2000年
農民参加型種苗開発

 1989年まで、キューバ農業は、海外からの外部投入資材に依存し、このシステムが国の可耕地の70%以上をカバーしていました。小規模農民たちの土地の占有率を引き下げることが公式の政策でした。生産者たちは、国営農場や協同組合を結成するためにその土地を手渡さなければなりませんでした。ですが、国内の東部や西部のピナル・デル・リオ州のように伝統農業がいまだに優位な地域もあったのです(Trinks and Miedema, 1999)。

 ところが、1989年に社会主義諸国が崩壊した後は、モノカルチャー農業の割合は劇的に減っていきます。主な農業投入資材である燃料の使用量は2年間で1300万トンから610万トンまで低下し、同じく、肥料の使用量も130万トンから30万トン、農薬も8000万米ドルから3000万米ドルと減ったのです(Rosset and Benjamin, 1993)。

 同時に、キューバの農民と科学者たちは、生物や生物以外のストレスから植物を保護するオルターナティブな手段を模索し始めていました。彼らは、効率的に土地を活用することを試み、低投入型の実験を行います。この実験では、ずっと過小評価されてきた農民たちの知識が、再び重要な役割を演じたのでした。

 以前は、小規模な農民たちが用いてきたトウモロコシとマメやトウモロコシとカボチャといった伝統的な作物の組み合わせが、広範な地域で一般的な取り組みとなっていきます。同時に、ニンジンとキャベツ、レタスとキャベツ、ニンジンとニンニク、トマトとマメ、サツマイモとカボチャ、トウモロコシとトマト、バナナとマメ、バナナとタロイモとマメとトウモロコシ、サトウキビとマメといった珍しい作物の組み合わせが、ずっとモノカルチャーが支配的だった地域に登場してきます。

 正規の研究所の仕事の大半はいまだにモノカルチャー志向です。ですが、1990年代前半には、多くの地域が正規の統計上からは読み取れないまま残されていたやり方で食料を生産し始めます。

 現実に外部投入資材がないというこの新たな状況下で、新たな作柄の組み合わせのほとんどがモノカルチャーよりも生産的なことがわかってきました。まずは、「義務の作物」を生産・収穫して、とても安い値段で国の市場に売り、次には、強力な価格インセンティブのもとで自由市場で売るために生産する。作物を組み合せた多くの農民たちは、以前は単作だった同じ土地で2種類以上の作物を得られたし、それまでとは異なる作付け計画のもと、それまでとは違ったやり方で働けるようにもなりました。

 例えば、広大なサトウキビ農場では、1列か2列のマメかエンドウマメがサトウキビの2列の間に植えられます。このやり方で、サトウキビが育ちだす始めにマメを蒔いた農民たちは、マメを自給できたり自由市場で販売できたのです。こうした混作(polycropping)で、農民たちは一種類の公式の作物を生産し、同時に二番目の作物を販売することで収入が確保されたのでした。混作は、化学的農薬がないとき、病害虫の良い防除やほとんどない投入資材の効率使用と高い経済収益性につながりました。混作のアプローチは、外部投入資材の危機の結果を軽減するやり方として、キューバ全土で急速に広まります。科学者たちは、運動に参加し、この方法の研究を始めました。

トマトとトウモロコシ: 珍しい組み合わせ

 トマト(Lycopersicon esculentum Mill)は、1989年以前には、典型的なモノカルチャーで栽培されてきました。トマトは、キューバでは10月21日~12月20日の最適な温度、日射、そして、相対湿度の組み合わせが必要です。旬以外のトマト生産は、有利ですが、とても高くつきますし、理想的にはエネルギーを浪費するハウスで生産されるべきなのです。この問題の解決策は、トウモロコシを用いて、シーズン・オフに、トマトに自然な日陰げを作り、トマトにとって望ましい微環境を変えることで見つかりいました。トマトとトウモロコシの空間配置を変え、小規模な農場で試験がなされました。施肥は、バイオ肥料と窒素90kg/ ha(窒素120kg/ haが通常は推薦さ)を組み合わせてなされました。

 そして、最も生産的な空間配置は、二列のトウモロコシの間にトマト3列を植えることでした。北から南向きの畝で、トマトを移植する30日前にトウモロコシが蒔かれたのです。この空間配置で、日射強度は約25%減り、それが約30Cの温度低下につながり、トウモロコシの日陰の下で生産されたトマトの収量は、モノカルチャーで栽培されたものと比べ、5~6トン/ haも増加したのです。トマトとトウモロコシの組み合わせで、コナジラミ(white fly)成虫は約24%、ウイルス感染率は6%も減りましたし、果実の品質もずっと良いことがわかったのです。

 農民たちにとっての主なメリットは、最適な播種時期の前後に植えることができ、もぎたてのトマトをオフ・シーズンに売り出し、その結果収入を上げられることです。モノカルチャーで栽培されていたトマトが、トマトとトウモロコシの混作にかわると、利益率は最適な時期の後に播種されるときは1.9~3、最適な種蒔時期の前にまかれるときは、2.4~3.5まで増えました。同時に、トウモロコシのいくらかは、自由市場で自家消費か販売用に生産されたのです(Pino, 2000, in preparation)。

 以前には珍しかったトマトとトウモロコシの組み合わせが、サン・ホセ・デ・ラス・ラハス(San Jose de Las Lajas)ムニシピオの平均一ヘクタールの小規模な個人農家ではますます一般的になってきています。この作物の組合せがさらに普及する主なネックは機械化が難しいことです。

 新たなキューバ農業の主な要素としての作物の組み合わせのメリットをキューバの小役人たちはごく少人数しか理解していないのに、農民たちがどれほど素早くこのやり方やそれ以外の低投入型のシステムを取り入れたかに注意しておくことはとても興味深いことです。農業におけるそうしたオルターナティブな実践が、キューバ経済を少しは回復させ、食料安全保障では大きく貢献した事実があるにもかかわらず、政策立案者たちは、いまだに高投入型の外部投入資材の利用を主張しているのです。外部投入資材への依存にまた立ち返ることを避けるため、今、挑戦すべきことは、研究者にとっても農民にとっても、成功する作物の組み合わせについてのより多くの証拠を集めることなのであります。

  Maria de los Angeles Pino and Humberto Rios Labrada, The Cuban response to scarcity of inputs Crop associations, LEISA Magazine, December 2000.
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