
2000年以来、農業革新プログラムは、農村の何百世帯もの暮らしを変えつつある。このプログラムにかかわるようになってから、バリド(47歳)さんも、伝統的な家庭の雑役に関わるただの百姓と自分を思うことを止めている。
全国農業科学研究所の総合科学チームによって始められた地元農業改革プログラムが目指すのは、農業を活性化させ、キューバ農政への小規模農家の参加を促進することにある。
「以前はぜんぜん動機が持てませんでした。でも、今は他の生産者と交流に参加するために、他の人々に見せたいと願って朝に起きるのです」
全国農業科学研究所の専門家がやってきたことは、バリドさんや夫のアゴスティン氏には驚きだった。夫妻の小規模な農場は、ハバナから125キロ西方のピナル・デル・リオ州のモンゴテスとして知られる上部が平坦な丘に囲まれた谷、サン・アンドレアスにある。
「最初は何もかもがちょっと奇妙に思えましたが、私たちは彼らが持ってきた種子で革新を始めたんです。そして、それは本当に大きなものとなりました」とバリドさんは言う。
最初の実験は、地場産の家畜飼料の開発プロジェクトで、それが、ササゲ、ダイズ、トウモロコシ、ソルガムの品種の多様化につながった。豚の飼養用の餌を自給することで、バリドさんと夫は、所得をあげ、国の家畜飼料にはもう依存していない。土壌保全用の技術改良や様々な根菜類や菜園用の野菜を取り入れたことも所得向上につながった。
他のプログラムの関係者と経験をわかちあうことで、バリドさんは自家菜園を立ちあげ、家族用にトマト、マンゴー、柑橘類等の自家製の保存食を作り始める動機も得た。
「参加する女性たちは市場に依存しなくなりますから、経済的な自立につながるのです。私は、ここで作れるものだけを買います。化学物質なしですべてをやりますから、それはずっと健康的なのです」とバリドさんは語る。
サン・アンドレアスの人口は3,500人強だ。一部は小集落として固まっているが、それ以外の200戸は孤立点在し、うち4分の1には電気もない。多くは不適当な農耕や水不足といった地元の状況で劣化した農地で自給農業に携わっている。
保存食や香辛料が販売でき新たな収入源となる可能性で、サン・アンドレアスのもう一人のカンペシーナ、ソイラ・プラセンシア(42歳)はやる気を奮い立たせている。
「生産が高まれば、生産物が売れると思います。それは、ここの女性やコミュニティのためになるでしょう」と彼女はコメントする。
プラセンシアさんは、地元消費用の家庭の保存食や香辛料生産を活発に進めていることで認められている。彼女のアイデアは、若者や女性たちに新たな雇用を創出する小規模アグリビジネスの運営で具体化できる。
「このコミュニティでは、女性たちが給料の出る雇用機会がとても限られていて、主に家事に専念しています」
そう語るのは、2007年12月にサン・アンドレスで開催された第2回地元農業改革フェスティバルのコーディネーターで、国立農業科学研究所の専門家でもあるアニア・ヨングさんだ。ヨングさんは、観賞植物や果樹栽培を薦める目標を持って、ここにやって来た。だが、彼女はそのかわりに、保存食や香辛料の生産訓練を受けたいとの強いニーズがあることに気づいた。
「お金を貯め、健康にも有益で、このイニシアチブは女性たちが賛同しています。彼女たちは、必要なものを生産し、ある場合は、生産物を販売さえできるのです」
ヨングさんは、プログラムがもたらした影響で重要なのは農村の女性たちの自尊心だ、と強調する。
キューバ農村住民の約47%は女性で、農村女性は1120万の国民の11%以上を占める。地元農業改革プログラムは2000年に立ちあげられて以来、14州のうち9州まで広まり、農業や環境部門で大学や研究機関、国内外のNGO、開発援助機関、政府当局の支援を受けている。プログラムが取組んでいるのは、①トレーニングと普及、②研究、③畜産、④種子の多様化、⑤統合農業管理の主に5分野で、どの分野にもジェンダーの視点を組み込んでいる。
「そのアイデアは、プログラムがどんなメリットをもたらすか密着してモニタリングをしつつ、資源の利用の仕方、管理や使用方法を提供し、各テーマで参加の機会を女性たちに与えようというものです」
ネンシダ・ペルムイさんは言う。彼女は、ハバナの約690キロ東のオルギン州の地元農業改革プログラムでジェンダー問題の責任者だ。
ペルムイさんやオルギンの地元農業改革センターの他のチームは、ラス・カオバス集落でその仕事を始めた。
「ここでは男性は外に出てお金を稼いできますが、女性たちは家庭で子孫を残す役割を満たすだけです」と彼女はいう。マチスモは誰にとっても、とても根深く、専門家たちの間ですら、ジェンダーの視点を持つことが困難なのですが、と認めつつも、「私たちは女性たちが経済的に男性に依存していないように、コミュニティのバランスを進めています」と、ペルムイさんは説明する。
ペルムイさんは、大きな変化が起きていないことも認める。だが、ある女性たちは、家庭収入を増やすために、さらに学んだり、新たな活動に挑んでいて、それ以外でもますます多くの女性たちが農業協同組合に加わっていることを強調する。
「私はコミュニティを信じており、私たちの中で最も難しい変化、メンタリティの変化も達成していけると確信しています」と、彼女は断言した。
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