きく欠けている。
そこで、2007年以来、国際政策センターは、キューバの経験について議論し、協働していく方法を探るため、米国とキューバのハリケーンの担当部局との会議を後援してきた。
そうした会議が最初になされ、米国とキューバからのハリケーンの専門家が議論した2007年5月にメキシコのモンテレィで開催された会議だった。とりわけ、過去14年でメキシコ湾でのハリケーンの発生が倍増していることから、緊急の調整努力が必要だと議論された。
2008年4月、国際政策センターは、モンテレィの会議の参加者からなる視察団をキューバの市民防衛システムと災害医学施設を見学するため送り込んだ。2009年4月には、テキサス州のガルベストンからライダ・アン・トーマス市長率いる別の視察団を送り、7月には合同特別作業班カトリーナの司令官、ラッセル・ホノー中将率いる、ニューオリンズから別の視察団を送り込んだ。
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| ハリケーンやその他の自然災害に備えるため、米国がキューバから学べることについて議論するセカンド・パネル |
11月23日、ツアーの参加者たちは、キューバから何が学ばれ、いかなる次の方策を講じるべきかを論じるため、ニューオリンズで会議を開催した。
「たいへんに目を開かされました」
ルイジアナ東南部洪水保護局のロバート・ターナー局長はキューバの訪問をそう説明する。
現在、協力が行われている部門とあわせ、両国の制度の違いについて議論し、協働で防災や対応の取組みを拡充するため、アイデアをわかちあうため参集したのは、キューバ側は2人の、キューバの防災担当者である、気象研究所のホセ・ルビエラ博士とラテンアメリカ災害医療センター所長のギジェルモ・メサ・リデル博士である。
米国側で対応した12人は、マイアミにある国立ハリケーンセンターのリクィオン・アビラ、ホノー中将、ニューオリーンズ非常事態準備室のジェリー・スニード室長、ロバート・ターナー、ルイジアナ州立大学ハリケーンセンターの創設者、イボル・ヴァン・ヘールデン、そして、エモリー大学の非常事態対応復旧事務所の創設者アレックス・イサコフ博士らである。
ほとんどの嵐は、まずキューバを襲う。その地理的な場所から、ほとんどのカリブ海のハリケーンの経路にある。幸いなことに、マイアミにある米国のハリケーン・センターとキューバのセンターとの協力は強く、政治情勢の如何にかかわらず、ここ数10年はおかしくなってはいない。とはいえ、いつもそうであったわけではない。1900年に、キューバは差し迫る嵐に対して、緊急の警告を米国側に発した。それは顧みられず、結果として、カテゴリー4のガルベストン・ハリケーンで約8,000人が殺されることとなった。それ以降は情報交換が始まり、1963年にキューバでハリケーン・フロラで1,200人が命を落としてから、協力が始まり増えている。1978年に、世界気象機関が西半球のほとんどをカバーするハリケーン委員会を設立したことから、それはさらに後押しされることとなった。
今日、ホセ・ルビエラとルキシオン・アビラは、ハリケーン委員会におけるキューバと米国の代表者で、非常に厳密にコンタクトを行っている。キューバは早期警告を発するうえで、素晴らしい予測システムがある。米国よりもさほど洗練されていない技術でよく対応がなされている。とはいえ、キューバ側も改良された衛星やインターネットとの接続を必要としており、米国がそれを彼らに提供することは当然であろう。キューバの技術が進めば、マイアミにはさらに多くの良質のデータがもたらされ、スピーディーな交換が可能となろう。共同研究プロジェクトは両国のためになる。だが、それを行うには、科学者が自由に旅をできなければならない。
キューバのハリケーンに対応するシステムについて説明したのはルビエラ博士である。それは、高度に連携され、綿密に計画されたボトムアップ、かつ、トップダウンのアプローチによって、ハリケーンへの対応を文化に深く染み込ませることに成功している。それは教育から始まる。幼いうちから学校の子どもたちは、活動やロール・プレイングを通じてハリケーンについて教えられる。両親はその子どもたちや教育テレビから学んでいく。科学や予防のプログラムやコースはテレビでも放映されている。ハリケーン・シーズンが始まる以前の春の週末には、毎年、国全体でコミュニティは訓練と準備を行う。下水を掃除し、基礎を強化し、枯れ枝を取り除く。ハリケーンへのアプローチとして、情報は全国をカバーし、ルビエラ博士が絶えずテレビに出演し続ける。
「博士の姿を目にすれば、彼らは何かが起こっていることがわかります」博士の同僚であるメサ博士は述べた。
最初の警告は、上陸の72時間前に出され、48時間前には2番目の警戒(alert)、24時間前には警告(alarm)と続いていく。それは避難のための信号である。危険地帯に居住する住民の約80%は家族や友人のもとへと出かけ、20%は緊急センターにいく。避難は義務ではないが、キューバ人たちは危険に精通しており、行動することをためらわない。彼らは、自分たちがどこに行くのか、何が予想されるかを知っているし、自分たちの資産がなんであれ、政府によってカバー、修復されることも、ペットが保護されることも知っている。ここに、キューバの市民防衛システムの強さがある。あらゆるレベルで社会が参加する詳細にして頻繁にアップデートされる計画があるのである。
コミュニティのオーガナイザーは、交通、食料、医薬品と、資源がどこにあるのかをわかっているし、コミュニティで誰が脆弱で、どこに住んでいるか、そして、彼らを避難させるには何が必要かをわかっている。全病院は災害医学部門を設けており、嵐が近づいてくれば、部署は非常警戒態勢となる。
ハリケーン他の災害に関して、米国の計画づくりは、セカンド・パネルの会議で明らかになったように、むらがある。
「我々はハリケーン・シーズンに備えるよりも、フットボール・シーズンに準備することに時間を費やしている」とホノー司令官は述べた。
「私どものアプローチはほとんどがトップダウンです」リクィオン・アビラ氏は指摘する。
全米から緊急事態の管理者がマイアミに1週間のトレーニングを受けるために毎年やって来るがコミュニティの参加はほとんどない、と指摘する。
ホノー中将は「防災の文化」を取り入れる上でキューバをモデルとする重要性について話す。
「冷戦以来も、それはここには存在していない。我々の教育システムも備えを深く染み込ませるには、キューバのようなコミットメントが必要だ。エイズや喫煙を認識するキャンペーンのように、政府は、強力なメディアとともに、キャンペーンを支えるべきなのだ」
ほとんどの米国人が、災害に直面すれば政府が自分たちをケアしてくれると信じている。だが、実際は違う。3億人に増える国民のために最初に応答するだけで精一杯だ。彼らの仕事は、高齢者や病人を助けることだ。それ以外である我々は、我々自身が最初の応答者とならなければならない。我々は、避難計画を採択し、三日分の食料と水を準備しなければならない。避難を奨励するには、キューバ人たちがやっているように、略奪から保護し、ペットも守る安心できるプログラム政策も必要である。そのうえ、我々は送電網を強化して、保護しなければならない。もし、それがダメージを受ければ、私たちは80年も遅れ、コミュニケーションは途絶えてしまう。
「防災に費やした1ドルは、対応策で9ドルを節約する」とホノー中将は述べた。
スニード大佐は、こうした教訓を困難な方法でニューオリンズは学んだと指摘する。どんな災害も久しく起こらず、都市はうぬぼれていた。だが、大佐によれば、カトリーナ以降、現在のニューオリンズには、しっかりと連携した地域計画があり、地区は頑強で、結合力があるようになっっている。オーガナイザーはともに実践し演習する。
2008年のハリケーン・グスタフへの対応は、この計画が機能したことを示した。市民は耳を傾け、避難した。とはいえ、まだなされるべき多くのことがある。
「キューバの市民防衛は、コミュニティを知り尽くしています。我々は、彼らと話し学び続けなければなりません」とスニード大佐は結論づけた。
イボル・ヴァン・ヘールデンは、教育の重要さを強調し、ハリケーンや国民の健康問題についてキューバの子どもたちに与えられた印象的な施し物についてふれ、同じものを応援するようマクドナルドに納得させようと試みていると述べた。両親は彼らの子どもを通して学ぶのだ。
ロバート・ターナーによれば、米国にはキューバやオランダにあるような包括的な洪水の防災管理の国家政策を欠いている。カトリーナの犠牲者の多くは氾濫で命を落とした。そして、国内の一部でも、この巨大な災害は、全国に影響し、国家安全問題でもある。カトリーナの後、ガソリン価格は全米で値上がりした。
氾濫の危険性に用心し、キューバ人たちは自分たちの建物のリスクや脆弱性を評価するための努力をしている。私たちも同様にそうしなければならない。キューバ人たちの計画や準備はまさに多面的で、個人レベルまで降りている。だが、ここではそれは政府機関レベルで止まっている。
ハリケーンで問題となるのは、台風の目ではなく、潮の大波と、氾濫と関連する竜巻だ。大波は嵐のカテゴリとは直接関連性がなく、風や地形、嵐が接近してくるかと関連する。米国人の40%水域から30キロ以内で生活している。リスクがあるところでは、我々は、それを特定し、人々がそれを意識するようにし、なすべきことについて彼らを訓練していかなければならない。
「たとえ、リスクが低くても、その結果は巨大である場合があります」と、ターナー氏は述べた。連邦政府は、ハリケーンだけでなく災害へのロジスティクス、指揮統制、そして、近くの町の教会ではなく本当の避難場所のための計画がなければならない。例えば、ルイジアナ州の計画はよいが、そこには避難所はない。アーカンソー、テキサス、ミシシッピー州に避難民は送られるのだ。州は、ハリケーン・グスタフの間、1万6000人を避難させるために6500万ドル支払った。ルイジアナ州は、州内にそれ自身の避難所を造る必要がある。
災害医学も別のパネルの対象だった。キューバはこの医学分野に長年集中している。メサ博士によれば、キューバは、1961年に初めて海外の医療隊をアルジェリアに送り、以来45カ国で様々な災害に対応しているという。キューバはカトリーナの支援のため、医師を送ろうとしたが、ブッシュ政権からはねつけられた。現在、キューバは、医師チームを海外に派遣するだけでなく、ハバナラテンアメリカ医科大学で海外からの医師を教育しており、他国で災害医学の学部創設も支援している。10月中旬に、メサ博士は災害の医療と健康についてハバナで大規模な会議を主催したが、米国を含め24カ国から参加者があり、188の論文がプレゼンされた。
メサ博士は、キューバの医療システムが予防と気構えを重視していると指摘する。人命を守ることが目標だ。災害削減に欠かせない要素として、とても幼い年齢から子どもたちに脅威を認めることも教えている。市民防衛の職員は絶えずリスクを分析し、国民の脆弱な部分をモニタリングしている。あらゆるレベルでの社会に密接に情報を知らせ、かかわり続けていることが鍵で、これが連帯感を作りだし復旧に拍車をかける大きな助けとなっている。
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| アレックス・イサコフ博士、ジョージ・ロートン、ギジェルモ・メサ・リデル博士。パネル開始前 |
エモリー大学のイサコフ博士は、キューバのアプローチの効力に衝撃を受けた。
ここでは、私たちは、キューバが防災のために物理的、精神的に各個人に準備させるのではなく、むしろシステムとして準備していることを強調したい。博士は「我々は、準備を市民の義務にするため連携された努力が必要だ」と言った。我々は防災意識と安全の文化を欠いており、そこでは、各個人が役割を持つ。キューバのように、国家の訓練に参加するインセンティブのある草の根のコミュニティの準備がなければならない。人々を教育し、患者の脆弱性を最優先するよう、医師や看護師に呼びかけられるべきだ。それが人命を救助する機会であろう。
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| 会議の後で。ホセ・ルビエラ博士とギジェルモ・メサ・リデル博士 |
米国にとってのひとつの問題は、国民が移動し、ますます一時的となっていることだ。それが、連帯感を減らす。さらなる問題は、米国では、災害医療の分野が、バラバラとなていることだ。キューバのように、医療のスタッフが適切に用意ができるように、それは、全国基準のカリキュラムの一部となるべきだ。イサコフ博士は「ここでは、災害の管理に適切な市のプランは10%以下だ」と述べた。
コミュニティの目標は、「災害にレジリアンスがある」ようにするための備えと対応のため、持続可能な進行中のプランを持たなければならない。それは、コミュニティの同盟とパートナーシップが鍵だ。博士は「政府支援がどんな量であっても、そのすべてはできないだろう」と結論づける。とはいえ、朗報がある。ハリケーンの増加で、米国では災害医学が新たに重視されており、米国とキューバの双方が応急治療と管理の新たな方法を開発するために働いている。
ホノー司令官は「誰しもが犠牲者ではなく、生存者であることを学ばなければならない」との信念を繰り返した。第一対応者はカトリーナで死者の多くを占めた高齢者と病気に焦点をあてなければならない。多くの精神障害者は、医学から離されていた。こうした避難者は、カルテなしに残され、多くにとって惨事だった。 こんなこと再び起こることができない。さらに、洪水ゾーンにある病院や老人ホームは、適切に建てられ、国や地元の建築基準にしたがわなければならない。最も重要なことは、人々は、基本的なサバイバルのスキルを教えられる必要がある。今日、ルイジアナ州の貧しい地区にはプールがない。そこで、子どもたちは泳ぐことを学ぶことができない。彼らは救命技術も学ぶことができない。もし、どのようにサバイバルするかを我々が人々に教えなければ、ただハリケーンだけでなく、世界的な流行病や原発事故が起こることで、非常に大きい問題を抱えることとなろう。
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