
いま、輸入食料が高騰している。今後も値段は高いだろう。だが、こうした状況が背景にありながらも、農業は満足のいく成果をあげていない。作物、野菜、マメ、柑橘類、トウモロコシ他の生産性が低いのだ。農業部門は、マネジメントが欠落し、労働生産性や平均労働時間も落ちている。過去数年の気象災害やスペシャル・ピリオドの影響もあるだろう。だが、農業部門は、今、高い値段で輸入されている食料の主要部分を生産しなければならないのだ。世論に対して前向きに対応し、貿易赤字のバランスを取るため、否定的なマネジメント要素を一掃し、生産性を高め、農産物価格を引き下げなければならない。
(2006年12月22日の国会経済委員会へのリポート(2006年12月25日グランマ紙)
冷戦が終焉し、ソ連圏からの経済支援が失われ、農業の持続性が中心課題となっている。これまで農業では、ハリケーンの影響や深刻な旱魃が一緒くたとされてきた。だが、気象条件が良かったことで、その世俗的な欠点が露呈してしまったのだ。政府は混乱し続けるのだろうか。それとも、従来の路線から抜け出た選択肢を取れるのだろうか。積年の抜本的な改革をせずにすむのだろうか。
砂糖の衝撃的な生産記録からもわかるように、製糖産業の的がはずれの政策がもたらした悲惨な結果は、これまでも大きな関心を呼び、昨年のASCE会議でも長時間にわたって議論されたところだ(Hagelberg and Alva¬rez, 2006)。サトウキビ産業からは、制度的な枠組がもたらす影響や投入資材を利用できるかどうかが実績をあげるうえで欠かせないことがわかる。だが、この論文では、サトウキビ以外の食料生産や、とりわけ、その商業化に重点をおこう。サトウキビでもそれ以外の農業でも、ネックとなっているのは、トップダウン型の管理や機能していないマイクロ・マネジメント・モデルだ。とりわけ、非砂糖部門では、空想的な平等主義によって、創造的な政策立案やパフォーマンスがあげられずにいる。そのうえ、公的配給制度を規制緩和してしまうと、私的経済、ひいては、政府の権力統制を超えた政治的な分野が出現してしまうことへのウェッジを開くとの恐れから、競争力のある権力の発展や生産的なアントレプレナー精神の発展が削がれている。また、ビジネス面で民間的の仲介者を動かそうとする試みは、ポピュリストのアピールであって、真の構造的な非効率性を治療するよりも問題点を隠蔽することに役立っている。皮肉なことだが、あらゆることに国がかかわり、農産物をマーケッティングしようとしていることが、生産者と消費者とのつながりを強化することから遠ざけ、生産物の商業化の効率化につながらず、複雑さで込み入った官僚の迷宮やそれに応じたコストに手を貸しているわけだ。
最低生活水準の自給農家を除いて、農業生産者は個別経営をしていない。だから、実績をどれだけあげられるかは、必要な投入資材にアクセスできるかどうか。そして、その製品を効率的にマーケッティングできるかの能力にかかっている。この部門で成功を収める政策を立案するには、農業を全体的なシステムとして見て理解しなければならないし、制度改革の提案もシステム的なアプローチを取らなければなるまい。セクターの様々なファクターは独立しては機能せず、それらは相互作用している。そのうえ、どのように相互作用するかは、システムが埋め込まれた制度の影響も受けている。つまり、相互作用の結果として生じている問題は複雑であって、簡単な解決策がないわけだ。そして、ある部分の改革は避けられないとしても、それは、別のところで意図せぬ結果を産み、ある部分では改良となっても、別のところではより事態を悪化させてしまう場合もあろう。
『ジョナサン・スウィフト』のガリバーを拘束していたロープと釘のように、政府は食料生産とマーケティングに多くの規制をかけている。これらを解き放つには時間がかかり、忍耐がいる。また、改革が明白な実質的な成果をあげ、政治的に影響力を持つには、廃止することが必要な多くの足かせを認識することが最も重要だが、これにも即効薬は全くない。
生産状況や労働生産性、対外貿易を見れば、キューバ農業、とりわけ、国営農場や1993年に労働者とともに国営農場から設立されたUBPCが危機的状況にあることがわかる。UBPCは国内農地の73%、耕作地の64%を2006年末に占めているのだ(ONE, 2007, Table X.1)。
キューバ農業は全体的には、この6年間落ち込み続けている。だが、これは、天候不順だけでなく、投入資材の不足や既存資源の運用が非効率なためだ。2001~2004年の林業や水産を含めた農業のGDPへの貢献度を政府の数値で見てみよう。1997年価格では、2002年が18億7570万ペソ、2004年が19億2460万ペソで、旱魃があった2005年は17億50万ペソ、2006年は15億9770万ペソだ。現在の実勢価格では、農業総生産は、2001年は19億9720万ペソ、2004年は20億9140万ペソだが、2005年は18億6080万ペソ、2006年は17億9590万ペソと低下している(ONE、2007、Table IV.2)。雨が十分に降り、ハリケーンに見舞われなかったにもかかわらず、2005~06年にかけて、固定価格では6.0%、現行価格で3.5%も落ち込んでいる。マクロ経済部門で、唯一低下しているのが農業なのだ。
農業生産は様々な計算がなされ、複雑な状況だが、ノバ・ゴンサレスがまとめた2000~05年のデータを見ると、最も投入資材が優先されたジャガイモが落込み、野菜は2005年を除いて一貫して増加してはいるが、米は安定せず、マメは2005年を除いて増え、柑橘類もハリケーンの影響を受けたが安定している。同じく、家畜部門では、羊やヤギ、ブタの生産は伸びたが、牛の生産は壊滅的で、豚肉と卵ともにいまだに経済危機以前の水準に達していない(Nova
González,2006,07~308)。2006年の公式統計は、前年と比べ、バナナ、コメ、タバコの生産は多いが、根菜類、塊茎、野菜、トウモロコシ、マメ、他の果実は減産し、野菜をのぞいてすべてが2001年よりも落ち込んでいる(ONE,
2007, Table X.7)。2006年では豚肉と産卵は増加傾向を維持し、牛乳の生産も2005年以上となっているが、それでも、2001年よりはずっと少なく、牛肉生産は低下し続けている(ONE,
2007, Tables X.18, X.19, X.21, X.23)。
最新のFAOの食料生産指数(2006)を見ると、2004年では全体で113、一人当たりで111だったが、1989~91年では、118と124となっている(1999~2001
= 100)。このことから、不十分とはいえ、2005年と2006年になってもいまだに食料生産は、ソ連圏の支援が終わって経済危機が始まった以前に到達した水準を回復していないように見える。また、生産増が見られるのは、穀類と都市市場菜園の創設だが、これは、全体としての家畜生産やサトウキビの低迷を補完していない。エコノミスト・インテリジェンス・ユニットや米国農務省の報告では、現在のキューバの農業生産は1990年水準の55%で、非サトウキビ部門も1989年の生産水準に戻っていない。
農業に大きく影響したものとして、近年のハリケーンや旱魃以上に論じられているのは、砂糖産業のリストラだ。2002年の当初段階では200万haあるサトウキビ畑のうち、124万ha(62%)が、食用作物、家畜生産、果樹園、森林と他用途に転換されることとされていた。最も、公式の200万haのサトウキビ畑は誤りで、その実態は砂糖省が監視する領域を意味しており、実際に当時サトウキビが作付けられていた土地は、おそらく140万ha未満であろう。リストラがされる以前のスペシャル・ピリオドの時期のサトウキビの収穫面積は1989/90年~1991/92年の平均144万haから2001/02年の104万haとなっている。産業の合理化は長期的には失敗にする運命となろう(ONE、2007、Table
X.5)。
だが、サトウキビ畑でなくなった土地やそれを所有する企業は、砂糖省により管理され続け、砂糖省には非砂糖作物担当副大臣も置かれ、事実上、砂糖省は2番目の農業省となっていた。その種の機関が二つもあるというこんな状態があるのは、世界でキューバだけだろう。しかも、奇妙なことに2005年9月から農業省には閣僚級の大臣がおらず、副大臣がいるだけだ。管理上の何らかの理由があったのかもしれないが、国や準国有部門の全体としての100万haやそれ以上のサトウキビ畑がある中で、サトウキビと非サトウキビのそれぞれで砂糖省と農業省が所管するUBPCを別々に設立・維持していることは疑問だ。リストラ後にサトウキビの収穫面積が半分かそれ以下となるならば、反生産的ですらあるかもしれない。
さらに、現在まで、盛んに鼓舞されてきたリストラ目的は達成されていない。共産党の機関紙グランマでは「砂糖省に残されたサトウキビ作付け地、すなわち、80万7000haの約40%の約31万8800haがそれ以外の農業利用される」と以前には口にしていたが、いまだに使われていない(Varela
Pérez, 2007a)。現在では、その土地のいくらかは、マラブで覆われている。マラブとは、高く濃い茂みを作る棘があり、急成長する低木で、根絶することが難しい。このようになってしまった理由として口にされるのは、基本的な投入資材が限られていること、潅漑システムが稼動しないこと、組織的な欠点、個人的なインセンティブの欠落、そして、利用可能な資源が十分に活用されていないということだ。
以前のサトウキビ畑が大量に遊休地化していることから、スペシャル・ピリオドから始まった都市の市場向け菜園やそれ以外の場所で空いた土地の耕作を奨励する政府のプログラムが評価されることとなっている。なるほどこうした手段は確かに生鮮野菜やハーブの供給を改善しており、輸送や格納でも節約となり、失業者や定年退職者に有益な仕事を提供し、都市消費者の買い物を簡便にはしている。人々が自ら行うことで達成できることの教訓となっている。とはいえ、キューバ農業の活性化が失敗している中で、演じられている比較的小さな役割以上に、そうしたプログラムが演じられることを信じるとそれは大きな混乱を起こすこととになろう。
これと同じく、総崩れ状態なのが、砂糖省の中核事業、2007年のサトウキビの収穫だ。公式統計はないものの、その生産量は110~120万トンとされ、生作物では前年をわずかに下がり、120万トンとされる(ONE, 2007, Table IX.3)。利用できる茎の量の最終結果も、シーズンの始まりに砂糖省のスポークスマンが予想した32%とはひどく異なり、28%だった (Granma, 28 December 2006, 7 January 2007) 。今回は、干ばつの代わりに、大雨や高温が非難された。だが、天気の影響を抜きにすれば、その真実は、現在、産業が極めて脆弱化し、死体状態にあるということだ。加えて、毎年2002年のリストラまで、過去三期作は年平均380万トンを超えていない。表1が示すように、250万トンの砂糖の産出水準を確実にするには、まず、2004年の収量を回復することが必要であろう。
表1
| 指標 (千トン) |
1989 |
1993 |
2003 |
2003/1989比(%) |
| 砂糖 |
8,121 |
4,246 |
2,200 |
▲73 |
| 肥料 |
898 |
94 |
72 |
▲91 |
| 葉巻(単位) |
308 |
208 |
308 |
0 |
| 家畜(百万頭) |
4.9 |
4.6 |
4.0 |
▲18 |
| 魚介類 |
192 |
94 |
67 |
▲65 |
| 牛乳 |
1,131 |
585 |
607 |
▲46 |
| 卵(百万ヶ) |
2,673 |
1,512 |
1,785 |
▲33 |
| 柑橘類 |
1,016 |
644 |
793 |
▲22 |
2006年のサトウキビの総収穫面積は39万7100haで、スペシャル・ピリオドが始まった1990~91年の145万2200haのたった27%だけだ(ONE, 2007, Table X.5)。サトウキビの茎の全収量は54.9t/haで(国営農業53.2t、非国営農業63.7t)、2006年に報告された全国平均収量28.0tの倍もあった。経過を見れば、CPAやCCSの生産者が、国営農場や管理が厳格なUBPCよりずっとよく機能していることがわかる。
また、キューバ市民が知らされている以上に、2007年の砂糖生産は闇に包まれている。不十分な説明だが、6月の国会でウリセス・ロサレス・デル・トロ砂糖大臣が示した唯一の数値は、リストラ以前の2002年のサトウキビの全国平均収量が34.0トン/haというものだった(Pérez
Navarro and Varela Pérez, 2007)。これは、収量が低いプランテーションを除くことで期待される統計的な改善がなされていないことを示唆する。大臣が苦心して指摘したように、多くの国会議員は、平均収量をはるかに超える収量をあげる企業が、収量がはるかに低い状態が続くことで相殺されてしまっていることがわかるだろう(cf.
Varela Pérez, 2007b)。
農業部門の労働従事者雇用者は2001年には約97万6000人、国内の全就業人口の約22%を占めていたが、2006年にはこれが95万2000人、20%と落ちている(ONE,
2007, Table VI.3)。標準的な国際的な方法と比べ、コミュニティの貢献、社会や個人的なサービスを組み込むキューバの正統とはいえないGDPの測定手段で議論しなければ、それは農業部門の低い労働生産性が示される。国の従業員の20%を占めながらも、2006年の現行価格(1997年の一定価格の3.6%)では総GDPの3.2%に寄付しているに過ぎず、GDP統計から自給農業の生産価値を修正しても、この大きな非対称は打ち消せない。
さて、この期間のGDPへの農業の絶対寄与率を見てみると、一人当たりの生産性が2001~06年で、約2072~1887ペソと低下していることがわかる。後者の数値は月当たりではほぼ157ペソ強で、2006年の国営企業や農業部門の混合企業(mixed
entities)の平均月給387ペソと比べれば(ONE, 2007, Table VI.4)、賃金と生産性とにギャップがあることがわかる。つまり、農業労働者はその成果価値以上も稼いでいるから、その差額は政府の補助金で埋められているに違いないのだ。おまけに、2006年のサトウキビ生産者のそれは、わずか1億3500万ペソであり、作物の規模からすると、この数値はかなり低く思える。現金収入の数値を見てみると、組織によって実績が大きく違う(ONE,
2007, Table V.l)。例えば、2006年では個人農家は17億8180万ペソ、農業協働組合は30億6000万ペソで、それぞれ2001年より42%と32%伸びている。だが、これに対して、UBPCの収入は6億8800万ペソで、2001年の数値に達していないのだ。
食料輸入は年々増えているが、2002年の精糖業のリストラによる砂糖の減産によって、輸出は急減している。ちなみに、国際市場での原料糖価格は、1995~2002年中頃までは低下し続けた。だが、皮肉なことに、キューバでリストラが公表されてから国際砂糖の月平均価格は2002年6月の5.75米セント/ポンドの安値からあがっている。2007年の前半には平均10.08米セント/ポンドに落ちたが、それ以前の2006年2月には1981年以来の最高の17.95米国セント/ポンドとなったのだ(F.O.
Licht)。そして、興味深いことに、キューバは2002年に306万8855トンの砂糖を輸出し4億4151万ペソを稼いだが(ONE, 2004,
Table VII.12)、それは143.87ペソ/トン、すなわち、約6.5センターボ/ポンドであって、同年に報告された生砂糖輸入に要する経費5.2センターボ/ポンドよりもまだ上だったのだ(Hagelberg
and Alvarez, 2005, p. 464)。したがって、キューバの砂糖生産費が高いことは確かだが、それが、乏しい外為にさらに負担をかけているとは言えない。
公式統計の国際食品貿易(表2)から輸入超過が増えていることがわかる。食料や生きた家畜の輸入は、貿易収支上、かなりの負担となっており、2006年では総輸入の13.4%を占め、食料貿易では9億3700万ペソの赤字となり、総貿易赤字66億6080万ペソの14.
1%を占めている(ONE, 2007, TablesVII.9 and VII.10から計算)。だが、1998年までは、こうした顕著なアンバランスをキューバは享受できたのだった(ONE,
2004, Tables VII.10 and VII.11)。
輸入食料の大半を占めるのは穀類、肉類、乳製品(主に粉乳)だ(ONE, 2007, Table VII.12)。小麦はキューバでは商業的に栽培できないとはいえ、国内農業がさほど機能障害に陥っていなければ、現在の輸入食料の大半を確実に供給できるはずだ。牛乳や肉生産を奨励するため、財政価格省は政府の最大購入価格を2007年7月1日から、リットル当たりの牛乳2.53ペソ/ℓ、牛肉を8.90ペソ/㎏にアップしている。以前の約2.5倍だ。つまり、統制小売価格をあげずに、国による買入れ支援を行っているわけだ(Nuñez Betancourt, 2007)。
表2 食料の輸出入状況
| (百万ペソ) |
2001 |
2002 |
2003 |
2004 |
2005 |
2006 |
| 輸出 |
711.1 |
594.6 |
439.7 |
459.7 |
273.1 |
322.5 |
| 輸入 |
755.6 |
737.8 |
855.1 |
1,033,5 |
1,315.0 |
1,259.5 |
いうまでもないことだが、それ以外の部門がふるわないことから、砂糖生産の落ち込みは、それ以外の農産物の輸出では相殺できていない(ONE, 2007,
Table VII.7)。食料輸入機構のペドロ・アルバレス代表によれば、2006年では、米国からの農産物輸入費だけで5億7080万ドルにも達している。食料貿易での米国の経済封鎖が解除されたことに引き続き、2001年以来、米国との契約額は24億ドル以上とされ、約23億ドルが実施ずみなのだ(Mayoral,
2007)。グローバル貿易アトラスの記録によれば、2006年のキューバの主な農産物の輸入先は米国であって、10億3900万ドルの32%を占め、以下、EU16%、ブラジル14%、アルゼンチン7%、カナダ6%となっているのだ(United
States International Trade Commission, 2007, pp. 2–4)。
表3 砂糖の輸出入状況
| (千ペソ) |
2001 |
2002 |
2003 |
2004 |
2005 |
2006 |
| 輸出 |
556,151 |
454,109 |
297,230 |
280,608 |
153,460 |
221,516 |
| 輸入 |
18,707 |
25,880 |
53,682 |
22,276 |
48,930 |
n.a. |
食料輸出衰退の大半は、2002年の産業リストラによる生砂糖輸出の低下が原因であり、砂糖輸出の外貨獲得は、実際の対外収支ではさらに低い(表3)。というのも、砂糖が輸入されているからだ。生砂糖や白砂糖の輸入は、アルゼンチン、ブラジル、コロンビアを合計すると、2001~06年の6年間で70万トン以上にもなっているのだ(表4)。
表4砂糖の輸入状況
| (トン) |
2001 |
2002 |
2003 |
2004 |
2005 |
2006 |
| アルゼンチン(白砂糖) |
0 |
14,000 |
0 |
0 |
0 |
0 |
| ブラジル(生砂糖) |
29,400 |
12,000 |
0 |
0 |
0 |
0 |
| ブラジル(白砂糖) |
15,000 |
55,561 |
27,549 |
2,600 |
2,900 |
134,400 |
| コロンビア(白砂糖) |
0 |
416 |
160,032 |
65,309 |
131,314 |
50,832 |
公的議論が率直であることは別として、今までのところ、農業のマネジメントに伴う問題点に政府が準備している証拠は乏しい。全体的に言えば、経験が無視され、公式会議で出された発言からも、少なくとも砂糖省においてはトップダウン、中央指令型のやり方が変わっていないことがわかる。典型的には、旧サトウキビ畑について前述したリポートのヘッドラインを読めば「野菜に指定され、いまだに使われていない土地を使うことが、今年の砂糖省の本質的なコミットメントのひとつだ」
会議では「最高司令官フィデル・カストロから約束された砂糖省の農林業のための戦略、28のプログラムの発展が定義された」との発言。省がずっとメディアに言い続けていることでは、「以前にサトウキビが植えられていた土地で砂糖省は現在農業生産に専念している…」「砂糖省の団体、砂糖省により創設された46の農業企業とそれらの下位の713ユニット…」「砂糖省の農業生産」「政府機関の実体」「砂糖省により利用された土地の総基金」と封建的なムードが映し出される
(Varela Pérez, 2007a)。
生産やマーケティングの実際の手続きを効率的にする手段が政府の中央機関にあるのだから、こうした態度には何らかの合法性が必要であろう。もし、それができなければ、キューバにある二つの農業省は、出産を夢みる2人の去勢された男性にすぎない。対生産者との関係では、地位を乱用できるのだが、競争が不十分なため、力強い民間経済部門の発展を阻むために国はこれまで最善を尽くしているわけだ。
グアンタナモ州にあるカウヘリ谷のリポートは、権利に穴をあける実際の逸話だ(Merencio Cautín, 2007)。「生産的な菜園の夢からはほど遠く」との題がついたリポートは、約1300haの平地の現状を記載している。現在あるのは、CPA3、CCS5、UBPC2の農業協働組合だ。谷を生産的な菜園に転換するため、主に貯水と潅漑施設に何百万ペソも投資され、カストロが地域を1977年と1981年に訪問したときに提案された。農業の生産は1970年代水準から向上し、住民の生活状況も改善された。だが、実績はいつも期待に添わず、水が不足し、全システムの一部は降水に依存している。領域の70%しか潅漑できず、ポンプと劣化したパイプラインと酷い漏水と完全な現場の機材不足で、稀にしか長く動かなかった。
しかも、農業者は、ボロボロの農業機械や容器・輸送手段不足、劣化した道路や収穫物の販売契約で多くの苦労を切り抜けなければならなかった。逆境の連続なのだが、別の聴衆の前で、グランマのレポーターは、州の農業省の代表や国から「カウヘリ谷には、4万6000トン、ほぼ最高記録の年の産出量の2倍、100万キンタールを生産する野菜、穀類、果物を生産するポテンシャルがある」と聞いた。これは幻想だ。
契約取引は政府機関に一方的に有利だ。「社会への責務を果たせ」。そう農家はプレッシャーをかけられる(1994年9月19日法令第Decree191号第3条、農産物市場)。だが、専売側はそれを勝手に無視できる。
ANAPのオルランド・ルゴ代表があげる一例は、国の豚肉公社の信用裏切り行為だ。2007年の契約では、豚の餌の60%以上を提供することとなっているのに、協同組合やそれに所属しない農場セクターとの契約取引の一部となっている家畜飼料を供給しなかったのだ(グランマ2007年2月20日)。ジャガイモ、タバコ、ブタでの契約には、関係調達企業が、生産に必要な資源を農民たちに提供することが含まれるのに、農産物の先物買受契約者が、生産者側に供給義務だけを規定するという規則の例外だ(Pagés
and Castaño, 2006a)。調達資金と供給で多くの困難があるために、サトウキビ部門では、砂糖省から提供された購入力では、資源利用が実際には満たされていないとANAPのルゴ・フォンテ代表は2006年の初めにグランマでのインタビューで指摘している(Pagés,
2006a)。
国の機関の責務は縮小されたとはいえ、いまだに4000トンを所有している。そして、供給側の質はいつも必要を満たさないのだった。トラストの代表は、輸入穀物の高値を不足の口実にする。だが、最も基本的な調達機能を実施するうえで、失敗だらけなのだ。農産物の収集で、バイヤーは即座に着荷代金を支払う責任があるのに、制度の欠陥や十分な競争の欠如の否定的な結果が最も明白なのだ。
農産物のマーケティングについての2006年2~3月のグランマに掲載された一連の記事からは、生産者だけでなく、消費者も流通制度に広い不満を持っていることがわかる。流通制度の中心には、生産者と消費者とのつなぎ手、流通機関アコピオがある。だが、それは農業省に大きく依存している。
アコピオの代表は、2006年前半には1万7000人の職員がいたが、その40%が管理や官僚的な業務に従事していたと言う。例えば、あるアコピオのバイヤーは、農業者やその代表とのインタフェースの流通ネット番号が1900となっている。これは、組織内でのバイヤーの社会的なステータスの低さを示す。アコピオの代表によれば、彼らは、供給者とアテンドする上で徒歩で動いているのだ。契約が改善されるには、その労働条件や賃金の改善が必要だと指摘している。
しかも、その流通網の最後では、533の国営農産物市場や1575販売店、そして、幼稚園と病院とアコピオは大規模な食品小売業も経営している(Pagés
and Castaño, 2006b)。もちろん、食料を販売しているのは、アコピオだけではなく、いくつかの市場向けの都市菜園、CCS(信用サービス協同組合)、CPA(農業生産協働組合)、UBPC、国営農場他の団体も小売り業に従事している。農産物市場は、いわゆる需給の自由価格で販売しており、2006年年頭では全国に73あると言われているが、これは国内取引省が運営している。
ある農家は、作物収集が遅れるために、多くの生産物が腐ってしまうと苦情をもらす。グランマの記者とのインタビューでは、アコピオの代表は、遅れた理由を車両状態が荒廃しると釈明した。組織にある1200台のトラックが処分中で、うち最も新しい車両も20年を経ており、走行中なのは60%だけで、それ以外はタイヤやバッテリーの修理が必要だったというのだ(Pagés
and Castaño, 2006b)。
スペシャル・ピリオドとあいまって、アコピオ代表は、これで遅延問題が十分に正当化できると考えていた。だが、釈然としないのは、秤が不足しているといった収集体制と関連する問題だ。コンテナ不足によって多くの生産物が失われており、収集先で生産物の重さを計れないことが、ルゴ・フォンテ氏が強調した問題のひとつだったのだ(Pagés,
2006a)。例えば、タマネギのバッグは、急速に摩耗はしても、それほど複雑なものではない。だが、アコピオ代表によれば、政府機関全体で、少なくとも6000もの秤が不足しているというのだ。だが、この輸送能力の不足は、作物収集に失敗した唯一の原因ではないし、恐らく主因でもない。全国ANAP会議でPagés
(2007b)は、官僚制の問題を示している。
「確かに輸送設備は不足している。だが、問題はそれだけではない。トラックが十分にあった時も、作物のロスが何度も報告された。これは、収集インフラの不足だけではなく、それ以外の調整機構内の欠陥が問題であることを示す。前向きに運営するには生産者と協働機関との生産契約で、客観性と効率性が必要だが、作物損失の根っこには、それを欠いた契約を求めてしまうことにある」
もう一つ、農業者たちが不満としたのは、支払いの遅延(30日間)だ。だが、これはアコピオの悲惨な財政状況を見なければならないだろう。グランマに寄せた代表のメッセージによれば、アコピオの資金は不十分で、2004年末の累積赤字は5800万ペソとなっており、うち3000万ペソは2005年に財政価格省からの補助金で補填されはしたものの、2006年頭に再度2800万ペソの赤字を出してしまった。2005年にもアコピオは5300万ペソもの赤字を出したが、うち、4000万ペソは、農業者に支払う価格よりも安く教育機関や医療機関に販売する廉価な特別価格のためだったというのだ(Pagés and Castaño, 2006b)。だが、どうみても疑問に思えるのは、社会的支出経費が、生産者や流通業者の負担となって、なぜ、財政価格省によって対応されなかったのかだ。
生産者への支払い遅延問題は「まもなく解決される」とされたが、それが1年以上後もテーブルの上におかれたままだったという事実は、政府のあまりに遅い対応ぶりを説明するのに役立つだろう(Lee,
2007a)。その後も問題は膿み続けた。1月以上もたってから2007年5月に「農業省や砂糖省からの負債の遅れは取り戻したが、社会的機関はいまだに物資の代金支払いで遅れている」と、ANAPのルゴ・フォンテ代表はプレスに語っている(Pagés,
2007a)。時間は金であり、教育や医療部門は、一部は小規模農家から資金を受け続けているからだ。ヘオルヒナ・バレイロ財務大臣によれば、協働組合や個人農家への未決済の負債は、2006年12月から2007年4月の間に、2500万ペソから10万ペソまで削減され、その再発を防ぐことが望まれる方法がとられたという(Lee,
2007b)。
2007年6月にヘオルヒナ・バレイロ財務大臣が国会ではこう宣言した。
「銀行負債の再交渉と前年からの損失の政府融資。負債状態をモニターし、滞りの毎週のレジスタを維持する農業省と砂糖省での全国作業班の設立、配送の支払いを済ませるように銀行への新手順の提示、企業の負債を一掃する回転資金の創造、そして、州やムニシピオ段階での管理制度を確立するため、州政府の代表に要請する」(Pagés,
2007c)
だが、同じく明らかなのは、機能しない制度に対する開かれたマニフェストがさほど重視されていないことだ。農業生産やマーケッティングの範囲で、意志決定が国に集中していること。この分野では、中央集権化されたマイクロ・マネージメントが実施不可能なこと。資源の不合理な配分、グアヴァやスイスチャードといった果実や野菜の不適切な行政による固定価格。そして、長く棚に置きざらしにされること。グランマの記事で耳にされたすべての声は、農業生産を高める必要に同意するものだった。だが、同時にさらなる規制をという呼びかけは、パラドックスであって、明らかか暗示で、認識されていないように思える。わずかとはいえ、見落とされないのはニュアンスだ。農業副大臣ホアン・ペレス・ラマスは、今までカバーされていない野菜販売者まで販売価格を広げることを望んだが、ANAPのルゴ・フォンテ代表は、需要と供給の農産物市場は滞在させるべきで、ただ制御されるべきだと考えた。
官僚制度に費やされる資源は別としても、統制価格の無駄や浪費と損傷に対し、政府の食料生産やマーケッティング政策によって得られる社会益のバランスはとれそうにない。システムと関連して産出が低迷し、浪費されていることは、農業省職員が再生プロセスで効率化をあげたことで、ミルクの配送で35%を増やすことができ、前年の同時期と比べ、2007年の1~5月では35万リットルが減少したとの声明からもわかる(Pagés,
2007b)。農産物市場での統制価格は、生産者にも消費者にも恩恵となっていない。2006年前半に全国各地の農産物市場を視察したグランマのリポーターが目にした一連の不一致を紹介してみよう(León
Moya and Mar¬tín González, 2006; Pagés, 2006b)。
- ある市場では、毎日約2000ペソの売り上げがあった。ボーナスを得る資格がある。そう店長は信じていたが、自分やスタッフがほぼ10カ月、5%のボーナスを支払われていないことをこぼしていた。だが、その市場の売り上げは、売ることが決められた商品に依存していた。米であれ豆であれ、独立したCCSの生産者が持ち込んだ生鮮果物であれ、それがあれば、売りあげは飛躍した。そして、公的検査で「レギュラー」としての資格があるためには、市場に少なくとも17種の製品を提供する必要があった。だが、当日は14種しかなかった。塊茎類で販売されていたのはサツマイモだけで、午前10時には、一袋しか残っていなかった。店長は、その全部を1人の客が買うことを認めた。グランマの目では「違反」だが、店長は全く規則違反ではないと指摘した。さらに注意されるべきと見受けられたのが、店長が事務所を持っていない事実だった。サイクロンが屋根を吹き飛ばしてしまい、その市場の領収書を持って歩き回っている一方で、店長は痛んだ生産物を値下げすることで成果をあげていた。
- 別の市場の店長は、痛んだ生産物の値段を勝手に値下げすることが認可されず、どれだけ産物の価値が落ちたのかを評価するため「専門家をよこして欲しい」と電話で依頼しようとしたが上司を呼び出せなかった。そう、グランマのレポーターに口にする。その専門家が遅れてやっと来たときには、その産物がもはや売れないほど劣化していた。だが、この時点でも、タマネギは1つ6ペソもしたのだ。この店長は5%のボーナスを得る資格には問題がなかった。だが、アシスタントは、約1年間、販売奨励手当をもらっているだけで、「自分のベース賃金はどこにいったのだ」といぶかっていた。ここでは、生産物の荷箱は、古い箱の上に最近入荷されたものが積み重ねられて売られていた。だが、それは、すぐに消費しなければならない熟した果物だけが並べられ、消費者が毎日並びながらも、保存用の先買いができないことを意味していた。
- 第三番目の市場では、年金生活者たちが熱い日差しの下で長い列に並んで待たされていた。価格表もほとんど読めなければ、サービスをしているのも一人だけだった。店長は、質の落ちた商品を値下げする権限を持っていることを認めたが、「ほとんど腐ったグアヴァ」や「痛んだフダンソウ」に一級品の値段が付いていた。ある女性の消費者は「若者軍が運営している店舗の方が値段も安いし、品揃えもいい」とグランマ誌の記者に答えたが、それは別の町にあり、遠かったのだ。グランマ誌のチームは、フォローアップとして、その市場に生産物を出している小規模農場の協働組合員を訪ねてみた。そこで耳にしたのは、価格を設定に要する当局の経費を考慮したとしても、生産コストと統制価格とのあまりに大きいマージン差だった。
- 国の農産物市場では、ロスを一定レベル以下に抑えなければ、販売ボーナスが得られなかった。それは、質が落ちた生産物の値段を安くして売れば達成できる。だが、それは総売り上げを減らすかもしれない。そこで、熟れすぎたトマトに最高価格が付けられ、良質な商品は隠されていた。これと別のトリックは、重量でなく生産物をパックにして売ることだった。ポンド当たりの値段は統制価格の3~4倍にもなっていた。品質を決める基準は全くなく、生産者からの購買も消費者への販売においてもそれはなかった。
- 高級官僚には、下級役人に難癖をつける傾向もあった。あるアコピオの事業所長によれば、市場で商品の品揃えが不十分なのは店長の失敗なのであった。その店長は、供給不足をカバーするため3000ペソの資金を持っていたが、それを出すことを拒んでCCSや近くの市場菜園から産物を買い損ねたのだった。この男性は、その鍵は、自分の小売施設の等級付けがNo.4447と下にあることだと言った。つまり、4種類の根と塊茎、4種類の果実、4種類の穀類と7種類の野菜だけなのだ。また、別のアコピオの店長は、市場の管理者には劣化した生産物を値下げするうえで、権力ではなく義務しかなかったと主張する。そして、販売で5%のボーナスを受けるには、消費者への「良い対応」というほとんど定量化できない評価基準を含めた5つ以上のパラメターを遂行することを強いられるのだった。
- 国内にある農産物市場はいずれも同じ規則の下で運営されているが、首都ハバナにおいては、その指揮系統が、アコピオと市内にある9つの生産企業との間で分かれ、価格設定の責任を負うのはムニシピオだった。Pagés
(2001)氏は「2000年には9ある混合作物企業とハバナ市にある14のムニシピオを「結婚」させるという新たなやり方を通じて、首都の集荷地点に生産物を収集・供給するための扇動がされたという。この制度は、生産者と流通業者との仲買人を排し、より新鮮な生産物の供給や農民とハバナ市の各ムニシピオとの良いコミュニケーションに寄与した」と述べている。また、Pagés
(2006b)氏は、新たに創設されるアコピオの2ユニットをハバナの国営農業市場を通して行う提案を農業省は研究していたという。国営農産物市場の実績の最終責任は、州やムニシピオ政府にあるが、現場が関与することは、消費者や有権者への重要なサービスである。これは、アカンタビリティの原則を尊重した珍しい事例として、グランマのリポーターも取り上げる。だが、こうした状況で、読者が歴史的に思い起こすのは、沈みゆくタイタニック号のデッキチェアを再配列しているだけかもしれないということだ。
混乱、理論と実践とのギャップ、そして、役人たちによるつじつまのあわない話。通常ならば、価格形成メカニズムによって基本的にコントロールされるはずの自由市場を代用するため、度肝を抜くほど複雑さに設計された管理体制は驚くほどだ。オーソライズされた説明によれば、2006年のやり方は、理論上、地元の公共団体が月毎に農産物価格を設定し、関係する様々な党代表が、有用性や生産経費、流通コスト分析をした後、一様性を担保できるための州政府による設定に従うというものだ。アコピオを通じて農民たちに提示されるのは、販売価格より29%を差し引かれ、生産物価格も質により20~40%割り引かれるのだ(Pagés, 2006a; Pagés and Castaño, 2006b)。
歴史的な文脈づけをせずに、このような報告をすれば、あたかも火星からの訪問者が、経済秩序の問題について説明したかのように思えるかもしれない。だが、1968年の「革命の攻勢」で、店舗が国に占拠されて以来、農産物を販売するためにアコピオが創設されて以降、ほぼ40年間以上もそれは生き延びてきたのだ。「demarketization」Ritter
(1974, pp. 234–239)のレビュー(p. 237)ではこう書かれている。
「都市部で約3700人もいた商人を排除したことは、様々なところから食料を集め、投入資材をつなげ、便利な場所で買い手にそれを売る非公式な制度を破壊する影響があった…。こうした商人たちには、投入資材の購買、資源や時間、マーケティング活動についてのどんな枠組みもなかったが、このように自然にうまくいっていた制度を、官僚統制の標準形式に取り替えることは国にはできないであろう。もし、試みたとしても、関連情報を得て、そうした制度を計画・モニターするコストは法外に高いであろう」
政権は、中央で計画・統制する経済のコルセットで、農業や農産物のマーケティングを絞るという試みを始めて以来、否定的な結果になんとか対応しようと無駄な戦いをしている(Alvarez,
2004, pp. 162–167)。生産と消費、需要と供給、農村と都市の購買力、自家消費と販売、投入資材と販売、原料の有用性と生産加工力、地方の赤字、過剰等。様々な仕事を課された小役人はほんとうにかわいそうだ。
その後「中央集権化や官僚制度を片づけるという根本的な変更を目的とし、より現場近くで取り組むことが理想であるとの約束がなされた。だが、その15カ月後に月刊誌「クーバ・ソシャリスタ」での匿名の指摘は、生産や消費の規制が複雑すぎると警告している(Notas económicas, 1965)。しかも、難点はそれだけではなかった。政策立案者たちが、そのことをやるうえで最も基本となる統計データを欠いていたことも判明したのだ。
民間部門と比べて国の農産物量がなぜ不均衡なのか。それを説明する一部として、物理計画庁の分析やその後のクーバ・ソシャリスタが指摘しているのは、1963年の二回目の農業改革後に、国と民間との農地比は70対30となっていたが、それは純粋な農地の生産ポテンシャルではなく、国土を参照していたものだった。生産力の比でみると57%と43%だった。しかも、生産性が高い土壌と分類されたのは国の農地では約44%だけだったが、民間では87%がそれを満たしていた。これを背景に、Notas económicas (1966)は、収量や生産コストに地域差があるのに、全国一律価格で土地を買い上げたために、非常に不均等な結果を生むこととなったとの研究事例を強調している。また、同じ研究では、小規模農場主たちが、様々な生産投入資材が入手できるか、あるいは価格に対して不満を抱いていることを明らかにした。だから、小規模農家が栽培するタバコについての記事の約三分の一が生産投入資材の不足や価格設定となっているのも不思議ではない(Martín, 1967)。
アコピオやキューバの農民市場は、1960年代からその欠点を修正すべく、無駄な試みを繰り返しては、再編成されてきた(Alvarez, 2004,
pp. 162–167)。
それ以外でも生産活動を妨げているのは、農場から小売店舗まであらゆる流通過程での浪費、ガチガチで非現実的な価格設定、劣った品質、資源不足の恒常化。まず、頭から政権にあるイデオロギー的な傾向や政治上の目的から、改革の可能性が狭まり、意志組織や規則によって事態が改善できるとの希望的な観測から決定も下手にいじくり回されているだけだ。
さて、非公式の経済を除いて、キューバ人たちは、ずっと生産や食品流通で市場の機能を目にしてこなかった。その経験は、1980~1986年まであった自由農業者市場と1994年以降に認められた農産物市場に限定されてきた(Deere and Meurs, 1992; Espinosa, 1995; Marshall, 1998; Rosenberg, 1992)。そして、いずれの場合も、平等な競争は政府から認められなかった。誰が販売するのか、何を販売するのか、そして、実際にどのようにして販売しなければならないのかが、いつも計画されて、まず、いの一番に国の割当て量を満たさなければならないのだった。
そして、こうした市場での生産を増やすための投資もなされていない。極めて大きな役割を果たした後でさえ、機能的にはアコピオと違いがないにもかかわらず、民間の仲買人は悪霊として描かれ続け、しぶしぶながら認められたのだった。しかも、全国的にも比較的数が少ないことから、消費者利用も限られ、さほど裕福ではない消費者には商品が買えないために一般利用も抑えられている。
市場の欠点は、配給カードが使えず、入手できる統制価格となっていないためにニンニク等で法外な値段が付いていること。大都市近郊の生産者に限られること。輸送手段を手にしている仲介者が法外な収益をあげてしまうこと。とりわけ、ハバナでは、贈収賄の事例が、時には庶民の不満を起こしたし、とりわけ、初期の時代では、国の政策目標を達成することへの脅威から改革に反対する者たちから食い物にされ、その影響力を縮めたのだった。
キューバの経済再生についての議論は、所有権の問題をはるかに超える傾向がある。だが、所有権も間違いなく重要ではあるのだが、こと農業や食品マーケッティングの点では、緊急事項ではない。UBPCは公式には非国営と分類され、現在、農地の約65%は、概念的には非国有部門とされている(ONE,
2007, Table X.1)。つまり、分配面でも生産や生産性には偏見をいだかせるものはないということだ。例えば、よく言われているように、もし、生産者が、生産物を市場まで運ぶよりも、農場でより有効に時間を費やしたいと思っているならば、制度上、仲買人が、その業務を担えることを認めなければならない。
統制し、国家が組織・管理する現行の流通モデルを今後も続けることを正当化するには、個人所得がどうであれ、政府によって社会の全構成員に最低限の食や暮らしを担保することが、市場モデルに効率性でマッチすることを示さなければならない。言い換えれば、消費者に対して十分に食料を供給するという物理的な目的を実現することに加え、補助金や人工的な食品価格を全面的に維持する際にかかる管理費用は、本当に困っている人々をターゲットとして支援するために資金を貸与する経費よりも素晴らしくなければならない。こうした評価基準のレンズを通じて、厳しくモデルを審査することで、規制緩和のメスがまずどこに適用されるべきかを示すだろう。
我々は、外部からの観察者として、必要とされ、なされるべき改革への詳細なブループリントを描く立場にはない。とはいえ、40年間以上もの経験から、勧告や少しばかしの組織改革で椅子取り遊びをすることで、制度上の欠陥が回復できないことは明らかだ。競争の要素、例えば、市場の規律を組み込むことで、何人かからの不満は正すことができよう。それ以外のカリブ海地域で、食がどれほど市場化されているのかを目に見れば、遠くまで探求しにいかなくても、多くの可能なステップがわかるだろう。
なお、Mesa-Lago and Pérez-López (2005) は、キューバやキューバ人以外の研究者によるスペシャル・ピリオドとその改革についての様々なキューバ経済の状況研究で、かなり役立つ入門を提供している。また、Alva¬rez
(1999)は、独立した農業協同組合を結成するための最近のキューバの先例を解説している。
- 窃盗罪に水をさすよう流通業者の簡単な登録を条件に、秩序や公衆衛生規則以外の制限をなくし、民間の個人、民間企業や協同組合が、全流通過程で、生産からエンドユーザまで農産物を購入、扱い、販売することを許可すること。なんとも奇妙で不適切に思えるのは、公共であれ個人であれ、輸送力の不足で人々が歩けるよりも遠くに行くことが難しいのに、例えば、アコピオが運営するピナル・デル・リオにある1.2haもの農業スーパーマーケットのオープニングで明らかなように、中央集権化と巨人症が続いていることだ(Suárez
Ramos, 2007)。ANAPのルゴ・フォンテ代表は、ピナル・デル・リオからシエゴ・デ・アビラまで、協同組合が参加する「巨大なフェア」について発表している(Pagés,
2007a)。
- すでに民営化できる部分での道を開くために、アコピオやそれ以外の国の機関の取引や輸送機構を可能な限り切り離し、短距離と長距離の運送料を切り離すこと
- 国家機関への義務的な配送量を少しずつ減らし、個人農家であれ協同組合であれ、生産者を解放し、自分たちで余剰農産物を販売できるようにすること。自分たちで収穫できる選択肢をもたせ、圃場以外でも販売できるようにし、バイヤーが収穫や販売をできるか、全体か小売のマーケティングに関わらせるようにすること
- 自由化に向けたさしあたっての手段として、まずは、民間個人、民間企業、そして協同組合に投入資材が手に入るように、購買かレンタルを促進すること。また、必要な人材の雇用を含め、農産物の販売ビジネスもそれ以外の手段として必要なこと
長期的に見れば、この種の改革は必然だ。とはいえ、それがすぐさまなされるかどうかはわからない。2007年の惨たんたる砂糖の生産も今までのところ、行動に移すほどの衝撃を当局には与えていない。中国とベネズエラによるキューバ経済への引き続く支援は、聖アウグスティヌスの祈りにそって、さらに延期を伸ばすこととなるかもしれない。だが、中国人には、援助支払いを歴史的に長く記憶し、「そろばん」という勘定装置を発明したものであることは覚えておくことが肝要だろう。
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