2005年8月 本文へジャンプ


キューバの農業改革



Ⅱ生産状況

2. 物的生産

 表1は、主要農産物、鉱工業部門の1993年以降の急激な落ち込みを示したものだ(略)。ガルシア・モリーナは、1998~2002年にかけて精糖業が年に2.3%も低下したことをハリケーン災害の結果としている、産出量は1989年800万トン、1993年400万トン、2003年200万トン(1989年水準の73%以下)と着実に落ちている。

砂糖の世界的な価格暴落もあいまって、高コスト、低い競争力、利益率、技術的な遅れ、インセンティブ不足といった内部問題から、1992年後半からは精糖業でリストラがなされ、工場の46%の閉鎖、そして、サトウキビ畑の半分を他作物に転換することを強いられた。

 ガルシア・モリーナは、1997~2002年にかけて根菜類、塊茎類、野菜等の生産が伸びたことを強調する。だが、同期間に、家禽肉45%、牛肉20%、家畜頭数14%、牛乳生産7%が低下したことについてはふれていない。同じく、漁獲量も1997~2002年で45%、米生産も1996~2003年で26%落ち込んでいるのだ(ONE, 2003; ECLAC, 2004)。

 ガルシア・モリーナは、こうした国内問題のいくつかを認めながらも、農業改革の進展によって食料生産が高まり、物価が下がり、高い輸入への依存度を減らす一助となっていると主張する(Garcia Molina, 2004, p. 28)(略)。

指標 (千トン) 1989  1993  2003 2003/1989比(%)
 砂糖  8,121  4,246 2,200 ▲73
 肥料  898  94 72 ▲91
葉巻(単位) 308 208 308 0
家畜(百万頭) 4.9 4.6 4.0 ▲18
魚介類 192 94 67 ▲65
牛乳 1,131 585 607 ▲46
卵(百万ヶ) 2,673 1,512 1,785 ▲33
柑橘類 1,016 644 793 ▲22


3. 対外部門

 ガルシア・モリーナ(2004, p. 46)は、農業の不調が財政や対外債務に悪影響をもたらしていると警告する。というのも、2002年以降、主に米国から大量の食料輸入が必要となっており、輸出の成長や多様化の妨げとなっているからだ。差し引きすれば、現在キューバは食料輸入国であり、対外歳出は歳入を超えている。農産物や食品輸出は現在、赤字であり、肉、ミルク、米、マメの生産がふるわないため、これらを現在も輸入しなければならず、それは輸入食品の総価格の半分を占めている(Ferriol, 2004b, p. 143)。

III 経済危機とその後の回復の間における社会問題


4. 食料

 経済危機以前には、たとえ貧弱なやり方であるとしても、配給が国民の栄養需要を満たしてきた。だが、現在のハバナでは、国内で最も配給の供給が良いとはいえ、推奨されるカロリー摂取量の51%、タンパク質の43%、脂肪の17%しか満たしていない(Ferriol, 2004b, p. 147)。配給量は減り、食料他の生活必需品を自由市場で買う経費はあがっている。2002年末の一人当たりの毎月の配給食料は、ポンドで、豆1.25、ラードか油0.5、米6、肉、チキンか、魚が計で2.7、砂糖5、根と塊茎類15、卵8で、砂糖と根と塊茎類を除いて、約1週間の需要をカバーしているだけだ(Togores and Garcia, 2003)。

 トイレや粉石鹸の割り当ては月半個だ。自由市場での価格は、同量で配給商品の4~49倍もし、1個の石鹸、0.5リットルの油、1ポンドのタロイモを買えるが、外貨しか使えない。政府の両替所(CADECAs)のドル=26ペソという為替レートでは、平均月給は16ドルと同じなのだ(Mesa-Lago and Perez-Lopez, 2005)。

 フェリオールによれば、2002年の青野菜、果物、根と塊茎類の生産や一人当たり平均消費は1989年水準を超えていたが、肉、魚、卵、ミルクはかなり下で、おまけに製品の質も落ちている。「危機以前」の水準を回復することは、現在の社会経済モデルの機能と可能性を超えている。1981年価格では、個人消費は1989~1993年間で40%下がり、2000年でもいまだに1989年水準の22%下なのだ(Togores and Garcia, 2003)。

 フェリオールは、全体としての食料消費は1998~2002年で改善されたと付け加えているが、推奨される平均栄養水準を常に満たしているわけではない。カロリー摂取量は16%以上だったが、脂肪は41%以下で、タンパク質も2%以下なのだ(Ferriol, 2004b, pp. 140-145)。また、国際機関によると、2001年のカロリー摂取ではキューバは地域平均よりも7%低く、総人口の13%が1998~2000年に十分な栄養を得ていない。それ以外の8カ国がキューバの水準を超えている(PAHO, 2004; UNDP, 2004)。

 農業や産業生産の限られ、かつ、まちまちな回復。そして、輸入力の制約となっている外為の慢性的な不足が、公式の食料不足の理由だ。こうした問題は、1990年代の経済危機、そして、海外に過度に依存するという以前の脆弱性の結果と考えられる。だが、これでは、危機以前に30年間も豊富な援助を社会主義国から受けることができたにもかかわらず、キューバがなぜその輸出を増加・多角化させ、うまく輸入代替を促進できなかったのかがわからない。また、農業全般の衰退の説明にもならない。

 フェリオールは、国営農場の基本的協同生産単位(UBPC)への転換が前向きな前進であるとしながらも、UBPCが真の問題の一部だとも考えている。政府はUBPCに生産計画を指示し、UBPCは建物や設備を販売されたとはいえ返済債務を負っており、その40%は、2003年に赤字で、財政補助金を受けているのだ。

 おまけに、ほとんどすべての生産物を消費者への直売価格よりも廉価で国に販売しなければならない。そして、農産物市場への販売でも価格上限を設けられることがある。こうした問題とインセンティブ不足のために、2002年に、耕作地の45%を管理するUBPCと10%を占めるCPAは、自由農産物市場に提供される生産物のたった3%しか供給していないのだ。これとは対照的に、個人農家は可耕地の21%しか手にしていないのに、生産物の67%を供給し、その残りの30%は可耕地の24%を占める国が供給していたのだ。(ONE, 2004; Garcia Molina, 2004)。なお、国の農産物市場では、国が農産物の60%、民間が34%、協同組合が6%を提供している(Garcia Molina, 2004)。なお、自由と国営の二種類の市場の総供給の内訳情報については触れていない。

 家族、労働者グループ、村落共同体に土地が提供され、何を生産し、誰がそれをどんな価格で販売するのかを自由に決められるようにし、成功した中国の事例とは対照的だ。もし、キューバがこうした政策を行えば、おそらく食料は自給でき、輸出するゆとりもでてくるであろう。


 Carmelo Mesa-Lago, Social and economic problems in Cuba during the crisis and subsequent recovery, CEPAL Review, No. 86 (August 2006), pp. 177-199.