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2007年10月26日 ハバナ 

キューバは1990年代前半に共産主義圏崩壊の危機を見事に乗り切って見せた。が、旧ソ連や東欧との関係が緊密だっただけに、その遺産は、いまだに社会主義の将来に影を落としている。政治手法、マルクス・レーニン主義教育、組織体制や経済構造、国家の文化管理から、人々の普段着から屋内の装飾にいたるまで、1960年代以来に旧社会主義圏が及ぼした影響はあらゆる面に及んだ。

「この遺産がもたらした最害のものは、独立した判断力や革命的な創造性を欠く市民を形成してしまったことです。そのために次世代に個性や知識を継承できなくなったのです」と、ハバナ大学法学部のフリオ・アントニオ・フェルナンデス教授(32歳)は語る。教授によればソ連の最悪時期の最悪状態の政治的習慣が、革命時にはなかった国策の決定方法に影響を及ぼしたのだという。だが、キューバの政治文化の特性は、旧ソ連由来のものだけには限定されない。
「革命は極めて権威主義的にスタートしましたが、トップ・ダウンの組織構造を取り入れることが自衛の死活問題だったからです」とファン・マリネジョ・キューバ文化研究開発センターの研究者、アレクサンドル・コレア氏は語る。1959年の革命の勝利以降に始まった米国からの攻撃に対し、自衛の必要性から組織化された大規模な民兵にマルクス・レーニン主義教育を行ったことが、国内に権威主義的な社会構造やイデオロギーをはびこらせたのだと指摘する。

 フェルナンデスとコレア両氏は、文化省の後援を得て、フアン・マリネジョキューバ文化研究開発センターで「ボルシェビキ革命、ソ連史、キューバ:21世紀に向けた社会主義の批判分析」というワークショップを開催している。

 ワークショップでは「階級優位の制度改革に挑戦した史上最大のプロジェクト、ボルシェビキ革命史を復元し、同時にキューバとソ連との関係を再構築し、今につなげることを試みています」と教授兼作家のフリオ・セザル・グアンチェ氏は語る。

 ワークショップは、公開講座を開き、様々な経歴の40人からなるワーキング・グループが、個人的に集まり、民衆教育と同じ集合的な知識を構築する手法を用いている。

「私たちが守るべきイデオロギーでありながら、まさにその本質とは矛盾する『社会主義』という名を借りて輸入されたモノを根こそぎにし、キューバでの社会主義思想の勝利に貢献するのが目標です」と、グアンチェ氏は語る。

「キューバとソ連との関係には様々なものがありましたが、革命プロジェクトと自治とのコンフリクトが常にありました」と語るのは、NGOのマーティン・ルーサー・キング記念センターの歴史家、アリエル・ダセル氏だ。

 米国が1960年に砂糖購入を拒絶してからというもの、ソ連が砂糖を買い入れ、冷戦の地政学の中で国防の役目を果たしてきた。そして、砂糖収穫での経済飛躍に1970年に失敗してからは、キューバへのソ連の影響力は決定的なものとなった。

 1990年代前半には、ソ連が主要貿易相手国となり、砂糖の80%、ニッケルの70%、柑橘類の40%を購入。毎年1200万トンの石油を供給してはエネルギー需要も満たしていた。崩壊につながったソ連の誤りを分析することが、ワークショップの緊急業務だ。

「キューバとは無縁のこと。歴史は繰り返されないと、この問題を考慮しないことはばかげています」と、フェルナンデス教授は語り、現在のキューバの誤った習慣として「一党制度の官僚制度のトップ・ダウンのヒエラルキーや全国人民権力等、革命が創設したものも含め、政府機関への住民参加の不足」をあげる。

「今後も社会主義がずっと続くとして、今、やるべきことは多くあります。とりわけ、イデオロギー的なところでです。ソ連社会主義と『現実的社会主義』の誤りを繰り返さないだけではなく、僕らの世代は骨が折れるタスクに直面しています」と教授は確信を持って語る。

 季刊誌テマスの編集者、イラン・エルナンデス教授は、今キューバが直面するのは「国家として革命として、若年の移住、人口の高齢化、革命プロジェクトの未来、そして、プロジェクトと夢としての社会主義の未来だ」と語る。

 教授の見解では若者たちは、「突撃用の専用部隊やただスローガンを繰り返すマウスピース」としてだけ使われてきた。今、必要とされているのは、斬新なアイディアとより創造的でアクティブな態度だ。

 「革命が続くにはこれが必要ですし、社会主義が可能になるにもそれが必要です」と教授は言う。

 つまり、キューバ社会主義の将来は、大枠において、この15年の資本主義的な要素の組み込みとその社会への影響で浸食された制度の社会的コンセンサスが再建できるかにかかっている。

 「社会主義は貧困層や黒人、女性など社会の一部だけのためのものではありません。社会全体、すべての人びとを包み込む体系と考えられるべきです。社会主義は、人間に優劣をつけるものではなく、すべての人間を解放するものだというのが、マルクス主義のもっとも純粋な解放論の本来の思想だったはずです。我々は、社会のそれ以外の部分でも進行しているプロセスの一部で、中期的に展開し続け、いずれは革命の目的を広げ深めるべき流れの一部なのです」とグアンチェ氏は語った。


 Dalia Acosta, Separating the Wheat from the Chaff - Studying the Soviet Legacy, Inter Press Sservice,Oct26,2007.