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2007年10月3日 ハバナ


9年ほど前からハバナ郊外のバルコン・アリマオ地区で、住民参加のもとに諸問題に取り組むために2人の女性が立ち上げた「パウロ・フレイレ・コミュニティ・センター」は、大変な苦労を重ねた後、地区のコミュニティ・センターとなり、2003年の7月からは「地区総合改革ワークショップ」の拠点へと成長している。

 だが、そう物事は簡単には進まなかった。2人は女性だったから地元住民の信頼を勝ち取るのは容易ではなかったし、劣悪な住宅、道路、水道や下水インフラ、若者たちの暴力犯罪やドラッグといった山積する課題はとうてい克服できそうもなかった。

「住宅、道、下水道といった劣悪なインフラの修復では何もやれませんでした」とワークショップを立ち上げた、マリア・デ・ラ・カリダ・イネラリティさん(56歳)は認める。とはいえ、ワークショップは、貧困が原因で各地区で生じている社会問題に対処するため、ハバナ市当局が創設した「首都総合開発グループ」が立ち上げた20のイニシアチブのひとつとなっているのだ。

 住民参加のもとに地元要望を確認したところ、路上照明を改善したり地元に高校を建てることが、住民要望たちが一番望んでいることがわかった。資金不足の中、この要望を実現するため、イネラリティさんと仲間のマリツァ・ロペスさんは、当局に要請を行い続ける。結果として、2人の努力は実り、地元のリーダー、政治組織の代表、土木技師であるエディクト・ディアス氏らの協力も得て、以前は商業地や農地に投機されていたゴミを収集することにも成功する。

「とはいえ、まだ地元住人の環境意識は低いですし、ゴミが投棄されるといった問題はあります」とイネラリティさんは語る。地元住民とゴミ処理サービスが協定したことで、ゴミは早朝に毎日カートで収集されている。

 ハバナ西部にあるバルコン・アリマオは広さが1.7平方キロ、人口2万人の地区で、労働者階級の住民が家を建て始めた1940年代にできた。1950年代に同地区に建てられたサン・スーシ・キャバレーは、トロピカーナと並ぶほど有名となり、フランク・シナトラ、ナット・キング・コール、エディット・ピアフといった国際的な著名人が訪れた。だが、革命後にカストロによって閉鎖される。

「私たちは立ち上げた組織活動に少しずつ人々を呼び入れました。最初のうちは参加させることが本当に大変でしたが、今では私たちの仕事を信頼してくれています」とイネラリティさんは語る。

 デング熱の予防プロジェクトを成功させるにも住民参加は不可欠だ。ネッタイシマカを媒介に広まるデング熱の予防活動は、ワークショップと熱帯医療ペドロ・クリ研究所とが協力することで執り行われている。

 地区改革ワークショップの努力で、地区住民の参加も増え、犯罪の発生率は低下した。だが、粗末な住宅、道路、水道や下水道の劣化状態は、地区の辺境部分では変わりがないとイネラリティさんは語る。キューバの人口は1120万人だが、2002年の全国センサスによれば、約50万戸の住宅が不足し、悪化した住宅は都市では15%、農村では38%にも及ぶ。

 ワークショップの本部となっているのは、ラテンアメリカの民衆教育の「父」として知られるブラジルの教育者、パウロ・フレイレの名にちなむ「パウロ・フレイレ・コミュニティ・センター」だが、センターでは、課題解決のための地元の能力をアップさせることを目的に、様々なトレーニング・プログラムやコースを提供している。例えば、「人生を愛する人々のために」と名付けられたプロジェクトは、地元のエイズ患者向けのものだ。

 イネラリティさんとロペスさんは、健康増進とカウンセリングの教育を受け、抗エイズ薬の継続摂取や健康的でバランスのとれた食事を摂ることの大切さをテーマにグループ討論を支援している。

「地区でエイズが問題となったとき、そのアイデアはHIVの陽性患者自身から出たのです」とイネラリティさんは説明する。彼女はエイズとともに生きようという連帯精神からグループ・メンバーからもこよなく愛されているが「集会は本当に感動ものでした」と付け足す。

 コミュニティ・センターは盲人用のプロジェクト、「希望の光」、高齢者大学、代替医療プログラムやFEPADにもスペースを提供している。FEPADとは民衆教育のための遠隔教育プログラムで、NGOマーティン・ルーサー・キング記念センターとの協働でされているものだ。

 イネラリティさんは小中学校で29年間教員を勤めてきたが、「マーティン・ルーサー・キング・センターの後ろ支えと教育プログラムのおかげで多くの夢を実現できました」と今はセンターが推進する民衆教育の手法を活用している。9年にわたる活動で、ワークショップはオックスファム・カナダやノルウェーの・ピープルズ・エイドといった国際NGO、フェリックス・バレラ・センター、コミュニティ・イニシアティブ交流参照センターといったキューバの組織からも支援を受けた。

「人々はコミュニティ・センターに出あう場所があるのを承知のうえでやってきてくれるのです。ここをコミュニティの主要な社会的センターとして認めてくれ、地区の様々なグループと行う私たちの仕事も尊敬してくれているのです」
 そう、イネラリティさんは語った。



 Dalia Acosta, Citizen Action Transforming the Barrio, Inter Press Service, Oct3,2007.