徒然絵巻

2004年09月19日

大杉谷源流遡行 2泊3日予定 第2日目  ( 9/19不動谷遡行)

≪ 第2日目 9/19不動谷遡行≫

9時頃 起床し、朝食をとった。

今回の目的である トリカブトの花の撮影を先に済ませることにした。


ひとつきまえは、葉っぱだけだったトリカブトも、あわい紫の花をつけていた。


紀伊半島の禁漁を告げる花 トリカブト・・・・・

トリカブトが咲く頃 アマゴは腹に卵をかかえる。

もうじき、おわりなんだなと思いながら 淡い紫の花弁をながめた。 

狸峠から望む山並み 狸峠から望む山並み

粟谷小屋のおやっさんの話では、数組の釣り人が、大杉源流部に入渓しているとのことだった。

禁漁直前の3連休ということもあり、山小屋も釣り人でにぎわっているようであった。

大勢の釣り客が、早朝から、谷にむかったそうだ。

早起きは、さっぱり苦手なため、粟谷小屋で昼飯用のおにぎりをつくってもらい昼前から不動谷に行った。

不動谷の景色をみるつもりで、西谷をぬけて狸峠をめざした。

大杉谷支流 不動滝上流 不動谷ダム 大杉谷支流 不動谷

狸峠を越えると、はるか眼下に、不動谷ダムが見えた。

堂倉源流の水は、堂倉谷取水堰堤から、山中に掘られた3キロのトンネルをとおり、この不動ダムで、不動谷の水といったん合流する。そして、ふたたび 2.5キロのトンネルをとおり 宮川第3発電所に送水される。

不動ダム湖には、堂倉谷から運ばれた水が いっせいに流れ込む放水口があり、水量の多い雨の日には、この放水口に向かって、大アマゴが整然と列をつくって並ぶらしい。

大杉谷の隠れた大物釣り場のひとつである。

今回の探索の目的は、この不動谷の取水口にならぶ大アマゴの見物と不動谷在来型アマゴの撮影である。

 朽ち果てた大木  苔むした倒木

はるか眼下の不動ダムを目指して、降りることにした。

山頂付近から尾根づたいに苔むした踏み跡をおりていった。

帰り道またこの高度まで登るのかとおもうと、すこし不安である。


猟師が仕掛けた罠 (イノシシ・アナグマ・タヌキ) シダの群生

薄暗く、じめじめした原生林をあるいた。

大杉源流部は、下界よりひとあし先に秋の気配が感じられ吹く風も、すこし肌寒かった。

しかし、真夏にこの道をあるくとなると、ヒルがフォークダンスをして出迎えてくれそうな雰囲気である。

途中 薄暗い林の中に、猟師が仕掛けた大きな檻(オリ)があった。


コケ・シダの仲間 コケ・地衣類

木漏れ日のあたる場所では わずかな太陽の光をうばいあうかのように、シダが群生していた。

あちらこちらに倒木がよこたわり、そにこ目を向けると コケ・地衣類が群生していた。

渓魚や動物だけでなく、コケ・シダ・地衣類にも、なわばり争いや生存競争があるんだなと思いながら、シャッターを押した。

コケ コケ

杉の葉と 大きさ格好がよく似たコケが生えていた。

植物のことは詳しくないので、名前すらわからないが、コケというものも いろいろな形がありおもしろい。

キノコ キノコ

いたるところで、キノコが生えていた。


キノコ キノコ


わたしは、幼児期のトラウマ体験により、キノコと名のつくものはすべて食べられないが、たべたらおいしいのかなとおもいながら、シャッターをおした。

(※幼稚園時代、家族がよろこぶとおもい裏庭に生えていたキノコを、かごにたくさん詰め込んで、もちかえったところ、さかさづりにされて背中をたたかれ、ゆびをのどにいれて、無理やりはかされた思い出があり、それ以降、トラウマになった。いま思うと、毒キノコを口にしたのではないかと心配し、吐きださせるために、親がとっさにした行為だった。)


谷床  右(画面手前)に行くと ダム湖・不動滝 
     左(画面奥)に行くと、奥不動
不動ダム湖 全景 (下流から上流を)

一時間ほど急斜面を下ると、谷床が見えた。

左にすすむと奥不動、右にすすむと 不動ダム・不動滝につづく。

進路を右にとり、大アマゴがつれるという 不動ダム放水口を見に行った。

放水口-堂倉谷と3キロのトンネルでつながる。
(増水時 放水口に向って良型が整列する。)
不動ダム下流 風景 
(増水時、コンクリート側溝に大アマゴが集結する)

大雨直後の増水時に限り、ダムから水があふれ下流の不動滝にも水がながれる。このような時には上流をめざした大アマゴがコンクリート側溝に集結しているのが見えるらしい。

8メートルの鮎竿を置き竿にし、エサを飲み込んだ大アマゴが穂先を引っ張り込むまでまてば、素人でも簡単につれるそうだ。

当日は、大アマゴの姿は見えず、干からびた川底が見えただけだった。

来た道を引き返し、上流の奥不動方面にむかった。

ナガレヒキガエル       特徴 1.手足が長い 2.鼓膜が小さい

おてもやんのように ほっぺたがあかい ヒキガエルがあるいていた。

いつもみかけるヒキガエルとは一風変わった容姿、専門家に調べてもらったところナガレヒキガエルという水の綺麗な源流部にしか棲めないめずらしいカエルだった。ヒキガエルとの違いは、手足が長く、鼓膜が小さいことらしい。

不動ダム上流バックウォーター付近の風景 不動ダム上流バックウォーター付近の風景

バックウォーターをすすむとすぐに 右岸が詰まり、腰までつかって渡渉しなければ上流にいけなかった。

源流部の水は冷たく、私には心地よいのだが、カナズチの社長は、以前 流された記憶がよみがえり、対岸で固まったまま立ちすくんでいた。

水際でかたまってしまった社長 泣きそうな顔をして、社長が後に続いた。

北海道の体育の授業には、スキー・スケートはあるが、水泳はなかったそうだ。そのため、北海道育ちの社長は泳げず、とにかく、水が怖いらしい。

泣きそうな顔をして、社長が後に続いた。

交尾中のヤマカガシ    
              大きい方がメス 小さいほうがオス  秋に交尾をし翌年の夏ごろ産卵する。

高巻き途中で、おそるおそる社長がカメラをかまえた。

カメラの前方に目をむけると 二匹のヤマカガシがもつれ合い、交尾をしていた。

「なに びびっとんねん!! もっと ちかづいて 手のばして  うつさんかい!!」

「これ以上近づいたらかまれますよ!  わぁっ 近づいてきた!!」

「かまれたら 葬式あげたるさかい気合入れて うつさんかい!! 」

愛の形にもいろいろあるが、ヘビの交尾はあまり気持ちのいいものではなかった。

不動ダム上流の風景 不動ダム上流の風景

色づきはじめた広葉樹に秋の気配を感じながら不動谷を歩いた。

不動ダム上流部は、川幅が広く のびのびと竿を振ることができた。



しかし、流れに勢いがなく、思いのほか魚影は少なかった。

川底には、アマゴの姿は見えず、かわりに色あざやかな落ち葉が目立った。


不動谷独特の頭部の形・・・  頭が寸詰まりで 口が小さい。キリクチのような顔つき。

不動ダムから沢を歩いてきたが、まったく あたりはなく、

納竿予定場所としていた 営林署の作業小屋(廃屋)の手前にきて、あたりがではじめた。

かかるアマゴは臨月間近の妊婦のような腹をしていた。

あれほど食べることを楽しみにしていた社長も、アマゴの腹を見て言った。

『おなかに子供がいるみたいだから 今日は捨てましょう』

鬼の目にも涙、大杉源流不動谷、一葉落ちて天下の秋を知る。

納竿場所の営林署の作業小屋(廃屋) つり橋から続く踏み跡をたよりに稜線へ

つり橋から続く踏み跡をたよりに稜線をめざし、急斜面を這い登った。

延々と続くのぼり道、疲労困憊の末、日没直前に林道に辿り着くことができた。


夜半、粟谷小屋にもどると雨がふりだした。

翌日の天気予報を確認したところ、雨。

源流遡行2泊3日を計画していたものの、最終日は中止となった。



不動谷在来型   ・・・  頭がちいさく、口が寸足らずのおちょぼぐち。

                キリクチのような顔つきをした不動谷のアマゴ。


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