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世界の人々の6分の1が飢餓に脅かされている。1950〜60年代の緑の革命が飢餓問題の解決に失敗したことから疑問視され、いま、西側では技術的な解決策として「遺伝子革命」(Gene Revolution)、農業バイオテクノロジーが求められている。だが、それには批判の声もあり、多くの人は、別の道を求める時ではないか、と考えている。バークレーの天然資源カレッジ(College of Natural Resources)の昆虫生物学の准教授ミゲル・アルティエリ(Miguel Altieri)は、そのオルターナティブな解決策で世界的な評価を得た人物である。 アグロエコロジー(agroecology)、持続可能な農業は、在来民族の知識を敬い、環境を保護し、社会的な公正を促すものだ。 「私は西洋で訓練を受けましたが、古代の農業を研究した後、第三世界の複雑な農業に対処するには、西洋の知識が不十分なことがわかったんです」。ミゲル教授はこう語る。教授の活動は実に幅広い。世界の貧しい農民たちとともに現場で働き、その主張は著作や論文を通じて大きな影響力を持ち、世界各地の会議に参加しては、アグロエコロジーを支持して、バイオテクノロジーに明確に反対する。1940年代からバークレーで昆虫学の教授だったロバート・バン・デル・ボッシュ(Robert
van den Bosch)が1978年に死去した後、空席だったポストを埋めるため、ミゲル教授がバークレーにやって来たのは1980年のことだ。ボッシュ教授は、死去する寸前に「農薬の陰謀」(The
Pesticide Conspiracy)を上梓したが、近代農業が科学ではなく、政治に支配されている状況を描き、農薬市場や農薬利用を批判した。多くの人が、まさにレイチェル・カーソン(Rachel
Carson)の『沈黙の春』の後継著作にふさわしい、と評した。
農学の政治化はミゲル教授が懸念することでもある。教授は、近代テクノロジーがゆとりがある第三世界の裕福な農家の間で広まり、輸出作物生産に使われている状況を警告する。貧しい農民たちは、資本を欠いており、よい土地も利用できずにいるが、自ら自給する責任があるというのだ。 ミゲル教授は、1950年にチリのサンチアゴで、政治見解と国籍が違う両親のもとに生まれた。父親はイタリア移民の仕立て屋で、ムッソリーニを支持していた。母親はチリ人の進歩的な学校教師で、社会主義を信奉し、1970年にチリ大統領に選出されたサルバドル・アジェンデ(Salvador Allende)の友人でもあった。 教授は高校生のときに交換留学生として一年をロサンゼルスで過ごし、帰国後、チリ大学に入学。農業経済学を専攻した。だが、18歳のときにエコロジーの講義を受け、環境に関心を持つことになる。 1973年、アジェンデ政権が崩壊した後、教授はコロンビアに移って、コロンビア大学(National University of Colombia)で複合農業(poly-culture)を研究し、修士号を取得。その後、フロリダ大学で昆虫学で学位を得るが、その時にはすでに24もの論文を発表していた。 教授は、半年はバークレーで教鞭をとっているが、残りの半年は世界を旅し、おもにラテンアメリカの小規模な農民たちを支援している。そして、2001年には、チャールズ皇太子が計画した持続可能な農業会議で話しをするため、イギリスを訪れ、開発途上世界の食料需要会議ではバチカンにでかけ、ローマ法王とも会見した。そして、イタリアのベラギオ研究所(Bellagio Institute)に滞在し、パイオニア的な著作である「アグロエコロジー:持続可能な農業の科学(Agroecology: The Science of Sustainable Agriculture)」の第3版に取り組み、ベルギーでの「バイオテクノロジーと貧困会議」に招待された。2001年5月には、バンクーバーで開催された慣行農業・有機農業・遺伝子組み換え食品の比較会議に参加した。 バークレーに居を置きつつも、教授は自分を南側のメッセンジャーと考えている。 「私は、ここで働いていますが、私はかの地のNGO、小作人たちの組織、持続可能な農業を進めている人民たちを支援しているんです」。教授の最新メッセージは、2001年5月に出版された8番目の著作の題名、「農業における遺伝子工学:神話、環境リスク、そしてオルターナティブ」(Genetic Engineering in Agriculture: The myths, environmental risks, and alternatives)に集約されているといえるだろう。 (2001年6月のインタビュー記事より作成) |
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