2006年10月24日 本文へジャンプ




2006年10月24日 カルデナス

バプテストの牧師レイムンド・ガルシア氏は、手入れの行き届いた圃場の作物、人造湖、そして、切り倒されることからなんとか守った古い樹木を見渡し、エル・レティロの限界を広げ、周囲の乾いた大地を緑に変える夢を抱いている。

「こうした土地を再生し、生産力のあるようにしたいと思っているのです」

 氏は、「内省と対話のためのクリスチャン・センター」の創設者でもあるが、この組織はハバナから150キロ東に離れたカルデナス市で最も活発な市民団体のひとつだ。5年前に「退避地」、エル・レティロと名付けられた土地の利用を政府から認められて以来、同センターのメンバーは、バイオガスを生産し、土地で働き、自然薬品、食品保存、工芸、そして、ヴィジュアル・アートのワークショップを開催し、周囲の村のためになっている。

 カルデナス市の人口は10万以上だが、90年代の経済危機で大変苦しめられた。造船所と4カ所の製糖工場が閉鎖され、パルプや紙工場の生産も半減する。結果として、近くの観光地バラデロが魅力的な雇用先となったのだ。

 だが、エル・レティロでは、これに代わる重要な雇用先やライフスタイルが現れつつある。以前は石ころや高い雑草に覆われていた土地が、農村コミュニティ開発と環境保全というセンターの2つのプロジェクトで、70人以上が働き作物を生産しているのだ。センターはNGOで、設立されたのは1991年だが、奥が深い社会的目標を持つ宗教団体で、そのミッションは「文化、ヒューマニズム、そして、キリスト教の最善の徳を育む」ことにある。活動に参加する誰もが歓迎され、教義の問題とならず、無神論でもかまわない。

 エル・レティロは、カルデナスから8キロ離れ、エル・セロやメルセディタス、メヒモ・ゴメス集落に近く、ホセ・スミス・コマス精糖工場の近くでもあるのだが、約50種類もの作物を生産している。 圃場ではキャベツ他の野菜、薬用植物15種が栽培され、様々な花が咲く。農場ではウサギ、羊、ヤギ、牛、ガチョウ、ハチも飼育している。栽培されたハーブはムニシピオの自然薬品ラボラトリーに提供され、ハーブ製品に加工される。生鮮野菜や保存作物は、地元の農業省の当局との契約で、ムニシピオにある11の社会的施設で子どもや高齢者に与えられている。

「小学校、保育園、幼稚園、糖尿病科、養護学校、産院は、ジャムとフルーツ・ジュース、野菜と肉、そして、ピクルス、フルーツサラダ、トマトとペッパーソースも消費しています」

とプロジェクトのコーディネーターである農学者リタ・ガルシアさんは言う。

 4月26日には大きなハリケーンに見舞われたが、エル・レエィロは、今年半ばに「全国の優良モデル」としての農業省の全国都市農業グループから受賞したが、それ以前も受賞している。

「私たちは有機農業を促進しています。それは、播種から収穫まで完全なサイクルで、環境に害のある化学物質の使用を避けています。バイオガスや自家製の肥料さえ作っているのです」とガルシア氏は説明する。

 農作業と同じく、農場では、農家、学校、保育園、そして、近くの精糖工場向けに14~42立方容量のバイオガス・プラントを200以上建設している。

「数年前までは、農村住民はバイオガスについて何も知りませんでしたが、今、彼らは、それがどれほど役立つかを知っています。すでに200件以上のオーダーがあります」とガルシアさんは語る。

「それはエネルギー需要を解決するだけではありません。健康にも関係します。ケロジェンのような毒性のある燃料を使わず、動物の屎尿が活用でき、悪臭も漂わずハエもわかないのです」

 センターのメンバーは、風力やソーラー・エネルギーの導入も夢を見てはいるのだが、まだ値段が高い技術であることから、再植林プロジェクトを進めている。その第一段階は、地区に10万本の果樹や材木用の樹木を植えることだ。事務局長によれば、地区は2001年のハリケーン・ミシェル等、ここ数年間たびたび襲うハリケーンの被害からまだ回復していない。

「多くの家では庭の果樹が強風で倒され、すいぶん時が経ちましたが、まだ植替えられていないのです」とガルシア牧師が言う。

「また、果樹で在来種が失われていることも目にしました。カルデナスでは知られていないパンの木のような品種で小さな森を創るために種子を国中で探しているのですが、野生のオリーブやマンダリン・オレンジの特定品種もキューバの東部、いくつかの僻地で見つけられるだけなのです」

 だが、こうした大変な苦労をしたにも関わらず、エル・レティロの事業は利益をあげるまでに至っていない。その理由のひとつは、1990年代前半以来、地元通貨と兌換ペソという二重通貨制度があるためだ。ガルシア氏によれば、年間に50万ペソの収益をあげながらも、兌換ペソで国からその全原材料や機材を購入しなければならないために、それはなくなってしまうのだ。

 ガルシア氏はバイオガス・プラントの例をあげる。

「私たちは、すべての材料を兌換ペソで支払い、キューバ・ペソでそれらを販売します。言い換えれば、支払えるときに適切な値段で、です。買い手の何人かはとても貧しく、牛と豚小屋を持っているだけです。こうした状況ですから、いつも失敗し、利益をあげられる方法が全くないのです」と氏は語った。


 Dalia Acosta, Faith, Farming and the Environment, Inter Press Service, Oct 24, 2006.