2003年8月15日 本文へジャンプ





キューバのエイズ対策医療

ソ連の崩壊以来、キューバ経済は苦闘している

 ハバナの郊外数キロ。豪勢な熱帯ガーデンにロス・ココス・サナトリウムがある。それは、少し高級なホリデー・キャンプに似ており、グランド内のきちんとした白い家のペンキは目新しく、芝生は丁寧に刈られ、そこの居住者は誰もが皆、幸福に見える。訪ねてみて、ここが世界で最も物議をかもし出した「エイズ防止プログラム」のひとつであったとは、とうてい憶測がつかないだろう。

 だが、1980年代の半ば、まだ、エイズ・ウイルスのことが、少ししかわかっていなかった当時、キューバは何千人もの市民にHIVの有無を強制的に検査し、陽性反応が出た人々は、このロス・ココスに連れてこられ、そこから出ることが許可されなかったのである。このきわめて統制度の強い共産主義社会でのみ可能な政策は、全世界の人権擁護団体から非難を浴びた。

成功

「キューバが人々のHIVを検疫したり、監禁していたとき、私たちの見解は大きく異なっていました。ですが、そこには尊敬に値する基準や価値があります」
そう、国連エイズ合同計画(UNAIDS)のピーター・ピオット博士は言う。その証に戦術は利いた。地域の隣国はエイズでひどい打撃を受けている。サハラ以南のアフリカを除き、カリブ全域の感染率は、他に引けを取るものがない。だが、この事実があるにもかかわらず、今のキューバのエイズ感染率は世界でも最も低いのだ。過去20年間、キューバは病気の治療を含めて、成功をおさめてきた。そして、キューバは、その政策を進展させている。今では、希望すれば、ロス・ココスの患者は自由に出ることができる。

ドルの魅力

 エイズが進行している人々へのケアも万全だ。キューバの医師の月給はたった15ドルだが、医師たちが提供する治療は、世界で最も豊かな国のそれに匹敵している。医薬品も同じで、特許製品の模造がキューバ人の医師たちによって製造されている。

 だが、エイズを抑え込むためのキューバの新たな戦いは、課題に直面している。観光である。15年前には、キューバを訪れる旅行者は一年に数1,000人だけだった。だが、今年、政府は200万人が来訪することを期待している。ソ連の後援が失われて以来、キューバは外貨獲得のため、やむを得ず観光に依存している。そして、旅行者の誰もが太陽やサルサを求めてやってくるわけではない。美しい白砂のビーチに沿って、ハバナのすぐ東側を歩いてほしい。すぐに、若いキューバ人と連れ立つヨーロッパの多くの中年男性に気づくだろう。政府の再三の取締りにもかかわらず、キューバでの売春は後を絶たない。理由は簡単だ。国からの月給よりも多くの金銭を旅行者と一時間いるだけで稼げるからである。


自己満足

 ほぼ毎夜、客を求めて、リディアさんはハバナ湾に沿ったマレコン通りをぶらつく。多くのキューバの売春婦がそうであるように、彼女もエイズの危険は意識している。だが、同時に満足もしている。

「エイズは他の国々ではとても悪いです。でも、ここはどうでしょう」

 リディアさんは、食べ物や医薬品のようなものを買うお金が必要なので売春をすると言う。以前は、キューバ人たちは、ほとんどすべての必需品を国に依存することができた。だが、今、ソ連からの援助金がない中、彼らはますます自立しなければならなくなっている。

 エイズとの戦いにおいてキューバが成功を治めることができたのは、個人の自由よりも公益が重視される社会であるという事実の結果と考えることができる。だが、キューバが再び世界で最も古い個人的な職業に変わるのに従って、その成功は維持することができるのだろうか。

 Stephen Gibbs, Threat to Cuba's Aids success, 15 August, 2003.