2004年12月 本文へジャンプ


サルーを楽しむ



彼女はいま

 イリアム・ヒメネス博士は、ファミリー医療の専門家だが、サルーの撮影をした後、外務省の国際協力副大臣に昇進した。

 キューバの医療チームが活動する国々にでかけ、パキスタン、ボリビア、グアテマラ、インドネシア等で、災害に対応する医療専門チーム、ヘンリー・リーブの中心人物でもある。そして、発展途上国出身の医師たちを養成する様々なキューバのプログラムとも密接に協働している。

キューバの包括的な医療プログラムについて

 包括的な医療プログラムは、60年代から、私たちの国が開発してきた医療援助を拡充したもので、医療、予防、そして、人材の育成からなっています。最終的には本当の医療インフラを構築・強化することを支援しています。このプログラムは、医療を包括的なものとするためのものなのです。私たちが働いてきた国に残してきた本当の資産は、コミュニティにおける医療教育だと思います。例えば、HIV/エイズでは、予防教育で働いてきました。

 ですが、ここにはまた別の高いハードルがあります。数少ない私たちに比べて、膨大なコミュニティがあるとき、どうすれば情報を周知できるのかということです。こう考え、ラジオを使っています。地元やムニシピオの放送局、教育ラジオ・プロジェクトを開発しています。いま、ホスト国にはHIV/エイズ予防プログラム用に209の放送局があり、1200万人以上に届いています。

キューバの国際医療援助の進展について


 医療援助の要請があれば、私たちは、まずアプローチのやり方について説明し、援助国側は自分たちのニーズを述べます。現実や医療サービスの課題のことを知っているのは彼らの方ですから、私たちはそのニーズを尊重します。そして、既にあるヘルス制度に対応しなければならないという原則から始めて、彼らの創造性を損なうことなく、その強化を支援します。

 とはいえ、地元当局が関与してくれれば、創造性をよく育めます。その国の人たち以上にその国のことをわかっている人はいないからです。私たちよりも現場をよく知っているのです。協力においては、少しずつ、地元の医療当局と話し合うなかで、アプローチを発展させ、次に、それに応じて援助を適合させていきます。

 農村部の孤立した領域における私たちの原則は、私たちの努力がその国の医師の仕事を妨げてはならないということです。

 例えば、ガンビアのような国には「マラブ」と呼ばれる人たちがいます。地元のヒーラーで、薬用植物やお祈り他の伝統的な手段によって人々を癒しています。キューバの医師は、このマラブを除外したりはしません。彼らを尊敬し、彼らから学び、その情報や知識を取り入れます。

 助産婦でも同じです。彼女たちは、たいがい、コミュニティでヘルスケアを提供し、女性たちを助け、出産や新たな命の誕生を準備しています。彼らに取って代わるのが私たちの役割はではなく、詳細な情報を彼らに提供し、さらに訓練し、さらに良い仕事の成果をあげられるよう支援することであると決めたのです。

故郷から離れて難苦に耐える国際ボランティアの挑戦について


 キューバの医師たちは、心から祖国を離れて他の人々に医療を提供したがっているのでしょうか。私はそうだとは思いません。キューバの医師たちも家族や故郷の人々と一緒にいたい、自分の国にいたいと思っているのです。ですが、私たちの同胞が受けてきた教育のために、世界の健康のために何かの貢献をしたいとの責務も感じています。医師たちは、その責務を感じることで動機づけられていると思うのです。医師たちは、科学的な理由から、そして、その専門性から一人ひとりが動機づけられているのです。また、文化的、科学的な観点から、貴重な交流がなされることで、人間として発展できるのだとも思います。懸命に働くことがストレスにはなっていないと言いたいのです。

 私たちの医療チームのメンバーが絶えず取り組んでいるのが、オルターナティブを模索するという努力です。くじけてしまえば、協働は損なわれてしまいます。キューバが困難であることそのものが、生き残ることに満足感を覚える人間に私たちを変えたのかもしれません。ですが、それはキューバ人たちの哲学ではありません。キューバ人たちはたとえ困難に直面しても、生きる現実を変える方法を探します。私は、この哲学が、協力の努力においてキューバの医師を元気づけているのだと信じています。

 さて、私たちが医療を提供している人たちに共通しているのは、極端な貧困です。私は、キューバの医師たちがそのことを理解しており、こうした状態に順応する大きな能力があると思っています。こうした国々の政府や機関が提供できること以上の良い状態を求めないよう心にとどめています。

 また、私たちが開発してきた重要な努力のひとつに情報ネットワークがあります。誰もが、このハバナにあるセンター、私たちとつながっています。彼らは毎週自分たちの仕事の成果を私たちに送ります。

 また、その知識をアップデートし、医学教育を受け続けられるよう、私たちはバーチャルなキャンパスや参照センターも創設しました。遠い場所で2年間も過ごし、現状のままとどまり、その分野で前進する機会さえ得られないのは悲しいことだからです。

開発途上地域での医療統計とデータ収集について


 私たちがこうした国々で対応するうえで最も問題となることのひとつに統計不足があります。その地域の健康状況を理解する一助となるデータが全くないのです。ですから、必要なデータを収集するため、地元当局と協働し、国際機関とも一緒に仕事をしています。

亡命するキューバの医師について


 このプログラムや他のプログラムで海外で働く何千人もの医師のうち、約2%ほどが亡命します。では、なぜ、彼らは亡命するのでしょうか。私は、政治的な観点からではなく、人間の視点からそれを分析しようとしました。公共益が私益よりも重要であることを認めることができない人たちも何人かいるのです。ですが、私は彼らが自分の人生を心配するのももっともだと思います。つまり、私たちは、専門家の開発をケアしていますが、集団益を個々人のそれと合わせられない人たちがいるのです。彼らは、自分自身や個人として職業意識の方に関心を持ちます。さらに、私たちの医師が働く困難な状態に適応できない人たちもいます。また、私たちがやっている仕事の全体的なディメンジョンを理解しない人たちもいます。彼らは亡命を決断します。それは、私たちには喜ばしくないことですし、私たちがともに構築しているプログラム、この人道主義のプロジェクトを誰もが愛し、信じて欲しいとは思っています。ですが、そうは思わない人々がいることも受け入れなければなりません。

医療の民営化について


 いま、民営化に向けたプレッシャーが常時あります。ですが、民営化はいったい何につながるのでしょうか。それは、医療を商品へと変えます。人間は患者であることを止め、顧客となります。どれほど多くの患者が訪ねてくるか。医薬品はいくらになるか。これはいくらになるか、あれはいくらかになっていきます。それは私たちの概念ではありません。

グローバル化と南々南協力について


 私はすべての援助は有効だし、価値ある貢献は多くの方面からもたらされるものと思います。ですが、もし、この貢献が、地元の医療制度を強化するために誰もがひとつの傘の下に集う包括的なものであれば、それはよりポジティブなものとなるし、国際協力の成果を高めると思うのです。

 南々協力は、北からの南への協力とは違いがあると言えます。他のものを犠牲にしながら、あるものを称賛するのは好きではありません。私はポジティブなものもネガティブなものも見ながら比較したいのです。ですが、南々協力は有効だと立証されているし、私たちの国々が直面する状況の深い理解に基づき、さらに大きな協働の可能性を具体化していると思うのです。

 People in the Film, Head of Cuba's Comprehensive Health Program, Further interview excerpts from ¡SALUD!, December 2004.