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2007年11月20日 ハバナ 

ローカルな社会変革における民衆教育の役割が注目されている。キューバがこのまま社会主義国のままとどまるとしても、社会改革は避けられないが、その際、活発な人民参加が必要だとの議論が広まっている。

  NGOマーティン・ルーサー・キング記念センターの支援を受け、民衆教育のネットワークは、すでに、地域活動(コミュニティワーク)や地方自治、アグロエコロジー、健康等の分野でかなりの成果をあげている。
「民衆教育は、コミュニティでの暮らし、組織や職場での民衆参加の文化発展の促進にも大きく貢献しています」

 「民衆教育は、コミュニティでの暮らし、組織や職場での民衆参加の文化発展の促進にも大きく貢献しています」

 そう語るのは、マーティン・ルーサー・キング記念センターの総合コーディネータ、ジョエル・スアレス氏(45歳)だ。

「私どもはこれまで継承してきた政治的文化の中で参加を進めていますが、それは集団として再創出されています。トップダウンで硬直化した権威主義的なやり方が存続していることは認めますが、民衆教育は、より社会主義的で社会的なプロセスを構成してリードする参加型のやり方に寄付できるのです」と語る。

 氏によれば、活動が最も盛んなのは「人民権力政府」だ。それは、全国、州、地元と各段階に存在し、国の将来を決める政治に人民が参加するための具体的な場となっている。そして、ハバナでは、地元当局と連携した地区総合改革ワークショップが、民衆教育の概念や手法を用いて、この「人民権力代表」のためのトレーニングを始めている。

「私どもの社会的大規模組織は、ダイナミックな変化・刷新と、地方自治の推進という双方を目標としなければなりません。なぜなら、それが人民に影響する政策決定に参加する重要な機会だからです」

 氏は労働者の組織内でも改革が始まっていると語る。それ以外でもシエンフエゴス州におけるハバナ農科大学とエスカンブライ実験ステーションによる土壌調査では、農村の環境保全や持続可能農業の開発において、従来のモデルが住民参加型に改革されている。民衆教育は、最東部のグアンタナモ州から最西部のピナル・デル・リオ州に至るまで、文化プロジェクト、予防健康プログラム、アカデミックな大学教育、教会や宗教団体にも影響しているのだ。

 民衆教育の政治理論は「自由の実践としての教育」や「抑圧の教育学」の著者として知られ、成人の識字力向上に尽力したブラジルの教育者・哲学者パウロ・フレイレが開発してきた。

「民衆教育の目的は、各個人やグループが自分たちが生きる世界の現実を知り、自分たち自身の歴史の重要な対象となるよう力づけることにあります」とスアレス氏は語る。

 1995年以来、マーティン・ルーサー・キング記念センターは、民衆教育や地元の参加型プログラムを行っているが、参加型の文化を発展させ、社会化に寄与すべく、人々やグループをトレーニングし、アドバイスを行っている。同センターによれば、2006~2008年のプログラムの3カ年目標は「平等や社会正義のプロジェクトへの社会組織のコミットメントを拡充・強化し、社会的な主体を組織・意識化することで、批判的な思考法や政治参加の能力を高める」ことにある。

 現在、マーティン・ルーサー・キング記念センターは全国に100以上のパートナーのネットワークを持ち、「民衆教育訓練遠隔地サポート」(FEPAD)ではすでに21グループが立ち上げられた。それは、国内各地で数多くの地元イニシアチブを発展させている。

 2007年11月12~16日には、初めての「全国民衆教育ネットワーク会議」がハバナ西方20キロのカイミトで開催された。会議に先立ち、9回の準備会議が各地で催され、計435人の参加者が、71の民衆教育イニシアチブの経験を持ち寄った。

 ネットワークは「連帯、正義、公平、帰属とアイデンティティ意識、協力と社会的一体性に基づく、性、宗教、そして、相互世代の多様性を認識する社会関係を促進する織物」とそれ自体を記述する。

 ネットワークのメンバーがもっぱら関心をもって交流しているのは、①地方開発とコミュニティ・ワーク、②ジェンダーと民衆教育、③環境の三分野だ。環境では、集約的な高投入型の化学農業とは対照的な有機農業、環境教育、アグロエコロジー等が主なトピックとなっている。

「会議は、国のおかれた状況分析のわかちあいから始まり、2007年7月26日の革命記念日での現首相ラウル・カストロの演説で大きく後押しされ、雪玉式に高まっている討論に沿って始まりました。人々の懸念や日々の暮らしでストレスが多さにも関わらず、参加者たちが政治や革命の献身で無私無欲さや愛を表明したことは、改めて興味深いものでした」

 そうスアレス氏は語るが、氏はラウル・カストロの批判表現でいう「家長的でトップダウンのヒエラルキー構造や権威主義」がいまだに残る政治文化領域において、民衆教育の理念を広めることが大変であることを認める。

 議論では、ネットワークのメンバーから「官僚制度の力で巨人となった風車。大胆さやイニシアチブを欠き、人民の声よりも上からの指示を気にする組織と戦わなければならない」との発言が出たという。

「私どもがやっていることはつつましいものです。とはいえ、大きな貢献だとも思います。キューバが社会主義を完成させるために、草の根での本質的な探求が求められている時代だからです」

 そうスアレス氏は語った。


 Dalia Acosta, Sails of Popular Education Catch Winds of Socialist Change , Inter Press Service,Nov20,2007.