第14話「ミステリーマン現る」
「まず、あそこにあるスイッチを切れ」
アルフレッドは指をさしながら言った。
「oh、あんなところにスイッチが」
ギャンビットは言うより早くスイッチを切った。スイッチは柱の陰にあった。はではでしく「スイッチ」と書いてある。これでは気付かない方が馬鹿
である。
「次はどーすればいーですか?」
ギャンビットが次の指示を促す。アルフレッドの妙案はここまでだった。アルフレッドは腕をくみ、目を閉じた。
と、ここで背後から声がした。
「アルフレッド・ボンバーヘッド殿とお見受けする」
一同が振り返り、アルフレッドが一歩前に出たその時!
「如何にも、わしらがアルフレッド一行じゃ」
村長が答えた。
アルフレッドのこめかみに青筋が浮いた。
「そういうあんたは何者じゃ」
「これは失礼した。拙者、東方より参った多久様が使者、諫早権之助にござる」
「・・・」
格好は明らかに異国のものである。髪はまとめて結い上げ、髭は伸び放題である。
皆が皆、困惑していると、諫早権之助なる者が語りだした。
「いやはや、旅を始めて二十余年、やっと見つけたでござるよ。思えば、苦難の道のりでござった。イーストウッド渓谷では吊り橋から落ちて、バ
ンダレイ山ではパンダとかいう熊に襲われ、いや、妙な柄をしておったもんだから、ちと気になってのう。近寄りすぎたようでな、ワッハッハ!」
諫早権之助の話は終りそうにない。
「して、何用じゃ?」
またしても村長だった。
「おっと、忘れるところであった。話が逸れてしまうのが某の悪い癖でな。大殿に初めて謁見したときなぞ、一刻半も喋り続けていたそうでのう、
下城してから殿に大目玉じゃ。その時はまだ殿も若くてのう。皆から若、若と呼ばれておった・・・」
諫早権之助は遠い目をしている。
「渡鹿の若様と言えば、隣国にまで聞こえた美男子で・・・」
故郷を懐かしんでいるのか、諫早権之助は涙ぐんだ。
「若・・・」
目頭を押さえて、おえつを漏らし出した。
三人が無視して長老の間を急ごうとした矢先、諫早権之助は懐から書簡を取り出し、村長に手渡した。村長とアルフレッドを勘違いしているの
かもしれない。
「これを・・・」
声が震えていた。
「ふむ」
村長は一読すると、アルフレッドに渡した。「どうやらお主宛てのようじゃ」
〈当たり前だろ。。さっき俺を探してたんだからな!〉
とりあえず書簡に目を通してみる。何が何だか分からない。異国の文字で書かれていた。アルフレッドの脳裏にちかっと光るものがあった。
〈古文書にあった!〉
アルフレッドはずた袋を引っくり返して探した。
〈あった!〉
古びた和綴じの本である。日に焼けて黄ばんでいる。表紙には『読解術 ドサール・ケント著』と書いてある。言語、通し、地図記号、ドーナツ大
全の四部構成のようだ。
「これで何とかなる!」
しかし、未知の言語の翻訳には時間をようした。訳し終わる頃には日が暮れていた。村長もギャンビットはうたた寝をしている。諫早権之助にい
たっては剣の鍛練をしている。訳している時から気合いが聞こえていた。
アルフレッドは皆を集めて、翻訳の成果を発表した。
「これにはこう書かれている。三人の長老の間に進むにはアイテムが必要である。そのアイテムとはインディン・ジョーンズの手帳である。現在
、インディン・ジョーンズはラポウィン村に隠棲している。だってさ」
〈意外に短いな・・・〉
三人とも同じ感想を持った。
「何でそんな手紙をくれたんでーすか?」
ギャンビットが諫早権之助に尋ねた。
「なんの、少しばかりの心づかいにござるよ」
そう言い残すと、諫早権之助はくるりと背を向け、歩き出した。郷に帰るのだろう。