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第四章 コミュニティ転換の発展



革命後のキューバの進展

セントロ・アバナのエル・カナルで、懸念事項を特定するため、コミュニティのリーダーに会う地区転換ワークショップチームのメンバー

 キューバでは、コミュニティ開発はとりたてて目新しいものではない。だが、90年代は従来とは別の形を取った。革命防衛委員会、キューバ女性連盟といった社会組織は、ブロック単位で組織化されており、専門的なサービスをするわけではないものの、いずれもコミュニティ段階で資源を提供する。例えば、女性連盟は、ワクチン接種キャンペーンを組織化し、様々な分野で公共教育も行っている。防衛委員会は地区のセキュリティに携わり、ボランティア活動で地区住民を動員するが、それも地区住民の主な支えとなっている。

 コミュニティ・レベルでそれ以外に重要なのは、コミュニティや地元の学校にプライマリケアを提供するファミリードクターや看護師のチームだ。そして、学校は一日中地区の子どもから活用され、放課後にも多くの子どもたちは、ピオネーロスの組織活動に参加する。

 90年代前半の経済危機では、社会的な支援を組織化するうえで、このコミュニティ組織が、とりわけ、都市部では重要な要素であることが判明する。地区に交通手段が一切なくても緊急時に病院まで運んでくれるよう、ガソリンや車両を地区に頼むことが防衛委員会はできたのだ。

 防衛委員会はブロック単位でレクリエーションを提供し、女性連盟も全家庭にビタミンを配布し、限られた選択枝しかない中で、どのように食事を作るのかの話し合いを開いた。経済危機で最も暗い時代に、防衛委員会は地区をクリーンアップし、町の防衛団や若者向けの組織活動を立ち上げることで、コミュニティ段階での犯罪や非行防止に努めたのだ。キューバ、とりわけハバナが危機を切り抜けることができた重要な要素には、明らかにこのコミュニティ段階での取り組みがある。

 とはいえ、コミュニティ内にずっと残されていた課題は、この経済危機の中で、新たな課題と結びつく。経済危機の中でのモノ不足や苦しい日常生活もあいまって、大規模組織は人々のニーズに急速に対応できなくなっていく。通常業務からはみ出す前には、必ず上からの指示を受けるというその組織構造や傾向は、各コミュニティが直面する危機に対して、大規模組織がきめ細かいリーダーシップをとれないことを意味した。キューバの社会を構成する織物としては重要な要素であっても、先手を打った活動を取るには大規模組織は、最良の手段ではないことが判明したのだ。

 キューバでは「ローカルレベル」というと、ムニシピオのことになる。だが、経済危機によって、コミュニティのニーズに対応するには、このムニシピオは現場から遠すぎ、効力のある資源もわずかしか持たないことが明らかとなったのだ。第一に、ムニシピオの管轄範囲が広すぎたし、住民ニーズも「ひとつで全員を満たす」という解決策で対応できないほど多様だったのだ。資源がほとんどない経済危機の時期は、多くのニーズに個別対応することはさらに困難だった。

 経済危機の時期は、中央政府から州政府やムニシピオに対して、意志決定や管理が分権化されるという過程でもあった。だが、ムニシピオにはまだその力がほとんどないこともわかった。米国においては民間の食料品店舗やパン屋や、修理店を含め、ムニシピオが管理するサービスは広範だ。だが、税収を得たり、予算を決定したり、施策の優先順を決める権限はまだ付与されていなかったのだ。時が経つにつれて、地元で解決されないままにおかれる課題は増えていく。

 この経済危機の中でのコミュニティ段階でのニーズの「空白状態」から、社会学者アロルド・ディジャが「地区運動」と名づける強力な運動が出現することとなる。コミュニティに根差した数百もの組織が、経済危機の中で、都市住人が直面する緊急ニーズに対応するため、各地区で発展したのだ。「地区運動」は、地区、とりわけ、コミュニティ段階での水平的なネットワークに最も重点を置き、こうした新しなイニシアチブには、様々な主体が参加することで導かれていく。ローカル政府、大規模組織、キューバのNGO、国際開発組織、高等教育組織、そして、最も重要なのは住民自身だ。この都市開発の仕事に関わる最初の組織は地区転換ワークショップだ。そして、二番目は人民委員会で、現在のところ、コミュニティ段階で得られた新たな経験のメリットを活用する準備が最もよくできている組織といえる。以下で詳しくそれを説明しよう。


地区転換ワークショップ

 1988年、フィデル・カストロは、一流のキューバの都市計画専門家からなり、首都住民の暮らしの改善に携わる首都総合開発グループを人民権力州議会の下に立ち上げる。ラテンアメリカの各都市は、人口過密、ホームレス、大きなスラム街、社会的格差、ドラッグ、犯罪といった緊急的な社会問題に直面しているが、ハバナにはそれがない。これは、この方向で大きな前進をするうえで有利だった。

 首都総合開発グループがまず取り組んだデモンストレーション・プロジェクトのひとつは、ハバナ市内の脆弱な3地区、アタレス、ラ・ギネラ、カヨ・ウエソにおいて地区転換ワークショップを立ち上げることだった。カヨ・ウエソはセントロ・アバナ、アタレスはエル・セロの市街地に位置する。双方ともすばらしい歴史文化的な伝統を誇るが、古くて、貧しい地区でもあり、住宅の質が深刻で、同じく難しい社会問題もかかえていた。これとは対照的に、ラ・ギネラは、ハバナ郊外のアロヨ・ナランホに位置し、多くの人々は水も、電気も、サービスもない不安定な辺境地区で暮らしている。

 ワークショップは、地区の課題に対処するため、建築家、プランナー、ソーシャル・ワーカーと6~7人の専門家を集めた。まず、ワークショップが取ったアプローチは地区、通常は問題のある住区を特定し、課題対応のために地区内外の資本を動員したことだった。このワークショップはかなりの成功をおさめる。例えば、カヨ・ウエソやアタレスでは、恒久建造物を取り壊した。建物が不安定ならば、住宅を設計して、立て直す手助けをするから転居するようにとワークショップは居住者に説得したのだ。こうして、12以上の建物が最初の3年で修理された。ワークショップは、地区に資源をもたらすうえでも有効だった。はじめの時期には、首都総合開発グループやワークショップはかなり多くの国庫補助を得ることができ、それが、多くの障壁を克服する助けとなり、解決策を探る上で、アントレプレナー的なアプローチが可能となったのだ。例えば、ワークショップでは、障害となるムニシピオの官僚制度を迂回し、州や国の資金さえ動員できたのだ。

 

新たなコラボレーションのコミュニティ・プロジェクトの事例。この住宅建て替えプロジェクトは、セントロ・アバナで、マルティン・ルーサー・キングセンターと人民委員会、そして、ムニシピオ政府によるものだ

地区住民たちが地区近所レベルで特定した問題に、資金を注ぐことで対処する。これは、ワークショップの貢献のランドマークとなった。1991年までには、さらに5つのワークショップがハバナの各地区で働くこととなる。だが、90年代の経済危機は様々な意味で、このワークショップの仕事を変えた。建設資材が不十分となったために、レンガやモルタルを活用するワークショップのアプローチはコミュニティの社会的ニーズに焦点をおいて介入することに移行する。だが、そのためには、ワークショップは、コミュニティのことをよく理解しなければならなかった。それまでやってきた仕事を変え、彼らはさらに深く関わることとなる。活動家が地区のニーズを評価する一助として、参加型のコミュニティ・プランニングの手法をワークショップは、適用し始めたのだ。ワークショップは、プロセスに住民が関与する方法を積極的に模索し、女性やティーンエイジャー等の社会的に傷つきやすい人々のニーズに焦点をあわせていく。

自尊心とコミュニティ開発
 ズレマ・イダルゴさんは、アタレス・コミュニティの地区転換ワークショップのメンバーだ。ズレマさんは、コミュニティの女性と、彼女たちのコミュニティでの暮らしを改善することへの動機づけに重点を置いた。2001年3月のインタビューで彼女はこう語る。
「私たちは、様々な理由からこれまでとは違ったやり方で女性たちと働くことが必要だと感じました。私たちの地区は性差別主義の教育が飛びぬけていて、多くの習慣がマチスモで強く形づくられていました。同時に、失業中の多くの女性がいました。子どもたちとの仕事をすることで、女性に焦点を合わせる必要なことがわかったんです。彼女たちとその子どもたちに向けた多くの暴力があったからです。暴力があったり、仕事への参加が不足していることは、彼女たち自身が良くする余地が全くなかったことを意味していました。ですが、コミュニティに関する問題では、女性の存在感は少なからずありました。彼女たちは革命防衛委員会やキューバ女性連盟等の大衆組織のメンバーでした。私たちの地区では、こうした組織の活動に積極的に参加し、活発で多くの喜びを手にしています。ですが、私たちは、女性たち、より専門的なケア、より技術的に厳密なケアを必要としたと感じました。ただミーティングを続けることや女性連盟で目にするような基本的問題について互いを見ることではありませんでした。それは違っていなければならなかったのです。
私たちは自尊心のためのワークショップを結成しました。女性たちは月に一度私たちのコミュニティハウスにやって来ます。メンバーはコミュニティで暮らす女性連盟と同じですが、反省や交流のためのスペースを与えます。私たちはいくつかのテーマを通じて、自分たちの自尊心を高めるために働いています。例えば、住宅の専門家、弁護士、性教育と乳癌について話す医師を招きました。
また、私たちは、可能性や価値観をわかちあい、コミュニティで進行中の仕事に対して、関って欲しいと思いました。そこで、された仕事がデモンストレーションされました。何回かのミーティングの後、女性たちは、彼女たちの組織、キューバ女性連盟にずっとよりかかわるようになり始めました。自分たちのベースとなる組織でリーダーシップを発揮し、ワークショップの仕事にさらにかかわるようになったんです。女性たちがかかわることへの一助となったので、それはかなりの影響を与えました。そしてまた、こうした組織も変えたのです。


自尊心とコミュニティ開発「私たちは、女性たちにその潜在力や彼女たちの価値をわかちあいたいと思いました。コミュニティで進行中の仕事に、より積極的となるようにです…」ハバナのアタレスの地区転換のチーム・ワーカー、ズレマ・イダルゴ

地区の文化アイデンティティを強化し、資源が許す限り、具体的な地区改善プロジェクトで可能にするよう働いた。今までの仕事は以下のとおりだ。

  • 地区の住宅や学校の改築、ファミリードクターや食料品店の事務所の建設等の建設プロジェクト
  • 地区の廃棄物のリサイクル計画と再植林キャンペーン組織等の環境プロジェクト
  • 地区の職人のためのワークショップ(そこでは、女性が地区で販売する製品を製造)、ビデオセンターとショーウィングの組織化、女性の職業訓練、コンピュータ教室といった小規模の経済開発プロジェクト
  • ティーンエイジ・クラブ、母親グループ、女性のための自尊心グループ、地元の文化表現に焦点を合わせた放課後プログラム組織等のソーシャルサービス活動


 

 ワークショップは、すぐさま、州やムニシピオの組織がやることが困難だったやり方で地元と関係した。ワークショップのスタッフは地元に顔馴染みとなり、地区住民が優先すべきと感じた課題に対して、地区段階で対応するのに必要な人間関係やネットワークを築きあげる時間があった。ワークショップは、他の組織、大規模組織、学校の校長、ファミリードクター、他の地区活動家等が地区で特定された課題に重点をおけるメカニズムをもたらしたのだ。その役割は防衛委員会や女性連盟、あるいは、医療サービス制度の取り組みを模倣するのではなく、むしろ、地区で特定された課題に重点をおくようにこれらの機関を連れてくることにあった。

人民委員会


ハバナのプラヤにあるミラマール人民委員会は、低コストで都市菜園者たちに有機農業資材を販売する店舗の立ち上げのイニシアティブを行っている

 地元の抱えた課題を最も強力に提示し、かつ、地元段階での暮らしを転換するうえで最も潜在力を持つ組織は人民委員会だ。委員会は、地元段階での水平なネットワークに重点をおくことで、以前には見落とされていたムニシピオと地区とのギャップに橋を架ける一助として結成されたのだ。その仕事を通じて、委員会は、ムニシピオの議会の地元代表の努力を支えるものと見られている。

 人民委員会は1988年にまずパイロットが設立され、その4年後には全国各地で実施された。現在、国内には1505の人民委員会、ハバナだけでも105の委員会があり、各委員会は平均2万人の住民にサービスを提供している。人民委員会は、革命防衛委員会や女性連盟を含め、地区の主な経済、社会、サービス機関の代表と住民から直接選出されたボランティアから構成されている。委員長は、委員会を構成する各代表から選ばれ、フルタイムで業務に従事する。委員長は常勤だから、他の委員会の代表よりも問題を調べ、議論する多くの時間がある。
 
 委員会をバックに、委員長は、ムニシピオ当局、そして、もし、必要があれば、ムニシピオ議会に対して、アドボケートする。とはいえ、人民権力(ポデール・ポプラール)の代表も委員会自体も、その行政領域ではなんら職務権限を手にしていない。その仕事は、法に基づき、地元段階におけるサービス改善という目的のために、ムニシピオ、州、そして、中央政府機関とその管内の全組織の働きぶりをモニターすることにあるのだ。委員会の役割は、その設立規則に規定されているように、問題解決のために「人民の最大の参加を促進し、人民の医療、教育、文化、社会的ニーズを満足させ、生産やサービス活動の開発で効率的に活発に働くこと」にある。委員会は、特定住民のニーズに対応し、様々な団体間の連携を確立し、協力を促進する。人民委員会は、大きな挑戦が求められた経済危機の最中にその仕事を始める。一人の政府官僚はこう表現している。

「コミュニティに存在する客観的な問題の量や政府の能力に限りがあることが、委員会の代表を非常に困難な立場においた」

 中央、州、ムニシピオの各政府が、コミュニティ・レベルで十分な資源を提供できず、深刻度を増す課題に十分対応できなくなったとき、人民委員会は、コミュニティ・レベルで危機の影響を管理する実際のマネージャとなったのだった。

 経済危機で緊急性があったことが、コミュニティ様々な問題の地元での解決策を見つけ出すために委員会を後押し、いくつかの起業的な委員会は、積極的にコミュニティ開発プロジェクトに向けて動いた。例えば、ハバナ市民の栄養状態を改善するための手段としての都市農業の取り組みは、都市の人民権力に大きく依存している。多くの環境意識やクリーンアップ・プロジェクト、文化的プログラムとそれ以外のイニシアチブも委員会によって支援されており、同じことが、それ以外の多くのコミュニティワークにも言える。

 すべての委員会がこうした幅広いアプローチを取ったわけではないものの、なされた多くは効果的だった。事実、委員会の仕事を分析してみると、確実にそうだったのだ。ほとんどのコミュニティの問題は、人民委員会にもたらされる。そして、サービスをモニターし、住民参加を促進し、コミュニティ・レベルでの様々なサービスのために結びつきを強化する能力で、大きな違いがあることが明らかとなる。

人民委員会の経験からの教訓
 私どもは現在と将来の人民委員会を考えています…。住民参加を組織化するうえでの委員会の役割と同じく、人民委員会が果たすべき統制と監視の役割…。疑いなく、委員会はコミュニティ・レベルで、全組織や団体を調整・統合する基本的な要素です。私は、このタイプの活動を発展させる意欲があると思います。ですが、ひとつの狭い場所やひとつの経験での問題はさほど成功しません。課題は全国的にこれを実行するかです。そのためには、それから学べるように様々な経験を発展させる必要があるのです。
トマス・カルデナス、国家人民権力、地元組織開発委員会


 委員会をさらに有効に強化するための努力としては、コミュニティ・レベルでサービスの質をモニターする能力や地区のそれ以外の主体とのコーディネートの役割を重視する。多くの人々は、効果が高いことは住民と委員会との関係が変化したことによると考えている。とりわけ、意志決定に人民参加を促進したことが、ローカルレベルでのサービス改善やガバナンスの転換の鍵と認められている。ここで重要なことは、委員会の役割を支えることに置かれていることだ。例えば、2000年に、国会は、委員会の仕事における人民参加の役割の表現を強調した人民委員会法第91号を採択した。もちろん、この採択は、必ずしも人民権力の構造改革を意味するわけではない。人民委員会活動への人民参加が、委員会が仕事をするうえで欠かせない手段となっているのだ。地元で行われる主な活動の過程、計画、開発と評価と同じく、意志決定のプロセスでも、問題やニーズや解決策が特定されなければならない。例えば、ローカル・レベルでの資源のさらに大きなコントロールだ。とはいえ、これが採択されたことは、人民権力が仕事を行うためにさらに効果的なやり方を求めていることでもある。参加の質は目標のまま残されているとはいえ、ローカル・レベルでの関係を変えることにそれは継続的な実験のための文脈を提供している。

異なった働き方:何が新しいのか?

 

 この10年は、コミュニティ開発の領域における参加型のコミュニティ計画の方法論を用いたコミュニティ参加の実験ばかりだったといえる。1993年までには、もともとあった3つのワークショップが7にまで増え、1997年には、ハバナの12地区でワークショップがなされ、現在は市内には20ある。ほとんどのワークショップは人民権力と密接に連携して働いているが、これまで、どれだけ参加型のコミュニティ開発の経験がなされたかの正確な数値はない。その数は数百だったと評価する者もいる。ハバナ市だけで、人民権力は約70ものコミュニティ開発イニシアチブを仕切っている。

 とするならば、この「地区運動」の特性はどのようなものなのであろうか。この実践はそれまでの先駆的な運動とは何が異なり、最終的に、どのようにサービス改善に結びついているのであろうか。

キューバのコミュニティ開発には5つの主な特徴がある。

  • 地理的に定められた狭い範囲で活動
  • 包括的で統合された地区ビジョンがある
  • 参加型のコミュニティ計画方法論を用い、小さな政府、国際NGOの支援による地域資源で達成できる取り組みを最優先
  • コミュニティ段階でのキャパシティ・ビルディングを求める


1. ローカルコミュニティに重点
 キューバの社会組織は、これまでもコミュニティを無視してきたわけではない。とはいえ、その役割は強調してはこなかった。だが、これは90年代に変わることになる。なぜならば、コミュニティが人民参加の場となり、社会発展の鍵となる要素だからだ。

「科学アカデミーの科学研究グループの文章は「現在、コミュニティの問題は、より機会があり、より総合的であることから、経済危機が社会生活のこのシナリオにさらに注意を向ける必要性をより明らかにした」と表現している。

 コミュニティ開発のイニシアチブは、広領域、ときには全土をターゲットとする大規模なイニシアチブと異なり、特定のコミュニティで働く。ほとんどすべてが、地理的に定義されたコミュニティで、とりわけ、人民権力がサービスを行うエリアに最も重点をおく。人民委員会は、米国の「区」の同等のいくつかの「circumscripciones」の代表をつなぐ。それは地元で選ばれた代表からなり、人民委員会が存在することで、住民の日々の生活とより近い空間として、コミュニティに根ざした介入をやれる規模で、地元を再定義できているのだ。

地区戦略の開発
 戦略的なコミュニティ計画は、総合転換ワークショップのあるハバナの人民委員会段階で起きている。戦略的なコミュニティ計画は、コミュニティのメンバーやコミュニティとワークショップにより調整された委員会で、住民に大きく影響する問題を参加型で診断することから始まる。これが、達成されれば、一連のミーティングが組織され、委員会とコミュニティに基づく組織が、結果を分析し、問題と取り組む際に直面する長所、短所、機会、脅威を決定する。このテクニックは、成功の可能性を持つそれらの領域を最優先させるのにグループを助ける。目的と行動プランは進歩をモニターするための方法を工夫する。望まれるのは、地区のすべての団体が、それら自身が自分たちの活動を組織化するものとして、戦略的なコミュニティのプランからの指示を取れることである。


2.水平のネットワークへの強調
二番目の特長は、コミュニティ開発において、地元のニーズやそのニーズに最もよく合致する包括的、かつ総合的な解決策のビジョンを求める努力がされる傾向があったことだ。それには、地元に軸足をおいて、地区の様々なステークホールダーの関係構築を優先することが必要だ。そのうえで、ステークホールダーは、水平的な見解のもと、地元に影響力のある全団体の行動を考慮する。

人民委員会でのこれまでとは違った働き方
 コミュニティでの仕事について、地元の人民権力のリーダーと話すとき、私は「新しい働き方は何を意味するのか」と言います。そして、彼らに「これまでのような縦割りの見解ではなく、むしろ総合的な開発を考えなければならないのです」と言います。というのも、もし、コミュニティ開発やコミュニティでの仕事についての話をするならば、それは、統合され包括的な開発について話をしているからです。そして、人民委員会がそうした仕事を可能にする。事実、それは、それを奨励しているのです。

 例えば、とても一般的なコメントは、人民権力の代表によりもたれる「責任の議会」がニーズをピック・アップする組織だというものです。そこで、私は、「これはそうではありません。ニーズではなく、ただ苦情を聞くために政府が各地に設けたメカニズムを使って、あなたはニーズを拾っているだけだと。皆さんは人民が直接感じたニーズを拾うための、人民がその問題をどのように見ているのかを理解するための系統立った方法を持っていない」と言います。

 そして、彼らに「この仕事では、キャパシティ・ビルディングを築き上げ、地元のリーダーを支援する必要があります。この仕事はスローなもので、リーダーは励まされ、支援される必要があります。コミュニティから産み出される自助努力とリーダーシップを必要としています」と言います。そして、私がこう言えば、あらゆる種類の議論が始まります。「自助だって。どんな種類のそれをやるのか。コミュニティ内を巡るお金だって」と。そこで、私はまた彼らに言います。「今、私たちは既存の資源でもっとやれる仕事について話しをしているのです。これがその方法です」と彼らに告げます。コミュニティの一部でとても必要とされているイニシアチブは違ったやり方で、奨励され支援されるべきだ…と。コミュニティ開発とは、委員会のメンバーたちがやっているタスクに別のカテゴリを加えることではなく、これまでとは違ったやり方で、やることをしていることを変えることなんだと」

社会学者、元人民委員会代表のトレーナー、デヴィド・ディアス・カルボ氏との2001年3月のインタビュー

 

人民委員会の代表、キューバのNGO、ムニシピオ政府、建築ブリガーダ、コミュニティのメンバーがハバナのラ・ファナでの住宅修復プロジェクトのために集合。住宅修復プロジェクトは、様々な部局内の新たな形式での横の連携のための原則の手段となっている

3. 参加型のやり方
新たなコミュニティ開発の三つ目の特長は、プロジェクトの計画や実施にあたり参加型のやり方が使われていることだ。キューバでは、古典的なコミュニティ計画の多くのバリエーションが用いられている。首都総合開発グループの指導のもと、文化省、マーチン・ルーサー・キングセンター、人民委員会や地元コミュニティ・グループが、こうした方法論をキューバの文脈で実験しているのだ。

 論議を呼んだ課題のひとつは、キューバの文脈において、コミュニティ開発に必要な効果的な参加を産み出すポテンシャルだった。キューバには、政治的な参加やボランティアの強力で豊かな歴史がある。最も成功したのは、識字率向上キャンペーンや子どもへのワクチン接種だが、一般市民の私心によらない活発な参加によって多くの成果をあげてきた。だが、こうした市民参加のほとんどは、たいがい中央が計画した政策を遂行することに重点がおかれ、日常生活に関わる分野でさえ、市民が意志決定に参加する機会は限られていた。

 地元でのサービスや地区改善の計画には専門家が介入することが支持され、計画での住民参加はさほど影響しなかった。問題と解決策の識別、計画、開発とローカル活動の評価への参加は比較的新しいものなのだ。

 だが、事実は、人民委員会の発展を誘導する新たな法が、このレベルの関与を必要としているということだ。コミュニティ開発過程のコアの構成要素は参加であり、サービスとプランによくも悪くも影響する本当の、そして、持続する参加なのだ。ほとんどのキューバのコミュニティ開発プロジェクトは、「本当」の参加を促進するために努力しているが、多くの場合、本当の意志決定の権限を住民にゆだねることは完全に達成されるわけではなかった。参加型の方法を構造化したいくつかの参加過程、例えば、ハバナの人民委員会で行われ始めた計画の過程の戦略的な方法はそうだが、それ以外のものは、以下で説明する10区のイニシアチブで例示されたように、さほど構造化されないやり方を重視している。

「それでも、この過程を完成させるのは私たちの目標です」とこの方法論でハバナ市の委員会の長を訓練したダビド・ディアス・カルボは言う。

「この方向で実験する多くのプロジェクトでは良い体験が得られていますが、私たちにはまだやれる方法があります」
質の高い参加を達成するため、かなりのトレーニングが行われている。

 最後に、参加については、草の根のシーリングと同系のものであるとの証拠がある。参加型のイニシアチブが、コミュニティの生活の決定的な領域での意志決定とつながらないままに残されているのだ。都市計画プランナーのカルロス・ガルシア・プレヤンは、こう表現する。

「おそらく、世界でも類を見ないとても大きな機会があります。このような大衆のイニシアチブを支える組織化され、強力なイデオロギーを備えた国だからです。とはいえ、動きの悪い組織のために、それらを結びつけるのには苦労しました。私どもは、想像し、調査し、議論し、両要素について、明確に話す解決策について、提案しなければなりません」

 ここで、ガルシア・プレヤンは、ローカルのコミュニティのプロセスと、ムニシピオ、州、そして、中央政府の構造とのパートナーシップの重要性を強調する。いずれも、家族やコミュニティが直面する課題に対処するために働いている。

アタレス10区のイニシアティブ
 地区診断と戦略プランは地区の最も貧しく、最も発展していないアタレス10区を特定した。ワークショップは、10区の住民とともに参加型のアセスメントに着手し、住民の主な懸念事項を明らかにした。地区のティーンエイジャー・グループによる軽犯罪、非合法活動の場となっている未完成の建物、学校を中退する学生たちのグループ、そして、アルコールやドラッグ遊びの増加だ。住民たちは、地区に子どもや若者用のレクリエーションエリアがなく、地区の物理的状態がまだ望まれていることからほど遠いことも指摘する。通りや歩道の状態は悪く、何度も廃棄物が投機され、通りにも街頭が必要だった。ワークショップは、地区住民、10区の代表と革命防衛委員会、女性連盟に呼びかける。参加型の計画技術を用い、一連の集会を通じて、彼らは取るべき目的と行動を決めた。これは地区の物理的状態の改善と家族が直面する特定の問題に集中した。後者と関連した行動は、アルコールやドラッグに関連する問題や地区の若者会議が含まれていた。会議では家族の暴力や学校問題が強調され、地区の野球チームの発展や以前にゴミ捨て場だった場所に公園を建設したり、若者や成人向けの文化活動の組織化等の特定のイニシアチブと同様に、麻薬の乱用に重点をおいた非常に出席率の高い「通りでの会議」も出された。
ワークショップのレグラ・バルボンとイサベル・モラはこう語っている。

「私たちは一仕事を終えると、ホセ・マルティの以下の言葉をよく考えるように誘ってみました。「私は、将来の人類の向上を信じている。美徳の値での、そして、あなたの」
一人の地区住民が応じてくれました。
「今の私たちの社会はとても揺れ動いていますが、子どもや若者と一緒に働くために前向きに考えることが必要です。私たちは彼らに進歩への信用や信頼を示さなければなりません。私たちは、この仕事によって誰もがこの目標により近づいたと思います」


4. 資源を動員する
地区を優先して資源を動員するという挑戦は実証ずみだ。ほとんどのプロジェクトは、簡単に使える地区の資源、とりわけ、人的パワーだけを使うことを目指した。だが、それ以外の資源については、グループは、防衛委員会や女性連盟といった地元組織や文化省、保健省等の政府機関に頼らなければならない。例えば、文化省はあらゆるムニシピオにある「文化の家」に資金供給をしており、さらに重要なのはキューバ作家芸術家組合だ。これは、コミュニティに根ざす数千もの芸術家たちに直接資金提供している。

 ハバナ首都公園やアバナ・ビエハ再生のためのプラン・マエストロといった大がかりな都市プロジェクトは、その地域にある数多くのコミュニティ開発イニシアチブを支えている。首都公園とは、アルメンダレス川に沿った帯状の地域の環境を復元する戦略プランで、参加型のやり方を用いているが、域内にある9つの人民委員会で環境グループを組織化している。地区の仕事を調整し、公園計画に地区住民や委員会を関与させている。数多くの首都公園のプロジェクトは、委員会と関連して行われ、国際機関から支援もされている。コミュニティ・プロジェクトは、地元の大学や研究機関の支援も受け、トレーニング、学生、教授陣の研究、セミナーと、話題と関連する刊行物をサポートしている。彼らはマーチン・ルーサー・キングセンター、教会委員会、アメリカ内部関係情報研究センター等の国のNGOからの技術支援も直接受けている。コミュニティ・プロジェクトは、1990年代半ばからキューバで動きはじめた国際NGOからも資金提供されている。国際NGOの存在は、当初は国の機関よりNGOに資金供給したがることから、キューバで論議を呼んだが、その役割は一般に受け入れられている。国際NGOからの支援は、技術支援の提供や国際交流の推進、コミュニティ開発プロジェクトの基金で重要だ。

5. コミュニティの能力構築
 キューバにおけるコミュニティ開発の最後の特徴は、地元のリーダーシップを支え、開発する方法だ。ブロックレベルやあらゆる職場にある大組織はリーダーシップを育てるうえで重要な場所となっている。とはいえ、地元で認められる有望なリーダーたちのほとんどは、地区外のポストに付いてしまっていたし、それ以前は、コミュニティに根ざすリーダーは、人民委員会やワークショップ、コミュニティ・プロジェクトの地元リーダーが現在求められる複雑なレベルに対応することを、要求されることもなかった。だから、最初のタスクは、草の根のリーダーたちがこうしたタスクに応じられるだけの能力を開発することだった。

 初めは、革新や実験のムードを実践する中で学び、首都総合開発グループ、マーチン・ルーサー・キングセンター、CIERI、教会委員会、ハバナ大学他の団体が、こうした取り組みを支援した。その後、全国組織は、こうした初期の経験から学んだことを体系化し始め、国際NGOの支援も受けて、コミュニティでの計画づくり、ミーティングのファシリテート、コンピュータの利用法、保健や環境教育の方法、ケースワーク、若者の仕事等といった分野で、コミュニティのメンバーをトレーニングをしはじめる。

 政府も、とりわけ、州レベルにおける委員会の機能や有効性を改良するため、委員会の代表や人民委員会の委員長の訓練プログラムを支援した。例えば、新たな代表や委員長のために、州議会事務局が支援する訓練プログラムは、住民ニーズを特定する参加型の方法、ミーティングを運営するためのスキル、コミュニティレベルでサービスをモニタリングする過程とさまざまな話題をカバーしているのだ。

 コミュニティ開発の過程として生まれた副産物だが、それは、地区のあらゆる面で、住民や組織力を強化する傾向がある。参加者たちは、どこでも使える仕事のやり方を学び、その新たなビジョンと新たなスキルを持って、それ以外のコミュニティ組織を強化しているのだ。

コミュニティ開発と社会開発

 サービスの転換の決定的な要素、とりわけ、ユーザがそれを経験するやり方はゆっくり現れている。過去には主要な社会問題に対応するうえで、成功した、普遍的な政策と中央集権的なイニシアチブだけでは、この新しくて、複雑な環境では十分ではないかもしれないとの認識が広がりつつある。社会問題を防ぐには包括的で統合的なアプローチが必要だとの認識がある。強力なステップが、とりわけ、提供の点で、サービスでコラボレーションとコーディネートを増やす方向で取られている。

セントロ・アバナのマーチン・ルーサー・キングセンターを通じてオクスファムから資金援助を受けたコミュニティ住宅修復プロジェクトに女性の住民は貢献している

 社会サービス制度の新たなこうした変化は、コミュニティ・レベルで生み出される強さや能力に密接に結びついている。キューバのコミュニティ開発の過程は、まさにサービス改善は最もよく対話される領域で強い。彼らはミッションの中心に家族やコミュニティをすえ、家族やコミュニティのニーズを特定し、コミュニティ・レベルで横のサービスのコーディネートを奨励している。 そして、家族のつながりをそのネットワークで強化している。多くの先進国がこれと同じやり方でいくつかサービスのアクセシや質を改善しようとしているが、わずかな国しか、キューバでの成功の希望をこの実験に与える状態にない。参加や政策との相互作用でもサービスの制度変化における別の批判的な要素を見出せる。

 コミュニティ・レベルでの仕事に対して、科学アカデミーの社会研究グループが1996年に書いた文章はこう述べている。
「参加は最も統合された意味で理解されている。完全な社会的な過程における積極的介入は、ニーズの識別から、政策の定義と定式化、活動の開発の実行、実施、そして、コントロールまで前述の政策と関係づけられている…」

 サービスの提供方法を変えるには、ユーザの話を聞いて方向を決めることが必要だ。ユーザにはサービスの質を評価する権利があり、サービスの有効性が提供されたとき、変化がもたらされるだろう。サービス改善で最も可能性が高いのは、コミュニティ・レベルだ。住民参加でエネルギーを得た人民委員会の計画やモニターの役割の完全な実践は、新たな見解や新たなビジョンが、草の根でのより多くの決定、草の根で管理する多くの能力、人々の暮らしへのより現実的な影響を意味することを示している。

 文化省のコミュニティ文化センターのフェルナンド・ロハス所長は、キューバが1990年代の経済危機で取った経路についてこう話す。

「私は、この国が変化、巨大な変化を促進していると信じています。我が国はこの経済危機からとても確実な一歩を踏み出しています。二度ともう戻らないことをやっているのです」

キューバ流の民衆教育
 1990年代の参加型のプロセスの重要な要素は、解放のための成人識字力を専門とするブラジル人の教育者パブロ・フレイレが開拓し、ラテンアメリカで広く用いられている、大衆教育の方法の適用だ。だが、キューバの参加者たちは、キューバの経験の特性を考慮しなければ、この方法が適用できないことに気づく。ハバナのマーチン・ルーサー・キング記念センターのトレーニング・プログラを創設したエステル・ペレスさんは、その理由について説明する。

 「時ともに、様々な理由から民衆教育は複雑となりました。最も明白なことは、キューバの教育水準の高さです。これは、書かれたテキストとふれることの少ない人々向けにデザインされているので、ラテンアメリカの教材を捨てたということです。書かれた言葉と学習過程とのとても強いつながりを作り出しますから、私たちも、住民がただ理解するだけでなく求める対象をテキストに入れたり、製作しています。また、私たちのワークショップの参加者はそうしたスキルを既に持っていますから、例えば、ラテンアメリカ諸国で用いられているトレーニングの過程、簡単な診断、観察や研究プロセスの能力創造といったいくつかの一般的な話題やアプローチは除いています。例えば、教育水準が高くても、トレーニングの中で、様々な社会的な規律の要素を使えたのです。

 ですが、私たちのグループが他と違うのは教育水準だけではありません。キューバの経験は、それ以外の経験ととても異なっています。組織のメンバーとしての実践すること。そのために、組織的、教育のプロセスの中で確立されたことに明確なつながりがあること。一人ひとりの自己実現が集合的なプロジェクトとリンクされていること。幅広い発想等です。このいずれも、私たちの経験をキューバナイズするために、学べるすべてを学ぶために、私たちはきちがいのように勉強し、できるだけ正確に臭いをかぎ、感じることを強いられたのです」


 Miren Uriarte, Cuba:Social Policy at the Crossroads: Maintaining Priorities, Transforming Practice, Oxfam America,2002