被災と子どもの健康
ハリケーンとは中心部の気圧が非常に低く、74mph(118km/h)以上の強風を伴う回転する大型の嵐である。ハリケーンは風力で1~5まで等級付けされ、カテゴリ5では155mph
(249km/h)以上である。ハリケーンは熱帯の海洋の温かく温暖で湿度の多い空気から発生するが、地球温暖化で、より頻繁で大型で深刻度を高めている(略)。ハリケーンという言葉は、海洋への息吹によって凄まじい嵐と洪水を引き起こすカリブ海の神「Hurican」やマヤの神「Hurakan」に由来すると考えられている。
全世界では約200万人が過去2世紀に熱帯暴風雨(ハリケーン、台風、サイクロン)で命を落としたと評価されている。20世紀だけで、ハリケーン・ミッチによる約10000人の死者を含め、北アメリカとカリブ海では、ハリケーンで75000人が命を落としている。
健康へのハリケーンの影響は、最中と回復段階にわけられる。ハリケーンの間での溺死が以前は死者のほとんどを占めていた。しかし、避難とあいまった警報システムの使用によって溺死は劇的に減少した。しかしながら、ハリケーン・カトリーナでは、その死者の2/3は洪水の直接な物理的影響によると考えられ、ほとんどが溺死によるものである。ハリケーン・カトリーナで溺死が多かったのは、不十分な人々の避難と準備と関連している。また、ハリケーンは建物や木への物理的なダメージによる死をもたらす。それは、直接的なトラウマをもたらすかもしれない。ハリケーンに引き続き生じる最も頻繁な負傷は、飛ぶガラス他の残骸によるきり傷と、裂傷と、刺し傷や外傷である。ヘルスケアへのアクセスと同様に、飲料水、食料、住宅が不足すると、ハリケーン後の健康にかなり影響がある。これら不可欠の準備不足は、確実にハリケーン・カトリーナ後の死亡に影響した。
熱帯暴風雨に続き、感染病も劇的に増加することがある。伝染病のこの増加は、低所得や低中所得国でより起こりそうである。洪水後の停滞水と並び、水や衛生ネットワークへのダメージも胃腸炎他の伝染病の症例をかなり増やす。ハリケーン・ミッチでは、影響を受けた国でコレラ、レプトスピラ症、デング熱、マラリアが増えた。
避難したり住居が破壊された家族用の避難所も生存のために重要である。1991年のバングラデシュでのサイクロン後の死者は、避難所が提供されなかったエリアでかなり高かった。
ハリケーン他の自然災害に引き続き、かなりのメンタル・ヘルスの問題があるとの認識が高まっている。自然災害に後の最も頻繁な精神的疾患は、心的外傷後ストレス障害である。子どもたちは、大人よりも自然災害の後で心的外傷後ストレス障害となる傾向があるように見える。この広まりは、自然災害の厳しさとこの事件への子どもや若者の近接性と関連しているように見える。ハリケーン後の子どもたちの研究からは、ハリケーン・ミッチ後に深刻に影響が受けたニカラグアの地域で、心的外傷後ストレス障害の罹患率が7~90%まで及んだことを示す。この症状はハリケーン後も長く存続する場合がある。12%の子どもに、ハリケーン・アンドリューの10カ月後も深刻な心的外傷後ストレス障害の症状がみられた。このことから、ハリケーンの健康への影響が、影響の当初期間以上に存続することを認めることが重要である。
2008年夏、3週間にわたり2つのカテゴリ4のハリケーン(グスタフとアイケ)は、カリブ海と米国で200以上の死をもたらした。2度のハリケーンは、キューバでは最強度(カテゴリ4)で、建物、家畜と作物に広範囲にわたる破壊をもたらした。アイケだけで、キューバで30万戸以上の家屋にダメージをあたえた。作物の甚大な損害も報告され、30~40億米ドルと評価される。ハイチと米国を抜けたとき、2回のハリケーンの強度は下がっていた(カテゴリ1と2)。
だが、キューバがその最強度でハリケーンを経験した事実にもかかわらず、キューバ全域は7人しか命を落とさなかった。ハイチの100人以上、米国の30人以上とは対照的である。
過去50年にわたり、キューバはハリケーンによる死者の数をかなり減らしてきた。1963年のハリケーン・フロラはキューバで1200人以上の死をもたらした。以来、キューバは避難と並び早期警戒システムを導入している。アイケは直接カマグェイ州を抜けたが、子どもや大人達の健康を守るために講じられた方法は、その他の国にとっても重要である。
ハリケーンが海洋で発生するため、上陸するまで数日かかり、政府は人命を保護するために行動することが可能である。キューバには優れた気象研究所があり、米国の科学者たちと連携し、ハリケーンの経路を予想する。普遍的な教育と非識字者の根絶により、国民はハリケーンと関連するリスクを意識でき、政府からの警告を理解している。国民に対して早期警戒を行うことの重要性は過剰評価すべきものではなく、極端な気象事情からの死を減らすうえで効果的なことが示されている。キューバでは極めて高レベルの市民参加のある国民がいることを認めることが重要である。国民の大半は様々な大規模組織のメンバーであり、強力なコミュニティ意識もある。
ハリケーンに対する認識は学校で教えられ、ハリケーンの72時間前に全国メディアは警戒を行うが、市民防衛委員会も避難プランや避難所をチェックする。
2005年のハリケーン・デニスでは、キューバでは17人が命を落としたが、それに続き、ハリケーンと関連するリスクへの大きな自覚が国民に対して強調された。ハリケーンの48時間前に、当局は、リスクが高いエリアを知られ、避難が始まる。アイケの前では、国民の23%に相当する260万人が避難し避難所に収容された。
カマグェイ州は人口が80万人以下だが、ハリケーンが到達する前に、医療専門家は、リスクが高い人々を特定した。それは、かなりの医学上の問題を抱えた約300人の子ども、8000人の幼児、そして、4000人の妊娠中の女性が含まれていた。子どもたちは適切な病院から出され、救急部が入院のために準備された。各避難センターには小児科の専門家が割り当てられた。ハリケーン・アイケから24時間後、カマグェイの子ども病院では、500人以上の緊急事例が示され、こうした子どものうち、96人は入院、4人は外科手術を必要であった。
ハリケーン後のヘルスケアは不可欠である。とりわけ、衛生の重要性が、急性胃腸炎の増加を最小とするため強調された。ハリケーン後に、胃腸炎は10%増えた。
ハリケーンから一週間以内に、カマグェイ州内の8000人の幼児全員がその自宅でファミリードクターや看護師他の保健専門家から訪問された。
キューバにはプライマリケアの世界最高の制度のひとつがあり、世界で最も人口当たりの医師比率が高いことからのみ、このことは可能であった。各ファミリー・ドクターと看護師は、120~160世帯の責任を負う。また、ハリケーンに引き続き、子どものメンタル・ヘルスの問題も重要な問題と認められているため、特別なケアが医療専門家によりなされた。
ハリケーン・グスタフとアイケによりキューバに引き起こされた経済的なダメージはかなりのものであった。とはいえ、約人口の4分の1の避難と並び早期警戒と準備を組み合わせたことから、人命は7人が失われただけであった。ジャマイカとドミニカ共和国の両国は、ハリケーンと関連する危険と死傷者を減らすにはどう適切に準備するかの個人の中で認識を高めるため、キューバと同じようにマスメディアを用いていた。20 影響を受けたエリアでの全個人のためのヘルスケアと並び、ハリケーンの前に準備として等しく重要であるのは、避難所、食料、水の準備を確実にすることである。
これは、影響を受ける国の政府により提供されるべきで、普遍的なヘルスケアがあれば、より提供しやすい。気候変動により、極端な気象現象が増加しそうな中、それ以外の国が人命の損失を最小とならせるために、キューバの経験を理解することは、重要である。
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