2006年8月1日 本文へジャンプ



英国が評価するキューバ医療

 ニュース・ナイトの世界最高の「公共サービス・シリーズ」では、英国やその他の国がキューバの医療システムから何を学ぶるかを問いかけている。

 先週、トニー・ブレアはノッティンガムでスピーチを行ったが、その時は、レバノンの危機やルパート・マードック氏(注)からの要求は、まだブレアの関心時ではなかった。ブレアの課題は、英国での懸念すべき保険医療の状況や国家財政へのその負担にあった。

 ぶっちゃけて言えば、ルパード・マードック氏のメッセージは、国家医療福祉制度は、肥満、アルコール中毒、喫煙や一般的な悪い生活習慣で苦しむ人々を扱う費用は提供できないというものだった。氏は糖尿病を例に取る。

「今日、医療福祉制度予算の10%は糖尿病の治療に使われている。2010年には、これが倍増するとの予測があり、それは避けられない。糖尿病患者の4分の3はタイプ2の患者であり、うち3分の2は運動、食事やより健康的な選択枝で予防できるかもしれない病気にかかっているのだ」

 その5日後、ブレアは、カリフォルニアのペブルビーチにあるマードック氏のニューズ・コーポレーションに到着した。ブレアは、利権政治の時代は終わったと聴衆に告げ、政策思想では、左や右という定義はますます役立たなくなっていると述べた。

 だが、これがどうであれ、ブレアは、本当に医療への懸念に対処するには、フィデル・カストロのキューバの医療システムを目にするべきではないだろうか?

特別委員会

キューバのヘルスケア
256の病院
13 医学研究センター
445の24時間の診療所
1万3857人のファミリー・ドクター
年間一人当たりの医療費:キューバ251ドル、英国2,389ドル、米国5,711ドル

 お怒りのメールを送る誰かがいるかもしれないが、まずもって、この報告はキューバの広範な政治システムや人権の記録を意図したものではない。キューバの外科、診療所、そして病院の高い評価については、論議はほとんど呼んでいない。2001年、英国国会のコモンズ健康特別委員会のメンバーは、キューバを訪れ、「予防重視」と「コミュニティ内での医療活動のコミットメント」に基づく、キューバの医療制度の成功を賞賛する報告書を出している。

 キューバの制度の基本にある理論は驚くほど簡単なものだ。一部はキューバ人の暮らしを縛り付ける奇妙な規制の網によって、しかし、主には米国の経済封鎖により、キューバ経済はひどく混乱している。一人当たり国民所得は小さく、資源は驚くほど緊縮されている。だが、福祉医療は国の最優先課題とされている。共産党の象徴であるチェ・ゲバラも医師だった。それは、ロマンチックでもあるが、実益主義とも関係している。医療制度を国民が賞賛していることが、カストロがいまだに実権を握っている主な理由のひとつでもある。そして、その挑戦は、病気になることにまず歯止めをかけ、あまり治療しないことにある。

コンスルトリオスとポリクリニコ

アナ・マリア・フェンテス(Ana Maria Fuentes)博士は約1万4000人のいるファミリー・ドクターのひとりだ

 ニュース・ナイトは、キューバ滞在中の4日間、実際にそれがどう機能しているのかを調べた。我々が最初にたずねたのは、ハバナから30分ほど郊外にある小さな町、ハルコにあるキューバの医院、コンスルトリオだった。そこで、患者はかなり健康から完全に健康まで5段階に分類される。そして、必要とされるケアの程度は、それに応じて決められるのだ。

キューバは貧しいかもしれないが、不健康ではない

 ここがキー・ポイントだ。もし、健康だと保証されたとしても、ファミリー・ドクターは、年に一度は往診する。そこにある思想は、ただ、肉体面での健康状態を診断するだけではなく、もっと幅広くライフスタイルや家庭環境をチェックすることにある。我々が出会った医師はいう。

 「毎年往診することにたぶん驚かれるでしょうが、それは、とても重要なものなのです」

 我々は外来患者診療所、ポリクリニックでも時を過ごした。ポリクリニックは、病院まで通院する必要がないように、歯医者(常時)、ちょっとした手術、エックス線検査といったサービスを行うことを目的とした独創的な発明品だ。

 我々は全世界からの医師志望者を訓練するラテンアメリカ医科大学も訪問した。そんなことはとうていありえそうもないことだが、大学には、米国からの71人の学生もいた。これがキューバのやり方なのだ。

 そして、大きな違いを生み出す役割を果たしているささやかな社会的な出来事にも遭遇した。毎朝、ハバナの公園で運動をしている年金受給者たちだ。そして、60歳になって、人生の折り返し地点だと考え始める人々のための全国組織、120歳クラブだ。

比較

 このすべてがどれほど機能しているのか、すぐさま証拠が欲しいならば、キューバの健康指標を考えて欲しい。その平均寿命と乳児死亡率は米国のものとほとんど同じだし、医師と患者の比率は、どの西欧諸国との比較にも耐える。だが、一人当たりの年間総医療費は251ドルで、イギリスのまさに10分の1以下なのだ。

 前述したブレアの講演で注意すべきは、急速に断片化している国家福祉医療制度に対して、政府が改革に着手することが一部目的とされていることだ。外科は、病院の支所に位置しているが、それらは、突然の往診をすると思えるだろうか?。キューバのコンスルトリオスのやり方で、コミュニティに自分たちで根づかせることができるだろうか?。キューバの成功の鍵を握るように思えるシンプルな組織に対応させられるだろうか?。左や右といった偏見を考慮するほど首相にゆとりがあるならば、ブレアの政策転換はかなり異なっているべきだ。まず、ブレアはキューバにいくべきなのだ。


 John Harris, Keeping Cuba healthy,1August 2006.