
配給手帳は、社会主義が失敗した兆候として批判されたり、あるいは、廃止すべきではない権利としても見られているが、この46年間、キューバの暮らしの一部だった。だが、必要とされる国の経済改革の結果、消えうせるかもしれない。
あるエコノミストは、この形式での全面的な分配を廃止することが必要だとのコンセンサスが、政府内で得られているように思えると語る。それは、ある時期には役割を果たして蛾、今となっては時代錯誤となり、むしろ、格差拡大に寄与している。
「とはいえ、突然に廃止すべきではありませんし、国民の一部へのドラスティックな影響を防ぐために一連の政策を伴うことが必要でしょう」とアルマンド・ノバ教授は語る。
「私どもは、1120万人の全員に同じ利益を提供するこの流通制度の廃止に向けて、取り組まなければなりません。それを必要としていない人々もいるのです」と、経済学の教授は述べる。
「産物よりも、むしろ個人や家族に助成金を支給するほうがよいかもしれません。ですが、それは十分に熟慮され、体系的なプロセスの一部でなければなりません」と教授は言う。
この話題についての議論は、ラウル・カストロが、配給手帳制度のもとで分配される製品を含め、莫大な補助金は不合理で、現在の経済情勢では維持が不可能だと口にしてから、高まっている。当局は、補助金を上乗せした価格で配給・販売される基礎製品の平均年間コストは10億ドルと報告するが、今年の輸入食料の総額は、国際市場での価格高騰で19億ドルに達するであろう。
「配給手帳の産物は月のすべてをカバーするわけではありませんが、少なくとも制度のおかげで、米、いくらかの豆、砂糖と少しのタンパク質を廉価で手に入れることができています。でも、たとえそうであるとしても、私の年金はまるで蒸気のように消えてしまいます。もし、それが廃止されたらどうなるかを想像してみてください」と元教師のディグナ・ペレス(59歳)氏は言う。
ペレス氏が言及した項目以外に、誰もが、油、卵10個、歯磨や石鹸他の毎月の配給権を持っており、1980年代後半までは、配給には製造加工品も含まれていた。
キューバの国連開発援助枠組みの文書は、この食料配給は全市民に保証された権利であり、子どもや妊婦、泌乳中の女性、医学的根拠から特定の食事が必要な人等の社会的弱者は、さらに補足がされていることを強調している。
だが、ハバナ大学キューバ経済研究センターで研究を実施したノバ教授によれば、今各世帯が受けている配給食料は、一人当たり必要なカロリーの約36%、月の約12日間分を提供しているが、蛋白質では10日間分、脂肪では9日間をカバーしているだけだ。
「実際のところ、配給手帳は1960年代にあったものの影にすぎず、総カロリー摂取量の決定的要素でもありませんが、軽視はできません」と教授は言う。配給制度は、1962年3月に当時の食料不足と戦うために創設された。その理由の一部は、当時、キューバの主な供給先であった米国が、キューバ革命の方向性に反対し、キューバとのすべての結びつきを断ち切ったという姿勢にある。それ以外の理由は、国民の購買力が高まり、消費財の生産速度や国がそれらを輸入する能力を追い越していたことがある。
配給は、助成金を上乗せした価格で全国民に最小限度の食料や物品を保証することを意味し、時にはそれは生産費を下回っていた。
「内的爆発があったかもしれない困難な状況でしたから、配給手帳が全家族にベーシック・ニーズを担保する目的を実現させたのです。1980年代には、この統制された流通と安価な自由市場が存在したことで、キューバはラテンアメリカでは並ぶものがなき平等を達成したと言えます」とノバ教授は語る。
だが、1980年代後半と1990年代前半にかけ、当時のキューバの政治・経済同盟国であったソ連が崩壊し東欧社会主義圏が消滅したことで、主な市場は失われ、経済は落ち込み、地元の暮らしは抜本的な影響を受ける。1993年の消費は1989年よりも31%も落ち込み、国民総生産(GDP)は35%も急落した。だが、1993年前後から経済を転換する調整手段のパッケージが始まり、専門家によれば、2000年には総消費で37%成長した。
だが、今、その需要をカバーするため、消費者たちは農民市場に行かなければならない。そこでは、良質の果物、野菜、穀類、豚肉他の食料が現地の通貨、ペソで販売されてはいるのだが、値段が高いのだ。
靴、個人的衛生用品や家庭雑貨、家具等他の必需品は、配給手帳制度がないために、政府の兌換ペソ店舗で販売されている。店舗では、国が認める唯一の交換可能通貨、兌換ペソ(CUC)しか使えない。そして、国営信用情報交換所では25キューバ・ペソか1.25ドルで両替される。だが、商業部門ではキューバ・ペソの公定歩合が1兌換ペソなのだ。
農産物の店舗も含めて、完全に国が管理下においている国内市場では、最高価格は生産者と政府との同意で決められている。農家畜市場、市場菜園やハイドロポニコ農場での直売、近隣の販路やキオスクといった全小売店の商品は、品質や品数、供給の安定性が劣る傾向はあるものの、自由農民市場や兌換ペソ店と価格が同じか、少しだけ安い。これらは、闇市場価格さえ参照しているからだ。
ノバ教授の見解では「生産力の発展を妨げる結びつき」の除去を含むべきであるレシピの一部として、「これらのすべての市場を統一し、低下価格を保障するための協定を求める努力をするべきだ」
教授は、農業と家畜部門で高収量を実現するには「生産関係での改革」と「生産の輪を完成するビジネス部門での為替レートでの前進」が必要だと語り、生産者のやる気をなくす要因に、ビジネスでのキューバ・ペソと兌換ペソの1対1のレートと生産性の向上につながる輸入投入資材や農機具を購入するための為替市場の不足があることを示唆した。
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