第11話「ロシアン・カウボーイ」
アルフレッドは異常な酒臭さの村長を馬の上に乗せるとラバにまたがってさらに道を進んだ。
二頭の操作は意外と難しくなかった。馬が村長と違い利口だったからだろう。
思い返すと村にいるころから村長は酒で人に迷惑をかけてきた。
村で宴会があるときはいつも村長は飲み過ぎて倒れている。それだけならいいが翌日安静にしていればいいものをわざわざうちの店に来るの
だ。そのため店中酒臭くて客が寄り付かない。極めつけは立ち読みしながら吐くということだ。必ず、その後気を失うのでたまったものではない。
昔のことを思い出して拳を握り締めていると次の試練の小屋へとたどり着いた。
今度は最初の小屋と同じような場所である。村長を放置して扉を開け中に足を踏み入れた。
「ハーイ、あなたがチャレンジャーですか?」
「そうだ」
そこのは異国のものが椅子に座っていた。
アルフレッドはその男の姿を見て昔読んだ文献を思い出した。
「お前はカウボーイか?」
「そーです。よくわかりましたね」
「で、ここはなんの試練なんだ?」
「私は運の長老、リボルバー・ギャンビット。ここではあなたの運の強さを試します」
「運・・・・」
アルフレッドは正直自分は運がない方だろうと思った。一人旅したかったのにリストラされた村長を連れて旅をしているのだ。その上泥酔し異臭
を放っている。おみくじを引いたら三回連続で大凶を引くことは間違いないだろう。
「どうやって試すのだ?」
アルフレッドはうすうす気付いていたが一応聞いてみた。
「ロシアンルーレットでーす」
ギャンビットは二カッと笑いホルスターからコルト社のシングルアクションアーミー(S.A.A)をスッと引き抜いた。
「ルールは簡単です。このS.A.Aには6発弾丸がこめられます。そのうち一つだけ装填し交互に打ち合うのです。ね、簡単でしょ?」
「お前は怖くはないのか?というより何回やったことがあるのだ?」
「まったくこわくありませーん。数えたことがないので分かりませんが50回以上やったことがあります。もちろん無敗です」
アルフレッドは今度ばかりはやばいと思った。絶対死ぬと思った・・・・
「どうしたんです?チキンには用はないでーす。やらないのならさっさと帰ってくださーい」
こんな軽い男に背を向けて帰るのはどうしても嫌だった。だけどそれと同時に死にたくもなかった。こういう重要なときに限って村長は泥酔してる
し・・・・
あ!!
アルフレッドは名案思いついた。
一度外に出ると馬に乗っていた村長を引き摺り下ろしそのまま小屋の中へ引き摺っていった。
「おー、誰ですか?その方は?」
アルフレッドは二カッと笑い、
「強運の持ち主だよ。銃は彼に向けて発射する」
そう言うと村長を椅子に座らせた。村長はほとんど意識がない。
「いいのですか?どう見たって寝てま、、、うぐっ!」
ギャンビットは言い終わる前に鼻を覆った。言うまでもないが激臭だった。
さっきまで外だったから何とか大丈夫だったが室内となると話は別だ。なんの作戦だか知らないが成功したように思った。
「いいのですか?」
ギャンビットは鼻をつまみながらもう一度聞いた。
「ああ」
「では、はじめよう」