キューバの防災力
| キューバは貧しい国の人命救済の世界標準となっている |
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| ハリケーン・イワンが2004年に襲来した後のピナル・デル・リオ州の荒廃。脅威に対応して、国は人口の17%、190万人を15日間避難させた |
ニュージーランドのクライストチャーチで9月5日に起きた地震と1月にハイチで起きた地震の影響を比較しなければならない。ハイチは人口が約900万人だが、約25万人が地震で命を落とした。政府の数字によれば、20万人が負傷し100万人が家を失った。8カ月後もいまだに災害が人々の暮らしに影響している。これとは対照的に幸いなことに、わずかに大きなマグニチュード7の地震であってもニュージーランドでは人命が失われなかった。
こうした格差を維持するグローバルシステムの本質は何度も暴かれるべきだろう。ニュージーランドの建築基準法では、世界標準の耐震設計が設けられている。カリブ海でも、いくつかの国では、カリブ海統一建築基準を含め、建築基準が組み入れられいる。
だが、2009年の地震以前にハイチを訪れた災害リスクマネジメント・チームのメンバーにより、グローバル・タスク・フォースに提供されたリポートは、ハイチにはいくつか建築基準があったものの、建物の安全性は重視されず、かつ、めったに施行されていないと述べている。ハイチの土木技師や建築家は、民間の建物用の専門的に設計構築された基準はハイチにはまったくなく、個人的な研究に依存していると語っている(米国でもほとんどそうである)。たいがい、寄付者が資金供給した建物は、ドナーやそれを担当する専門家の基準で建てられている。そして、国立大学の工学部のカリキュラムには、建築基準法の要素がほとんどないのである。
ハイチの問題は、開発が不十分なそれ以外の国で繰り返されている。フィリピンは地震に対して最も脆弱な国のひとつである。校舎が標準以下の建物のため、とりわけ、子どもたちが危険なことも研究から判明している。ハイチやニュージーランド級の地震によって、マニラだけでも何万人もが命を落とすことであろう。建築安全基準や規則は蝕ばれ、建築業界は不正だらけなのである。
都市住民のほとんどは貧困階層で、掘立小屋のような建物に住んでいる。こわれやすい段ボール、木材、捨てられた屋根資材で建てられ、雨や台風で簡単に吹き飛ばされてしまう。2009年9月末に襲来した台風オンドイでは、何千人もが命を落とし、何万人もが移住した。それは、地震が起きた時の恐ろしい姿を想起させる。
だが、第三世界に住む我々が防災で直面している問題は、不適切な建築基準を超えている。基本的な問題は貧困なのだ。国連の人間開発指標(教育、平均寿命と収入)に基づく各国のランキングを一目見れば問題がわかる。ニュージーランドが182カ国中20位であるのに対し、ハイチは149位、フィリピンは105位なのだ。災害で失われた莫大な人命は、貧困の直接の結果である。第三世界の貧しい人々は、先進国の人よりも、災害を誘発する気候変動を含め、自然災害により脆弱である。
とはいえ、その人民の命の保護を最優先させる政治的な意思が政府にあれば、たとえ貧しい国でさえ、人々の暮らしを守り、人命や負傷の損失を減らす効果的な措置を講じることが可能だ。もし、ニュージーランドが地震に対する安全な建物で世界標準を用意しているとするならば、キューバは、貧しい国がいかに災害の中でも人命を救えるかの世界標準を用意していると言えるだろう。
キューバの事例は、キューバ革命のシンパ以外からも認められ、称賛されている。国連は、キューバが災害リスクマネジメントのケーススタディだと述べている。
1996~2002年にかけ、キューバには6回も大型ハリケーンが襲来した。だが、影響を受けた国すべてでは665人の死者がでたが、キューバでは16人が死んだだけだった。2004年のハリケーン・チャーリーでは、フロリダでは30人が命を落としたが、キューバでは4人が死んだだけだった。同年、ハリケーン・イワンがキューバを襲った時に、国は人口の17%にあたる190万人を15日間以上避難させた。
全避難所には看護師が配置され、リスクが高い地域には医師が送られた。そして、フィデル・カストロはその努力を助けるため、リスクが最も高い地域に足を運んだ。ハリケーンで重傷を負ったり、命を落とすものは皆無だった。
国連国際防災戦略事務局は、災害削減を重視しているが、ロイターは、2005年に同事務局のサルバノ・ブリセノの発言をこう報告している。
「キューバのやり方は、同様の経済状態の国やそれ以外の国にさえ簡単に適用できる。キューバのようにその国民を保護しようとはしない、豊かな資源を持つ国にすらもである」
国連国際防災戦略事務局は、キューバを廉価な手段と強固な決意によって、効果的に人々へのリスクを減らせる事例と指摘する。キューバ当局には、防災政策を実施する意志があると述べ、2004年の国連国際防災戦略事務局の声明でベリセノはこう主張している。
「それは、彼らの開発計画や文化の一部ともなっています。それは、人命と生活を救う上で重要な役割を果たしています。これは強力な政治的意思の重要性を例証しています。全世界のリーダーたちは、ハザードへのリスクや脆弱性を減らすうえで必要な知識を各時の心任せにしています。危険な結果を緩和したり防ぐには、貧しい国でさえ完全な選択肢が必要なのです。しばしば欠けているのは、行動を具体化するプログラムや政策措置を実行する政治的意思なのです」
とはいえ、このキューバの「政治的な意思」は特定の個人や政府からもたらされているものではない。「キューバのやり方」は、社会の論理、人間とそのニーズを中心として優先する全体としての社会的、経済的、そして、文化的システムなのである。
キューバの経済や社会は、帝国主義者の利益よりも人民を前に据える社会主義原則に基づいている。それが、最高水準の人類の連帯と文化をもたらしている。
悲劇的なことに、植民地主義に対する英雄的な闘争にもかかわらず、帝国主義は何十年もハイチを搾取してきた。米国は、クーデターを支持し、親人民政権を打倒する軍事介入を組織し干渉した。このことは、我々自身もフィリピンで慣れ親しんでいる歴史である。我々自身の米国との準植民地の関係、そして、依存の結果だ。
キューバ政府は、防災の構造的、物理的な面にも同じ量で注意を向けているが、成功した教育と意識キャンペーンを通じて「安全の文化」も作り出している。
隣国と比べキューバでハリケーン死亡率が低い主な理由のひとつとして、国連国際防災戦略事務局は教育を指摘する。防災と予防と対応は一般教育カリキュラムの一部となっている。学校、大学、職場の人々は、絶えず情報を周知され、自然災害に対応するよう訓練されている。若い年齢から、キューバ人たち全員は、ハリケーンが島に近づくとき、どう対応するかを教えられているのである。
毎年、彼らは、ハリケーンのリスク削減のため2日間のトレーニングも行っている。このトレーニングには、シミュレーション運動や具体的な準備活動も含まれる。このことが、ハリケーンがキューバに襲来するとき、ローカル・レベルでコミュニティを動員する助けとなっている。
キューバの全成人は読み書きができるため、災害についての教材にもアクセスできる。キューバ赤十字は教材を提供しているが、それは職場での成人向けのトレーニング・コースや防災訓練、ラジオやテレビ放送で強化されている。
国内には適切な道路網があり、それが迅速な避難を可能としている。建築基準法が励行され、それが標準以下の脆弱な工事の影響を減らしている。キューバの家庭の約95%には電気が通じており、ラジオやテレビによって災害情報にアクセスできる。
最も重要なことは、キューバ国民は、社会的、専門的、そして、政治的な組織を通じて組織化されており、それが、災害に全国民を直ちに動員できる構造をもたらしていることだ。キューバの防災プログラムのこうしたすべての特徴は、キューバ革命により直接得られた結果である。革命は、世界でも最も社会的な意識が高く、教育を受け、政治的に組織化され、動員される人々を作り出した。ここフィリピンで、私たちは「キューバのやり方」から学ぶべき多くがある。
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