第7話「俺のおかげだ」
村長はアルフレッドをトイレに連れて行く憔悴しきった様子でこう言った。
「もう後がない。どうする?」
ピンチににもかかわらずアルフレッドは余裕の笑みでこう言った。
「村長、実は切り札があるんですよ」
「何!?なんで早く言わなかったのだ。その切り札とはなんだ?」
アルフレッドは鞄から古ぼけた和綴じの本を取り出した。
「ま、まさか、それは!?」
「そうです。うちの家に代々伝わる古文書です。それの全7巻からなるうちの一冊がこれです」
その古ぼけた古文書の表紙にはかすれた文字で『麻雀攻略 奥義の書 ドサール・ケント著』と書いてある。
「なぜ言わなかったのだ。危うく身包みはがされるところだったぞ。」
アルフレッドは得意そうに笑った。
数分後・・・
ガチャ・・トイレの戸が開いたのに気付いた房州たちはこちらを見て言った。
「長いトイレだったな」
ニヤリと房州は笑う。アルフレッドはこの房州の笑いに腹が立ってしょうがなかった。
「待たせたな。」
言葉を発したのは村長だった。
二人は卓につくとお互いに目を合わせ少し頷いた。
その後の展開は一方的だった。
「くそ!いったい何を?最初はからかっていたのか?」
村長は顎をかきながら言った。
「わしらは常に全力じゃよ」
アルフレッドは自分の持ってきた古文書のおかげで助かったのに・・・と思ったがあえてそこには触れなかった。
「さあ、その魔法の玉・・ドラゴンボールとやらをいただけませんか?」
「しょうがあるまい。哲」
房州は坊や哲に合図を送ると坊や哲は部屋の壁にあるレバーらしきもの引いた。
ガタン!ものすごい音とともに卓の真ん中のあたりが開きそこから魔法の玉―ドラゴンボールが姿を現した。真っ白な色の玉で漢数字で壱と書
いてある。
「これがうわさに聞くドラゴンボールか」
アルフレッドはそう言いながら手に取った。
「では次を急ぐのでこれにて失礼する」
こう言うと村長は扉を開け出て行き、後を追うようにアルフレッドも出て行った。
「もしかしたら彼らはすべて手に入れるかも知れんな。良いことに使うか悪いことに使うか分からんが」
房州はつぶやいた。
「我々は言い伝えを守るだけですからね」
坊や哲はため息をつきながら台所へと向かった
山道を進むこと数十分後、次の小屋が見えてきた。
「次はいったい何で戦うのでしょう」
「戦うと決まったわけではない。ただわしらは突き進むだけじゃ」
一番役に立ってない村長に言われたらお終いだよと思いながらアルフレッドはラバから降りて扉の前に立った。
「よし、行くぞ」
村長はパンっと両頬を叩き気合を入れた。
ガチャ・・・扉を開くとそこには正方形に有刺鉄線が張られていた。
「何だここは・・・」
アルフレッドは顔を強張らせて言った。
「あなたが長老ですかな」
村長は一歩前へ出て言った。よく見ると部屋の端に誰か立っているが暗くてよく見えない。
「その通りじゃ。まさか、房州がやられるとは思わなかったな」
暗がりから姿を現した長老の姿は奇妙な風貌だった。
「あれは・・・文献で見たことがあります。あれは亀の甲羅です」
「ん?カメ?何だそれは?」
「海に生息し、人をも襲う恐ろしい生物です。鋭い牙と爪を持ち戦いを好む性格ゆえ各地のつわものが勝負を挑むそうです。そして勝った証にそ
の甲羅を背負うと言われています。しかし、亀に勝った者は数えるほどしかいないそうです。彼は武術の達人でしょうか」
村長はアルフレッドの話を聞いて驚きを隠せなかった。
「ふぁふぁふぁ」
長老は突然笑い出した。
「久しぶりの挑戦者じゃ。楽しませておくれ」
長老は甲羅を脱ぎ捨てると一足飛びで有刺鉄線の中へと入った。この小屋は床がなく砂が敷いてあるだけなので着地で砂が舞った。長老はキッと睨むと
「我が名は天武、力の長老じゃ。わしを倒せばドラゴンボールはやろう。わしが勝ったらその命をもらう」