2003年2月17日 本文へジャンプ





キューバのエイズ対策医療

エイズ療法は広く利用可能だ

 HIVエイズ感染に関しては、希望の持てる物語はごく少ない。だが、カリブ海にはエイズへの戦いで、元気のでる事例がある。そこでは、共産主義が最後にあえいでいる。

「キューバはHIV・エイズ問題に蓋をしています」と、キューバへの人道的な援助に取り組む米国のNPO、キューバ・エイズ・プロジェクトのディレクター、バイロン・バークスデール博士はそう語る。

 「キューバではエイズが流行し始めてから、感染が広まっていないのです」

 デンバーでの米国科学振興協会の年次総会で、博士はこう述べた。

 実際、キューバの感染率は0.03%で世界でも最も低い。加えて、他国を悩ませているエイズ感染形態がほとんど存在しない。静脈への薬物使用、輸血や新生児へのウイルス遺伝が全くないのだ。

利用可能な薬品

 そして、キューバは今、国内の患者に供給できるエイズ治療薬を作り出している。結果として、2002年には予想されていたエイズ患者の死亡率25%が、7%だったのだ。

 例えば、アフリカ諸国では、母体から子どもへの感染が大きな問題となっている。だが、キューバ政府は、すべてのHIVで陽性の母親は、AZT療法で予防治療され、その後、新生児は帝王切開で確実に分娩される。どんな新生児も産道を通る際にウイルスに感染しない。バークスデール博士は、このキューバの防止策は他国ではとうてい実行できそうもない、と言い足している。

「米国では、HIVに陽性の母親全員に帝王切開を強制することは難しいでしょう」

 このキューバでのエイズへの低い感染率は、病気が流行した初期からの国の並はずれた対応のためである。

恥辱

 1983年、キューバはエイズに関する教育を行うため、国家エイズ委員会を設立した。そして、初めてキューバ人がウィルスに顔をしかめた完全に2年前にである。一方、当時「エイズ」という言葉が恥辱になったとき、米国のロナルド・レーガン大統領は公開演説で、言葉を使うことを拒んだ。

 だが、バークスデール博士によれば、キューバでは、十分長く社会主義の下で暮らしており、人民は「無差別思想」を持っているため、人民を教育し、公正な医療をほどこすことを可能にしているという。キューバの社会的な福祉医療制度のもとでは、HIV/エイズ患者が全員が無料で治療を受け、薬品を手にしているのだ。

 1980年代後半、キューバは古典的な国民健康政策を実施し、患者の検査を始めた。隔離システムでは、8週間の教育がなされ、薬品が提供されるが、患者はその後は自由である。だが、バークスデール博士によれば、多くの患者は病院に滞在することを選択するという。

 

監視

 加えて、国の監視制度が、感染者全員とそのパートナーをチェックしている。結果として、発生源が国内・海外であるとにかかわらず、政府には、HIV/エイズ感染すべてについての大規模なデータベースがあるのだ。この当局の対応が、ウィルス感染の封じ込めの一助になった。だが、キューバが政治的に孤立したため、命を救うエイズ治療薬を手に入れることができなかった。そこで、キューバは革新的になったのである。先進国で製造される高価なエイズ治療薬が入手できないことから、キューバの化学者は薬品の化学成分を分析し、自分たちでそれを再生することに着手した。現在、キューバには、患者全員に十分なほどの7種類のエイズ治療薬を生産している。バークスデール博士は言う。

 「キューバは薬品生産の自給を達成したので、次のステップは輸出です。キューバは、すぐにでもエイズ治療薬の他国への販売を言い出すのではと予測しています。もっとも、キューバから直接こうした薬品を購入する国が、ラテンアメリカ、カリブ海、アフリカにあるかどうかは疑問ですが」

 米国の国立アレルギー感染病研究所のモニカ・ルイスさんは、キューバはエイズ危機への対応で政治的なリーダーシップの事例となっていると語る。

「それは、国がそれ自身で支柱となれる事例です。各国の対応は様々でしょうが、この事例は、そこに政治的な意志がなければならないことを示しているのです」

 Molly Bentley, Cuba leads the way in HIV fight, 17 February, 2003.