徒然絵巻

2004年08月02日

宮川上流 .大和谷 在来型サンプル採捕
大和谷に竹株先生と行く。

当初、父ヶ谷に流れ込む枝沢のアマゴの撮影の予定だったが、台風の影響のため、父ヶ谷林道は随所で崩落し通行困難のため大和谷へ変更した。

台風の影響により、宮川水系の源流部にあたる大台ヶ原も記録的雨量となり、大杉谷の各支流の流れが集まる宮川ダムは満水であった。
 
大杉谷ほか各支流の上流部から運ばれる大量の雨水を処理するため、宮川ダムでは放水口を全開にしていた。

普段なら鮎釣りで賑わう宮川本流もダム放水により濁流になっていた。

台風の影響により 放水中の宮川ダム  ダム下流 - 放水により濁流

竹株先生は大和谷は10数年ぶりとのこと。

当時の大和谷は上品で美しい朱点のアマゴが釣れたという。

「絹のような白い肌に、ほんのり紅をさした美しい女性的なアマゴ」

まるで初恋の女性に再会するかのように思出を語る 紀州の荒法師・・・・・・

大和谷の風景
10数年ぶりの大和谷  竹株希朗氏

一方、私は軽い気持ちで大和谷にご案内したことを悔やんでいた。

大和谷は、宮川ダム下流の支流同様、朱点のけばけばしい遺伝子を持つ放流種苗が放流されており、在来型が追いやられてしまっているからである。

大和谷本流は入渓しやすいこともあり、フライフィッシャーの間では、非常に人気のたかい河川である。

しかし、私は宮川水系の中でも大和谷本流は、どうもすきになれず、過去数回しか入渓経験がない。

放流種苗との交雑が進み朱点が派手な個体がつれるため、魚がつれるたびに、破壊された遺伝子をみているようで、つらく感じるからである。

放流される前は、 大和谷の在来型アマゴは非常に上品で美しかった。

この谷の最源流部の地池谷を知る者にとっては、放流による交雑のむごさが、際立って見えてしまうのである。

大和谷風景-1 大和谷風景-1

大和谷に着くと、かなり増水していた。

ひと目見て、テンカラは無理と思えた。

昔の思い出に浸る竹株先生に竿をださせずにすむ理由ができたと内心ほっとした。

「今日は水が多すぎるから竹株流トバシでも無理ですよ。 景色だけ見て帰りましょう!」と竹株先生に言った。

「もしものことがあると思おて 来る途中 紀伊長島でミミズ掘ってきたんさぁ」

「・・・・・・・・」

竹株先生の思い出を壊したくなかった。

そのためなかなか切り出せなかった。

大和谷本流は、放流による交雑がすすみ、朱点の醜い化け物アマゴに追いやられてしまい、上品で美しい朱点をもつ在来型のアマゴは期待できないことを正直に告げた。



撮影サンプル確保の為 毛ばりをあきらめ餌釣りで狙う 紀州の荒法師 竹株氏  

「一匹でいいから 20年ぶりにきた大和谷のアマゴを見たい、君も手伝ってくれないか?」

先生から針と釣糸をいただき、久しぶりに竿袋から琥珀を抜いた。

2人で一匹の撮影用アマゴを狙うことになった。


運良く、大和谷在来型の特徴を残すアマゴを確保することができた。


大和谷在来型   ・・・  朱点の色が “橙色” 朱外輪郭がややぼやける 体色は色白。


「綺麗なアマゴやなぁ 20年前の大和谷のアマゴや 綺麗やなぁ」と 再会を懐かしむ紀州の荒法師の姿をみた。

大和谷のアマゴに、ほんのり紅をさした美しい女性の面影を重ねているかのように感じた。


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