2006年11月20日 本文へジャンプ


ハバナで看護師専門学校が開校



看護学校を新規開設

 ディーン・ディジ・ベルダジェスさんは、30年もの看護教育の経験を持つが、「現在、科学的専門知識が必要とされていることから、新たな看護学校が設立されたと「キューバ・ヘルス・リポート」で語っている。

 マノリト・アギアル研究所は、人口が密集したマリアナオ地区にあるのだが、ほぼ完全に改築され、間もなくハバナ出身の2,000人の学生を迎え入れることとなる。新看護学校は、ハバナの高等医科学研究所の施設で、キューバの看護情報センターとしての機能も果たすことになるだろう[1]。

 ベルダジェスさんによれば、それは、看護教育プログラムを強化し、看護師の資質向上という目標のための一ステップだ。看護師たちは、キューバにおいては、「研究所」と称される医科大学で養成されているが、医科大学では、医学も一学部で、これと別に大学水準の教育に相当する看護学部もある。

 1959年のキューバ革命以来、最も急を要したことは、医療専門家を養成することだった。半数もの医師たちが米国に流出し、かつ、普遍的医療を実施することが公共医療の戦略となったからだ。これは、医療従事者として既に働いている人々のスキルを高めることも意味した。例えば、全国各地で病院や総合診療所が開設されるが、スタッフを確保するため、助産士婦は看護助手としての訓練を受け、また逆に看護助手も看護士となるための訓練がされたのだ。
 その後、看護コースには、集中治療、小児科他の専門分野も加わる。そして、看護分野を充実させる発想から、1976年には5カ年の看護学士の制度も設けられる。そして、コミュニティで経験を積んだり、母子看護の制度も1989年に導入され、看護学の修士課程は1998年に初めて設けられる。それ以前には、多くの看護婦たちは、ベルダジェスさんのように、医療教育学や疫学を含めた関連分野で修士号を得ていたのだ。キューバ医療科学高等研究所は、カナダのマニトバ大学の協力を得て、3年前に看護学の博士課程を創設する。

キューバの看護の哲学

 マリセラ・トレスさんは、この最初の卒業生だが、同年に博士号を取得し、この博士課程にはさらに数人の学位取得候補者がいる。

 トレスさんのキャリアは、キューバの看護学教育の進展にほぼ沿うものだ。看護学教育は、長期的には高い目標を掲げながらも、各部門の需要に応えられるスタッフを育成するという課題に対応しようとしたものである。

 トレスさんは、テクニカル・レベルの看護師(米国のLPN、日本の准看護師に相当)からスタートし、小児科の専門家となったが、技能が優れていたことから早くから看護教育を受け始め、学び続けた結果、看護学で学士号を取得する。そして、修士号や最終的に博士の学位を取得する研究に戻るまでは、看護師として地域医療に従事していたのだ。

 トレスさんの学位論文は、様々な種類の看護師の役割や能力を分析し、その内容を詳細に論述したものなのだが、それは、看護師の給料を適切な給与とすることにも寄与したという。

 マノリト・アギアル研究所は、キューバで増える看護教育への入学者に対応したものだ。2004年以来、看護師学校への入学者は増えており、2006年から07学年にかけても18,663人から35,483人まで増えた[2]。

 資格を持つ看護師を養成することが重要なことは、キューバに限らないが、中南米地域では頭脳流失や教育機会の乏しさから、看護師不足は深刻だ[3]。そこで、ラテンアメリカ医科大学(ELAM)では、世界各地から留学生を受け入れているのだが、マタンサス州にあるハグエイ・グランデ看護学校も同じであって、セント・ビンセント島、グレナディン諸島、セント・ルシア島、セントキット・ネビス島出身の奨学金を受けた看護学生を教育している。また、キューバとドミニカの厚生省間の協定で、ドミニカにも新学校が建てられ、現在、89人の学生が入学している。ベリーズでも、キューバの協力によってさらに一校の看護学校が開校する予定だ。

 マリセラ・トレスさんは、現在、正規の教授だが、キューバの看護カリキュラムで特徴的な点に、医学と同じく理論と実践とが相互関連していることだ、と語る。例えば、学生たちは、一年生のときから、オン・ザ・ジョブ・トレーニングで経験を積み、「看護師は医者や医療技術者とチームを作って働いています」とトレス教授は強調する。彼女たちは、修士号を取得するために公衆衛生校で、様々な専門家と一緒に学んでいるのだ。トレスさんは、キューバにおいては、看護師がポリクリニックや「母親の家」他の機関の責任者であることも指摘する。

 トレスさんは、自分が看護師になった理由について「看護師という職業になろうとしたわけではなく、何かを得ようと看護学を学び始めたんです」と告白する。だが、子どもたちの看護をすることで、教授は、看護がそれ以上のものであることを確信する。

「教育、研究、そして、コミュニティで働くこと。すべての実践において、看護師という職業を愛しています。看護とはケアです。身体的、メンタル、そして、スピリチュアルなケアなんです。それは、予防医療と健康増進を目指し、患者さん誰しものために、自分のスキルを注ぎ込むことなんです」

 看護分野での熟練度を達成・維持することが、新マノリト・アギアル研究所の目標だ。

【ノート】
1 現在キューバには、ハバナ市、ヴジャ・クララ、カマグエイ、サンチアゴ・デ・キューバに4看護学校がある。
2. National School of Public Health, 2006
3 世界保健機構(2004年)によれば、全米における住民と看護師比は10万人対414人だが、キューバにおいては、10万の住民に対し795人の看護師がいる(キューバ統計年鑑Anuario Estadístico 2005年)
4. 2006年6月時点では、28,664人のキューバの医療専門家が、68カ国で働いている(キューバ外務省MINREX 2006年)

 Anna Kovac,New Nursing School Opens in Havana,November 20, 2006.