医療情報筋によれば、ラウル・カストロ政権は、その自慢の無料の医療制度の改革で、キューバのファミリー・ドクターの医院の半数以上を閉鎖し、配備人員を増やすことになるという。医療制度の柱のひとつの徹底的な見直しは、国民の不満に応じたものだ。そして、この2008年の2月に病に倒れた兄、フィデル・カストロの後任となってからというもの、ラウル・カストロによるもうひとつの前進は、国民の暮らしの改善だ。

2000年以来、何千人もの医師たちがベネズエラに送られ始めてからというもの、キューバ人たちは、ファミリー・ドクター・プログラムのスタッフが不足していると不平をもらす。だが、各州では、ファミリー・ドクターの医院は、これまでのように朝だけではなく、医師や看護師が終日いることになるだろうと、医療関係の情報筋は言う。

「ここ数週間で多くの動きがありました。医院は塗装され、職員に適切な昼食を確保する制度が開発されており、多くの設備も医院にやってくる予定です」と、あるキューバの看護婦は語る。それ以外にインタビューした人々と同じく、彼女は海外からのジャーナリストと話すことを認められていないため、自分の名前を出さないよう頼んだ。

　人口220万の都市、ハバナにも同様の計画があるとはいえ、医師や看護師が不足していることから、さらに多くの時間がかかろう。当面は、いくつかの医院は朝だけ開かれることとなる。

　汎米保健機構によれば、キューバには、ラテンアメリカ内で最良の医療制度があり、地域内での寿命は最低で、乳幼児と産婦死亡率は最低だ。だが、1991年のソ連崩壊でキューバが深刻な経済危機に突入すると、ファミリー・ドクターの医院もひどい状態のまま取り残され、要員不足に陥った。フィデル・カストロは、老朽化した病院を再建し、コミュニティの診療所を拡充するプログラムを6年前に立ち上げる。

　だが、盟友であるウゴ・チャベス大統領が権力を掌握すると、カストロは同時に、ベネズエラの貧しい地区で働くよう何万人もの医師や看護師も送り込んだのだった。ベネズエラへの医療サービスを輸出することで、キューバ経済を浮上させることに役立つ不可欠な石油の供給という見返りがあった。海外の81もの発展途上国で働いているキューバの医療専門家は約4万人にもなるが、その半数以上がベネズエラなのだ。

　フィデル・カストロが2006年の7月に病で倒れ、2007年の2月24日にラウル・カストロ(76歳)が正式にその後任となったからというもの、ほぼ半世紀ぶりの初めての新たなリーダーとして、ラウルは日々キューバを改革し始めている。

　ラウル・カストロによって2007年に行われた議論の中では、政府当局は、ファミリー・ドクターの医院が空いていたり、朝しか開いていないとの苦情を多く耳にした。また、人々は、医療関係者は酷使され、正当な賃金が支払われず、収入を得るためにやむなくそれ以外の活動にも時間を割くことを強いられているとも語った。新たな改革のもと、スタッフを補強するために６年生となった全医学校の医学生たちは、ファミリー・ドクターの医院に住み込むことになるだろう。

「さらに、医院は少なくなるでしょう。ほとんどは既に空なのですが、開いているものも、より監督しやすいよう配置されるのがよいと思います」と、あるハバナの医師は言う。

　首相に就任して以来、ラウル・カストロは、「日常生活上の過剰な規制」と彼が称する規制を緩和するため、すばやく動いている。今、キューバ人たちは、DVDやコンピュータ他の消費財を購入し、観光地に滞在し、携帯電話サービスも使えるようになった。以前はすべてが禁じられていたものだ。

　だが、月に17ドルの平均給与で携帯電話や豪華なホテルとは無縁のほとんどのキューバ人たちにとってさらに重要なことは、今、処方箋の医薬品を得ることがずっと簡単になったことだろう。医療制度での改革はなされ、政府は教育への不満も見直している。

　ファミリー・ドクター・プログラムは、さらに大きな地域密着型の診療所により調整されつつ、500～700人の住民ごとにファミリー・ドクターを配置するという盛大なファンファーレによって1980年代にスタートした。ファミリー・ドクターたちは、あらゆる家族と知り合うことで、病気を予防し、未然に健康上の課題を特定し、専門医に紹介するというタスクを負っていた。

「各ファミリー・ドクターの医院は最大でこれまでの3倍もの住民、1,500～2,000人をカバーすることになるでしょう」とある医師は語った。