『思い』





最高の恋人の顔をして君の隣にい続けよう。



君の傍にいつもいて、君を理解し、君を、君を傷つけるものから守ろう。



それが私にできることだから。



君にしてあげられることは何でもする。



ただ一つを除いて。



君は信じないかもしれないけれど、本当に何でもしてあげるよ。



ただ一つを除いて。



何でもしてあげる、けれど、私は決して君に言ったりはしないよ。



私の嘘を許して、とは。



君を傷つけることは許されないことなんだから。



だから、許して、とは言わないよ。



何でもしてあげるって言ったよね。



だから、私が君に与えられるものも全て与えよう。



君が私の優しさをほしいというなら、優しさを



君が私の温もりを求めるのなら、温もりを



ただ、愛だけは与えられないけれど。



それだけが君にしてあげられないこと。



でも・・・



私は・・・



最高の恋人の顔をして君の隣にい続けようと思うんだ。



いつかは本当に君の恋人になれるかもしれないから。



そうしたら、君に私の愛を与えられる。



だから、最高の恋人の顔をして君の隣にい続けよう。



君が私の嘘に気づくその日まで。



君の恋人になれるかもしれないから。








ほんと、身勝手でごめんね。








/





「聖さま、おはようございます。待ちました?」
「おはよう、祐巳ちゃん。ううん、私もついさっき来たところだよ。」
「よかった。遅刻しそうだったんで、心配だったんです。」
「別に祐巳ちゃんになら待たされてもいいけどね。恋人を待つ時間もデートのうちだっていうし。」

本当に祐巳ちゃんって感情がストレートに顔にでるね。顔が真っ赤だよ。

「そろそろ行こうか。映画に遅れちゃまずいし。」
「はい!」

本当に今日という日を楽しみにしていたのがわかる笑顔を君は浮かべるね。



でも、私は・・・






祐巳ちゃんと見た映画はラブ・ロマンスものだった。
映画のできはそう悪くないものだった。
周りからは鼻をすすっている声が聞こえたし。

だから、当然のように祐巳ちゃんも映画を見ている最中に涙を流していた。
見終わった今も余韻に浸っているのか、目が潤んでいる。

でも、私は祐巳ちゃんや、涙を流していた他の観客のようにはなれない。
なんていうのかな、冷めた目で映画を見てしまうんだ。
だから、映画の最中に感情が高ぶってくる、なんてことがない。
周りと同じように映画が見れない。
私にとっては目の前をただ映像が流れていくだけ。



何もない二時間。
周りと交わることのない私の世界。



祐巳ちゃん、君を本当にうらやましく思うよ。
私は何度祐巳ちゃんになりたいって思ったか。
祐巳ちゃんみたいになれれば、私の周りの世界は全く違って見えるようになるんだろうね。
その世界はきっと光に満ち溢れているんじゃないかな。



映画を見終わった後は、二人でショッピングを楽しんで、
楽しくおしゃべりをしながら夕食をご馳走になった。



それは本当に楽しいひと時だった。
君に嘘をついて一緒にいるとは思えないくらいに。



きっと君が心からうれしそうにしているからだね。
そんな君を見ていると、私もとてもうれしい気持ちになるんだ。



でも・・・
その笑顔。
私に向ける、君のその笑顔を今は私に向けないでほしいと思う。



矛盾しているね。
私は君の笑顔が見ていたいから、嘘をついたというのに。



でも、向けないでほしいな。





/





もうすぐ祐巳ちゃんの家につく。
楽しかったひと時が終わる。



私はもう少しこの楽しいひと時の中にいたいと思うはんめん、どこかほっとしている。
君の隣にもっといたいと思う私と、君から早く離れたいと思う私がいるんだ。



どうしてだろ?



あの角を曲がれば、君の家。
君の家の前にくれば、「さよなら」を言って、今日は終わり。
後に残された私は自分の家に帰るだけ。



それだけ・・・



別れれば今日はもう終わり。



君は私の世界からいなくなる。



「・・・祐巳ちゃん、どうかした?」

思いにとれえられていたせいで、気づかなかった。
さっきから祐巳ちゃんはしゃべらずに、ずっと私のほうを見ている。

「私の顔に何かついている?」
「いえ・・・そうじゃなくて・・・」
「うん?」
「・・・聖さまって、時々別人みたいな顔をしているなぁと思って。」
「別人みたいな顔・・・」
「あ、変な意味じゃないですよ。なんていうのかなぁ、いつもと纏っている空気が違うっていうか・・・」
「・・・・・・」
「ごめんなさい。忘れてください。うまく言えません。あ、もうここでいいです。」
「え、家の前まで送っていくよ。」
「いえ、ここでいいです。わざわざ送ってもらってありがとうございます。」
「・・・そう、 なら、おやすみ。」
「はい、おやすみなさい。」





/





なんでかな・・・
君とはもう別れたのに、君が私の世界から出て行かないよ。
君が別れ際に言った言葉が、私の心を捉えてしかたないんだ。



『聖さまって、時々別人みたいな顔をしますね。』



祐巳ちゃんは本当にするどいね。



確かにそうかもしれないね。



君と一緒にいて、君が私に、私が好きなその君の笑顔を向けるたびに、
私は自分の心のなかの何かがほどけていくのがわかるんだ。



だから、君が言うように、私は時々『別人』みたいな顔をしているんだろうね。



でもね、それも『私』なんだよね。
ほどけた心からでてきた『私』。
私がいつのまにか私の中に閉じ込めた『私』。
どうして閉じ込めたのかは私にもわからないけれど。



もしかしたら、私が大好きな君に嘘をついて、恋人のふりをしているのは、
この何かを全て外にだしてもらいたいからなのかな。



いや、きっとそうなんだろうね。
『私』が外にだして、だして、と扉をたたいているんだろうね。



けれど・・・



私は怖いんだ。



その『私』を外にだすのが。



だってね、痛いんだもの。
心のなかの何かがほどけて、私が閉じ込めた、私の知らない『私』がすこしずつ外にでてくるたびに、
なぜだか心が痛むの。



だから、最近君の笑顔をあまり見ていたくないって思うんだね。



心が痛むんだ。
まるで、私が私に警告しているよう。
それ以上『私』を外にだしてはいけない、と。





















痛い・・・



心が痛い。



痛い・・・



痛い・・・



痛い・・・










































なんで君といるとこんなふうになるんだろう。



君ではない、他の誰かとは一緒にいても、こんなふうにはならないのに。



なんでかな・・・



もしかしたら私は君のことが『好き』なのかな・・・



だから、こんなふうになるんだろうか。



でも・・・



やっぱり・・・



私は君を『好き』にはなれない。
私の中の何かが邪魔をするんだ。
心が痛むんだ。



だから、君が私を『好き』でいてくれるように、私は君を『好き』になれない。



どうしてかな・・・










































ごめんね・・・



ごめんね・・・



私を許して・・・



祐巳ちゃん。



やっぱり、私は君の恋人にはなれそうにないよ・・・



だから・・・



ごめんね・・・














〜あとがき〜
お話があるていどすすんだら、すこし書き直すかもしれません。
つながりの悪いところ出てくると思うんで。
いまでもつながりが悪いんですけどね。

しかし、下手な文章だな・・・><




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