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1. キューバのリスク管理


1.1 キューバにおける防災管理


2004年9月にカテゴリ5のハリケーン・イワンで影響を受けたピナル・デル・リオ州のラ・バハダ村

 キューバは自然災害やそれ以外の様々なリスクにさらされている。西カリブ海におかれた地理的位置のため、毎年激しい気象的な事件、主にハリケーンの影響を受けている。国のハリケーン・シーズンは6月1日から11月30日まで6カ月続く。しかし、2005年は、それが2006年1月6日まで伸ばされたことで注目に値する年で、歴史上、最もアクティブなシーズンだった。

 1998年から2008年にかけ、キューバには20回以上の熱帯暴風雨が襲来している。うち14回はハリケーンで、7回はかなり大型であった。この間、計1100万人が避難している。インフラへのダメージはかなり大きく、100万戸以上の家屋が影響を受け、経済的損失は180億ドルと評価されている。しかし、この破壊にもかかわらず、人命は35人しか失われていない。

 さて、こうした事件で最も破壊的な衝撃にさらされるのは、孤立する沿岸部や山岳地の住民である。こうした地域では、以前の状態が復旧するまで数日間、連絡が途絶えたままになることもある。復旧活動は、既存の災害削減プランや様々な地域レベルの防衛委員会が下した決定に基づき、住宅、サービス、インフラ部門で行われる。


1.2 キューバにおける防災ビジョン


 キューバにおける自然災害のリスク削減は、法、政令(decreelaws)、規則(statutes)、省令(ministerial resolutions)を含めた法的枠組みに支えられている。このしっかりした制度的なベースが、災害リスクの削減戦略の実施とコントロールを担保している。

国内でかなりの人間や物的損失を引き起こす場合がある自然災害は、それ以外の社会的、経済的、環境的な変動と同じく、開発に悪影響を及ぼすそれ以外のすべてのタイプのカタストロフィーの発生を予期し、最小にとどめる市民防衛手段のシステムを開発することが必要である。国際的な援助や協力と同様に、リスク削減では、国家的な努力と資源のコーディネートが必要である。

 政府がリスク削減を支えるその最初の手段を採択したのは1959年の革命以降のことである。1962年に「市民防衛組織」が出現し、1966年7月に法律第1194号により、それは「市民防衛システム」へと変わった。1994年12月21日の法律第75号のチャプターXIVは、国が運営するシステムとして市民防衛の手段を定義した。その主な機能は、いかなるタイプの自然リスクやその他のリスクに直面しても、キューバ人民とその社会的、経済的成果を保護することである。同法は、知事や市長として機能する州とムニシピオ議会の代表が、それぞれの領域で市民防衛の代表としての責任を担うことを確立した。住民と経済を確実に保護する主な政策を実施する責任を負うのは、彼らである。国の機関、経済団体、社会的機関(social institutions)は、全人民の参加により、こうした手段を調整して実施しなければならない。

 なお、新たな経験や1997年5月の政令(Decree)第170号などの法制度によって、市民防衛システムは、絶えず改善されている。同法は、とりわけ、市民防衛の法的な枠組みを確立し、災害リスク削減の関連する分野を広げた。今日まで市民防衛システムは、45年間以上の経験を蓄積しており、長年にわたり数多くの災害に対し、その効率性や効果をテストしてきている。災害リスク削減は、幅広い法的枠組みや組織的、教育的な行動に見られるように、キューバ政府が最優先しているものである。それは、社会的、経済的、そして、人民の安全指標に前向きの影響を持っている。

 1963年に市民防衛システムによって実施されたアクションのひとつは概念であった。それは、その後、熱帯暴風雨、ハリケーン他の気象災害と関連する頻繁な氾濫を防ぎ、そのことでリスクがある地域におかれた人民や物品、資源を守ることを目的とする水利事業システム(system of hydraulic works)を発展させることとなる。「自発的な水力学(voluntary hydraulics)」として知られるこのシステムは、降雨パターンや水利事業(hydraulic works)と関連するそれ以外のデータも提供する。このシステムは、極端な状況下で適切に機能することにより、氾濫と関連したリスク要因の管理を可能としているのである。

ハバナにある国家市民防衛の統幕事務局の本部


1.3 防災管理センターの起源と前例


 2004年12月、国連開発計画の下、危機予防復興支援局(BCPR= Bureau for Crisis Prevention and Recovery)の災害削減ユニットは、2005年1月に神戸で開催された第二回国連防災世界会議で一連のケーススタディを発表した。この中に、「ハバナの沿岸居住区での防災:キューバの事例」があった。
この研究は、第四回災害予防欧州委員会人道援助アクションプランの枠組みの中、NGO、平和のための運動、軍縮と自由(MPDL)からの資金援助を受け、国家市民防衛の統幕事務局が開発したプロジェクトを報告した。このプロジェクトの肯定的な結果は以下のとおりであった。

  • ハバナの北海岸に沿う5つのムニシピオで沿岸洪水リスクアセスメントを実施。このプロセスは、市民防衛の代表として立場で、ムニシピオの市長が率い、参加型のアプローチを取り入れ、それが、研究にかかわる様々なセクターや機関のコーディネートをファシリテートした。この研究の結果、国家市民防衛の統幕事務局は、リスクアセスメントのための最初の方法論をデザインし確立した。
  • インターネット他のコミュニケーション・チャンネルにアクセスすることで市民防衛や気象サービスからの情報に対するムニシピオ政府のアクセスを改善。さらに、こうした機関から発行される早期警戒に対するコミュニティのアクセスを改良した。
  • リスク分析、意志決定、開発プロジェクト、災害危険状況への対応を促進するため、地理情報システム(GIS)を開発した。これはリスクと関連する目的のためGISが用いられた国の最初の経験であった。
  • 開発計画と投資プロジェクトにリスク分析を組み入れ、気象情報をモニターし、早期警戒ポイント(EWP)を動かすため、防災管理センターの永久的なムニシピオ指揮所を創設。
  • 災害時の第一対応者として、コミュニティ・レベルでレスキューと人命救出のブリガーダを創設し備えた。


2006年の第7回国際防災会議での防災管理センターのプレゼン

 このプロジェクトにより、地元の能力を奨励・強化するための新たな方法論と技術モデルの確立が可能となった。これが、ムニシピオ段階での防災管理センターの創設と脆弱なコミュニティにおける早期警戒ポイントの設立につながった。

 2005年6月、市民防衛と投資経済協力省は、カリブ海リスクマネジメント・イニシアティブのプロジェクト、危機予防復興支援局及びUNDPからの資金援助により、「防災管理センター」を最初に創設した。国内で最も脆弱なコミュニティのひとつである事実のため、最初のセンターは、サンティアゴ・デ・クーバのグアマ・ムニシピオにおかれた。

 災害リスク削減におけるキューバの努力は、その領域の数多くの国からも関心が持たれている。そして、国連、国際と地域の政府機関、そして、NGOの援助の下、交流と協力活動が行われている。


1.4 国家計画書と防災管理センター


 キューバにある国連開発プログラムは、国が自然災害に対応する能力を認め、その防災と復旧を支援している。UNDPは、災害リスク削減の総合的なマネジメントのため、地元の能力を高める戦略を認め、そのコラボレーションのため国内で最も脆弱なムニシピオを優先し、その戦略でにジェンダー重視も統合している。

 キューバの政府が認める国家的優先度に応じて、「国家計画書2008~2012」により定義され、これと対応する各国プログラム行動計画で概説される協力部門は、国連開発援助枠組みの目的に応じたものである。

 国家計画書と各国プログラム行動計画は、主な国の対応側と相談した結果の産物で、こうした協力は、UNDPの「グローバル戦略プラン2008~2011」にも添ったものである。国家計画書と各国プログラム行動計画が目指す成果は、国連サミット会議で各国が批准したミレニアム開発目標他のコミットメントの達成に寄与することであろう。

 国家計画書と各国プログラム行動計画は、ローカルのキャパシティ開発、とりわけ、脆弱なムニシピオや地域において、防災管理を優先し、ジェンダーを主流とすることを明確に述べている。これは、キューバが開発してきた経験に基づく、知識の体系化や伝達の重要性、その領域での南々強力の強化のためのアクションを概説したものである。

 国家計画書と各国プログラム行動計画が期待する成果は防災管理センターとローカルな早期警戒システムを強化し、包括的な研究を実施し、スタッフを訓練し、地域的なワークショップの交流に参加するアクションを通じて達成されることであろう。

2008~2010年のキューバでの国連開発援助の枠組みは、5部門に重点を置いて協力を行っている。ローカルな人間発展、自然災害とリスク、環境とエネルギー、医療と食料安全保障である。この枠組みの中に、防災管理センターと早期警戒方式の創設を支援続けるための条項がある。

 国連システム、協力機関、そして、NGOがこうした努力を実施するであろう。こうした組織が存在することは、ローカルや脆弱な地域を強調し、包括的なリスク削減マネジメントのキャパシティを強化する手段により、災害リスクを減らすための国家戦略を有効にしている。

 キューバの国家市民防衛、投資経済協力省、UNDP-キューバ、そして、カリブ海リスクマネジメント・イニシアティブは、このモデルで蓄積された経験を記録し、全国に普及するため、防災管理センターのこの体系化を準備した。防災管理センターのイニシアチブは、キューバ政府やキューバ内の様々な国際協力機関からの技術的資金的なサポートを受けている。とりわけ、UNDPや世界食糧計画、スペイン国際開発協力庁、そして、NGO、オクスファム、ベルギー連帯等である。

 我々は、防災管理センターによって達成されたベストな実践と学ばれた教訓が、国際的に考慮する要素、とりわけ、地域コミュニティに寄与すると予期する。これが、脆弱なコミュニティにおける災害リスク削減に寄与する同様のセンター他のイニシアチブの開発を可能とすることを我々は願っている。

 Caribbean Risk Management Initiative UNDP, Cuba Risk Reduction Management Centres Best Practices in Risk Reduction, 2010.