2001年9月10日 本文へジャンプ




キューバの医療

ハバナはヘルス・ツアーの人気が高い目的地だ

 2001年、75歳になるフィデル・カストロ国家評議会議長の健康状態には憶測が続いている。だが、ひとつ確実なことは、カストロは彼の国の医療のことを懸念する必要はないということだ。

 2001年に、キューバをリードする医大生は、ハバナで開催された式典で、カストロから卒業証明書を受け取った。多くのキューバ人たちは、ハイチ、ホンジュラス、パラグアイ、アフリカ等の他の発展途上国とはかけ離れた医療技術を例にとり、キューバを粋な社会とみなしている。キューバは豊かな国ではない。だが、1959年にカストロが権力を掌握すると、その社会主義政権は、社会全体のためになる医療システム構築に取り組んだ。そして、値段が高い設備や医薬品よりも、プライマリ・ヘルス・ケア、健康教育と予防が重視されたのだ。

低い死亡率

現在フィデル・カストロは75歳だ

 キューバの平均寿命は、ラ米地域でも最も高く、市民の平均寿命は76歳である。高齢者は、ハバナ中央公園での太極拳クラス等の活動に参加することを奨励されている。それが、老人たちに社会生活を提供し、あわせて、いつまでも健康で活動的であることを担保している。そうしたクラスのメリットの事例が必要ならば、86歳になるミルタ・マクベス)さんの例があげられるだろう。

 「世界中の老人たちも私たちと同じように幸せであって欲しいのです。私たちは年金受給者という言葉が嫌いです。なぜなら、老いるということは、ただ数字を加えることにあるのではなく、あなたの人生に歳月を加えることにあるからです」

 キューバの乳児死亡率は1,000人あたりたった7人であり、その数値は多くの米国の都市のものよりも良い。キューバでは、年間の国家予算の約10%が医療に費やされているが、医師と患者の比率は世界最高だ。

海外からの関心

 

髄膜炎Bに対抗新ワクチンが最近、キューバで開発された

 どのようにそれを実施しているのか。キューバは定期的に調査訪問を受け入れている。その中にはWHOのグロ・ハレム・ブルントラント事務局長もいる。

 「キューバの統計数値を見れば、政策の成果を目にできます。教育と健康について、体系的な福祉医療の努力があり、それは全国民に達しています」そう彼女は語る。

 英国のパトリック・ピエトロニ博士も、キューバの医療システムを支持しており、ここ2年で、100人以上の英国の医師や医療スタッフをキューバに連れて来ている。

 「人々はGDP指標で貧困を判断し、ことGDP指標ではキューバはかなりの貧しい国なのです。にもかかわらず、私たちが見出したのは、キューバは人的資源については、とても豊かな国であることだったのです。キューバのファミリー・ドクターが300人の患者を受け持つと耳にして、英国の医師は驚かされます。その比率は英国では1,800なのです」。そう彼は言う。

 キューバは、市民への治療とあわせ、医学研究にも多く投資し、エネルギーを注いでいる。ハバナ西部の緑豊かな郊外にその一連の科学施設があり、B型髄膜炎とB型肝炎の治療で重要な進歩を成し遂げた。医学研究者、リカルド・シルヴァ博士はこう語る。

 「私どもは、随時、国家経済に貢献しようとしています。ですが、私どもが優先しているのは、あくまでもキューバの健康と第三世界諸国の健康なのです」

経済封鎖を克服

キューバの病院はスタッフも施設もよく完備されている

 人々の命を救うこととあわせ、キューバの科学的な仕事の目的は、外貨を稼ぎ、米国から課された40年もの経済封鎖の影響を克服することにある。経済封鎖は、必要な医薬品が輸入できず、避けられない死や苦しみを引き起こしているとキューバは指摘する。一人の高齢の患者が、その影響を説明する。

 「医薬品の値段は高くはありませんが、全員分はないのです。そこで、長蛇の列ができることになります。誰もが欲しい薬を手に入れられるわけではないので、うんざりしています」

 キューバでは、ヘルス・ツーリズムが主要な外貨獲得源になっている。何千人ものラテンアメリカ人やヨーロッパ人が、キューバ人医師の優れた評判やその値段の安さや保養に適したビーチに魅了されキューバにやって来る。

 キューバ革命の主要目的のひとつは、有効な医療システムをその人民に常時提供することだった。そして、ヘルス・ツーリズムや進んだ医療研究とあわせ、キューバはそのモデルを構築し、はるかに豊かな国からも関心を集めているのである。

 Daniel Schweimler, Cuba's medical success story, 10 September, 2001.