幸せになろうね、あなたは言った。
手を差し出すと、あなたが握り返してくれる。
いつも傍にいてくれるあなたに感謝を感じていた。
瞳を覗き込むと、あなたが微笑み返してくれる。
あなたのくしゃくしゃの笑顔を見るのが好きだった。
ふたつのワイングラスは、いつも触れ合っていた。
あまりにも幸せ過ぎて
突然、怖くなってあなたの胸に顔を埋めたら
黙って、そっと抱きしめてくれた。
ギルバートの言葉を借りては、
・・・ダイヤモンドも大理石の広間も無いが、君といつまでもいっしょだよ・・・
世界中の幸せをひとり占めしているとさえ感じていた。
あなたの胸は、広くて温かくて悲しみを忘れそうだった。
遠い日。
あれが無かったら、
あなたは今でも傍に居るのに。
私の涙をそっとぬぐってくれたろうに。
私の中のワイングラスが、悲鳴をあげて砕け散った。
満たされていたワインが無残に飛び散り、
床に、不鮮明な地図を描いた
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