第9話「弱肉強食」
引き金を絞り、小屋の中に銃声が響く。
外で鳥が逃げていくのが分かる・・・・
弾の行方は意外なところだった。実況のカオリの頬をかすめ壁を貫通したのだ。
「俺には弟なんていないし、母はもう亡くなった。死者を冒涜するのは止めろ!」
アルフレッドは声を荒げた。
「これが貴様らのやり方か・・・」
村長も睨みを利かせた。
アルフレッドは44マグナムを投げ捨て足場の悪い砂の上を疾駆した。
急に間合いを詰められた天武は後退し受けの体勢をとる。
フェイントをかけた下段蹴りが天武に命中し、そこへすかさず顔面に向けて拳を突き上げる!
紙一重で天武はかわすと一歩踏み込んで上段蹴りを放った!
しかしこれが命取りだった。カウンターを得意とするアルフレッドは顎へ左フックを叩き込む。
さらに砂を蹴り上げ目潰し攻撃!
脳へのダメージと視界がなくなった恐怖から達人の戦意は見事に消え失せた。
「参った!」
アルフレッドは右腕を振りかぶったまま止まった。
「もう、終わりじゃ。ドラゴンボールはお前のものじゃ」
天武は目を擦りながらカオリに合図した。
するとカオリは奥の部屋からドラゴンボールを持ってきた。
「申し訳ない・・・」
カオリは反省した様子だった。
「これでやっと二つじゃな」
村長はそれを受け取るとふっと笑ってみせた。
あそこまでやれると復帰はできないだろうと思いながらアルフレッドは有刺鉄線のリングを飛び越え
「このドラゴンボール有り難く頂戴する」
そう言い小屋を後にした。
再び二人は馬とラバに乗り次の試練へと進んだ。
しばらく進むと落ち着いた風貌の若者が立っていた。
「あなた達がドラゴンボールを欲さんとするものですか?」
「いかにも」
いつものことだが全然役にやっていない村長がいいとこ取りをするが腹が立ってしょうがなかった。
「この試練では精神の強さが試されます」
「精神の強さ?」
「ええ、この先に精神と時の洞窟と呼ばれる洞窟があります。その洞窟は入ったものは常人では耐え切れない精神的苦痛が待っていて、その
苦痛に耐えられたもののみがドラゴンボールを手にし洞窟を出ることができます。入ることができるのは一人だけです。もう一人は出口まで私
がご案内いたします。」
「い、いったいどれほどの苦痛なんじゃ?」
「私が数年前入った事があるのですが・・・・耐え切れなくなってしまい戻ってしまいました。それは恐ろしいものです。入る人によって何が起こ
るか変わるので大したアドバイスというものはできないのですが通り抜けるのに失敗し戻った人の多くが精神崩壊しているのです。私は幸運な
ほうでした。」
二人は唾をごくりと飲み込み、言葉を失った。
「どちら様がお入りになりますか?もちろん棄権なさっても結構です。」
村長はすっとアルフレッドを見据えてこう言った。