第20話「未知との遭遇」
二人はほんの数歩足を動かしただけで、妙な違和感に気付いた。
「おい、地面を見てみろ」
アルフレッドが言った。
「何だこれ。道が石でできてる!一枚の岩だ!」
「お、おい!あっちに人がいるぞ!」
アルフレッドが指し示す方向に目をやると、そこには二十人ほどの人々が、整然と列をつくっていた。
「行ってみよう」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンも興味が湧いたようだ。
二人は列に近付いていった。
その列はゲートの様なものの前にあった。ゲートには『ようこそ トレッドストーン村へ』と書いてある。ゲート脇の小屋に『入場券 大人二万ゼニ
ー 小人(小学生以下)八千ゼニー 馬・ロバ・ラバ・大型犬・アルパカ三万ゼニー』とあるのが目についた。
「入場料とるのかよ・・・」
二人同時に溜め息をつきながら言った。かなりテンション下がった。
「十万ゼニーもかかる・・・来る前に稼いどいて良かったな・・・」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンが言った。
入場券を買い、列に並ぶこと十数分、ようやくトレッドストーン村に入園した。
トレッドストーン村には、馬のない馬車や喋る箱、遠くの人間と話すことのできる箱など、様々のアトラクションがあったが、どれも高すぎた。二
人はフリーパスにすれば良かったと悔やんだ。
気付けば、正午をとっくにまわっている。二人は夕食をとることにした。お決まりだが、園内のレストランはべらぼうに高い。そこで、トレッドの樹
海に入る前に準備した食糧を食べることにした。一枚岩の地面にござを敷いた。小麦粉を練ったものを茹で、塩をつけて食べた。周囲の視線が
痛かった、穴があったら入りたかった、とアルフレッドは後に語る(アルフレッド・ボンバーヘッド著『死なばもろとも〜本屋なんかやってられっか
!』より)。
「腹も膨れたし、暗くなる前にどっか宿をとろうぜ」
アルフレッドが言った。
「そうだな。あそこになんかいいんじゃないか」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンの視線の先には、到底宿屋とは言えない高級そうなホテルがあった。一応行ってみた。
フロントにはモーニングを着こなしたジェントルマンが立っていた。
「いらっしゃいませ」
「部屋空いてる?」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンが聞いた。
「現在スウィートでしたら、すぐにご用意できますが」
「すいーと・・・?」
「当ホテルの最高級の部屋でございます」
「最高級・・・いくら?」
「一泊七百八十万ゼニーでご奉仕させて頂いております」
「な、七百八十万・・・」
二人は何も言わずにホテルを出た。
「やっぱり野宿だな」
アルフレッドがぼそりと言った。
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンはござを敷いた。寝袋を出し、さっさと寝てしまった。仕方なくアルフレッドも寝た。